徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

乖離

 平仮名で書くと同じだけれど、おなじみの海里( NAUTICAL MILE )と違って、こちらはいただけませんな。

【かい-り】乖離

そむきはなれること。また、関連性がなく、大きく離れること。離反。

Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition) © Shogakukan 1988/国語大辞典(新装版)©小学館 1988
離反(りはん)

関連語 背離(はいり)
共通する意味 隔たりができること。英語 alienation
使い方の例 
〔乖離〕スル 若者と高齢者との意識の乖離を埋める
〔離反〕スル 労働者の心が組合から離反する
それぞれの意味と使い分け 「乖離」は、本来深い関係にある両者の間に隔たりが生じることだが、「離反」は、従来、接したり属したりしていたものから離れていくこと。ともに文章語。

Ruigo Reikai Thesaurus Dictionary, © Shogakukan 1994/類語例解辞典 ©小学館 1994.


現場とお役所が、庶民と政治が....。

ご都合主義で「私的目的」を持ち出したり、「『単純ミス』は罪だ」と言い出したり。

完全に歯車が狂っている。
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A380 の後ろ (アプローチ編)

 めげずに A380 のセパレーションについてです。(今回で〆のつもりです)

ここでご紹介する値は、アプローチ、しかもレーダ管制下におけるセパレーションです。

Radar separation
The separation used when aircraft position information is derived from radar sources.

そもそも、アプローチの定義を明確にする必要があるのですが、墓穴を掘りそうなので、ここでは勘弁して下さい。

紹介するセパレーション値が適用される条件の一つに

 b) both aircraft are using the same runway, or parallel runways separated by less than 760 m;

とありますので、同一滑走路に A380 と他の機種が着陸進入してくる場合や、760m未満の間隔で隣接した平行滑走路(例えば、新千歳 Rwy 01L と Rwy 01R )に A380 と他の機種が着陸進入してくる場合を想定して下さい。

アプローチにおける A380 の後方乱気流の影響は、前回ご紹介した A380 の後ろを A320 (Medium), A300B2 (Heavy) を徘徊させる方法に加え、 A380 と B747 ( or B777 ) の二機を下地島チックに場周経路を飛ばし、地上に設置した LIDAR: LIght Detection And Ranging で Final ( 260 feet above ground ) 地点の渦の状態を観測する方法で行われました。

上の図のようなイメージで、2005年から2007年にかけて15日、のべ125時間の試験飛行を、フランスとドイツの計4つの空港で実施したそうです。

で、 LIDAR のデータを解析して、渦の発生から消滅していく過程を現状の Heavy 機と比較しました。
その結果が下の図です。


[出典: Claude Lelaie, "A380: New Wake Vortex Flight Test Methods and Results",
Joint meeting of the FSF 61st annual International Air Safety Seminar IASS, IFA 38th International Conference, and IATA, October 2008 ]

縦軸は渦の強さ、横軸は通過直後からの経過時間です。

従来の Heavy 機 Boeing 747-400, Boeing 777 も、 A380 も時間が経てば渦の強さは同じような傾向で低下していきますが、通過直後に発生する渦の強さが A380 の方が大きいため、従来の Heavy 機が発生する渦と同じレベルまでに至るには、 A380 の方が時間を要します。

ここで、定義済みの間隔(先行機は従来の Heavy 機)で通過した時点でX軸に垂直線を引き(図の1)、その線と、従来の Heavy 機の渦の強さ遷移平均値(図中の赤線)とが交わるY軸の値(リファレンスとなる渦の強さ)で、水平線を引きます(図の2)。
その水平線を右方向に延ばすと、 A380 が発生させる渦の強さ遷移平均値カーブ(図中の青線)と交わる点が出てきますので、その交点から垂線を下ろし、そのX軸の経過時間を距離換算して、 A380 が先行機の場合の後続機とのセパレーションの指針としています。

これらの試験飛行の結果などを反映し、2006年10月のICAO State letter の内容が一部見直され、2008年7月8日に新たな State letter
 Reference : TEC/OPS/SEP-08-0294.SLG
 Subject: Wake turbulence aspects of Airbus A380-800 aircraft
が発表されました。

