徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

青社の凄さの一端を見た....

 病み上がり(未だ少々病んでいる)で、芯熱がある中、書いているので、「TsuBuYaKi(つぶやき)」でなくて「譫言(うわごと)」ですので、その点、ご了承を。

昨日の青社「 able 」のシステム障害、影響を受けたお客様には大変ご迷惑をおかけいたしました。(青社関係人でも業界人でもありませんが、イレギュラーに遭遇した経験は「PAX一筋~」相応にありますので、その心境は十分に理解できます)

また、レスポンスが悪い・あるいは完全にダウンしてしまった「 able 」を横目に、殺気だったお客様にお詫びをして、全力で対応にあたられたであろうグラウンドの皆様、何とも間の悪い日のシフトに当ってしまったことと恨めしいことでしょう。ご苦労様でございました。皆様の懸命な対応・ご案内があったからこそ、お客様の混乱も最小限で済んだというものです。

さらには、Showupしたものの、いつ出発できるか目処も立たず、イレギュラーの中で運航にあたられた、あるいは、電話が鳴ってお座敷がかかってしまったクルーの皆様、ことにお客様と直接接するキャビンの方々にあっては、さぞお気を遣われたことでしょう。お疲れ様でございました。

引用記事に、推定原因が色々と書かれておりますが、システム・ダウンが発生してしまったことは変えようのない事実でして、まぁ、それは仕方ないとしましょう。

高熱でかなりの脳細胞がぶっ壊れてしまったのか、お家芸の瞬間湯沸かし器は何故か点火しないのでありました。高熱で温度ヒューズが飛んだかな?

「 able 」が不安定な状況は未明から発生していたようで、それでも、騙し騙し午前中は対処していたようですね。

今回、特筆すべきは、引用記事にもあるように、混乱がひどくなってきた午後に“全便欠航”の英断を下した、その危機管理体制です。

不満・怒りが噴出しているお客様を横目に、そう簡単に下せる決断ではありません。

青社の凄さを見せつけられましたね。青社、お主、出来るな....。

多分ですが、システム復旧させつつ、騙し騙し対応し続けることも出来たでしょう。

が、それでは、遅れにさらに拍車をかけることになるし、混乱は拡大するだけだったでしょう。

搭乗手続きは何とか済ませたものの、出発時刻は遅れに遅れを重ね、さらに機材繰り、スポット繰りの関係で搭乗ゲートが変更になったり....。
それでなくとも、お客様は搭乗手続きに時間を要したことでイライラしていますから、出発時刻をセットしても、そのセットした時刻にBLK OUTできるよう搭乗口に全員来て下さることは平常時の比ではなく困難でありましょう。

ゲート係員の方が、声を枯らし、走り回っても、何名のお客様は行方不明、で、その中の何名様かはBaggageをCheck-Inしておられる。

出ようにも出れない。ボーディングしたお客様は「何故出ない、早く出発しろ」と怒りが増幅する。

コックピットも、いつ Delivery にコンタクトできるかわからない。タイムプレッシャーは増大する(=不安全要素が増す)。

荷物おろして~、となってしまう。

結局のところは混乱に拍車をかけるだけになってしまいます。

「 able 」の処理能力が回復するであろう時刻を予測して、それまでの全ての便をキャンセルとした、青社のイレギュラー対応は危機管理の観点からは及第点であったと思います。

イレギュラーは、今回のようにシステム・ダウンという人為的なものだけとは限りません。(今回は「 able 」が unable になった訳ですが....;ちなみに鶴社のそれは、「 AXESS 」 JALCOMD, JALCOMI って名前です(今も変わってなければ、ですが...))

イレギュラーとしては、悪天候に伴うイレギュラーも当然ある訳です。

航空会社の表には出ないけれど、底力として、このような「イレギュラー対応力」っていうのがあるのですよね。

世間の多くの方は、今回の全日空のトラブルに“喝!”かと思いますが、高熱にさらされても相変わらずの偏屈オヤジは“あっぱれ!”の評価であります。

某、シベリア鉄道なんて、数日の遅延は当たり前。それに比べりゃぁマシなもんです。


コメントを寄せて下さっているご常連の皆様、返信が遅れており申し訳ございません。
小生、イレギュラー対応能力が劣っておるものですから、もう少々お時間を下さい。


全日空障害、ダウン対策不発 サーバー切り替わらず(朝日新聞) - goo ニュース
27日の全日空の国内線予約・発券システム障害は、システムの多重化策がとられていながら起きていたことが、わかった。システムの根幹部分であるホストコンピューター周辺機器の更新時の設定に問題があった可能性もあるとみられ、全日空が原因を調べている。

 予約・発券システムはホストコンピューターと、全国の空港の窓口や旅行会社の端末が専用のネットワークを通じて結ばれている。

 全日空によると、ホストコンピューターとやりとりされる情報は、ホストコンピューターの手前にある6台のサーバーでどの経路を通って処理するかを整理している。6台のうち何台かがダウンしても、残りで同じ対応ができる設計だった。

