日々茫然

猫・本・アート・日常生活などを、つれづれと思いつくままに記録

『配達あかずきん』 大崎 梢

2006-08-18 | 本と漫画の話


駅ビル内の書店・成風堂を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘の良いアルバイト店員・多絵のコンビが、本にまつわる様々な事件の謎を解決する短編集です。

 パンダは囁く
寝たきりになってしまった老人に頼まれた本を探している、とお客様から相談された杏子。聞き書きしたというそのメモには「あのじゅうさにーち いいよんさんわん ああさぶろうに」―意味不明の言葉を解読した時、その本には別のメッセージが込められていた。
 標野にて君が袖振る
ここで何かの本を買った後、失踪したという老婦人を探して婦人の娘が訪ねてきた。調べてみると、買ったのは老婦人が読みそうもない漫画「あさきゆめみし」だった。―老婦人は過去に、息子を轢き逃げで亡くしていた。
 配達あかずきん
配達先の美容院で、届けられたばかりの雑誌を開いた常連客。中には、「ブタはブタ」と殴り書きされたその常連客の盗撮写真が挟まれていた。従業員を疑われ、窮地に立たされた美容院。雑誌が入荷してからお客様が開くまで、どこにもそんなことをする隙はないと思われるのに、一体どこで挟み込まれたのか。
 六冊目のメッセージ
近くの病院に入院していたという女性が、この書店で母がいつも同じ従業員に差し入れの本をアドバイスしてもらっていて、そのセレクトがとても良かったのでお礼を言いに来た、という。しかし店員には該当者がいなかった。―「宙の旅」、「散策ひと里の花」、「ダヤンのスケッチ教室」、「民子」、「夏への扉」…次々ジャンルの全く異なる本を選び、彼女を喜ばせた謎の人物とは。
 ディスプレイ・リプレイ
店頭ディスプレイのコンテストに応募することを許可されたアルバイトの夕紀と友人2人。人気コミック「トロピカル」を題材に、力作が出来上がった。ところが翌朝1番に、真っ黒いスプレーで汚されたディスプレイを発見。一体誰が…調べていくうち、「トロピカル」には盗作疑惑があり、大論争が起こっていることを知る。


一番良かったのは、「六冊目のメッセージ」です。このセレクトには、登場人物ながら「お見事!」と感心しました。でも3冊目以降の共通点に、すぐには気付けなかったのが迂闊です どれも知ってる本なのに…

謎解きとして面白かったのは、「配達あかずきん」。ちょっとハラハラドキドキでした。
本の配達を受け持っていたアルバイトの子(名前を忘れました)の天然キャラにはちょっとイラッとする反面、誠実な姿勢には拍手!

本にまつわる謎解きということで、本好きにはたまりません。
本屋さんの裏話的な、仕事内容とか、困ったお客さんのエピソードも面白い。
悪い人がほとんど出てこなくて、各話の後味も良かったです。
書評で見て興味を持ったものの、新人作家さんということであまり期待せずに読んだのですが、意外と(失礼)良かったです。
続編が9月には出るらしく、こちらも楽しみです。
コメント (4)
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