徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

クルーの疲労 - その3:休息期間

 FDP: Flying Duty Period の上限値に則って乗務を終えた後には、適切な休息が必要です。

休息に関しては、Rest Period ならびに、その最低必要時間が Minimum Rest Period として定義されています。

まず、Rest Period の言葉の定義から。

Rest Period
A period of time before starting a flying duty period which is designed to give crew members adequate opportunity to rest before a flight.
となっています。

この投稿の書き出しでは「~終えた後には」と記しましたが、休息を定義する上で、何故にその休息が必要かは“来るべき乗務に疲れを残さない”といった、ある種の「前向き思考」で考えられています。

Rest Period 休息期間とは、

(次の)FDP: Flying Duty Period 開始時点前にクルーに与えられるべく設定された 妥当で十分な 休息の機会

と定義されています。

定義中の、adequate opportunity to rest が重要なポイントです。

ただ、時間だけあっても、24時間運用空港進入経路直下に位置する“騒音バリバリ”の宿で休め!、と言われても、それは「妥当な休息」とは言えません。

また、オペレーション・センターの一室にパイプ椅子を並べて、握り飯とペットボトルのお茶を支給され、ここで休んで!って、そんなんで休める筈がありません。

※本邦の(各オペレータの)規定がどうなっているかは定かでありませんが、一昨年でしたでしょうか、このブログでも紹介したのですが、秋田空港発羽田行の始発便のクルーが、OMの規定をオーバーして飲酒をしてしまったため、羽田でスタンバイしていたクルーが自家用車で徹夜で秋田空港まで向かい、代わりに乗務した、との事例がありました。「妥当で十分な休息」の後に乗務したと言えるか、私的には甚だ疑問であります。

脱線してしまいましたが、この adequate opportunity to rest をとれるの為に、Suitable Accommodation 適切な宿、なる定義もあるくらいです。



【 Rest Period 】

では、Rest Period 休息期間 について、もう少し詳しく見てみましょう。

FDP の上限値が、細かに決められていたように、この Rest Period についても、一つのセクションを設けて細かに定められています。

英国の Civil Aviation Authority は、航空会社(オペレータ)に対して、

 - クルーがフライト前に“十分で連続した”休息がとれること
 - 離基地(要はお泊り)の場合には、妥当で十分な休息がとれるように、適切な宿を提供すること

を謳っています。

(原文)
The aircraft operator must notify all crew members in good time of a flying duty period so that sufficient and uninterrupted pre-flight rest can be obtained. When away from base the operator must provide the crew with the opportunity and the facilities for adequate pre-flight rest. The operator must provide suitable accommodation. …以下省略…

その大前提の上で、minimum rest period 最低限の休息期間が以下のように推奨されています。

 a)前の Duty Period の時間数
 b)12時間

のどちらか長い方。

クルーの疲労 - その1:FDP ”で取り上げた FDP の上限表を眺めた方には、

「 FDP の上限値が11時間なのだから、a)がとられることはなく、一律b)の12時間で良いではないか」

との疑問を持たれるかもしれません。

あの表の情報だけだと、至極ご尤もでありますが、あの表は、「 Acclimatised かつ シングル編成」における上限値であり、マルチプル以上の編成 - つまりは長大路線となります - の場合には、FDP の上限値がある条件においては最高14時間まで認められています。(その表は、別の機会にご紹介する予定です)
それと、ここが FDP ではなく、Duty Period になっているのには重要な意味があります。
(鬱陶しいでしょうが、最後までお読みいただければ、その重要性がわかります)

それでは、その1・2で補足説明のために取り上げてきた3月青社時刻表、東京~札幌をまたまた題材にして架空パターンを組んでみましょう。

羽田始発51便に乗務したクルー、51-54-63と羽田~新千歳を一往復半して、13時35分に FDP が終了したとしましょう。

とすると、前回の投稿で説明したように、当該乗務についたクルーは 未だ Acclimatised でありますから、『最低限、“12時間”の休息をとれば、再び Duty につける』ことになります。

生憎というか、幸いにというか、真夜中の2時に新千歳を出発する旅客便はありませんので、当該クルーは、12時間を上回る休息がとれる訳ですね。

運航乗務員は、機種限定がありますので、型式限定を受けている機種にしか乗務できませんが、客室乗務員の方は、社内審査はあれど、資格を有していれば複数の機種に乗務できますから、有資格者であれば、翌日の新千歳始発便50便(7時50分発:機種は777)への乗務は問題ありません。

さてさて、63便で乗務を終了したコックピット・クルーは、というと、翌日の66便(新千歳発14時30分)から乗務を始めれば、66-73-76と乗務して、羽田に21時に戻るという乗務パターンには何ら問題なく就ける訳ですが、会社がそのような“観音様パターン”を組んでくれるかは、甚だ疑問ですね。

となると、便乗( DH: Dead Head とも言う) - 英国 Civil Aviation Authority では Positioning と定義しています - で基地(羽田)戻りですかねぇ....。

〔参考〕
Positioning
The practice of transferring crew from place to place as passengers in surface or air transport at the behest of an operator.
(オペレータの命令で、陸路または空路、A地点からB地点まで移動する行為)

では、51-54-63と羽田~新千歳を一往復半した後に、便乗で羽田に戻ることには問題がないのか、ちょっと細かいですが見てみましょう。

「51-54-63の羽田~新千歳一往復半」は、厳密にいうと Split Duty という定義になります。

Split Duty
A flying duty period which consists of two or more sectors, separated by less than a minimum rest period.
えっ、一連続乗務でなくて、分割乗務になるの?

その訳は Sector の定義にあります。

Sector
The time between an aircraft first moving under its own power until it next comes to rest after landing, on the designated parking position.
comes to rest のセンテンスにご注目。

つまりは、51便が羽田空港を Taxi out して、新千歳空港に Block In したら、“休息”をとらねばならないのです。ここでの“休息”に minimum rest period 最低限の休息期間の12時間を当てはめたら、国内線や短距離国際線など、便毎にクルーが交代しなければなりません。

よって、less than a minimum rest period で分割された2つ以上の sector から構成される乗務に就けるよう、Split Duty が定義され、それが許されています。

51-54-63と乗務する場合、それぞれ新千歳,羽田での折り返し時間は less than a minimum rest period に相当します。が、その折り返し時間も FDP: Flying Duty Period には含まれます。
※FDP が何時の時点で開始され、何時の時点で終了するか。

それでは、63便で乗務を終えて、便乗で羽田に戻ることを考えて見ましょう。

UK CAA の規定では、便乗 Positioning について、以下の文言が記されています。

All time spent on positioning at the behest of an operator shall count as duty, but positioning does not count as a sector when calculating the FDP.

便乗は、FDP を計算する際のセクター数としてはカウントしないが、duty としてカウントすべき、とあります。

ちょっと待ってくださいよ、「セクター数には含めないが、Duty である」。

Duty
Any continuous period during which a crew member is required to carry out any task associated with the business of an aircraft operator.
一方で、
Flying Duty Period (FDP)
Any time during which a person operates in an aircraft as a member of its crew. It starts when the crew member is required by an operator to report for a flight, and finishes at on-chocks or engines off, or rotors stopped, on the final sector.
でした。

これらを考慮するに、FDP の計算は、あくまでも as a member of its crew として航空機に乗務する時間ですから、新千歳で、63便の乗務を終えれば、その後、便乗で羽田に戻ることは問題なさそうです。

ただ、注意点が一つ。

その便乗は、Duty であるということ。

つまり、次のフライトの前に求められる“ minimum rest period ”最低限の休息期間には反映されるのです。

51便のクルー、仮に午前6時に出頭したとしましょう。63便が定刻13時35分に新千歳のn番スポットに Block IN したならば、FDP は7時間35分。

でその後、新千歳の航務オフィスに立ち寄ってデ・ブリを行なって、(素性がばれぬように)着がえをして、旅客予約状況なども考慮されて(※実際は便乗クルーの Off Load Priority は最も低く、たとえオーバーブッキングがあったとしても、どんな上得意のお客様が空席待ちをしていても、指定された便乗便には必ず乗れます)、70便(新千歳16時30発、羽田18時10分着)に便乗して羽田に戻ったとしましょう。

UK CAA のルールでは、この便乗も Duty ですから、この日の duty period は12時間10分となり、次の乗務までの minimum rest period は12時間10分となるのです。

勿論、札幌でお泊り、ジンギスカン・キャラメル。翌朝、便乗でどこかに飛んで、そこから乗務ということも有り得ます。

そのあたりの“匙加減”は“スケジューラ”の「腕の見せどころ」と言ったところでしょうか....。

Rest Period 休息期間 については、もう少し説明しなければならないことがあるのですが、きょうはもう疲れてしまった(“休息期間”が必要 )ので、また次回に。

勤務が長時間に及んだ場合、次に長大路線を控えている場合、それに、これはその回に含めるか、まだ思案中ですが、「スタンバイ」について取り上げる予定です。

またもや駄文・長文になってしまいました。
この貧相な国語力・文章力はそう簡単に治りそうもありませんのでご辛抱下さい。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。


〔ご注意〕

ここで紹介した規則は、本邦で適用されているものではありません。

また、例として利用した時刻表は実在のものですが、出頭時刻、乗務パターンは特定の会社で採用されているものではありません。
あくまでも補足説明のために使用した架空の乗務パターンであることを重ねてご了解願います。
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クルーの疲労 - その2:Acclimatised

 今の世の中、24時間眠らぬ世の中。人も、朝型、夜型、など色々なタイプの人がおりまして、生活パターンも多種多様です。

皆さんは大事な仕事を開始する時点において,あるいは大事なテストを受験する時点において、“体調万全・体が環境に順応していて疲労感は無い”状態で望んでいますか?