 ところが今回は、今月24日までに順次更新されたサーバー3台が、ホスト側から出た情報をネットワーク側に送り出しても反応しないという誤った判断を下し、ホスト側に返していた可能性があるという。しかも3台が対応を続けたため、残りの3台に切り替わらなかった恐れがあると全日空はみている。

 この結果、ホストコンピューターには発信できない情報が大量にたまり、処理速度が大幅に低下。27日の修復作業で3台を更新前のサーバーに戻し、たまっていたデータをはき出すと、処理能力は回復した。

 全日空とメーカーによる原因調査には時間がかかる見込みで、当面は予約・発券システムは元のサーバーで運用する。

     ◇

 全日空のシステム障害から一夜明けた28日、同社は航空機の機材繰りの関係などから鹿児島発大阪(伊丹)行きの初便が欠航した。午後にかけて9便が遅れる予定。システム自体は安定して動いているという。

2007年5月28日(月)15:55
全日空にシステム障害 130便欠航、7万人に影響(朝日新聞) - goo ニュース
27日未明、全日空(ANA)の国内線予約・発券システムに障害が発生し、同日午後9時半現在で羽田、大阪(伊丹)空港の発着便を中心に130便が欠航し、306便に1時間以上の遅れが出た。欠航・遅延便は、全日空のこの日の国内便(818便)全体の半数以上で、計約6万9300人に影響が出た。同社によると、同日未明からシステムが不調だったため、点検・修復作業を行っていた。同社で原因を調べている。

 トラブルが起きたのは「総合旅客システム(able)」と呼ばれる全日空グループの予約・発券システム。東京都内にホストコンピューターがあり、各空港のカウンターや旅行会社にある端末と専用回線で結ばれている。

 全日空によると、ホストコンピューターと空港カウンターなどを結ぶネットワークに障害が起き、処理能力が大幅に低下し、予約や発券の手続きが滞ったという。同社は最も混乱した羽田で午後1時半から4時間半にわたって全出発便を欠航。他社便への振り替えや払い戻しなどの対応にあたった。旅行会社とのネットワークについてはトラブルが確認されていない。

 27日午前0時ころからシステムが瞬間的に途切れる症状が出たため、修復作業をしていたが、航空機が飛び始めた朝から障害が深刻になった。

 全日空は、ホストコンピューターの周辺にあるサーバーのうち3台を、今月24日まで2週間かけて更新した。

 27日正午ごろ、この3台を古いサーバーに戻したところ、システムの処理能力が回復。システムは同日午後3時半に全面復旧し、運航は同6時以降出発の便から再開した。同社は、サーバーの更新が影響したのかどうかも、調べている。

 ただ、28日も10便が遅延、欠航するなど影響が残る見通しだという。

 共同運航便で同じ予約・発券システムを使っているエア・ドゥ、スカイネットアジア、アイベックスエアラインズの計42便にも遅れが出た。

2007年5月27日(日)23:51
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謎の高熱!?

 ある意味では、センサー+警報装置が正常に働いていることが証明されているのですが、こうも Carry Over ではねぇ....。航空会社なら、お上からお叱りを受けること間違いなしですな。

風薫る五月、沖縄地方では既に梅雨入りしたそうですし、先日は2007年台風第2号が小笠原諸島に接近したため、頻繁に携帯電話がブルブル震えて気象庁発表の台風情報が TAF の合間に送られてきました。

ブルブル震えたのは携帯電話だけではなく、老体も悪寒に振るえ、高熱を出す始末。

EICAS MESSAGE "BRAIN R OVERHEAT" が表示され、beeper も鳴ったので、Thrust を IDLE に絞ると、MESSAGE は消えるのですが、それでは仕事に支障が出るので、ちょいと Advance すると、また EICAS MESSAGE が出る。

降りて、メカニックさん〔お医者さん〕に見てもらっても、特にこれといった不具合は見つからず〔「季節の変り目、風邪かな?」と仰る〕、Carry Over として〔お薬を処方してもらい〕だましだまし過ごした一週間でありました。

巷では、麻疹が流行の兆しで大学生諸君は休講になったりと大変なようです。

この発熱は何なんだ?

とのことで、今月もご多聞に漏れず「投稿できず」が継続中、申し訳ございません。

さらには、いただいたコメントにも返信ができない状況で、大変に失礼をしております。

どこぞの大先生が曰く『基本設計が古い』、それに大激怒、大反論してしまった小生ですが、そんな反論をした張本人の右脳は『基本設計が古い』ことに加え、劣化が進んでいるのですかね....。

体調が悪いと、途端に小心者になってしまうオヤジなのでした。

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空いた間を埋めるお話

 すっかり投稿間隔が間延びしてしてしまっております。疲れきった身体での「クルーの疲労」シリーズ続編投稿は、少々身体に堪えますので、空いた間を埋め合わせる意味の話題を....。