2006年10月の State letter で規定された、レーダ・アプローチにおける A380 後続機の最小セパレーションは、タイトル画像にも示した通り、

先行機後続機最小間隔
A380-800A380-8007.4 km (4.0 NM)
A380-800Non-A380-800 HEAVY11.1 km (6.0 NM)
A380-800MEDIUM14.8 km (8.0 NM)
A380-800LIGHT18.5 km (10.0 NM)


でしたが、
ICAO State letter July 2008 では、

先行機後続機最小間隔
A380-800
non-A380-800 HEAVY
A380-800Not required
A380-800Non-A380-800 HEAVY11.1 km (6.0 NM)
A380-800MEDIUM13 km (7.0 NM)
A380-800LIGHT14.8 km (8.0 NM)


となりました。

A380 を含む HEAVY 機の後に A380 が続く場合には、後方乱気流に起因するセパレーション上の制約は必要とされず、管制機関が定めるレーダ最小間隔が適用できるので、例えば 2.5 NM 間隔で A380 連続なども可能になりました。

また、後続機が MEDIUM 、 LIGHT の場合の間隔もそれぞれ 1 NM 、 2 NM 短縮され、 7 NM 、 8 NM になりました。

※従来の HEAVY 機が先行機の場合の後続する MEDIUM 、 LIGHT への間隔はそれぞれ 5 NM 、6 NM ですから、 A380 の出現により、中型機、小型機が後続するシーケンスでは、2NMの間隔増加となった訳ですね。


「澄んだ夜空 + 到着機で混雑する空港近く」のコンビネーションでは、レーダ誘導により整然と並べられた提灯行列を眺めることができます。

混雑する空港では、単に二機間のセパレーションだけでなく、次々とやってくる到着機をどのように並べるかが重要になります。

最新の ICAO State letter で、 A380 が後続機の場合のセパレーションが、レーダ最小間隔まで詰めて良し、となった背景には、 A380 の出現で交通流が大きく淀まないようにすることも考えられているのではないでしょうか。

HEAVY - HEAVY - HEAVY のアプローチを考えた場合、真ん中の HEAVY 機が A380 か Non-A380 かで3機を並べるのに必要な距離が変わってきます。

ICAO State letter 改訂によるセパレーションの変遷と、 Non-A380 だけの並びを図にしてみました。


最上段は、 Non-A380 HEAVY 機が3機並んだアプローチで、4NM間隔に並び、8NMあれば3機を詰め込むことができます。

最下段は、最初の ICAO State letter で定義されたセパレーションを適用し A380 を真中に配した場合で、 A380 の後ろが10NM必要とされていたので、3機並べると14NM必要でした。つまり、 A380 が入り込んだだけで、 Non-A380 HEAVY 1機分を超えるロスが生じていたわけです。

が、2006年の改定で、ロスは2NMまで縮まり、2008年の改定では、( A380 を先行機のぎりぎりまで詰めることが前提ですが)ロスは0.5NMまでになりました。

勿論、それぞれの管制機関が最終的には判断することになりますが、 ICAO としては、 A380 が参入してきたことによる航空交通流の乱れを極力少なくすべく、後方乱気流という視点からの基準を、安全性を担保しつつ策定している、と思われます。
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USA1549/15JAN LGACLT update from NTSB

 今朝、 NTSB: National Transportation Safety Board からメールが入っていましたので、ひとまず引用しておきます。左側の No. 1 Engine もハドソン川で発見され、(現地時間の)木曜日には回収されるとのこと。


************************************************************
NTSB ADVISORY
************************************************************


National Transportation Safety Board
Washington, DC 20594

January 21, 2009

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NTSB ISSUES UPDATE ON INVESTIGATION INTO DITCHING OF US
AIRWAYS JETLINER INTO HUDSON RIVER

************************************************************


In its continuing investigation of US Airways flight 1549, which ditched into the Hudson River adjacent to Manhattan at approximately 3:30 p.m. on January 15, 2009, the National Transportation Safety Board has developed the following factual information:

The right engine has been externally examined and documented. An examination of the first stage fan blades revealed evidence of soft body impact damage. Three of the variable guide vanes are fractured and two are missing. The engine's electronic control unit is missing and numerous internal components of the engine were significantly
damaged.

What appears to be organic material was found in the right engine and on the wings and fuselage. Samples of the material have been provided to the United States Department of Agriculture for a complete DNA analysis. A single feather was found attached to a flap track on the wing. It is being sent to bird identification experts at the Smithsonian.