今回は、前回予定した通り、Acclimatised - acclimate:〔新しい風土に〕慣れる, 順応する - についてお話します。

FDP: Flying Duty Period の上限値を定める重要な要素の一つに、FDP が開始される時点で、当該乗務を担当するクルーが十分に休息をとり、疲労が蓄積していないか、があります。

「十分な休息をとったか」「疲労が蓄積しているかどうか」を“客観的”に“定量的”に判定するのは難しいことではあるのです。
が、少なくとも乗務パターンを作成する際に、その前の乗務がどのようなものであったかを考慮することは可能です。

例えば、太平洋横断の米国線に乗務し、帰国した翌日から毎日3セクター(3レグ)の国内線を4日連続(3泊4日)の連続乗務がアサインされていたとしましょう。

時差を伴った米国線の帰国翌日からまた‘ Duty ’につくことは、常識的に考えても『十分な休息をとっている』『疲労が蓄積していない』とは思えません。

では、どのような状況であれば、疲労が蓄積しない状態、と考えられるのか。

それを定めるための重要な指針が、Acclimatised - acclimate:〔新しい風土に〕慣れる, 順応する - という定義です。

本邦ベースのクルーであれば、欧米路線のように時差を伴う長大路線に乗務すれば、時差の影響をうけて(疲労をともなって)帰ってきます。その後、何日かベースの時間で過ごせば、一時的に乱れた体内時計も元に戻り、Acclimatised となります。

国内線だけの乗務であっても、連日の乗務が続けば疲労が蓄積してきます。当然、体を休ませて疲労回復しなければなりません。
乗務後は適切な休息をとって、目覚めると『気分爽快、きょうもフライト頑張るぞ』 - Acclimatised となります。

では、Acclimatised について、その定義をみてみましょう。


Acclimatised

英国の Civil Aviation Authority では、Acclimatised を以下のように定義しています。
Acclimatised
When a crew member has spent 3 consecutive local nights on the ground within a time zone which is 2 hours wide, and is able to take uninterrupted nights sleep. The crew member will remain acclimatised thereafter until a duty period finishes at a place where local time differs by more than 2 hours from that at the point of departure.

またまた英語であります。

が、3とか2とか具体的な数字が出ているので、何とか頑張って意訳してみましょう。

3 consecutive local nights 3連続の local nights を on the ground 地上で(空の上は認められない)過ごすと、それは、順応している状態となります。

勿論、 local night もきっちりとした定義されており(でないと、夜鷹のクルーは夜遊びしてしまいますから…)、
Local Night
A period of 8 hours falling between 2200 and 0800 hours local time.

と、現地時間で夜10時から翌朝8時までの間に8時間は横になって寝なさい(眠れる・眠れないにまでは言及していませんが)、と記されています。

さらに、欧州という地理的な事情もあってのことと思いますが、local nights を過ごす地上は1時間までの時差を認めています。 within a time zone which is 2 hours wide

※ロンドンとパリの間には1時間の時差がありますから、この2時間幅の時間帯を認めないと、ロンドンベースの乗務員は休みの日に1泊2日でパリに住む友人宅へも行けなくなってしまいます。

上述した local night だけでは、ちょっと安全性を考慮した拘束力?が弱いと思ってかどうかは定かでありませんが、

 is able to take uninterrupted nights sleep

と、(その3連続 local nights は)「邪魔されずに眠ることができる」ことにも言及し、暗に“良い子は寝なさい”と示唆しています。

前回の“ クルーの疲労 - その1:FDP ”では、この Acclimatised かつ シングル編成 における FDP の上限値についてご紹介しました。

自宅で3夜を過ごし -ちょっと微妙な表現になってしまいましたが、他意は無し- 休養十分、 Acclimatised のクルーが、オペセンに出頭、FDP が開始されたと仮定しましょう。

前回同様、青社3月時刻表、東京~札幌を題材に補足説明してみます。

水曜日の夜10時には自宅にいて「邪魔されずに眠ることができる」状態にあったクルーが、水・木・金と3連続の local nights を過ごし、明日、日曜日の始発便51便に Acclimatised で乗務、FDP が開始されるとしましょう。

※今晩(土曜の夜)を3連続に含めなかったのは、今晩は夜10時から8時間の睡眠をとれないからです。何故なら、出頭時刻( FDP の開始時点)が仮に明朝6時とした場合、自宅を出るのはその1時間~1時間半前となるでしょうから、朝4時には起きなければならないでしょう。

FDP の上限値を守って乗務を終えたクルーは未だ Acclimatised と言えるかどうか、会社にとってもクルーにとっても重要なポイントです。

Non Acclimatised 扱いになれば、クルーは Acclimatised になるまで、また3連続 local nights を過ごさねばなりません。

仮にそうだとすると、札幌の宿泊施設はクルーだらけ。クルーも始発便の札幌便に乗務したら、その後3日間はお休み??

いくら“疲労は大敵”といっても、それではスケジュールを組めません。

FDP の上限値を守って乗務を終えたクルーは、出発地から時差が2時間以内の地点で FDP が終了すれば Acclimatised 状態が維持される、と定義されています。

 The crew member will remain acclimatised thereafter until a duty period finishes at a place where local time differs by more than 2 hours from that at the point of departure.

では、次の FDP までには、どれだけ休息をとって疲労が蓄積を防がねばならないのでしょうか。

それには、Rest Period、Sector、Split Duty、などの理解が必要になります。次回は、それらをご説明しつつ、“適切な休息”をとりあげる予定です。

今回も前回に引き続きの駄文・長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
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クルーの疲労 - その1:FDP

 満員電車に揺られて、しかもお天気は本降りの雨。風も強くて傘も気休め。「あ~ぁ、会社着くまでに疲れてしまったよ」との経験をお持ちの方も少なくないことでしょう。

航空機のクルーとて同様。ベースとなる空港に居を構えている方はおりませんので、皆さんベース(基地)に通勤できる範囲内に居を構えておられます。

成田空港が開港前は - 相変わらずジジイだねぇ - 羽田空港が一大基地でしたので、羽田空港から半径 n km 以内に住みなさい、とのお達しがあり、小生の住処の神奈川などは人気のスポットだったようです。

今では、東京ベースの場合、羽田,成田の両空港への出頭を考慮しなければならないので、どちらへのアクセスにも便利な千葉県も人気のスポットの一つです。

さて、皆さんのお仕事では“勤務開始時間”はどの時点と決められていますか?

「ピッ」とセキュリティ・カードをかざして、入館・入室した時点でしょうか。就業規則に定める時刻からでしょうか。

“勤務終了時間”はどうでしょう。

クルーの“勤務時間”・“乗務時間”を算出するため、各社ともにその基準が就業規則で定めています。
※(プロローグで述べたように、クルーは「(一ヶ月単位の)変形労働制度」でお仕事をしていますので、人によって、日によって、“勤務開始・終了”、“乗務開始・終了”時刻はまちまちです)

本邦では、その日の乗務を開始する出発空港への出頭時刻(ざっくりと、国内線は時刻表に記載されている時刻の1時間前,国際線は1時間半前)が“勤務開始時間”としているキャリアが多いようです。

※実態は、その出頭時刻は“駆け込みセーフ”の時間であり、殆どのクルーはそれよりも前に出頭して、乗務の準備(天気図の解析とか、サービス担当の割り当てとか)をしています。

今回のシリーズでは、出来るだけグローバル・スタンダードに沿った話をしますので、必ずしも本邦の勤務・乗務体系と同一とは限りませんので、その点をご承知おき下さい。

欧米の多くでは、FDT: Flying Duty Period (飛行任務時間、とでも訳しましょうか)という概念をもって勤務時間の管理を行なっています。

英国の Civil Aviation Authority では、FDP を以下のように定義しています。
Flying Duty Period (FDP)
Any time during which a person operates in an aircraft as a member of its crew. It starts when the crew member is required by an operator to report for a flight, and finishes at on-chocks or engines off, or rotors stopped, on the final sector.

