犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

海外日本語教育事情

2020-07-23 23:59:30 | 言葉
 国際交流基金は、6月30日、「2018年度 海外日本語教育機関調査」を発表しました(リンク)。

 同じ調査結果について、昨年10月に速報値がプレスリリースされましたが、その8か月後にやっと調査の詳細が公表されたわけです。2018年度の調査が2020年に発表されるというのは、時間がかかりすぎていると思いますが、新型コロナの影響で予定より遅れたのかもしれません。

 当ブログでは、昨年12月に紹介したことがあります(リンク)が、あらためて各国の人口10万人あたりの日本語学習者数をかかげます。
 
10万人当
順位
オーストラリア
1708 
韓国
1041 
台湾
721 
シンガポール
326 
インドネシア
299 
タイ
280 
ベトナム
203 
マレーシア
139 
中国
75 
ミャンマー
69 
10 
米国
54 
11 
フィリピン
51 
12 
フランス
38 
13 
英国
32 
14 
ネパール
20 
15 
ブラジル
14 
16 

 1位から5位は、オーストラリア、韓国、台湾、シンガポール、インドネシアです。

 調査には、教育機関別の生徒数も載っています。

 教育機関は、初等教育(小学校)、中等教育(中学校、高校)、高等教育(大学)、学校外(日本語学校)に分けられています。

 10万人当たりの学習者数が多い5か国について、内訳を見ると、1位のオーストラリアは、初等教育がもっとも多く、64%。

以下、
韓国:中等教育(77%)
台湾:高等教育(41%)
シンガポール:学校外(52%)
インドネシア:中等教育(92%)
となっていて、どのような教育段階で日本語を学んでいるかは、国によって異なります。

 日本語学校(学校外)で学ぶ生徒の比率が高い国を見てみると、こんな感じ。
 
順位
比率
ネパール
96%
ミャンマー
95%
ベトナム
66%
ブラジル
62%
シンガポール
52%
フィリピン
49%

 上位6位のうち、東南アジアが5か国。

 教育機関数を2015年と比較すると、ベトナム273%増、ミャンマー211%増、フィリピン50%増、ネパール19%増、ブラジル8%増、シンガポール36%減。ベトナム、ミャンマーは日本語学校設立ラッシュです。

 一方、ネパールとベトナムは、近年、日本への留学生が急増しています。ただ、この2か国からの留学生は、本当の目的は日本語の学習ではなく、就労と言われています。留学ビザをもらえば、週28時間のアルバイトができるのです。

 現地には悪質な斡旋業者がいて、「日本に留学すればアルバイトで月20万から30万円稼げる」などと言って勧誘し、それを信じて100万円以上の借金をして来日する留学生が多いのだということです。

 留学生たちは、借金を返すため、法律で認められてる週28時間という制限を越えていくつものアルバイトを掛け持ち、学校では授業中に寝ているので、日本語力は上がらない。日本語力が上がらなければ、時給のよい仕事に就けないし、上級学校(専門学校、大学)にも進めない。

 一方、日本の専門学校、大学は、少子化のあおりで生徒集めに苦労している。そこで日本語学校と結託して、日本語のできない学生も受け入れ、留学生から授業料を受け取ることで延命している。留学生は、専門学校や大学での授業には出ず(出ても日本語力がないので授業についていけない)、アルバイトに精を出す…。

 悪循環ですね。

 こうして、現地斡旋業者、日本の一部の日本語学校、専門学校、大学がよってたかって留学生を食い物にしているのです。

 また、よく聞くのは、日本語学校の日本語教師の待遇が悪いということ。教師の3分の2が非常勤講師で、平均時給は2000円に満たないそうです。

 儲けているのは経営者。政府の「留学生30万人計画」を追い風に、日本語学校は急増しましたが、経営者には中国人や韓国人も多いというから複雑です。

 ただ、ネパールやべとナムの場合、現地で聞かされる誘い文句がが嘘だということが、SNSなどを通じて現地にも伝わるようになったので、このようなケースは少なくなっていくでしょう。

 今、新型コロナが日本語学校を直撃しています。良心的な経営を行っている学校にとっては気の毒なことですが、留学生を食い物にしている悪徳学校は、これを機に淘汰されてほしいです。
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