The left engine has been located in about 50 feet of water near the area of the Hudson River where the aircraft ditched. The NTSB is working with federal, state and local agencies to recover the engine, which is expected to occur sometime on Thursday.

The NTSB has learned that the right engine experienced a surge during a flight on January 13, 2009, and that subsequent maintenance actions included the replacement of a temperature probe. Investigators from the NTSB's Maintenance Records group are researching this report by examining applicable maintenance records and procedures.

The NTSB's Survival Factors group is in the process of interviewing passengers to learn more about the events surrounding the ditching and the emergency evacuation and rescue. The Operations and Human Performance group is interviewing US Airways flight operations training personnel.

The checked and carry-on baggage is in the process of being removed from the aircraft. Representatives from the NTSB's Office of Transportation Disaster Assistance are working to coordinate efforts with US Airways to return these items to the passengers.

The on-scene documentation of the airplane is expected to be completed by the end of the week. Preparations are underway to facilitate movement and more permanent storage of the airplane so that more detailed documentation of the damage can be performed at a later date.

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(追記)

「第一段ファンブレードに soft body がぶつかった痕跡あり。ブレード3枚損傷、2枚欠落」からして、凄まじいバードストライク(と思われる)であったことがうかがわれる。

と思われる と書いたのは、 NTSB では未だ断定していないので....。

エンジンと翼から生体組織が見つかり、採取したサンプルは DNA 鑑定されるとのこと。また、フラップに見つかった衝突痕跡は、スミソニアンの鳥類専門家のもとで、鳥の種類鑑定が行われるとのこと。

(変な表現ですが)「普通のバードストライクと違いうな」と目を惹いたのは、
 “ The engine's electronic control unit is missing and numerous internal components of the engine were significantly damaged.
の部分。

第一段のファン・ブレードが損傷することは珍しくないけれど、エンジン・コントロール・ユニットが見つからない、のは、エンジン内部が激しく損傷していたこと以上に衝撃的。コントロール・ユニットはいつの段階で外れてしまったのだろうか。

また、 No. 2 Engine は事故前々日の13日の飛行中、サージを起こして、その後の整備で温度プローブを交換していたとのことで、その整備作業(サージへの適切な対処だったか、交換手順は適切だったか)についても調査中。

ハドソン川河畔現地での調査は今週中に終え、その後、機体を移動してより詳細な調査が行われる。
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A380 の後ろ (エンルート編)

 『君子危うきに近寄らず』ではありませんが、民間機として世界最大の旅客機である Airbus A380 が起こす後方乱気流は如何許りか、と考えると迂闊に近づくこともできません。しかし、今後、確実にライン就航が増えてくるであろう A380 を怖がってばかりもおられません。

今回はエンルート、しかもレーダ管制下にある場合のセパレーションについてです。
AIM-j 514. 【レーダー間隔】 (IFR)

レーダー管制下では、縦間隔および横間隔にかえて 次のレーダー間隔が適用される。
 a) レーダーサイトから40マイル未満の空域:3マイル
 b) レーダーサイトから40マイル以遠の空域:5マイル
 ただし、RDPがデジタルモードで使用されている場合は:5マイル
A380 誕生以前には、エンルート・レーダ管制下における Heavy 機と後続機との最小間隔は 5 NM (約 9.3 km )と定められていました。

現在、A380 でもエンルート・レーダ管制下における後続機との最小間隔は、Boeing 747 などと同様に 5 NM まで詰めることができます。
ここでの後続機とは大きさを問いません。 Heavy, Medium, Light の何でもOKです。


ただ、最初から 5 NM と決まった訳ではなく、先ずは、それまでの Heavy 機の主流である Boeing 747 に対し +10 NM のマージンをとって 15 NM の間隔が必要とされました。(2005年11月に発表された ICAO State letter T3/4.4 - AP111/05 (ATM) "Airbus A380 wake vortex aspects" )
*さらには、最小垂直間隔の 1000 feet の高度差がある航空機に対しても、その影響は未知数として、垂直間隔の指針は未定でした。

