犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

息子の不祥事

2023-03-01 23:23:31 | 韓国雑学

写真:国家捜査本部長に任命されるも、一日で辞任した鄭淳信

 韓国では、検察からの権力剥奪を目指した文在寅政権時に、警察庁に国家捜査本部が新設されました。犯罪捜査権を検察から警察に移すための組織改革でした。

 現大統領の尹錫悦は検事総長出身ですが、このたび、国家捜査本部長にやはり検事出身の鄭淳信(チョン・スンシン)を任命し、野党の反発を招きました。警察に対する検察の指揮権が及ばないようにするという趣旨に反する、というのですね。

 ところが、その鄭淳信について、息子の不祥事が発覚、鄭氏は辞意を表明し、大統領はただちに受理、任命は一日で取り消されました。

 朝鮮日報によれば、鄭氏の息子は有名私立高校に在学中だった2017年5月から同級生に対して「言葉の暴力」を繰り返し、被害を受けた生徒はうつ病になり、心療内科で入院治療を受けたり、自殺未遂も起こしていたんだそうです。

 2018年3月、被害者の生徒側が学校に訴え、学校暴力委員会は鄭氏の息子に対し強制転校処分、書面での謝罪、特別教育10時間に加え、両親にも特別教育10時間の処分を求めました。

 鄭氏の妻はそれを不服とし、学生懲戒委員会に再審請求を行いましたが、学校暴力委員会は最終的に息子の転校処分を決定、息子は強制的に他の学校に転校させられました。

 鄭氏側は2018年7月、「息子の言葉は校内暴力とは言えない」として処分の取り消しを求め裁判を起こします。しかし、一審から大法院(最高裁)まで全ての裁判で鄭氏側が敗訴。2019年4月に処分は確定しました。

 裁判の過程で、鄭氏の息子の「言葉の暴力」が明らかになりました。同級生のことを「豚野郎」、「アカ」などと呼んで侮辱したり、「飼料でも食っていろ」、「汚いからあっち行け」などの暴言を吐いたということです。

 被害者側は、損害賠償を求める民事訴訟を起こしましたが、裁判所が提示した調停案に双方が合意、最終的に和解しました。

 その後、鄭氏の息子は、内申書を重視する推薦を受けられなかったため、一般入試で2020年にソウル大学に合格したんだそうです。

 野党「共に民主党」は、今回の任命、任命取消騒動に対し、尹錫悦大統領と法務部長官(法相)である韓東勲(ハン・ドンフン)を批判しました。

 すると今度は与党「国民の力」が逆襲。

 野党は、「学校暴力真相究明タスクフォース」を作って、真相を究明すべきと攻勢をかけましたが、与党「国民の力」のヤン・クムヒ首席スポークスマンは、「民主党がネロナムブル政党でなければ鄭清来(チョン・チョルレ)議員の息子の女子中学生性醜行(強制猥褻)、性戯弄(セクハラ)疑惑を、そのタスクフォースでまず調査せよ」、「疑惑が事実なら、チョン議員は最高委員職を辞任せよ」と要求しました。

 ネロナムブルは、「自分がすればロマンス、他人がすれば不倫」の略語で、ダブルスタンダードのこと。

 鄭清来議員は、野党「共に民主党」の最高委員の一人で、李在明代表の側近の一人。



 鄭議員の息子は、2015年、中学1年生の時に同じ中学の女子生徒に性醜行(強制わいせつ)を行い、その後も猥褻な内容のメールを送るなどしたため、女子生徒は警察に通報、警察は強制猥褻罪で立件しました。

 鄭議員の息子は2017年3月、裁判所から40時間の性暴力治療プログラムの受講を命じられました。しかし、学校側は鄭議員の息子を転校させるなどの措置をせず、事件後 2年間、加害者と被害者の女子生徒が同じ学校に通いました。

 これについて、学校側の措置が手ぬるいという批判が出たそうです。学校側は、父親が大物政治家だったため、処分を手加減したのではないか、と。

 この事件が一部のメディアに報道されると、鄭議員は、Facebookで、報道されたのが自分の息子であることを認めました。そして、
「2015年、私の息子と被害者の女子生徒は中学校1年生で友人だった。私の息子が問題行動をおこし、女子生徒が拒否すると中断した」、
「私の息子が女子生徒に匿名で不適切なメッセージを送り、被害生徒がこれを警察に通報した」、
「私の息子は自分がやったとすぐに認め、女子生徒に謝罪した」、
「私の息子は昨年(2016年)、学校暴力自治委員会の決定に応じて1日8時間、5日間の教育プログラムを受け、親に対する教育も8時間履行した」、
「父親として心が重く、混乱している。息子も間違いを認め、深く後悔している」

などと書いたそうです。

 それにしても、韓国の政治家については、自分の子どもたちを不正な手段で進学させたり、不祥事をかばったり、隠ぺいしたり、という報道がきわめて多い。

 朴槿恵大統領の罷免の原因を作った崔順実(チェ・スンシル)しかり、文政権時代の法相、曺国(チョ・ググ)しかり。

 子女の犯罪に、親がどのくらいの責任を負うべきかについては議論があるかもしれません。しかし、成人後はともかく、学齢期の子女の行動については、親の教育や家庭環境に問題があるといわれても仕方がないでしょう。

 親が政治家だったから騒がれていますが、権力や金にものを言わせて裏口入学を画策したり、子女の不祥事を隠蔽したりというのは、韓国社会で広く行われており、「国民病」と言ってもいいかもしれません。

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