平たく言ってしまえば、「クルーとして航空機運航に従事している時間」となります。

「何だ、つまりは“乗務時間”のことでしょう?」

ご尤も。が、上述した短いセンテンスには重要なポイントが....。FDP は 何時開始され、何時終了するか の定義です。

拙い英語力で読解すると、オペレータが要請した出頭時刻(基地の場合はオペセンにShow Upする時刻)が開始時点で、最終乗務区間(「レグ」なんて言い方しますが、CAA では sector という言葉を用いています;sector は運賃計算の時に用いられる用語でもあります)において、ブロック・イン( on-chocks と言ってますね)あるいは、エンジンをカットオフ(プロペラ機の場合、プロペラが停止)した時刻が終了時点です。

ポイントは、出頭時点から FDP が開始されると言うことです。

つまり、飛行前に天気図や衛星画像を解析したり、フライト・プランを吟味したり、NOTAM をチェックしたり、Ship side まで移動して、機体の外部点検をしたり、飛行前の Cockpit Preparation を実施したりしている時間も FDP に含まれるのです。

上に述べた何れも、安全(+経済性+快適性)運航には欠かすことの出来ない作業であり、それに従事している時間もカウントする(考慮する)ことは至極当然と言えましょう。

※本邦でいうところの乗務時間とは、この部分が異なります。小生の知る限り、本邦では最初の乗務区間の出発時刻が開始時点になります。



【 FDP の上限 】

クルーの疲労を防ぐため - 安全性確保において重要なポイントです - FDP には上限値が設定されています。

上限値は、以下の要素から決まります。

 1)基地時間に順応している状態 Acclimatised か、そうでない Not Acclimatisedか。
 2)クルーの編成は、シングル編成か、マルチプル以上の編成か。
 3)出頭時刻、FDP の開始時刻は基地時刻の何時か。
   ※ Not Acclimatised の場合は、FDP 開始前の休息時間がどれだけあったか。
 4)セクターの数。(何区間乗務するか)

一例として、英国の CAA が定める、Acclimatised かつ シングル編成では FDP の上限値が以下のように定められています。

Sectors
Local time
of start
Up to 45678 or more
0600~075910時間9時間15分8時間30分8時間8時間
0800~125911時間10時間15分9時間30分8時間15分8時間
1300~175910時間9時間15分8時間30分8時間8時間
1800~21599時間8時間15分8時間8時間8時間
2200~05598時間8時間8時間8時間8時間

出展:UK Civil Aviation Authority
    CAP 371
    The Avoidance of Fatigue In Aircrews
    Guide to Requirements
    Fourth edition


具体例に当てはめてみたいな、と思い、3月1日~3月31日の青社時刻表、東京~札幌を眺めてみました。

羽田7時発の51便、仮にオペセンへの出頭時刻が5時45分に設定されていたとしましょう。

その場合、参照すべき表は最下段の Local time of start が 2200~0559 が適用になりますので、FDP の上限はセクター(レグ)数に関係なく8時間まで。

出頭時刻が5時45分なら、13時45分までには最終乗務区間を終えなければなりません。

51便に使用される ship は、51-54-63-66-73-76と、羽田~千歳を3往復(6レグ)する運用パターンのようです。

FDP 開始が仮に5時45分だったとすると、63便の千歳到着は時刻表では13時35分になっていますので、それ以上の乗務は出来ません。

3本でお仕舞い。札幌でお泊り、ジンギスカン・キャラメルとなる訳です。

FDP 開始が仮に6時(51便の定刻1時間前)だったとしましょう。そうなると、参照すべきは表の最上段、Local time of start が 0600~0759 が適用になります。

その場合、63便の戻り66便に乗務して羽田まで戻れるか?

戻るとなると、2往復でセクター数は4となりますので、FDP の上限時間は10時間。66便の羽田到着を時刻表で見ると16時05分、おっと、5分オーバーしますから、これまた駄目です。

羽田定刻10時発の59便から始まるパターンではどうでしょう。
Clock Image
当該便の機材は、59-62-69-72の羽田~千歳2往復(4レグ)が組み入れられているようです。

59便から乗務開始するには、出頭時刻が8時より前ということはないでしょうから、仮に、定刻1時間前の9時に出頭し FDP が開始するとして計算してみましょう。

表から、Local time of start が 0800~1259 の場合、4セクターまでの上限は11時間です。

FDP が 9時に開始された場合、4セクターであれば、9+11=20時が FDP 終了時刻となります。

72便の羽田到着は時刻表では19時10分。つまり、この場合には東京~札幌2往復の乗務が可能です。

9時に出社であれば、極端な早起きも必要ないでしょうから、11時間を上限に離着陸4回の連続乗務についても良い、との判断は妥当に思えます。

が、同じ出頭時刻でも、飛行時間が短かったり、折り返しの時間設定が短く、離着陸回数、つまりはセクター数、が増えるパターンの場合、FDP の上限時間は漸減します。

CAP 371 には、FDP 上限を定めた表が、この他に2つあります。
(他に3つあってもよさそうなのですが、何故か2つなのです)

その話をするには、

 基地時間に順応している状態 Acclimatised か、そうでない Not Acclimatised

について理解する必要がありますので、次回(例の如く、いつになるかは確約できず)は、【 Acclimatised 】について説明する予定です。

相変わらずの駄文・長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。



〔ご注意〕

ここで紹介した規則は、本邦で適用されているものではありません。

また、例として利用した時刻表は実在のものですが、出頭時刻、乗務パターンは特定の会社で採用されているものではありません。
あくまでも補足説明のために使用した架空の乗務パターンであることにご注意下さい。
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こ、これは…あの…

 先日、 Digital Aviator さん が『 サッポロビールなキャラメル 』との投稿をされておりました。

そのときは、「ほ~っ、世の中にこんな商品もあるんだ」「やはり小生にはビールに合う“じゃがポックル”かな」「コンビニ限定商品だけど、当該商品は別名で買えるようになって良かった・良かった」程度思って拝読しておりました。

当該記事の コメント を読み進めていくと、「tsugumin」さんの以下のコメントが....。

ジンギスカンキャラメルは買わない方が身の為ですw
ネタ的に今イチですが、
ハスカップキャラメルが一番おいしいと思います☆
「世の中には“ジンギスカンキャラメル”なるものもあるのか」と共に何故か「> 身の為ですw 」のフレーズを無意識のうちに関連付けていたのでした。

で、きょう(厳密には“昨日”ですね)、会社の給湯室のお土産コーナー?を何気なく見たら、ぐぅぇっ!「ジ・ジ・ジンギスカン」だぁ。

ジンギスカンキャラメル


誰が買ってきたんだろう、とイントラでスケジュールを確認すると、数人の候補者が....。まっ、あの方かな?

う~ん、やはり読むべきものは Digital Aviator さんのブログだなぁ。そして、当然ながらコメントも隈なく目を通す。これ基本。

この写真はイメージです。
Digital Aviator さんの
 “ジンギスカンキャラメルと共に並んでいました”
のレスにすかさず反応してくださった 「tsugumin」 さんのコメントがなかったら、イメージ写真につられて、

 “身の為”

の教えに反する行為に出ていたでしょう。

(心の奥底からは“好奇心”の悪魔のささやきも聞こえたのですが....;
 一方で、何で“ハスカップキャラメル”買ってこなかったの?との怒りも;
 いやいや、折角の「お土産」、そのような発想は良くありませんね。反省)

もう一つの「お土産」は、完売状態であったのですが、こちらは…未だ9粒残っているようで....。

残り9粒


帰宅前に覘いたら、完売していたので『目出度し、目出度し』。

「Digital Aviator」さん、「tsugumin」さん、貴重な保安情報?をありがとうございました。
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クルーの疲労 - プロローグ

 運航乗務員,客室乗務員とて人の子、我々と同じように「お腹も空く」し「眠く」もなります。長時間に亘って勤務を続ければ、人並みの、否 - そのお仕事の性格から - 人並みを遥かに超える“疲労”に襲われます。

世の中には9時~5時で仕事をなさっている方の他にも、三交代勤務や不規則な勤務時間体系でお仕事をされている方も沢山おられます。航空関係のお仕事に従事されている方の多くが、not( 9時~5時 ) の勤務体系だと思います。お疲れさまです。

小生は9時~5時の部類に入るのですが、最近ニュースでも登場した Exemption でありまして、労働基準法上は裁量労務制の扱いになっているらしいので、『働けど働けど給与は上がらず、上がるはストレス・メータばかりなり』でございます。
申請却下
公共交通機関である航空機の運航に携る、運航乗務員・客室乗務員の方々は、労基法的には「(一ヶ月単位の)変形労働制度」に分類されます。
会社により多少の差異はあると思いますが、本邦では、通常は“スケジューラ”と呼ばれる方が、一人ひとりの一ヶ月の勤務割りをまるでパズルを解くように作り上げ、月末(25日頃)に翌月のスケジュールを数多のクルーに配布します。