その後、 Mach 0.85 で A380 を巡航させ、その 1500 feet 下(後方乱気流の渦は下方に流れるため、同一高度でなく下の高度を選んだ) 後方 5 NM ~ 15 NM の範囲を A318 が徘徊?し、その様子を A380 の 2000 feet 上空を飛行する Falcon 20 に搭載した LIDAR から測定する、という大掛かりなテストが実施されました。
※ LIDAR: LIght Detection And Ranging ドップラーライダ:レーザ光を発射して、大気中の塵や微粒子からの反射光を受信して、その移動速度を風速として計測する装置。

更に、従来の Heavy 機との差異を調べるために、 A380 と A340, B747 とを 0.25 ~ 0.3 NM の間隔で並走?させての同様のテストまで実施されました。

A380 Wake Cruise Test with Virtical LIDAR
(右脳が全く働かずに描いた図ゆえ、イメージでし難くてすみません)

この試験飛行は、2006年1月~6月の間に、計6回実施され、それらの結果から;
 -渦の降下率は B747 も A380 も同じで、1000 feet 下 12 ~ 15 NM の範囲に達する
 -様々なパラメータの測定結果では、 B747 と A380 とでは大きな差異はみられない
 -後続機のパイロット( FAA のテストパイロットも同乗した)の印象でも B747 と A380 とで差異がない
ことが解りました。

これらの実証試験結果を受けて、ICAO では2006年10月10日に State letter T3/4.4 - AP099/06 (ATM) "Wake turbulence aspects of Airbus A380-800 aircraft" を発表、当初の +10 NM のマージンは不要で、エンルート・レーダ管制の最小間隔は 5 NM まで詰めることが認められたのです。
*最小垂直間隔も 1000 feet が適用されます。
(でも offset track 無しで、1000 feet の高度差で A380 とすれ違うのは相当に迫力でしょうねぇ)

よって、現在は、レーダ管制下にあるエンルート同一高度上に、
 ... A380 ~(5 NM)~ B737 ~(5 NM)~ A380 ~(5 NM)~ B777 ...
のように並べることもOKとなりました。

あと何年先になるかは見当もつきませんが、5マイル間隔で A380 が行列する光景が見られるのかもしれません。

今回ご紹介した 5 NM の最小間隔は、エンルートにおける Minimum Radar Spacing であり、エンルートでも洋上のような Non-Radar 域には適用されません。

また、アプローチでは、後続機の大きさに応じた、異なる MRS: Minimum Radar Separations 値が規定されています。

A380 のアプローチにおけるセパレーションはまたあらためて。
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大寒

 きょうは二十四節気の“大寒”、午前7時40分に太陽黄経が300°となりました。「冷気が極まって、最も寒さがつのる」頃とされています。
だからと言って、寒いオヤジ・ギャグではないのですが....。

“大寒”にちなんで KAL の話題を。

昨年のことになりますが、Korean Air で韓国初の女性機長が誕生しています。

昨年11月、韓国航空局(厳密には Civil Aviation Safety Authority )は、Soo-jin Shin さんと Soo-in Hong さんに定期運送用操縦士技能証明(限定事項 B737-800)を発行し、お二人は11月15日に機長として初フライトしました。

Shin さんと Hong さんは1995年、 KAL のチェジュ飛行学校で student pilot としてそのキャリアをスタートし、1997年に事業用操縦士技能証明(飛行機)限定事項 MD-82 を取得しました。

その後、 Shin さんは、2001年10月に Boeing 747-400 に機種移行、 Hong さんも2001年に Boeing 777 に機種移行。お二人共にキャリアを積んで、2008年11月に機長としてのフライトを果しました。

韓国では、機長昇格訓練へのお声がかかるには、 First Officer として5年以上、飛行時間4000時間以上、着陸回数350回以上の条件を満たす必要があるそうで、お二人はそれをクリア、昇格訓練を経て4本線を手にしたのですね。

Shin さんの総飛行時間は4458時間、Hong さんのそれは5510時間だそうです。
(いつの時点での数字かは不明)

KAL では、昨年11月の時点で、A330 の First Officer としてキャリアを積んできた Yeon-jung Hwang さんも昇格訓練中だそうで、2008年中には定期運送用操縦士技能証明(限定事項は不明)を取得するだろうとのことでした。

以上、 Airliner World 2009 年 1 月号の記事から得た情報でした。
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気が付けば5年目突入 !?

