徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

岩本さん、労災認定!

 1996年5月29日、日本航空のチーフパーサーの岩本章子さんが勤務途中の香港 STAY 中、クモ膜下出血で倒れました。
岩本さんは、香港で開頭手術も含め2度の手術を受けた後、帰国後更に3度の手術を受けました。幸いにも一命をとりとめましたが、後遺症に苦しんでおられるのは引用記事の通りです。

岩本さんの疾病は、予定された乗務パターン(=会社の業務上指示)での勤務途中(会社による拘束下)に発生しており、岩本さんの当時の勤務内容から考えても、業務上災害であることは当然と考えられます。

しかし会社(日本航空)は、岩本さんのご主人に対し「発症したのが就寝中であったので公傷に当たらない」と説明、客室乗務員組合に対しても「会社としては、現時点では業務上災害とは考えていない。本人から労災申請がなされれば、労基署が判断する。その手続きをして欲しい」と、あくまで業務上災害と認めず、第三者機関に判断をまかせる姿勢を貫きました。
それどころか、支援する社員からの声を無視して翌97年8月4日、「休職発令」を行ないました。つまり、“休職(病気)を命ずる”との辞令が下ったわけです。

発症して丸2年が経過した1998年5月28日、岩本さんは成田労働基準監督署に「労災申請」をしました。

労基署交渉を3回行い、同僚・弁護士・医師から6通の意見書が提出されました。労基署も16人を超える同僚や、岩本さんのご主人から事情を聞いた上で、1999年3月31日に以下のような判断を下しました。

『岩本さんの発症前1~2週間をみると特に過重はなく業務上とは認められない』

この判断は、時差を伴う長時間勤務・深夜早朝の不規則勤務という航空機乗務員という持殊性や、疲労の蓄積を考慮したものとは言えません。

その認定基準の「発症前1週間から10日の調査」のみで下された成田労働基準監督署長の判断を追認する形で、2000年3月27日、千葉労働者災害補償保険審査官は『審査請求棄却』の決定を出したのでした。

ここでも、現場の多くの仲間の声は無視されたのです。

成田労基署や千葉労基局の再審査棄却を受け、日本航空は労災申請中の岩本さんに休職期間満了を理由に2000年8月3日「退職発令」を行ないました。
 『就業規則に則り、8月3日をもって、退職とする』
「退職発令」に至った日本航空側の理由は、
 -客室乗務員として通常復帰が不可能だから
 -障害者雇用問題と岩本さんの問題は別問題
です。と同時に、日本航空は
 -もし、労災が認定された場合にはその時点に考える
とも組合に伝えたそうです。(当時の日本航空の社長は兼子氏、客室本部長は益子氏)

これらの経緯を経て、2000年12月1日、岩本さんは千葉地裁に引用記事にある提訴をしたのでした。

今回の判決内容は、ほとんど岩本さんの主張が認められたものとなっています。

 -1995年12月から翌年3月まで、岩本さんの負荷は特に高かったこと。
 -疲労が回復しないまま仕事を続けていて、その疲労の蓄積によってくも膜下出血を発症した
 -会社労務による組合脱退工作に起因するストレスがあったこと
 -就業規則どおり勤務しているから問題はないとは言えないこと
 ※太字は小生が強調しました

などが認められています。

裁判の途中で労災認定基準の改定があったものの、今回の判決は、単に労働時間だけでなく、航空機乗務員の労働の質にまで踏み込んだ判決となっています。

この画期的な判決に対し、控訴がなされることなく、日本航空は「解雇を無効」とすることを期待しています。

つらい中を頑張りぬいた岩本さんを称えたいと思います。



元日航乗務員の労災を認定 千葉地裁判決 (朝日新聞) - goo ニュース
 乗務先の香港でくも膜下出血で倒れ、右半身不随と失語症などの後遺症が残った日本航空の元客室乗務員、岩本章子さん(58)=横浜市港南区=が、成田労働基準監督署長を相手に労災認定を求めた訴訟の判決が27日、千葉地裁であった。山口博裁判長は「業務による過重な精神的、身体的負荷が脳動脈瘤(りゅう)を増悪させた」と述べて労災を認定し、「休業補償給付などを支給しない」とする同署長の処分を取り消す判決を言い渡した。