このスケジュール(勤務割)作成、大所帯ともなると大変な作業です。

運航乗務員は乗務できる機種が一つに決められています(型式限定という)。さらに、機長は就航できる路線,空港に制限が加わります。客室乗務員の方々も“保安要員”でありますから、訓練を受け社内資格を持っている機種にしか乗務できません。

最初からそんな制約がある中で、勤務時間の制限,資格維持のための審査や検査,一定期間毎に受講を義務づけられている訓練,本人からの休暇申請,等を考慮して、あの時刻表に載っている便の乗務担当を決める訳です。
また、乗務予定当日に体調を崩したとか,家事都合が発生したと乗務員のピンチヒッターとして、不測の事態が発生しても、いつでも乗務に就けますよ、と準備している“スタンバイ”も大事な役割として毎月のスケジュールの中には含まれています。

それら種々の要素を考慮して個々のスケジュールを作成する作業は大変なことです。
ベーコン・エッグのみ?
本邦では「決めたスケジュール」を配布する、というスタイルですが、世界的には色々バラエティに富んでいるようで、米国のとあるキャリアでは、予め機種や勤務時間制限などを考慮に入れた乗務パターンの断片(当然ながら凄い種類と数になります)を提示して、セニョリティ上位の人から自分のお皿にチョイスしていく、と言った朝食バイキングさながらの方式をとっているそうです。

稼ぎたい月は、お皿に支払いの良いパターン(乗務時間に応じて乗務手当=手にする額が異なりますから)を取り、家族との時間を多く持ちたい月は、泊まりのすくない短距離往復のパターンをちょっとだけお皿に盛る、などの裁量が乗務員自ら出来るのだとか。勿論、自分の番が回ってきたときに、希望の品が残ってなければアウトですが....。

この方式は客室乗務員も同様で、恋人とのデートに忙しい若い方は、お泊りもない国内線をチョイスし、子育ても一段落付いたベテランのお方が本邦路線等、時差付き+お泊り付きの長大路線パターンで旦那から長期間逃避する、と言った真偽の程は定かでない噂もあるくらいでして。

さて、この勤務の根底にあるのも、やはり「安全運航(安全性確保)」であります。

“疲労困憊”で乗務されたのでは、集中力欠如により安全性が損なわれるのは言うまでもありません。

「疲労が顕在化しない」「疲労が蓄積しない」乗務時間の制限が不可欠です。

“国際線”乗務においては、時差の問題も発生します。

と書くと、“国内線”はあたかも楽のように誤解を招きますが、“国内線”も厳しい乗務です。

“国際線”、ことに長距離国際線は乗務時間中に巡航が占める割合が殆どで、9時間乗務したけど離着陸はそれぞれ1回、となります。が、“国内線”の場合、一日の乗務中に離着陸をそれぞれ3回,4回とこなさなければならないパターンも少なくなく、肉体的・精神的な疲労は“国際線”のそれに負けず劣らずです。

「運航乗務員の疲労回避」については航空先進国では当たり前のように調査・研究がなされ、その成果が第三者機関や航空当局から“勧告”として発表され、各キャリアがそれを遵守することが求められています。

本邦は?と言うと、「改善されつつはある」ものの、残念ながらグローバル・スタンダードとはまだ温度差があるのが現状です。

相変わらず“続編”をいつ投稿できるかは不確定でありますが、運航乗務員の“疲労”とその対応策について、これから取り上げてみる予定です。

参考資料としては、英国の民間航空当局 UK Civil Aviation Authority の命令書 Order を用います。

同様の調査・研究(運航乗務員の疲労について)は、NASA や FAA, Canada, Australia 等でも行なわれているのですが、それらの最大公約数をとろうとすると当方の“疲労が蓄積”してしまいますので。

漠然とした話で具体性が無くお怒りかと思いますので、プロローグの最後に幾つか具体的な定義をご紹介しましょう。

*朝っぱらから仕事するなぁ*
 'Early Start Duty' :現地時間の午前5時から午前6時59分に出頭する勤務

*夜中まで仕事しちゃったなぁ*
 'Late Finish Duly' :現地時間の午前1時から午前1時59分に終える勤務

*夜勤かよ*
 'Night Duty' :現地時間の午前2時から午前4時59分にほんの少しでもかかる勤務

*夜ですよ、寝なさい*
 'Local Night' :現地時間の午後10時~午前8時までの間で、8時間。

*お泊りはちゃんとした施設がいいなぁ*
 'Suitable Accommodation' :以下の条件を備えた寝室(宿泊施設)
  -騒音が最小限であること
  -換気が良好であること
  -明るさ(照明や遮光カーテン)がコントロールできること
  -室内温度がコントロールできること
 (この項目について小生の感想)
   ●シャワーや浴槽は必須ではないのか!?(まぁ、ヨーロッパだからね)

と、こんな感じで、語句の定義に始まり、乗務時間 FDP: Flight Duty Period の算出方法から、乗務時間の上限、最低限の休息必要時間(日数)などが決められているのでした。

次回?以降、その具体的な事項を説明する予定です。
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2号機は既にお化粧も終えて...

 Boeing787、Dreamliner の部品搬送用に Boeing747-400 を改造した Dreamlifter 。その2号機が、去る2月16日に初飛行を終えました。

2号機は台北桃園( Taoyuan )国際空港から離陸後3時間8分の初飛行を終え、台北に戻りました。

2号機は、数週間後、シアトルの Boeing field にフェリーされるようです。

1号機は味気ない?塗装でしたが、2号機は既に白い機体に青い垂直尾翼とエンジン・ポッド。そして、同じく青い文字で“ DREAM)LIFTER ”の塗装が施してあります。

写真は こちら です。

1号機は、先日、セントレアにもやって来ましたが、2号機も完成し、いよいよ Boeing787 の組み立ても間近に迫った感があります。

Dreamlifter、既に1000時間を超える試験飛行+地上でのテストを終えており、ここ数ヶ月中にも FAA: Federal Aviation Administration (米国連邦航空局)の耐空証明を取得できる見込みだそうです。

若干のスケジュール・スリップがありますが、肝心の Dreamliner の計画には影響が無いだろうとのこと。

以下、2号機の初飛行を伝える、ボーイング社のプレス・リリースです。

Second Boeing Dreamlifter Takes First Flight

TAIPEI, Taiwan, Feb. 16, 2007 -- The second Boeing [NYSE: BA] 747-400 Dreamlifter completed its first flight earlier today in Taipei. The Dreamlifter is a specially modified 747-400 used to transport the major composite structures of the all-new 787 Dreamliner.

Piloted by Boeing Flight Test Pilots Jerry Whites and Gary Meiser, the Dreamlifter took off from Taiwan Taoyuan International Airport at 10:34 a.m. and flew for three hours and eight minutes. The airplane -- already wearing the distinctive white and blue livery of the Dreamlifter fleet -- handled well during the routine flight.

This Dreamlifter is expected in Washington State within the next few weeks. The first of the unique fleet arrived in September 2006.

Evergreen Aviation Technologies Corp., part of Taiwan's Evergreen Group, is modifying the fleet of three airplanes at its facility at the airport. The first Dreamlifter delivered the first 787 major assemblies from Nagoya, Japan, to Charleston, S.C., last month.

After several delays late last year, the Dreamlifter's flight test program is proceeding well, with certification from the U.S. Federal Aviation Administration expected over the next few months. Already the Dreamlifter has completed more than 1,000 hours of flight and ground testing combined.

"The delays we experienced earlier in the flight test program will not impact our overall 787 schedule," said Scott Strode, vice president of Airplane Definition and Production for the 787 program. "The entire global logistics system, including the Dreamlifter's mobile tail support and cargo loader, is working extremely well."

