夜の上野公園は花見の季節にもかかわらず人影はまばら。
知事の自粛命令の結果どうなっていたか・・・
全ての提灯が消され、水銀灯の元で桜は青ざめ、花びら同士が暗い影を重ねている。
例年なら桜並木は車道も歩道も人々でごった返しているはずなのに、
黒々としたアスファルトの路面ばかりが目立ち、鳴り物は一切聞かれない。
ぽつりぽつりと開かれている宴も寒々しい。
4月としては記録的な寒さも影響しているのかもしれない。
そんな薄暗く侘しい上野公園の一角に、温かい光に包まれた老舗の料理屋さんがある。
韻松亭 (いんしょうてい)だ。
明治8年創業以来上野公園とともに歩んできたこの料亭は桜でも有名で、
花見のシーズンに座敷を確保することはかなり難しいはずだ。
気が利く仲間がいて、2月の段階で、この花盛りのシーズンに予約をしていた。
(もっとも、震災の影響でキャンセルもあったのだろう、満席という程ではなかったが)
料亭の売りは、豆腐料理や厳選した季節の食材を用いたコース料理だけど、
みんなの目当ては何といっても、やはり桜だ。
二階の座敷の外側は、見事な桜の花が取り囲んでいた、た、た・・・ない!
何と、仲間が予約した座敷の真正面を取り巻いていたのは、梅の大木だった。
がっくり・・
「ま、葉桜気分もいいか」と気を取り直し、何十年来の仕事仲間と、昔話に花を咲かせた。
話し疲れて、ガラス戸を開けると、縁側があり、年季の入った高欄が支えている。
そこから顔を出して、ふと左下を見やると・・
広い濡れ縁がしつらえてあり、床の上には篝火が焚かれ、
周囲にはライトアップされて桜が輝いていた。
我々の座敷の前こそ桜は無かったけど、話に花を咲かせ、
目を休めるとそこには七分咲きの桜の大木が眺められるという趣向になった。
とても豊かで、贅沢な時を過ごすことができた。
明るい店内、輝く桜を眺めたあと、上野公園の寂しげな桜並木を通って帰路についた。
大震災の最中とはいえ、自粛するばかりでは日本は元気になれないと語り合った。
このところの重苦しい気分に、一服の清涼感を
満喫させていただきました。
「手術着はなぜ緑色をしているのか」と「緑」の与える心理効果との関係はありやなしや?
夏になったらまた変更ですけど・・・