本邦の空でもすっかり定着した RVSM: Reduced Vertical Separation Minimum (短縮垂直間隔)、PBN: Performance Based Navigation と共に今後、全世界的な展開が図られることは間違いありません。

「詰めるだけ詰めて、後はお好きにどうぞ」でないところが、安全第一の航空の世界でありまして、FL290 以上において、それまで 2000 feet 間隔だったものが、半分の 1000 feet 間隔で交差することになった訳ですから、ちょっとしたの高度逸脱も危険に結びついてしまいます。

そのような事情もあり、RVSM 実施後も LHD: Large Height Deviation(指定された高度から 300 feet 以上逸脱すること)を一つの尺度として、安全監視を実施しています。

と、ここまで書いてきて、前にも書いたような記憶がよみがえり、調べてみたら、駄文がありましたわ。

 RVSM: Reduced Vertical Separation Minimum 導入その後

導入後の監視だけでなく、導入前にもしっかりと、調査・議論・訓練を重ねるのが航空界の常。RVSM の導入に先立っても、十分な議論、検討、管制官等の訓練が行なわれるのです。

さて、本邦の近隣で RVSM が実施されていない大物といえば、中国とロシアです。(中国については、香港FIR,また台北FIR -細かい政治情勢はご容赦下さい- では RVSM が導入されています)

その中国では、今年2007年末を目処に、全土での RVSM 導入を目指しており、ICAO: International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関)の第30回 RVSM 実施タスク・フォース[本年3月にタイのバンコックで開催]でも審議の中心となりました。

中国といえば、ロシアなどと共に、高度にメートル法を用いている国であります。

高度の単位はフィート、の感覚に慣れきっている身からすると、RVSM での「1000 feet 単位」と言うのは、すんなりとイメージが湧くのですが、メートル法ではどうなるのか、どうもイメージが湧きません。

先ずは現状を把握しましょう( RVSM の対象となる FL 8400m を超える部分に特化します)。中国( PR CHINA )では、IFR の巡航高度は、
西行 / (真方位180~359°)東行 / (真方位360~179°)
315 (9600 m )295 (9000 m )
354 (10800 m )335 (10200 m )
394 (12000 m )374 (11400 m )
433 (13200 m )413 (12600 m )
472 (14400 m )453 (13800 m )
512 (15600 m )453 (15000 m )

と高度 8400m を超える空域では 600m 単位で割り振られています。

(※ロシアはこれとは異なります。FL 266 FL 8100 m を超える空域で、500m 単位; 8600, 9100, 9600, 10100 ... )

FUKUOKA FIR, INCHEON FIR では既に RVSM が導入済みで、しかも FL はの単位は feet ですから、それらの FIR と中国の SHANGHAI FIR との間を行き来する航空機は、それぞれの FIR 間で高度変更 altitude conversion を行ないます。

例えば、北京、大連、青海、瀋陽、などや、中国上空を横断する中東路線などの便は、Y64 という RNAV Route の AGAVO - GONAV 間で以下のような高度変更を行ないます。
(西行きは、INCHEON FIR 域内の GONAV で高度変更を開始、東行きは、INCHEON - SHANGHAI の境界である AGAVO で高度変更を開始します)

西行東行
FROMTOFROMTO
FL 390FL 394 (FL 12000m)FL 413 (FL 12600m)FL410
FL 350FL 354 (FL 10800m)FL 374 (FL 11400m)FL370
FL 310FL 315 (FL 9600m)FL 335 (FL 10200m)FL330
FL 280FL 276 (FL 8400m)FL 295 (FL 9000m)FL290
FL 260FL 256 (FL 7800m)FL 266 (FL 8100m)FL270
FL 240FL 236 (FL 7200m)FL 246 (FL 7500m)FL250


中国全土で、RVSM を実施するに際して、現在検討されている案は、現状の 600m 間隔を 半分に縮め 300m とする案です。

下図のような高度割り当てが検討されています。

Considered RVSM Flight Level allocation in China


RVSM Airspace は 300m 間隔となりますが、RVSM Airspace 下限との境界においては、500m の間隔となるところが独特ですね。

高度に併記されている feet の値を見ていただければお解かりかと思いますが、本邦をはじめとする feet 単位で RVSM を実施しているFIRとの親和性を重視した設定となっています。( 100 feet の altitude conversion しか必要ありません;逆に 100 feet だと、LHD に該当しないので、そのままの高度で突っ込んでしまう御仁がいないか心配なくらいです)

が、中国と国境 -航空の観点からはFIRと言うべきでしょうか- を接している中には、ロシアやカザフスタンなど、同じメートル法でも高度設定が異なる(中国の高度設定の方が Special であるとも言えるのですが....)ところもあります。

実施に際しては、SRM: Safety Risk Management Process に沿って、多面的にリスク分析がされているようです。

来年、2008年の夏(8月8日~24日)は 北京オリンピック

オリンピック開催の頃には、中国全土の空で RVSM が導入されていることでしょう。

AIP CHINA Supplement
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