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The second Boeing Dreamlifter during first flight in Taipei (Neg#: K63948)

Photo Credit: Boeing Photo
Neg #: K63948

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2007年、春節

 エコーを見て、TAF を読んで、西方の METAR Sequence を参考に、適度に Delay Set 、念のために "May Return" をかけて横浜は中華街に行ってきました。

今朝の投稿で書いたように、きょうは中国の旧正月にあたる“春節”です。

横浜中華街では 2007年春節 を開催中です。

"May Return" かけたものの、お天気は回復し、到着時には晴れ間が見えるほどになりました(タイトル写真)。

お目当ての“獅子舞”を撮影しようとしたものの、撮影担当の財務大臣殿、人混みの中で「私ゃも少し背が欲しい~」。

獅子舞


目的地に着いてしまったからには、同行者のお目当てである、雑貨や中国茶のお店をぐるくるといたしまして、その間、小生は“乗務の中断”扱いであります。

で、やっとのことで復路に備えて“ Fueling ”。

翡翠でマンゴー・プリン
(中国茶のお店“翡翠”にて)


マンゴー・プリンは欠かせません。

どこのお店も、そしてインフォメーション・センターにまで“春節”の飾り付けがしてあり、いつもとは趣が異なった、また一際賑やかな横浜中華街でした。



夜になっても、人波が絶えることは無く、誘惑にも駆られましたが、良い子は早く寝ないとネ。

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凄い雨

 雨音で目が覚めました。小生の住処付近では7時~8時頃が激しかったかな。

羽田空港のMETARも、

RJTT 180000Z 36013KT 2500 RA BR FEW006 OVC040 06/05 Q1005 RMK 2ST006 8NS040 A2970 MOD TURB BTN 12000 AND 16000FT OVER YOKOSUKA BY A300 AT 2335 P/FR
RJTT 172330Z 35012KT 2500 RA BR FEW006 SCT008 BKN015 06/04 Q1007 RMK 1ST006 3ST008 7SC015 A2974
RJTT 172300Z 33010KT 2500 RA BR FEW006 SCT008 BKN012 05/04 Q1007 RMK 1ST006 4ST008 7SC012 A2975
RJTT 172230Z 36008KT 2300 RA BR FEW006 BKN008 BKN015 06/04 Q1007 RMK 1ST006 6ST008 7SC015 A2976
RJTT 172200Z 35010KT 2300 RA BR FEW006 BKN008 BKN015 06/04 Q1008 RMK 1ST006 5ST008 7SC015 A2977
RJTT 172130Z 36010KT 2200 RA BR FEW007 BKN009 BKN015 06/04 Q1008 RMK 1ST007 5ST009 7SC015 A2977
RJTT 172100Z 36009KT 3000 RA BR FEW008 BKN015 06/04 Q1008 RMK 2ST008 7SC015 A2978
RJTT 172042Z 36009KT 3000 RA BR FEW007 SCT009 BKN015 06/04 Q1009 RMK 1ST007 4ST009 7SC015 A2979
RJTT 172030Z 36009KT 3500 -RA BR FEW007 SCT009 BKN015 06/04 Q1009 RMK 1ST007 3ST009 7SC015 A2980
RJTT 172000Z 02010KT 3000 RA BR FEW007 BKN009 BKN015 06/04 Q1009 RMK 1ST007 5ST009 7SC015 A2979

と、SHRA ではなくて RA 、つまり止む間なく降り続いていることを報じております。


午前8時50分の状況(東京都下水道局:東京アメッシュより)


午前9時〔日本時間〕の定時通報では、気圧の急速な降下 P/FR Pressure Falling Rapidly が報じられました。

きょうは横浜中華街の 2007年春節 に出掛ける予定なのだけど、この状況では、少々 Delay Set して May Return かけて出発かなぁ....。
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バレンタインデイに想う

 今更言うまでも無く、今の世の中“情報化社会”です。

堅苦しい話で恐縮ですが、この偏屈オヤジが若かりし頃、“コンピュータはインテリジェンス・ミラーである”との教えを受けた記憶があります。(そのころは“パソコン”なんて気の利いたものは黎明期で、“パンチ・カード”を「だらららら~~」と読み込ませて、国際事務機器製のコンピュータを使うのが専らでした)

“インテリジェンス・ミラー”、当時はもとより今でも通用する名言だと思っています。

「コンピュータは自分の知性を映す鏡である」と....。

小生なんぞ、知性に欠けていたもので、あの貴重な資源を有効利用していたのかは甚だ疑問であります(単なる紙資源の無駄遣いをしていたのかも)。

今の情報化社会、インターネットに限らず、色々な媒体を介して情報が入り込んできます。

さながら情報の洪水です。

今のこの“情報化社会”も、社会そのものが“インテリジェンス・ミラー”であると考えています。

ポイントは二つ。

ひとつ目は、溢れる情報の中から、自分にとって有益なものを如何に取捨選択し、さらにそれを“己の知識”として消化し、蓄積するか。

(う~ん、こうして書いていて、それが全く出来ていない - 情報の洪水に流されてしまっている - 自分が情けない)

ふたつ目は、とても重要なことで、ここが今日の“インテリジェンス・ミラー”と言えると思うのですが、“己が得た知識”を如何に正しく“知恵”として使うか。

(あちゃ~、これまた痛い。が、間違った使い方はしていないとの自負はあります。小生が痛いのは、知識が体系だって整理されておらず、いつも散らかった部屋で探し物をしている状態にあること....)

“知識”は“知”が示すように、本来、智をもって理解している事柄、であるのが本来の姿の筈です。

が、社会の歪みが顕著になってきつつある今日では、持てる情報を悪意を持って利用しようとする輩が散見されるようになってきました。

とても悲しく、憂うべきことです。

何も今の世の中に限らず、水戸黄門様の時代から『お主も悪よのぉ~』という輩は居った訳ですが、その頃と今とでは『悪よのぉ~』の輩が入手できる情報量・情報の質が桁違いです。

“悪知恵”という言葉があるように、“知識”を間違った方向に使うと、今の世の中ではそれはれっきとした“凶器”になり得ます。

“人生を豊かにするもの”とするか、社会に脅威を与える“凶器とするか”、情報を手にしたものの“インテリジェンス” - あるいはモラールと言っても良いでしょう - に依存しているのです。

最近、情報の海に溺れている偏屈オヤジが、バレンタインに頂戴した希少なチョコレート(間違いなく“義理チョコ”なのでしょうが、能天気なオヤジはすぐ舞い上がる)を眺めて考えた戯言でした。

“鬼嫁” 財務大臣からは経費節減の折、チョコレートは頂戴しておりません。

(今度、福岡のパターンが入っても“明太子”のお土産は無しだな)
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PAXの「みなさんのおかげです(した?)」

 当時話題となっていた(今でも廃れてはいないが…)“ブログ”なるものを始めたのは、2005年の冬、1月17日のことでした。

早いもので、その日から丸二年以上経過し、当愚ブログも三年目に突入しております。

“管理ページ”の「記事一覧」を見たら、記事の数は644件(当記事は含まず)と表示されています。重ねに重ねた駄文が644、この中には書きかけや、酷すぎて公開していない“草稿中”(う~ん、聞こえは良いけど…)のものも含まれているのですが。まぁ、600件を超える下手な文章の稚拙な投稿を重ねてきたことになります。

ここまで続けてこられたのも、こんなブログにアクセスし、ちらりとでも読んで下さる希少な皆様のお陰です。

いわゆる“常連さん”はもとより“通りすがり”の方にも「コメント」を頂いたり、本当に皆様に支えられての三年目突入でありまして、心より感謝いたしております。

ありがとうございます。

半分、興味本位でアクセス・カウンタを付けたのが、開設から7ヶ月後の2005年8月17日でした。

“興味本位”の言葉が示すように、最初は自分の中では“高度計”に例え、「 FL370 くらいまでは到達するかな?」程度に考えていたのですが、先程スナップショットを撮ったそれは、



でありまして、とんでもない数字を示すに至りました。

カウンタを付けて半月とたたない2005年8月30日、どこぞのポータルか掲示板から記事にリンクが貼られたのか、



こんな突風が吹いたことがありました。

その頃の「アクセス数」を見ていただけば一目瞭然ですが、日に3桁のアクセスがあれば御の字でありました。

そんな状況だったのに、今では有難いことに日に200を超えるIPからアクセスしていただき、こんな「読み難く・不思議な内容で・長文」と三拍子そろった駄文を日に400~500ページも閲覧して頂いております。



下種な推測でお恥ずかしいのですが、今日か明日には桁上がりがありそうです。

“きり番”とかは気にしない性格の小生ですが、もし、下5桁に“0”が並んでおりましたら、気が向いたならコメントでも残していただけると嬉しゅうございます。


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ちょっとおさらい - 気象通報式

 “霧”には幾つかの種類がありますが、そのうちの一つとして「“雲”(こちらも十雲形を基本にバラエティ豊か)の雲低が下がり地表面にまで達した」ことによるものがあります。

以前、“気象通報式”について稚拙な記事を何回か投稿しましたが、部分的ではありますが、ここいらでちょっとおさらいを。

この投稿の motivation は、昨日の広島空港の運航状況を、とある師匠(と小生が勝手に崇拝している御方)の日記で拝読したことからです。

タイトル画像に用いたのは羽田~福岡線で上空から撮影した広島空港ですが、このようにお天気が良ければ苦労はないのですが....。

それでは、先ずは、昨日(2月9日)の広島空港( ICAO Airport Code: RJOA )の気象通報式を以下にダラダラと並べました。
[出所は NOAA Aviation Weather Center, Aviation Digital Data Service(ADDS) です]

