韓国の「反日」

写真：野党代表、李在明。「福島汚染水海洋投棄は放射能テロだ！」（アジアトゥデイ）

　８月15日は、日本では「終戦記念日」ですが、韓国では「光復節」。日本の支配から脱した日ということで、国民の祝日になっています。

　この日は、式典が開かれ、そこで大統領が演説するのが恒例となっています。

　光復節や三一節（独立運動の記念日）には、通常、「反日演説」が行われます。前大統領の文在寅（ムン・ジェイン）のときがそうでした。

　ところが、昨年、尹錫悦（ユン・ソンニョル）大統領になってから、風向きが変わりました。反日的な内容がすっかり影を潜め、「未来志向」のパートナーシップを強調するものになりました。

　今年の演説も、その流れを汲むものでした。

＜「光復節」記念式典の尹錫悦大統領演説全文＞

　日本は、「われわれと普遍的価値を共有し、共同の利益を追求するパートナーだ」と述べました。

　これに対し、北朝鮮と、親北朝鮮の野党、共に民主党に対しては、手厳しい。

　今年は朝鮮戦争の休戦協定締結７０周年、韓米同盟締結７０周年になる年です。われわれは共産勢力の侵略に立ち向かい、国連軍と共に戦ってわれわれの自由を守り、その後に漢江の奇跡と呼ばれる産業化を成功させました。（中略）

　これに対し、同じ期間、７０年にわたり全体主義体制と抑圧の統治を続けてきた北朝鮮は最悪の貧困と窮乏から抜け出せずにいます。自由民主主義を選択し、追求した大韓民国と共産全体主義を選択した北朝鮮の明らかな差が如実に表れたのです。

　それにもかかわらず、共産全体主義に盲従し、操作扇動で世論を歪曲し、社会をかく乱する反国家勢力が依然として横行しています。自由民主主義と共産全体主義が対決する分断の現実において、こうした反国家勢力の動きは容易には消えないでしょう。全体主義勢力は自由社会が保障する法的権利を十分に活用して自由社会をかく乱させ、攻撃してきました。これが全体主義勢力の生存方式なのです。

　共産全体主義勢力は常に民主主義運動家、人権運動家、革新主義活動家に偽装し、虚偽の扇動と野卑で人倫に外れた工作を行ってきました。われわれはこのような共産全体主義勢力、その盲従勢力、追従勢力に決してだまされたり屈服したりしてはなりません。自由民主主義は必ず勝利するという信頼と確信、そしてわれわれ皆が力を合わせる連帯の精神が重要です。

「民主主義運動家、人権運動家、革新主義活動家に偽装し、虚偽の扇動と野卑で人倫に外れた工作を行ってきた共産全体主義勢力」は、文在寅とその考え方を引き継ぐ野党を指しています。

　これに対して、野党、共に民主党は、激烈な非難を浴びせると思われましたが、そうはならなかった。

　その理由は、同じ日、尹錫悦大統領の父親が亡くなったからです。そんな日に尹大統領を批判するというのは、「儒教的な考え方」に合わないのでしょう。

　かといって、野党の「反日」が弱まったのかというと、そうではない。

　野党は依然として、「反日カード」が国民の支持を得るのに有効と思っているようです。

　24日に始まった福島第１原発の処理水の放出に対して、激しく非難しています。（リンク）

「日本の核汚染水放出は第２の太平洋戦争として記録されるだろう」

「汚染水テロを強く糾弾する」

　韓国では、処理水のことを汚染水と呼びます。

　「処理水」とは、「汚染水」に、複数の設備で放射性物質の濃度を低減する浄化処理を行い、リスク低減を行ったもの。

　韓国の呼称は科学的に間違っているのですが、それを承知で、今もなお、「汚染水」と呼び続けています。韓国民に、「危険性」を植え付けるためですね。

　マスコミは、「汚染水」という言葉が間違っていることに気付いているので、「処理済み汚染水」などという言葉を使っています。でも、「処理済み汚染水」というのはすなわち「処理水」なのですから、簡単に「処理水」と言えばいいのにと思います。

　日本で福島の水産物が「風評被害」にあっているのと同様、韓国でも、韓国近海の海産物が全般的に「風評被害」にあっています。

　海流の影響で、処理水が韓国近海に達するのは「数年後」といわれます。ところが野党は、すぐにでも韓国近海が「汚染」されるかのような言い方をして、韓国漁民の風評被害を深刻化させています。

　今後、韓国近海の水質調査が実施され、影響がないことがわかった場合、野党の「フェイクニュース」が明らかになり、それが支持率、選挙に悪影響をあたえるんじゃないかと思いますが。

　それ以前に、韓国で「反日」が票につながるという風潮が早くなくなってくれればと思います。