 原告側弁護団によると、航空会社の客室乗務員の脳疾患をめぐる労災認定は初めて。

 判決によると、岩本さんは96年5月、乗務先の香港のホテルでくも膜下出血で倒れた休業補償給付などを請求したが、成田労基署は99年3月、「業務に起因することの明らかな疾病とは認められない」とした。再審査請求も労働保険審査会が棄却した。

 山口裁判長は「就業規則を満たしているからといって、直ちに業務の負荷が高くないということにはつながらず、その業務内容から個別に判断されるべきだ」との判断基準を示した。

 成田労働基準監督署は「判決内容を検討し、今後の対応を決めたい」としている。

2005年 9月28日 (水) 03:03
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PW4090 潤滑油漏れ

 全日空の Boeing777-381 (ANA243/28SEP HNDFUK)が、No.1 エンジンから潤滑油漏れを起こし羽田に戻ったようです。

潤滑油、いわゆるエンジン・オイルはジェットエンジンにとって生命線の一つであり、それが失われた状態でエンジンを回し続けることは、エンジンの破損につながります。
当該便の PIC: Pilot In Command (機長)がとった No.1 Engine Shutdown は至極当然の処置であり、1 Engine Operation となったので、Land Nearest Suitable Airport である羽田に戻ったのも適切な対応です。「日頃から訓練している当然のことをしたまでだよ」とおっしゃることかと思いますが、流石プロフェッショナルです。
“緊急着陸”とありますから、Declare Emergency だったと思われますが、羽田が着陸機で混雑する時間帯でもあり、輻輳した空域を航空管制のハンドリングを受けて戻る訳ですから、自機の安全運航を考え、管制の優先権を得たことも良い判断だったと思います。
※これが、仮に四発機の Boeing747-481D (テクノジャンボ)だったなら、羽田に戻るにしても、Emergency は宣言しなかったと思われます。

さて当該機のエンジンは、米国 Pratt & Whitney 社の PW4090 というエンジンです。潤滑油漏れの原因が何であったか未だ解かりませんから何とも言えませんが、全日空さんでは同じタイプのエンジンを搭載した Boeing777-281ER を国際線(太平洋越えの米州線や東南アジア線、中国線)にも使っていますので、原因には少々神経質になるかもしれません。もし、Oil Leak の原因がエンジンの構造や金属疲労による crack だったとすると穏やかではありません。太平洋のど真ん中で Shutdown せざるを得ないようものなら、2~3時間エンジン一発で飛行しなければならない事態も想定される訳ですから....。(勿論、それでも太平洋線に就航している -281ER は ETOPS207 を取得していますから問題は無いのですがね。あまり気持ちの良いものではありません。)

急速に秋が深まり、Cockpit Crew の皆さんは Winter Operation の review をしなければなりませんね。つい先日まで、ブレーキ Temp に気を付けていたのが、もうそろそろ、Engine Oil Temp に気を付けなければならない季節となりました。



全日空B777機がエンジントラブル、羽田に緊急着陸 (読売新聞) - goo ニュース
 28日午前10時30分ごろ、羽田発福岡行き全日空243便(ボーイング777―300型機、乗客369人)が離陸直後、二つあるエンジンのうち左主翼の第1エンジンの潤滑油が失われたことを示す警告が、操縦席で示された。
 同便はただちに第1エンジンを止めて引き返し、同11時ごろ、羽田空港に緊急着陸した。乗客にケガはなかった。

 全日空でトラブルの原因を調べている。

2005年 9月28日 (水) 12:04
全日空機が羽田に緊急着陸 エンジンオイル漏れで (朝日新聞) - goo ニュース
 28日午前10時半ごろ、羽田空港を離陸した福岡行き全日空243便(ボーイング777―300型、乗客乗員計380人)で、左主翼の第1エンジンのエンジンオイル量が低下しているとの計器表示が出た。同便は左右にエンジンが一つずつあり、機長は第1エンジンを停止した上で、同59分に羽田空港に緊急着陸した。

 エンジンオイルがエンジン外部に漏れだしており、全日空が原因を調べている。乗客にけがはなく、別の航空機で目的地に向かった。

2005年 9月28日 (水) 13:28
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