RJOA NIL
RJOA 091200Z 31005KT 240V050 3500 BR FEW003 BKN010 10/10 Q1009
RJOA 091121Z VRB03KT 2500 BR FEW000 SCT005 BKN010 10/10 Q1009 RMK 1ST000 3ST005 5ST010 A2982
RJOA 091100Z 28006KT 260V330 2500 BCFG BR FEW000 SCT003 BKN006 10/10 Q1009
RJOA 091048Z 28004KT 2000 BCFG BR FEW000 SCT003 BKN005 10/10 Q1009 RMK 1ST000 3ST003 5ST005 A2981
RJOA 091035Z 25003KT 1500 R10/P1800N -RA BCFG BR FEW000 SCT001 BKN003 10/10 Q1009 RMK 1ST000 3ST001 5ST003 A2981
RJOA 091029Z 25003KT 0300 R10/P1800N FG -RA VV001 10/10 Q1009 RMK A2981
RJOA 091023Z VRB03KT 0600 R10/P1800N FG -RA VV002 10/10 Q1009 RMK A2981
RJOA 091000Z VRB03KT 1800 -RA BCFG BR FEW000 SCT001 BKN003 10/10 Q1009
RJOA 090947Z 27002KT 0600 R10/0600V1600U FG VV002 10/10 Q1009 RMK A2981
RJOA 090938Z 25003KT 0600 R10/0550V0900D FG VV002 10/10 Q1009 RMK A2980
RJOA 090930Z VRB03KT 0600 R10/0800V1400N FG -RA VV002 10/10 Q1009 RMK A2980
RJOA 090921Z VRB03KT 0400 R10/0550V0900N FG -RA VV002 10/10 Q1009 RMK A2980
RJOA 090912Z 24004KT 180V280 0600 R10/0800V1800D FG -RA VV002 10/10 Q1009 RMK A2980
RJOA 090900Z 23004KT 190V280 0300 R10/0750VP1800U FG -RA VV001 10/10 Q1009
RJOA 090800Z VRB03KT 0100 R10/0450V0650D FG -RA VV001 10/10 Q1009
RJOA 090717Z 16002KT 0100 R10/0450V0650N FG -RA VV001 10/10 Q1009 RMK A2979
RJOA 090700Z 00000KT 0100 R10/1400VP1800U FG -DZ VV001 10/10 Q1009
RJOA 090645Z 00000KT 0100 R10/0450V0600N FG -DZ VV001 10/10 Q1009 RMK A2980
RJOA 090631Z 20001KT 0100 R10/0550V1500D FG -DZ VV001 10/10 Q1009 RMK A2980
RJOA 090600Z VRB02KT 0100 R10/0350N FG -DZ VV001 10/10 Q1009
RJOA 090548Z VRB02KT 0100 R10/0400V0700D FG -DZ VV001 10/10 Q1009 RMK A2982
RJOA 090534Z VRB02KT 0200 R10/0550V1600D FG -DZ VV001 10/10 Q1009 RMK A2982
RJOA 090511Z VRB02KT 0400 R10/P1800N FG VV002 10/10 Q1009 RMK A2982
RJOA 090500Z VRB01KT 0800 R10/P1800N FG VV003 10/10 Q1009
RJOA 090447Z VRB01KT 0400 R10/0400VP1800U FG VV002 10/10 Q1010 RMK A2983
RJOA 090432Z VRB02KT 0100 R10/0250V1100D FG VV001 10/10 Q1010 RMK A2983
RJOA 090420Z VRB02KT 0200 R10/0550V1300D FG VV002 10/10 Q1010 RMK A2984
RJOA 090400Z VRB02KT 0500 R10/P1800N FG FEW000 SCT001 BKN008 10/10 Q1010
RJOA 090343Z VRB02KT 0700 R10/0700VP1800U FG -RA FEW000 SCT001 BKN008 10/10 Q1010 RMK 1ST000 3ST001 5ST008 A2985
RJOA 090316Z 15002KT 0300 R10/0600V1000U FG -RA FEW000 SCT001 BKN008 10/10 Q1011 RMK 1ST000 3ST001 5ST008 A2987
RJOA 090307Z 15002KT 0100 R10/0500V1100U FG -RA FEW000 SCT001 BKN008 10/10 Q1011 RMK 1ST000 3ST001 5ST008 A2988
RJOA 090300Z VRB02KT 0100 R10/0550N FG -RA FEW000 SCT001 BKN008 10/10 Q1011
RJOA 090234Z VRB02KT 0500 R10/1000VP1800D FG -RA FEW000 SCT001 BKN015 10/10 Q1012 RMK 1ST000 4ST001 5CU015 A2990
RJOA 090230Z VRB02KT 1000 R10/P1800N -RA BCFG BR FEW000 SCT001 BKN015 10/10 Q1012 RMK 1ST000 4ST001 5CU015 A2990
RJOA 090200Z 12002KT 1400 R10/1200VP1800U -RA BCFG BR FEW000 SCT001 BKN015 10/10 Q1012
RJOA 090145Z 14003KT 0600 R10/0750V1200N FG -RA FEW000 SCT001 BKN008 10/10 Q1013 RMK 1ST000 4ST001 5ST008 A2992
RJOA 090100Z VRB01KT 1500 R10/P1800N -RA BCFG BR FEW000 SCT001 BKN015 10/10 Q1013
RJOA 090034Z 00000KT 0700 R10/0550VP1800U FG -RA FEW000 SCT001 BKN015 10/10 Q1013 RMK 1ST000 4ST001 5CU015 A2993
RJOA 090031Z 00000KT 0700 R10/0500V0800U FG -RA FEW000 SCT001 BKN015 10/10 Q1013 RMK 1ST000 4ST001 5CU015 A2993
RJOA 090015Z VRB02KT 0600 R10/0350V0550N FG -RA FEW000 SCT001 BKN010 10/10 Q1013 RMK 1ST000 3ST001 5CU010 A2993
RJOA 090009Z 00000KT 0500 R10/0350V0500N FG -RA FEW000 SCT001 BKN005 10/10 Q1013 RMK 1ST000 4ST001 5ST005 A2994
RJOA 090000Z 00000KT 0300 R10/0350V0500U FG -RA VV002 09/09 Q1013
RJOA 082300Z VRB03KT 0100 R10/0250N FG -RA VV001 08/08 Q1013
RJOA 082200Z VRB02KT 0100 R10/0400V0550N FG VV001 08/08 Q1013
RJOA 082148Z 13004KT 110V220 0100 R10/0350V0650D FG VV002 07/07 Q1013 RMK A2992
RJOA 082145Z 16004KT 110V290 0100 R10/0400V1300D FG VV002 07/07 Q1013 RMK A2991
RJOA 082120Z 32006KT 0300 R10/0500VP1800U FG FEW000 SCT001 BKN050 10/10 Q1012 RMK 1ST000 3ST001 5SC050 A2991
RJOA 082110Z 31005KT 0300 R10/0500V0800D FG FEW000 SCT002 BKN050 10/10 Q1013 RMK 1ST000 3ST002 5SC050 A2992
RJOA NIL

広島空港 RJOA は、国土交通省航空局 CAB が管理する第2種空港で、標点 ARP: Airport Reference Point 標高は331m( 1086 feet )と中国山地の山岳部にあります。運用時間は〔日本時刻で〕07時30分~21時30分、気象観測の運用時間は〔日本時刻で〕06時00分~21時30分です。

(大阪航空局提供の広島空港の紹介は こちら

さて、昨日の気象通報式では日中の卓越視程は、午前10時( 090100Z )と午前11時( 090200Z )および同30分( 090230Z )に、それぞれ 1500m, 1400m, 1000m と 1000m 以上が報じられていますが、その他は全て 1000m 未満です。

卓越視程,方向視程,滑走路視距離のいずれかが 1600m 以下の場合には、気象光学観測機器を用いた滑走路視距離の観測が実施されます。
※観測装置は大別すると「透過率方式」と「前方散乱方式」の二種類があります。

昨日の卓越視程をみると、午後7時( 091000Z )には 1800m、また同48分( 091048Z )に 2000m 、午後8時( 091100Z )に 2500m、それ以降は 2500m 以上を報じていますが、その他は 1600m 以下ですから、滑走路視距離 RVR の観測結果が報じられています。

卓越視程と現在天気の間に報じられているのが“滑走路視距離”です。

“滑走路視距離”とは、
  滑走路中心線上にある航空機のパイロット(パイロットの目線位置 Pilot Eye Level は滑走路面上5mを想定)が滑走路面の標識または滑走路の輪郭を示す灯火を見ることができる最大距離

  Runway visual range (RVR). The range over which the pilot of an aircraft on the center line of a runway can see the runway surfece marking or the lights delineating the runway or identifying its center line. [ ICAO Annex 3 Meteorological Service for International Air Navigation CHAPTER 1. DEFINITIONS より]

ICAO Annex 3 Meteorological Service for International Air Navigation - Fifteenth Eddition


と定義されており、実際に着陸に使用されている滑走路の接地帯を代表する値が通報されます(通報されるのは最大で4群まで)。

 Rに続いて滑走路番号、斜線(/)、4桁で示した10分間の平均RVR値、変化傾向を表す記号

により表されます。

昨日の広島空港は、精密進入方式による Runway 10 が着陸滑走路として使用されていたため、RVRの通報は
 R10/[P or M]nnnn[V[P or M]nnnn][U, D or N]
の形式をとります。