 注意力散漫というべきか、物忘れが激しくなっているというべきか....。

ついさっき、己のブログのヘッダ部分を見てふと気が付いたのでありまして、

 since 17 JAN 2005

ということは、なんやかんやで丸4年が経過し、5年目に突入したっていうことですか。

編集画面の 【PAXのひとりごと】の記事一覧 に登録してある記事が、719件(草稿中でボツ記事も含む)、コメント管理で、コメントの数は1135件。

アクセスカウンタは、開設から7ヶ月遅れでカウント開始したのですが、24万。

よくも、多くの駄文を連ね、それに懲りずに多くの方が足を運んで下さって、本当に感謝感謝です。

いつまでたっても進歩が見られないけど、まぁ、こんなもんでしょう。

これからも、どれだけ書けるか、いつまで続けられるか、何ら commit できませんが、

 “徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)”

を書けるときに、気ままにマイペースで....。
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USA1549/15JAN LGACLT Fatalities: 0

 Fatalities: 0 / Occupants: 155 危機的状況下であったにも関わらず素晴らしい結果です。全員無事で何よりでした。

NTSB: National Transportation Safety Board が20名からなる調査チームを派遣し、調査中。きょうもメディア・ブリーフィングがあるようですので、事実関係が徐々に明らかになってゆくでしょう。
NTSB MEDIA BRIEFING ON HUDSON RIVER AIRLINE ACCIDENT AT 4:00 P.M. TODAY (SATURDAY)

The National Transportation Safety Board will hold a press briefing today at 4:00 p.m.(EST) Saturday on its investigation into the crash of a US Airways Airbus A-320 into the Hudson River in New York City.
(以下省略)
当該機( Airbus A320-214 // Registration: N106US, MSN: 1044, First flight: 1999, Engines: 2 CFMI CFM56-5B4/P )は、現地時刻 15:26 に New York-La Guardia 空港を離陸、離陸後2分未満の段階で multiple bird strikes に遭遇、両エンジンの推力が complete or partial loss となり、現時時刻 15:31 頃にハドソン川に不時着しました。

ある情報源によると、到達最大高度は 3200 feet, Ditching 直前の 300 feet での対地速度は 153 kt だったとのことです。

Cockpit Crew, Cabin Crew はもとより、救助にあたった方々、そして乗員の指示に冷静に従ったお客様の行動が、ZERO Fatalities をもたらしたことは言うまでもありません。

この事故に関しては各種報道で伝えられてますし、評論家の方々がコメントされておられますので、小生ごときが今更言うこともないのでありますが、事故の一報に接しての小生が先ず思ったことは、
 ・視程( ceiling / Visibility )が良くてラッキーだった
 ・日没の1時間前で明かりがあってラッキーだった
の2点でした。

KLGA 152151Z 32013KT 10SM BKN044 BKN250 M06/M14 A3027 RMK AO2 SLP251 VIRGA N-E T10611144
KLGA 152103Z 36010KT 10SM SCT046 SCT250 M06/M14 A3025 RMK AO2
KLGA 152051Z 36008KT 10SM SCT044 M06/M15 A3025 RMK AO2 SLP242 T10611150 53014

事故を知ったときには、METAR にアクセスできる環境に居らず、朝、寝床で iPod Touch に Download しておいたデータ(勿論、 KLGA のデータを入手してあった訳ではなく、近くの KJFK のデータですが)をオフラインで参照するしかなかったのですが、
 ・陽の明かりがあった
 ・視程が良好であった
ことは、 Ditching に際しても、その後のレスキュー活動においても、また、寒さの中で救助を待ったお客様にとっても幸いだったと思います。



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加賀麩 不室屋 宝の麩

 小寒が過ぎ、大寒まであと一週間ほどですが、寒さが本格化しているようで、今朝も寒かったぁ。明日も明後日も寒いらしいとのこと。寒さに加えて、何かとお忙しで、じっくりと記事を書く時間がとれません。

# Airbus A380 の Wake Turbulence、Enroute Radar Separation の図は書いたのだけれど、本文が....。再確認したいこともあるし。

まっ、焦ったところで始まらない。

昨日、財務大臣がとある方からお土産をいただいたそうで、金沢は 加賀麩 不室屋 の 「 宝の麩 」。

「お湯を注ぐだけ」ってところは、小生のランチに酷似しておりますが、お味は比べては失礼なほど上品でありまして、ついついお椀もいつもとは違ったもので頂きました。

この週末は、旧友と久々に再会の予定。

お店は決めてくれたようで、どうやら、
となりそうな気配です。

久しぶりだから、きっと呑む、喋る、呑む、の spiral 。

結末は推して知るべし....、であります。


コメントで Altimeter Setting に関するご質問が来ておるのですが、素人の小生が的確に返答できているとも思えないので、どなたか、識者のヘルプをお願いいたします。
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残念

