徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
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(since 17 AUG 2005)

続・そんなに単純な問題では~

 勉強不足+無知を曝け出してしまいました。

前投稿“そんなに単純な問題ではないと思いますがねぇ”の引用記事で述べられている「航空英語能力証明」についてです。

これは、既に ICAO: International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関)で2000年に発足されている PRICESG: Proficiency Requirements in Common English Study Group (一般英語能力要件に関するスタディグループ)に関するものでした。
※PRICESG は ICAO NAB: Air Navigation Bureau の ATM: Air Traffic Management Section に属する Study Group です。

スタディグループは発足翌年の2001年に ICAO の事務局に対して Annex 改訂の勧告を提出しました。

その中で Annex1(Personnel Licensing) には、
 ●語学能力要件対象者の拡大
として
〔従来〕管制官のみに適用
〔改訂後〕飛行機および回転翼航空機の全操縦士にも適用
と明記されています。

つまり、管制官の皆さんは従来から ICAO Annex1 の“語学能力要件対象者”となっていた訳であり、前投稿の

パイロットだけを対象にすればよいとも限らないように思えます。

の部分は、小生の無知と不勉強から生じた誤った不適切な記述であり、撤回します。
Controllerの皆さん、ごめんなさい。

PRICE については、その後、2003年3月の理事会で Annex の改定案が採択され、実施に向けて着々と進んでいます。やると決めたら、それに向かって突き進む。どこぞのお国の政治とは大違いです。

現時点では、PRICE の適用開始予定日は2008年3月5日です。

昨年秋(9月末~10月初)にモントリオールで開催された第35回の Session of the Assembly でも、関連の発表が幾つか行なわれているのを見つけました。

プレゼンテーションや Paper をこれから勉強しなければなりません。

PRICESG による Annex 1 の改訂内容には
 ●全体的評価基準および ICAO 個別評価基準の設定
が含まれていることから、この改定が適用されるまでに、語学能力要件について新たな試験を開発する必用があります。
スライドをざっと眺めたところ、様々な Case Study が報告されているようです。

ICAO では、2006年にこの試験に関する進捗状況を調査するとしています。日本は加盟国ですから、来年には調査と称して俎上にのぼる可能性もある訳ですね。

昨日の引用記事に、
『新たに導入する「航空英語能力証明」試験は、面接方式で実施。航空業務全般に関することについて英語でやりとりしながら、発音や文法、理解力などから総合的に評価する。英語を母国語とする人の話せるレベルを6と設定し、4以上を合格とする。』
の記述がありました。

※外国語能力は、背景となる母国語等によっても大きく異なるため、評価方法も各国で適したものを策定する必要があり、ICAO は独自に世界共通の試験を策定することを行いません。

一例としてフランスの発表ではレベルについては以下のように定義されています。
 1:Pre-elementary
 2:Elementary
 3:Pre-operational
 4:Operational ... ここが合格ライン
 5:Extended
 6:Expert

また、能力をはかる6つの要件として
 -Pronunciation
 -Fluency
 -Structure
 -Comprehension
 -Interactions
 -Vocabulary
を挙げています。

さらには、継続的な能力試験に関する要求も勧告されており、継続的な能力維持が求められるようです。
 -Level 4: Every 3 years
 -Level 5: Every 6 years
 -Level 6: No recurrent testing required

また昨日の記事には、
『日本航空と全日本空輸の大手航空2社は「羽田空港の国際化も控え、今後国際線の比率が高まる」として、全操縦士に資格を取らせる方針だ。』
の件もありましたが、それに関して目に留まったスライドがありました。

発表したのは、ロンドンに本部を置く IFALPA: International Federation of Airline Pilots' Association(国際定期航空操縦士協会連合会)のある機長です。

IF YOU THINK TRAINING IS EXPENSIVE, THINK HOW EXPENSIVE AN ACCIDENT IS.

DO NOT ALLOW YOUR TRAINING PROGRAM TO TEACH "HOW TO PASS THE TESTS."
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そんなに単純な問題ではないと思いますがねぇ

 そのうち、Flight Bag の中はライセンスだらけになってしまうのでは?