斜線(/)の直後に P または M が記されて4桁の数字が報じられる場合があります。

この P または M は、観測値が観測機器の性能範囲から外れている場合に報じられ、
 -性能範囲の上限を上回っている場合には、Pに続いて測定範囲の上限値
 -性能範囲を下限を下回っている場合には、Mに続いて測定範囲の下限値
が示されます。

  R10/P1800 と報じられている時刻が幾つかありますが、この通報より広島空港 Runway 10 に設置されたRVR観測機器の上限値が1800mであり、当該報告がなされているときの観測値は、1800mを上回っていた、ということになります。

RJOA 082110Z の通報式のように、四桁の観測値の直後に V を伴い [P or M]nnnn の値が通報されている場合が多く見うけられます。

この [P or M]nnnnV[P or M]nnnn は、RVRの観測値が安定していなかった(定常的でなかった)場合です。

具体的には、観測時刻前10分間における1分間の平均値の極値が、10分間の平均値よりある一定値(=50mまたは10分間の平均値に0.2を乗じた値のどちらか大きいほう)を超えて変動している場合には、
 10分間の平均値ではなく、1分間平均値の最小値と最大値が報じられます。

つまり、RJOA 082110Z 31005KT 0300 R10/0500V0800D は、

2100Z(午前6時)から 2110Z(午前6時10分)までの10分間の観測において、1分間の平均値の極値が10分間の平均値よりも一定値を超える変動を示したので、1分間平均の最小値は500m、最大値は800mであったことを示しています。

【例】仮に10分間の平均値が600mであった場合、0.2を乗じた値は120mとなり50mよりも大きいので、120mが判定基準値となり、1分間の平均値の変動幅が120mを超えていた場合には、
 [P or M] 一分間平均の最小値 V [P or M] 一分間平均の最大値
と通報をしなければなりません。

昨日の広島空港、[P or M]nnnnV[P or M]nnnn のフォーマットが多かったということは、「定常的に視界が悪い」というよりは「RVRがころころと変る、見えたり見えなかったりが激しい状況」であったと言えます。

“滑走路視距離”の最後の項目は、「変化傾向」です。

RVRの変動が激しいことと共に、RVRが“悪化傾向”にあるのか“回復傾向”にあるのか、それとも“さして変化無し”なのかは、運航上の考察・判断において重要なファクターになります。

RVR通報の最後に、UD または N を付加して、RVRの変化傾向を報じます。
※末尾に U, D, N が付加されていない場合、それは変化傾向が不明であることを示しています。

具体的には、 観測時刻前10分間を前半の5分間と後半の5分間に別け、それぞれ5分間の平均値の差に応じ;
 -N:それぞれの差は100m未満。
 -U:後半5分の平均値は前半5分のそれより100m以上上昇した(良くなった)。
 -D:後半5分の平均値は前半5分のそれより100m以上下降した(悪くなった)。

これらの知識があれば、昨日の広島空港の“滑走路視距離”を読み取れると思います。



「おさらい」ついでに、“現在天気”の項についても少々。

“現在天気”は、雷電等の特殊な気象現象を除き、
  飛行場とその周辺(半径約10km以内)の運航上重要な気象現象について、
   天気略号を適切に組み合わせて、重要な順に最大3群まで通報されます。
  ※天気現象が天気略語のいずれにも該当しない場合には省略される。

昨日の広島空港では、「視程障害現象」に区分される FG (Fog) “霧”は当たり前ながら多いですね。

-b) Obscurations (hydrometeors)
 FG (Fog) :“霧”、視程1000m未満
   Reported when visibility is less than 1000m, except when qualified by "MI", "BC", "PR" or "VC".
 BR (Mist) :“もや”、視程1000m以上5000m未満
   Reported when visibility is at least 1000m but not more than 5000m.

「降水現象」としては RADZ が報じられています。

-a) Precipitation
 DZ (Drizzle) :霧雨
 RA (Rain) :雨

 降水現象には「強度」を組み合わせて示すことが出来るので、それぞれの記号の前に - が付いている場合は当該現象が“弱( light )”であることを示し、無記号のときは“並”( moderate )であることを示しています。

[ICAO Annex 3 Meteorological Service for International Air Navigation Appendix 3 より]
Recommendation.In local routine and special reports and in METAR and SPECI, the relevant intensity or, as appropriate, the proximity to the aerodrome of the reported present weather phenomena should be indecated as follos:
 (local routine and
special reports)
(METAR and SPECI)
LightFBL
ModerateMOD 
HeavyHVY

Used only with DZ, GR, GS, PL, RA, SG and SN (or in combinations involving these present weather types; in these cases, intensity refers to precipitation in accordance with 4.4.2.6); DS and SS (in the case of DS and SS, only moderate and heavy intensities to be indicated).

BCFG との通報がありますが、その BC は「特性記号」に該当します。

 BC (Patches) :散在している
   Fog patches randomly covering the aerodrome.
 MI (Shallow) :地表面浅く
   Less than 2 m (6 ft) above ground level.
 PR (Partial) :部分的な
   A substantial part of the aerodrome covered by fog while the remainder is clear

本文の文字数も9900文字を超え、限界が近いのできょうはここまでです。

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ヨーロッパの空、ATC周波数 8.33 kHz 単位へ移行中

 航空交通量の増加に伴う施策、それら全ての根底には言うまでも無く安全確保がある訳ですが、は多方面に及びます。

航空交通管制、所謂ATCの空対地上の音声通信は“空の安全確保”の重要な役割を担っています。

この通信に使われる周波数帯域は国際的に定められており、民間機の場合、管制機関と航空機間のVHF音声通信には百ほにゃららMHz~百ペケペケMHz間の、決して広くは無い周波数帯が割り当てられております。

航空交通量も少なく、地上のステーションも少ない航空機数に対処できれば充分であった時代には、割り当て周波数帯内で 100 kHz 単位のセパレーション(つまり contact XXX tower, 1**.* (MHz) 、のように小数点以下一桁まで)もあれば何の問題もありませんでした。

【余談】
成田空港開港直後は、ときどき羽田の管制( Tokyo Tower )に“ Narita Tower, ~”と呼び込んでくる外国のキャリアがいたものです。

が、航空交通量が増大してくると、地上のステーションでは複数の周波数を使い分けたり、あるいは、いわゆる○○セクターと言われる航空交通管制を担当する空域を細分化(=ステーションの数が増える)して対応しなければなりません。

割り当て周波数帯域が限られていますから、100 kHz 単位のセパレーションですと、自ずと割り当て周波数( 1**.* (MHz) )の上限が決まってしまいます。

周波数帯域がVHFであり、航空機側,地上側の送信出力も限られていますから、日本周辺での送信が米国まで届く筈も無く、日本国内でも、遠く離れていれば問題ありません。

そう考えると、100 kHz 単位のセパレーションでも充分間に合うのでは、と思われるかもしれませんが、どっこい、そうそう甘くはありません。

小生が(俗に言う“エアバンド”を)傍受していた頃には、既に周波数のセパレーションは、50 kHz 単位での運用がなされておりました。

※管制機関の周波数は 100 kHz 単位の場所にありましたが、航空会社が社内連絡用に使う所謂“カンパニー・レディオ”の中には、1**.9 MHz と 1**.85 MHz と隣接して使用している某社などがあり、非力な受信機では相当苦労したことが思い出されます。

限られた周波数帯域内で、より多くの局の周波数を確保しようとすると、分解能を上げるしか手段がありません。

現在では、25 kHz 単位のセパレーションで周波数が割り当てられています。

つまり、1**.n の下に、.n00, .n25, .n50, .n75 の四波が割り当てられています。

※ただし周波数表記および通信においては最下位桁に5が付く周波数では当該桁の5は省略されています。また、小数点以下2桁目以降が 00 の場合には、その 00 も省略されます(音声通信においても発音しません)。
つまり、周波数表記および発音では、1**.n, 1**.n2, 1**,n5, 1**,n7 です(ここで、nは0~9)。

さて、この 25 kHz 単位のセパレーションも早晩に行き詰ることが見え見えなので、幾つかの解決案が1990年代から検討されてきました。

広義では、ACARS: Aircraft Communication Addressing and Reporting System やVDL: VHF Digital Datalink (Mode 2, 3, 4) なども含まれますが、こと音声通信に関しては 8.33 kHz 単位のセパレーションが ICAO をはじめ各国や地域で導入検討が進められてきました。



既に ICAO EUR Region においては、FL245 を超える高度を飛行する航空機については、 8.33 kHz 単位のセパレーションに対応した無線機の搭載が義務付けられています。