 荒んだ世の中の象徴なのでしょうか。企業が必要以上に個人のプライバシーに侵害するのは如何なものか。

“個人情報保護”とか言っているけど、それは、裏を返せば、特定の誰かがどこかで個人情報を牛耳っている、ってことだから。

常識の範囲内で、 as is で“つぶやく”ことも難しい世の中になってしまったのかなぁ。

残念。 motivation 殺がれるよな。
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後方乱気流区分

 きょうは七草粥、と聞いて、ふと昨年晩秋の健康診断を思い出してしまいました。メタボ検診とやらで腹まわりを計測されるとあって、一所懸命腹式呼吸の練習をしたものの徒労に終わったでありました。

さて、後方乱気流の投稿が続いていますが、今回は後方乱気流区分についてのお話です。

初回の投稿で、wake vortex の強さは
 - 重量
 - 主翼の大きさ Wingspan
 - 速度
が関係すると書きました。

“デカク”て“重い”飛行機ほど、後方に形成される渦は強くなる訳ですが、ICAO: International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関)では、後方乱気流区分 Wake Turbulence Categories を定めています[@ Doc 4444 ATM/501 PANS ( Procedures for Air Navigation Service ) ATM ( Air Traffic Management ) 4.9 WAKE TURBULENCE CATEGORIES ]。

そこには、
4.9.1 Wake turbulence categories of aircraft


4.9.1.1 Wake turbulence separation minima shall be based on a grouping of aircraft types into three categories according to the maximum certificated take-off mass as follows:

a) HEAVY (H) ― all aircraft types of 136 000 kg or more;

b) MEDIUM (M) ― aircraft types less than 136 000 kg but more than 7 000 kg; and

c) LIGHT (L) ― aircraft types of 7 000 kg or less.

と記されており、最大離陸重量により Heavy, Medium, Light の3つに区分されています。

下の図のように、136トン、7トンがそれぞれ境界値となっています。



後方乱気流区分が、何故に ICAO PANS ATM で定義されているかというと、それは後方乱気流が管制間隔に影響するからに他なりません。

飛行に際しては、計器飛行,有視界飛行に関わらず、飛行計画、所謂フライトプランを提出しなければなりませんが、そのフライトプランにも、“後方乱気流区分”を記載する欄がちゃんと用意されています。

下は、ICAO フォーマットのフライトプラン(本邦の飛行計画書もこのフォーマットに準じています)の当該部分です。
(わかりやすくするため、勝手に着色しました)

ICAO FLT PLN ITEM 9 portion

この部分に、航空機の型式と共に“後方乱気流区分”を示す H, M, L の何れかを記入しなければなりません。
書き方説明書 ?にもちゃんと書いてあります。

日に沢山の便を運航するエアラインでは、一便ごとに1枚のプランを提出していたのでは、作成する方もそれを処理する方も大変ですし、何よりも貴重な紙資源を消費してしまうので、 Repetitive Flight Plans (RPLS) という形式で(乱暴ですが、空港のカウンタや旅行代理店などで見かける ○○○ △月時刻表のようなもと思えば良い)予め提出しておきます。その提出フォーム RPL listing は下のようなものですが、



こちらにも、後方乱気流区分を記載する欄があって、こちらの 書き方説明書 ?にも、後方乱気流区分についての記述があります。

以上、後方乱気流区分は、最大離陸重量に基づき、 HEAVY, MEDIUM, LIGHT の3段階に区分されていますよ、とのおはなしでした。


【余談】

『 RPLS で予めフライトプラン提出しておく、って言ったって、その日のお天気やお客さんの状況によって巡航高度(や速度)あるいはルートだって変わるだろうし、ときどき機材変更だってあるじゃないか 』と疑問に思ったあなたは鋭い。

