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アキノギンリョウソウ・9~清水入緑地

 熊本大学大学院先端科学研究部の杉浦直人准教授らは、ギンリョウソウがモリチャバネゴキブリに果肉を提供するのと引き換えに種子を散布してもらうという “ウィンウィンの関係(相利共生関係)” にあることを発見し、ロンドン・リンネ協会の植物学専門誌(Botanical Journal of the Linnnean Society)に報告した。ギンリョウソウは特定の菌類から栄養をもらい、光合成をしないという不思議な生態だが、種子がどのように運ばれるかは不明だった。
 杉浦准教授らは熊本市内の2ヶ所の森林においてギンリョウソウの果実に訪れる動物に関する観察を2年間に亘って昼夜を問わず観察し以下の結論に至ったという。少し長くなるが以下にその内容を記載すると、まず、

◆鳥類や哺乳類は果実に興味を示さない
◆地表で暮らすいろいろな節足動物が果実に誘引されたが、主に夜間に活動するモリチャバネゴキブリだけが常に果肉を接種し、糞として微細種子を排出した
◆試薬検査してみると、排出された種子は果実から直接採取した種子と同等の生存率を維持していた

 これらの調査結果からギンリョウソウはゴキブリに種子を散布してもらう植物であるという結論が導かれた。
どうしてギンリョウソウがゴキブリを利用して種子を散布するように進化したのか、現時点では定かではないが、

◆鳥類、哺乳類には果実の魅力度が低い
◆果実の成熟期がゴキブリの年1回の羽化期とほぼ一致する
◆果実は熟すと落下、もしくは茎が折れ、ゴキブリの生活場所である地表面にある
◆種子がゴキブリの体内(消化管)も通過できるほど微細であり、頑丈な種皮で消化管内でも破砕されない

などが考えられるようだ。
 森の妖精ともされるギンリョウソウが “ゴキブリ媒花植物” と言うのは衝撃的な結果ではある。
 さて写真は清水入緑地の藪の中で見られる「アキノギンリョウソウ(秋の銀竜草)」。ツツジ科(←イチヤクソウ科)シャクジョウソウ属の菌従属栄養植物(腐生植物)で、「ギンリョウソウモドキ(銀竜草擬き)」とも呼ばれる。姿がそっくりなギンリョウソウ(ギンリョウソウ属)とは属が異なるが、上記のことに当てはめると、同じようにゴキブリに媒介されるのだろうか。但しギンリョウソウより開花期が3~4ヶ月遅いので、ゴキブリの羽化期とは重ならないようだ。写真は1週間前の蕾の様子だが、今日見に行くと踏まれて折れてしまっていた。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (ディック)
2017-09-09 19:19:53
とてもおもしろい記事でした。
こういう記事は大好き!
しっかりと読んでます。ありがとうございました。
 
 
 
ディック様 (多摩NTの住人)
2017-09-09 19:39:59
コメント有り難うございます。これは少し前にニュースになっていました。とても興味深い研究成果でしたね。
 
 
 
Unknown (和 さん)
2017-09-10 10:39:38
ギンリョウソウがゴキブリ媒花植物というのは、
とても面白い観察ですね。
あの気位の高そうなギンリョウソウがね。
アキノギンリョウソウも良く見かけます。
 
 
 
和さん様 (多摩NTの住人)
2017-09-10 12:28:54
コメント有り難うございます。ギンリョウソウがゴキブリ媒とは驚きですね。アキノギンリョウソウは当地では今のところ2ヶ所だけでしか見ていません。
 
 
 
ギンリョウソウ (がちゃばば)
2017-09-10 19:04:39
ゴキブリに媒介されて・・驚きです。誰が踏んだのでしょうね。目立たないところに咲いているからしかたないのかしら・・・ギンリョウソウ一度見てみたいです。
 
 
 
がちゃばば様 (多摩NTの住人)
2017-09-10 19:43:53
コメント有り難うございます。ギンリョウソウがゴキブリ媒とは驚きですね。アオキノギンリョウソウもきっと同じかと思われます。どこかで見られると良いですね。
 
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