来る3月15日からは、FL195 を超える高度を飛行する航空機についても8.33 kHz 単位のセパレーションに対応した無線機の搭載が義務付けられます。
(今回の改訂では、コミュータ路線で活躍しているターボ・プロップ機がもっとも影響を受けるものと思われます)



航空交通の輻輳が著しい欧州においては、2010年を目途に、全ての高度において(=空域を飛行する全ての航空機が対象となる)、この 8.33 kHz 単位のセパレーションに移行する予定だそうです。

周波数の Read Back が大変そうですね。

8.33 kHz 単位になった場合の表記と発音例は こちら
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“差別”と“区別”

 “差別”と“区別”は違う。僭越ながら小生が常に気をつけているポイントです。

“差別”は時として問題を引き起こします。

が、分別を持った“区別”は今の世の中、必要であると言えましょう。

小生も修行が足りないので、日々の局面で知らぬうちに“差別”をしていて、反省することが少なくありません。

非常に抽象的で、具体的にイメージにしくいことかと思いますので、幾つか例を示しましょう。

小生はとある航空会社のマイレージ・プログラムで搭乗回数等の基準に応じそれ相応の段階にあります。

当該航空会社の便に搭乗する際には、その旨、旅客情報に記載されますし、座席のアサインや空席待ちの優先度において常識的な範囲で特典が与えられます。

あまり好きな言葉では無いのですが、解りやすくするため、“上顧客”として他のお客様と“区別”したサービスを受けると、とても心地よく感じられます。

しかし、全ての客室乗務員の方がそのように意識した“区別”をしてくれることは残念ながらありません。時として“差別”を受けることがあり、そのときは他のお客様に対して「後味の悪さ」が残ってしまいます。

また、“上顧客”と言われるお客様の中には、残念ながら“差別”を受けることが当然で、“差別”されないといたく機嫌を悪くされるお客様もいらっしゃることも事実です。

じゃぁ、機内サービスにおける“区別”と“差別”はどう違うの?



それはその道のプロフェッショナルであられる客室乗務員の方が皆さんで考えれば、当然のように素晴らしい解が見出されることでしょう。

もう一つ、航空管制を例にしてみましょう。

空には、計器飛行方式で飛ぶ事業用の大型旅客機から、有視界飛行方式で飛ぶプライベートの小型機まで、航空機の性能から飛行目的まで全くことなる航空交通が存在します。

計器飛行方式で飛行する航空機の中にも、巡航速度,後方乱気流区分,操縦性能などが異なる航空機が混在しています。



それらを“区別”することは、安全で円滑な航空交通流を確保するために絶対必要なことですが、“差別”はいけません。

欧米追従がすべからく良いとは思いませんし、それを肯定・強要するものでもありません。

が、背景にある文化的なもの,歴史的なものが多分に影響しているのだと思いますが、欧米の国々では多くの人々、国家・政府が、極々自然に“差別”ではなく“区別”をしているように思われます。

ジェネアビの単発機も“区別”はされていますが“差別”は受けていません。

『美しい国』の状況はどんなもんでしょう。

税制などの政策をみても、的確に“区別”しているのではなく“差別”を増長するような施策だと思えてしまうのは一小市民の戯言でしょうか。

『美しい国』の心無き大臣さんから聞こえてくるのは“差別”発言ばかり....。

“野党”と言われる政治家の方々も、そのような愚行と国民の日々の生活に直結する政局とを“区別”して考えることが苦手なようです。
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三部作?

 “衝動買い”と言われて少々落ち込んでおりますが、今の世の中、欲しいときに入手しておかないと何時 Discontinue になるか解りませんから。

昔から『寿司』を頂くときは、好きな“ネタ”から食べていた(=仮に満腹になって苦しくなっても、好きな“ネタ”は既に美味しく頂いているので悔いが無い)性格と同じだなぁ、とは家人のコメント。

(好きな“ネタ”を最後にとっておく食べ方もありますからね。)

納得したような、しないような....。

で、今回ご紹介する DVD 作品ですが、先日 VHHH へ行った時、復路の機内で、と買い求めた雑誌の広告に掲載されていたものです。

その名も“ The ITVV 'Flightdeck' Series ”。

数多ある作品の中から三つを選び order したものが先日到着しました。

ITVV: Intelligent Television and Video Limited は英国の会社です。

その ホームページ には

 “ The Worlds leading producer of quality in-flight video

の文字が。

タイトル画像に掲載した作品は、「 PLATINUM COLLECTION 」から、Virgin Atlantic 航空の Boeing 747-400 。 Captain Alan Carter と共にロンドン・ヒースローから、サンフランシスコまで飛びます。

KSFO の Landing は(私的には懐かしい) 28L 。 Simultaneous Visual で 28R には United の Boeing 757、 maintain visual separation!!

TCAS が TRAFFIC!! の TAを発します(う~ん、あのときと同じだ)。

2000年の撮影なので、KSFO の国際線は、あの先っぽに突き出した往年のあれです。Assigned SPOT 55 なので自走で SPOT IN します。懐かしい!

166分間、存分に楽しみました。



画面は 4:3 (音声は stereo )、字幕・吹き替えも無しで、全て“英語”でのナレーションですが、好きならば何とかなります。

勿論、DVD は Region Free ですから、ご家庭のDVDプレーヤー、PCで問題なく再生できます。

これ一本だと寂しいので、作品をブラウズしていて更に二本ほど、計三作品を取り寄せました。

イギリスと言えば、BRITISH AIRWAYS のコンコルドを外すことは出来ません。



こちらはディスク二枚組で、収録時間は約300分。



こちらは、ヒースローからJFKを往復します。

もう一つは、英国の香り、CATHAY PACIFIC の Boeing 777-200 。 Captain Grame Thomson が777を紹介してくれます。



こちらもなかなか楽しい(収録時間は101分)。

※なお、Concorde と Boeing 777 は収録が1996年、画面は 4:3 音声は Mono です。

それにしても、家に居ながらにして注文が出来て、 Order から到着まで二週間とかかっていません。

便利な世の中になったものです。
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お見事

 IFSD: In Flight Shut Down だったのでしょうね。『 Tower が炎を見ていた』と言うことは、Takeoff Roll のときは Both Engine Operate だったのでしょうから。

当該便の割り当てスロットは B-Runway の筈。あの短い滑走路での(『 Tower が炎を見ていた』とのことですから)離陸~上昇にかけて Power Loss があったことでしょう。

通常の離陸よりも Critical な Flight Phase を見事に乗り切りましたね。

普段から厳しい訓練をして資格維持をしているとは言え、このように何の前ぶれもなく“とっさ”のときに、粛々と Procedure をこなし、ATB するとは、流石はプロフェッショナルであります。

パイロット人生の中で、一度あるかないかのようなこのようなトラブルのときの為に、日々研鑽するとともに、“定期運送用操縦士”資格を半年毎の技量試験で更新しているからこそ、と言えましょう。

当該便の Cockpit Crew の方々、お疲れ様でございました。

また、Cabin Crew の方々も、機内の秩序を保ち、万が一の Evacuation にも備えていたことでしょう。ご苦労様でございました。

成田 (NRT) -厦門 (XMN) は、往路のブロックタイムが4時間30分、復路のブロックタイムが3時間25分。

2回着陸、乗務時間7時間55分( < 8時間30分)ですから、当該便クルーは日帰りパターン。

出発時にあんなトラブルがあったから、きょうは FLT XNCL かなっ、と思ったら Delay Set で飛ばしたのですね。青社、恐るべし。

勿論、エンジントラブルに対処したクルーは、乗務時間制限上、継続して厦門往復をすることは出来ませんから、“自宅スタンバイ”のクルーにお座敷がかかり、急遽、出頭、乗務についていると思われます。

[往路]
ANA935/01FEB NRTXMN STD:0100Z STA:0530Z BLX:04+30
は、OUT:0520Z IN:0937 BLX:04+17 で運航。

[復路]
ANA936/01FEB XMNNRT STD:0625Z STA:09:50 BLX:03+25
は、OUT:1013Z ETA:1317Z で curfew を気にしながら成田は第一ターミナルの Spot 33 へ向かっております。

当該便のお客様には4時間を超える遅延でさぞご立腹のことと思いますが、フライト・キャンセルにならず運航されたのですから、それだけでも御の字と思い、裏事情もご賢察の上、どうぞご理解下さい。

それにしても厦門での折り返し時間は僅か30分足らず。凄い!


全日空機、エンジンから炎成田空港に緊急着陸(共同通信) - goo ニュース
1日午前10時15分ごろ、成田空港を離陸した中国・アモイ行き全日空935便ボーイング767のエンジンから、炎が出ているのを管制官が確認、両翼に1基ずつあるエンジンのうち左翼のエンジンを停止、約30分後に同空港に引き返し緊急着陸した。乗客乗員は無事。誘導路上で機体をけん引する作業を行う間、滑走路が約20分閉鎖された。

2007年2月1日(木)12:05
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