日々茫然

猫・本・アート・日常生活などを、つれづれと思いつくままに記録

『夜市』 恒川光太郎

2006-08-26 | 本と漫画の話

毎日暑いので、ちょっとホラーな作品が読みたいと思い、以前から気になっていたこの本を借りてみました。



『夜市』と『風の古道』の2編が入っています。薄いのですぐ読めました。

 夜市
大学生のいずみは、高校時代の同級生・裕司から“夜市”に誘われる。何も知らず付いて行った“夜市”は、異界だった。売り手も買い手も異形のものがうろつき、そこでは望むものが何でも手に入るという。怖れをなすいずみに裕司は、小学生の頃夜市に迷い込み、弟と引き換えに「野球の才能」を買ったと話す。その後罪悪感を抱えて生きていた裕司は、弟を買い戻すために再び夜市を訪れた。

 風の古道
12歳の“私”は、友達のカズキに、7歳の頃迷い込んだ不思議な道の話を打ち明けた。そこは未舗装の広い道で、両脇にはブロック塀や生垣の家がずっと続いていたが、どの家も入口を背にしていて、延々と切れ目のない道だった。帰り道を教えてくれたおばさんは、「夜になったらお化けが出る」と言っていた。面白がって行ってみようと言うカズキと、再びその道へ足を踏み入れる。入ったはいいが出口を見失い、たまにすれ違う人はどう見ても異形。日が傾きだして途方にくれた時、初めてこちら側に入り口を向けた茶店を見つける。そこで出会った“レン”という青年に、出口まで案内してもらえることになったが、途中でレンと因縁のあるらしい“コモリ”という男に出会い、巻き添えでカズキが殺されてしまった。“私”はカズキと元の世界へ帰れるのか…


面白いです。

ホラーというより、ファンタジー寄りで、怖くはなかったです。
全体に暗い雰囲気は漂っているし、どちらもハッピーエンドとは言い切れなかったけれど、読み終わった後「なんか良かった」と思いました。読後感が悪くないです。

特に『風の古道』が良かった。
レンのキャラクターがいいです。
カズキを生き返らせるために、しばらく主人公とレンが二人で“古道”を旅するんですが、道々レンの生い立ちやコモリとの因縁を話してくれます。
どちらかというとそっちが話のメインです。
このままレンと古道を旅するのも悪くないと思ってしまう。
レンをメインに、古道に迷い込んだ人々の話を連作として書いてほしいくらいです。

カズキを生き返らせるための条件がとってつけたような気はしましたが。
ま、それは小さいことで、全然良し。

まだこれが1作目で、他の本は出ていないようです。
2作目が楽しみです

コメント (2)
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