郵便局で順番を待っていたとき、ひとりの女性が切手を買いにやってきました。
女性: 「50円切手を10枚下さい」
局員: 「通常の切手でいいですか?こちらにはたくさん記念切手がありますのでご覧ください」
と、局員はサンプル切手シートが展示されている壁面を指しました。
すると、女性が一言。
「こんなきれいな切手だったら使うのがもったいなくて使えないわ。どうしよう……」と。
私はドキッとしてその女性の顔を思わず見つめました。
「美しい切手だからこそ、手紙に添えて人様に差し上げたいんではないですか?」と、言葉が出そうになったのを抑えました。
私信にせよ、そうでないにせよ目に触れて開封するのは人の手です。記念切手も通常切手も同じ50円に違いはないのに……。所有欲ってこんな日常でも顔を出すものなのですね。人ごとではありません。
そのあと、私の番が来て、窓口に向かったため、その女性がどの切手を買ったかはわかりません。