国交省の言っていることを全面的に否定するつもりはありませんが、じゃぁ、それを実施したからどうなるの?という疑問があります。

そもそもライン・パイロットで「国際線飛ぼう」と思うような人は、これまでだって自己努力で英語を勉強するし、航空会社でもそのような(英語教育)のプログラムを設けていると思いますよ。

ライン・パイロットになる一例として、自社養成コースでライン・パイロットになる場合を想定してみます。実機訓練は全日空の場合にはアメリカ・ベーカーズフィールド、日本航空インターナショナルの場合にはアメリカ・ナパで実施されています。教官はアメリカ人で英語で訓練を受ける訳ですし、訓練空域はアメリカですから、航空管制も本場?の英語で管制官とやりとりをします。

初期段階でそのような経験をするのですから、AOMを窃盗したり制服売ったりするような輩でなければ、当然英会話は一定レベルを維持する努力をするでしょう。

さらに、一口に英語と言ってもお国柄や訛りがあります。米州線ひとつとっても、西海岸と東海岸さらには南部ではそれぞれに癖がありますし、ダラス・フォートワース空港 DFW なんて交通量が半端ではないので、南部訛りのある英語で機関銃のようにまくしたててきます。シカゴやニューヨークも時間帯によっては、割って入れないくらい錯綜しているらしいです。国交省が定める基準の発音が必ずしも通用するとは限りません。

それと、(これは日本の地理的立地条件に起因するのですが)そのような機関銃のような英語と戦わなければならないのは、長時間のフライトの終盤であり、時差やサーカディアン・リズムも手伝って集中力を維持するのすら大変な状況下であるわけです。マルチ編成・ダブル編成にかかわらず身体はしんどい筈です。

また、空を飛んでいるのは自機だけではありません。早口でまくしたてられるような空域は、Separation ぎりぎりまで詰め込んでレーダー誘導していますから、自機の周りがどのような状況になっているかを把握することはとても大事なことです。
自分の前には American, Lufthanza, United, Korean Air, Speed Bird が詰まっていて、どのように誘導されていっているのか。後ろに付いて来ている KLM との Separation は大丈夫か等など。頭の中に Traffic Flow の3次元のイメージを描く必要がありますし、悪天候下であれば、先行機から Turbulence や Wind Share の report がないかにも気を配る必要があります。それでなくても忙しい、着陸進入時であるのに。
それら周辺機のパイロットが、皆一律に国交省が理想とする英語でやり取りしてくれるとは限りません。

この周辺機の動きが読めないという意味では、中国などは非常に気を遣う路線です。中国国籍機は自国内では中国語で航空管制のやりとりをすることがほとんどの上に、中国空域は、高度の単位は feet でなくてメートル法、距離も NM: Nautical Mile (海里)でなくて km と、普段とは異なるので、英語で指示されても(距離や高度が)スッとイメージしにくいのですから。
英語でない母国語を使うという点では、フランスも曲者です。

国交省は「日本の航空会社に勤める国際線パイロットを対象に」、と言っていますが、日本に飛来してくる国際線を捌くのは、日本の管制官です。管制官の皆さんも、様々な国の航空機に対応しなければなりません。航空路管制の場合、日本上空を通過するだけの機もある訳ですから。

パイロットだけを対象にすればよいとも限らないように思えます。
*9月1日21時53分*
誤った不適切な記述でした。撤回します。
 管制官の皆さん、ご免なさい。



操縦士に英語能力国家試験 08年3月から義務付け (共同通信) - goo ニュース
 国土交通省は31日、日本の航空会社に勤める国際線パイロットを対象に、管制官と十分に意思疎通できる英語力を認定する国家試験を実施し、資格取得を義務付けることを決めた。管制指示の誤認などによる事故を防ぐのが狙い。資格取得は2008年3月から義務付け、試験は06年秋をめどに先行実施する。

新たに導入する「航空英語能力証明」試験は、面接方式で実施。航空業務全般に関することについて英語でやりとりしながら、発音や文法、理解力などから総合的に評価する。英語を母国語とする人の話せるレベルを6と設定し、4以上を合格とする。

日本航空と全日本空輸の大手航空2社は「羽田空港の国際化も控え、今後国際線の比率が高まる」として、全操縦士に資格を取らせる方針だ。

2005年 8月31日 (水) 17:53
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