犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

海外日本語教育事情 2021

2023-11-25 23:20:40 | 言葉
 以前、当ブログで2018年度の海外日本語教育事情をご紹介したことがあります。

海外日本語教育事情

 国際交流基金は、3年に1度、「海外日本語教育機関調査」を行い、結果報告書をネットで発表しています。

 2021年度の結果は、2022年11月に発表されました。約1年前ですね。

 それによると、海外における日本語教育機関数、教師数、学習者数ともに2018年度よりも減少。ただし、機関数、教師数は前回調査に次ぐ史上2番目の多さ、学習者は過去3 番目(過去最多は2012年度、2番目は2018年度)に多いんだそうです。

 また、今回初めてオンライン授業の統計が発表されましたが、全機関の63.1%でオンライン授業が行われ、コロナ禍でオンライン授業の普及が進んだことがわかります。

順位人数18年順位
1中国1,057,3181
2インドネシア711,7322
3韓国470,3343
4オーストラリア415,3484
5タイ 183,9575
6ベトナム169,5826
7米国161,4028
8台湾143,6327
9フィリピン 44,4579
10マレーシア 38,12910
11インド36,01511
12フランス 29,56916
13ニュージーランド28,07213
14香港 27,66515
15ミャンマー 19,12412

 一方、人口10万人当たりの学習者はこちら。

順位10万人当18年順位
1オーストラリア1751.21
2韓国907.52
3台湾614.54
4ニュージーランド585.63
5モンゴル417.15
6香港377.16
7タイ278.89
8シンガポール268.07
9インドネシア263.48
10トルクメニスタン197.713
11ベトナム176.310
12マレーシア134.611
13中国74.912
14カナダ52.014
15米国48.715

 総学習者も、10万人当たり学習者も、順位に大きな変化はありません。

 学習者の上位を占める国々のうち、増加したのは、1 位中国5.2%、2 位インドネシア0.2%、4 位オーストラリア2.5%だけで、ほかの国々は減少しています。減少幅が大きいのは、3位韓国の-11.5%、8位台湾の-15.6%、9位フィリピンの-13.7%

 韓国は、学習者の約74%が日本語を中等教育(中学・高校)で学びます。

 この3年間で中等教育での学習者は、約64,000人減少しました。

 この3年間の全体の減少数は約61,000人。中等教育の減少は約64,000人、学校外(語学学校など)の減少は約13,000人。韓国における学習者減は、中等教育と語学学校での減少によるものです。高等教育(大学など)は逆に増えています。

 中等教育での学習者減の最大の理由は、少子化。韓国は今、史上まれにみる少子化が進行中です。

 語学学校の生徒数減は、コロナ禍により、対面学習中心だった機関が一時閉鎖に追い込まれたことが大きい。

 韓国では、2019年に日本製品不買運動「ノージャパン」が起きましたが、これが日本語教育にどれほどの影響を与えたか。「ノージャパン」による忌避というより、コロナで渡日が難しくなったことの影響は多少あったでしょう。

 政治的な動きより、経済的な状況のほうが影響が大きそうな気がします。

 韓国の1人当たりGDPは、日本を越えました。平均賃金も韓国の方が上。かつてに比べ、日本で就職するメリットは少なくなった。

 ただ、文政権時代に発表された雇用統計は粉飾であったことが明らかになっていて、若年失業率はむしろ増えたともいわれていますから、日本で就職したい若者はけっこう多いかもしれません。

 台湾の場合、高等教育で学ぶ人が43%と最大。生徒数減少の理由は、韓国同様少子化と、コロナ禍のロックダウンにより語学学校の閉鎖があったこと。一方で、149 の教育機関で新設され、うち81機関が、定年退職した年齢層を対象とした機関で、日本語学習が生涯学習の一つとして定着して いることが窺われます。

 フィリピンの学習者数は、50,038 人から44,457 人へ、5,581人減少。フィリピンでの日本語学習者は、半数以上を語学学校が占め、語学学校の学習者は、25,393人 (2018年)から25,416人(2021年)と横這い。学校教育では政府による対面事業の禁止のため、生徒数が大幅に減りましたが、 語学学校の場合、小規模の日本語学校が経営難により閉校や休校に追い込まれる一方、オンライン授業の導入で、従来日本語学校が存在しなかった地域での学習者が増えたことにより、生徒数を維持できたようです。

 コロナ禍は、国内の日本語学校に深刻な打撃を与えましたが、それにより国内外問わず、学習形態が対面からオンラインへ移行しました。

 最初は、対面授業をビデオ撮りして流すだけが多かったようですが、オンラインのメリットを生かした授業も工夫されていますから、今後、オンライン化の流れが加速するかもしれません。

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