RPLS は後から訂正がかけられるようになっています。

例えば、機材変更やそれに伴う後方乱気流区分の変更、巡航速度,巡航高度を RPLS で提出済みのそれから変更する場合は、可及的速やかに出発予定時刻の30分前までに管制機関に連絡すれば良いことになっています。
さらに、変更が巡航高度だけであれば、パイロットが管制にクリアランスをもらうための initial contact 時に伝えればOKです。

それと、 RPLS への記入項目には、代替飛行場、搭載燃料(持久時間)、搭乗人数、緊急装備品などが含まれていません。これらの項目は「お問い合わせ先はこちら」(例えば AAL Briefing Office みたいに....)を記入すればOKです。

RPLS は、 Repetitive の名が示すとおり、繰り返し・定期的に運航される計器飛行方式でのみ使われるもので、これを提出してもらうことで、管制機関側は、フローコントロールの戦略が立てられる訳ですね。
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後方乱気流 (その2)

 お正月気分も早々に抜けて、明日が仕事始めであります。「始めがあれば終わりもある」ではありませんが、前回説明した“後方乱気流”について、渦が出来てから消滅するまでを軽くご紹介します。

先ず、後方乱気流(の渦)は、飛行機の航跡をそのままトレースしてはいません。

発生した渦は、最初の約30秒間は毎分 300 ~ 500 feet の率で下方に伸びます。渦の降下率は時間経過と共に減少し、最初に一気に下がった後は、ダラダラと航跡の約 500 ~ 900 feet 程度まで下がります。その後、消滅します。

消滅までの時間は、渦を発生させる飛行機の“大きさ”( Wingspan, Weight )と“速さ”によって違いはありますが、概ね1分間前後です。

1分間というと短いように感じられるかもしれませんが、飛行機の速さを考慮すると、数kmは優に進んでしまいます。距離換算すると、大体 5 NM(海里)約9km程度になります。この距離も、飛行機の“大きさ”などに影響されます。

つまり、デカイ先行機の後方5 NM 下方 500 ~ 900 feet 圏内は後方乱気流要注意地帯と言えます。

Vertical Motion


上の図は、横から見たイメージですが、次に、上空の“風”、殊に横風成分を考慮してみましょう。

横風成分が0の場合には、渦は素直にまっすぐ後ろに伸びますが、横風があると、当然ながら渦は風に流されます。

横風成分が1~5ノット程度までは、渦はそれほど流されませんが、5ノットを超えると、風の影響を受けやすくなることが知られています。



最近のハイテク機では、ND: Navigation Display 上に、自機が受けている風の状態が表示されるようになっており、横風成分がイメージしやすくなっておりますが、だからと言って、勝手に間隔をつめることは出来ません。

風が急に変わるかもしれないし、そもそもIFRで飛行している機は、管制間隔が決められていますから....。

さて、この“管制間隔”ですが、先行機と後続機の“大きさ”、正確に言うと“後方乱気流区分”によって、どれだけあけなければならないかが定められています。

今まで、3段階( Light, Medium, Heavy )の後方乱気流区分では、 Boeing747 が Heavy の代名詞的存在でしたが、ここにきて、大物が現れました。

そうです、Airbus A380 の就航です。 ICAO では「 A380 の後方乱気流に関する Steering Group / Working Group 」からの勧告を検討し、 ICAO State Letter, PANS-ATM を発行・改定してきています。

成田にも定期就航している A380 ですから、A380 後続機がどれだけの間隔をとらねばならないかについては、改めてご紹介できれば、と考えております。
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あなどれない後方乱気流

 年始早々に“乱気流”で申し訳ありません。波乱の幕開け ??

前回の Reduced Thrust Takeoff に対して、 Picorino さんから以下のコメントをいただきました。

弱きもの 汝の名は

Reduced Thrust Takeoff は広く使われていますが、時と場合によっては「落とし穴が」と、我が知恵袋氏が話しておりました。
中小型機(100人乗れても中型の範疇)が、大型機のあと離陸する場合です。離陸直後に旋回するケースで、先行大型機の外側後流に入ると、旋回する側に回転している渦のためにBankが急激に深くなり逆舵を最大限に使うこともあるとのこと。
中小型機パイロットは、それを避けるため先行大型機の後流の上に出たいので、離陸性能とは別の理由で大き目のパワーを使うことがあるそうです。

「離陸直後に旋回するケースで、先行大型機の外側後流に入る」の適切な説明になっていないかもしれませんが、先行機が作り出す後方乱気流、所謂 Wake Turbulence と、それに巻き込まれると危険であることのお話です。

飛行機が文字通り“飛行”している状態においては、翼は揚力を得ており、つまりは、翼はそれだけの空気の流れの中に置かれております。
揚力は翼の上面と下面とで空気流速が異なることで翼の下面に上向きの圧力が発生し、云々と、小生には理解不能な空気力学で説明されておりましたっけ。

要は、翼には整った空気の流れができており、そのお陰で飛行機が浮かんでおる訳ですが、今回、厄介ものになるのは、翼を通り抜けた後の、自機にとっては用済みの空気流です。飛行機が飛んだ後に乱された空気の状態と考えることもできましょう。

詳しい理論は解りませんが、揚力を発生させた空気流は、翼端から渦を巻いて後ろに流れ去るのだそうです。その渦巻きの形は、図1に示すようなグルグルになるとのことです。

Wake-turbulence formation
図1 Wate Turbulence 後方乱気流の形成の仕方


この渦の強さは、飛行機の
 - 重量
 - 主翼の大きさ Wingspan
 - 速度
に加え、周囲の大気状態(風、ウィンド・シェア、擾乱など)、さらに地表面近くでは、対地効果も影響を与えます。

が、概ね、でかくて重くて速い飛行機が作り出す後方乱気流が強力になると考えて良いでしょう。

Boeing 737, Airbus A320 の後方乱気流を1とした場合、Boeing 767 のそれは 1.5 、Airbus A300 のそれは 1.7 、Boeing 777 は 1.8、 Boeing 747 だと 2.5 にもなります。
※厳密には、同一機種でも重量により渦の強さは変わりますので、上の値はおおよその目安に考えて下さい。
(参考までに、発生する渦の強さの機種別相対比較を下に示します [出典:FAA Wake Turbulence Training Aid, Final Report, April 1995 ])

Boeing 747 クラスの大型機が引起す後方乱気流は、ちょっと半端ではない強さになりまして、後続機がそれに巻き込まれたりしたら、とんでもないことになってしまいます。

実際に、米国のジョン・F・ケネディー国際空港を離陸直後のアメリカン航空587便 A300-605R (N14053) が、現地時刻の2001年11月12日午前9時16分頃、Belle Harbor の住宅地に墜落した事故は、Wake Turbulence が引き金になったと、NTSB の事故調査報告書に記載されています。
(当該機は後方乱気流区分 Heavy 機が離陸した1分40秒後に同一滑走路から離陸、浮上した lifted off 時点で、先行機とは 4.3 NM (約8km)の水平間隔、 3800 feet (約1160m)の垂直間隔があった。が、後方乱気流の影響を受けた)

渦 - 後方乱気流は、時間が経てば消滅しますので、先行機との間隔を十分にとれば、その影響を受けなくなりますし、管制間隔も、後方乱気流の影響を受けないであろうことを考慮して設定されています。

しかし、前述したように、単純に先行機の大きさ重さ速度だけでなく、そのときの気象状況によって、後方乱気流の渦の強さ、生存時間は影響を受けるので、混雑時間帯の離陸のように、最小のセパレーションで離陸許可が発出されているときには、先行機の後方乱気流への注意を怠ることはできません。

一例として、羽田 34R からの離陸を想定してみましょう。

羽田空港の Rwy 34R からの離陸機は、高度 500 feet (約150m)で右旋回に入ります。SID により、右旋回後の Heading に差異はありますが、離陸後は全て右旋回です。

ここで、下の図2に示すように、先行機の左翼から発生する渦に巻き込まれると、右へバンクするロールが誘発されます。

Induced roll
図2 後方乱気流の渦により誘発されるロール


それでなくても、右旋回時には、右にバンクをとっている訳で、それに加えてこの力が加わると、右旋回時とは逆の舵をあてなければなりません Counter Control 。

離陸して間もなくこのような状況に遭遇するのはスレット(安全を脅かすもの)となりますから、避けるにこしたことはありません。



羽田の場合、騒音対策上、一定以上外に膨らむことは出来ないので、先行機の跡をトレースしないようにするには、早めに高度をとって(=離陸定格出力を使って)早めに右旋回する、などの対策が必要になる訳ですね。
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