徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

そんなに単純な問題ではないと思いますがねぇ

 そのうち、Flight Bag の中はライセンスだらけになってしまうのでは?

国交省の言っていることを全面的に否定するつもりはありませんが、じゃぁ、それを実施したからどうなるの?という疑問があります。

そもそもライン・パイロットで「国際線飛ぼう」と思うような人は、これまでだって自己努力で英語を勉強するし、航空会社でもそのような(英語教育)のプログラムを設けていると思いますよ。

ライン・パイロットになる一例として、自社養成コースでライン・パイロットになる場合を想定してみます。実機訓練は全日空の場合にはアメリカ・ベーカーズフィールド、日本航空インターナショナルの場合にはアメリカ・ナパで実施されています。教官はアメリカ人で英語で訓練を受ける訳ですし、訓練空域はアメリカですから、航空管制も本場?の英語で管制官とやりとりをします。

初期段階でそのような経験をするのですから、AOMを窃盗したり制服売ったりするような輩でなければ、当然英会話は一定レベルを維持する努力をするでしょう。

さらに、一口に英語と言ってもお国柄や訛りがあります。米州線ひとつとっても、西海岸と東海岸さらには南部ではそれぞれに癖がありますし、ダラス・フォートワース空港 DFW なんて交通量が半端ではないので、南部訛りのある英語で機関銃のようにまくしたててきます。シカゴやニューヨークも時間帯によっては、割って入れないくらい錯綜しているらしいです。国交省が定める基準の発音が必ずしも通用するとは限りません。

それと、(これは日本の地理的立地条件に起因するのですが)そのような機関銃のような英語と戦わなければならないのは、長時間のフライトの終盤であり、時差やサーカディアン・リズムも手伝って集中力を維持するのすら大変な状況下であるわけです。マルチ編成・ダブル編成にかかわらず身体はしんどい筈です。

また、空を飛んでいるのは自機だけではありません。早口でまくしたてられるような空域は、Separation ぎりぎりまで詰め込んでレーダー誘導していますから、自機の周りがどのような状況になっているかを把握することはとても大事なことです。
自分の前には American, Lufthanza, United, Korean Air, Speed Bird が詰まっていて、どのように誘導されていっているのか。後ろに付いて来ている KLM との Separation は大丈夫か等など。頭の中に Traffic Flow の3次元のイメージを描く必要がありますし、悪天候下であれば、先行機から Turbulence や Wind Share の report がないかにも気を配る必要があります。それでなくても忙しい、着陸進入時であるのに。
それら周辺機のパイロットが、皆一律に国交省が理想とする英語でやり取りしてくれるとは限りません。

この周辺機の動きが読めないという意味では、中国などは非常に気を遣う路線です。中国国籍機は自国内では中国語で航空管制のやりとりをすることがほとんどの上に、中国空域は、高度の単位は feet でなくてメートル法、距離も NM: Nautical Mile (海里)でなくて km と、普段とは異なるので、英語で指示されても(距離や高度が)スッとイメージしにくいのですから。
英語でない母国語を使うという点では、フランスも曲者です。

国交省は「日本の航空会社に勤める国際線パイロットを対象に」、と言っていますが、日本に飛来してくる国際線を捌くのは、日本の管制官です。管制官の皆さんも、様々な国の航空機に対応しなければなりません。航空路管制の場合、日本上空を通過するだけの機もある訳ですから。

パイロットだけを対象にすればよいとも限らないように思えます。
*9月1日21時53分*
誤った不適切な記述でした。撤回します。
 管制官の皆さん、ご免なさい。



操縦士に英語能力国家試験 08年3月から義務付け (共同通信) - goo ニュース
 国土交通省は31日、日本の航空会社に勤める国際線パイロットを対象に、管制官と十分に意思疎通できる英語力を認定する国家試験を実施し、資格取得を義務付けることを決めた。管制指示の誤認などによる事故を防ぐのが狙い。資格取得は2008年3月から義務付け、試験は06年秋をめどに先行実施する。

新たに導入する「航空英語能力証明」試験は、面接方式で実施。航空業務全般に関することについて英語でやりとりしながら、発音や文法、理解力などから総合的に評価する。英語を母国語とする人の話せるレベルを6と設定し、4以上を合格とする。

日本航空と全日本空輸の大手航空2社は「羽田空港の国際化も控え、今後国際線の比率が高まる」として、全操縦士に資格を取らせる方針だ。

2005年 8月31日 (水) 17:53
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コメント
 
 
 
個人的には… (のぞみくん)
2005-09-01 03:04:53
私なんかは、アメリカでエアバンドが全然聴き取れないのに愕然として「プロならこのくらいは対応できないとやっていけないんだなぁ…」と思った人なので、基本的には賛成だったりします^^;。

逆に、ネイティブ英語な国の人はこちらの管制官との応答をしながら「ずいぶんゆっくりしゃべってるなあ?」とか思っているかもしれませんね…。
 
 
 
Re: 個人的には… (PAX)
2005-09-01 08:49:12
「のぞみくん」さん、おはようございます。

コメントと共に記事も拝読しました。

「のぞみくん」さんのご意見も尤もだと思います。

小生は“管制指示の誤認などによる事故を防ぐのが狙い”というお役所の短絡的な発想に、いつものごとくオヤジの瞬間湯沸し器のスイッチが入ってしまった訳でして...(苦笑)

米国は「管制はサービス」の意識が徹底していますから、余裕があれば英語を母国語としない相手にはややゆっくり目にすることもあるようですし、パイロットからのReadbackでWaypoint名が怪しげの場合には、FONETIC CODEで指示を繰り返したりして誤認防止に努めているようです。Controllerは本心ではご指摘のように『困っちゃうなぁ』と思っているかもしれませんが(爆)。

燃料切れで墜落したJFK行きのアビアンカはコーパイさんしか英語を喋れなかったとのことなので、日本のオペレータはそれよりはずっとマシでしょ(「下には下がある」の意図はありませんので…^^;)。
 
 
 
Unknown (RUSAR)
2005-09-01 17:20:32
こんにちは。一昔前ですと、米国管制の機関銃のようなスピードについて行けずリードバックが怪しい機については、管制側があえてアプローチのシーケンスから外してしまい、一番後ろに廻してしまう・・・なんて事日常茶飯事だったようです。しかし現在は国際線を就航している大手ラインパイロットの語学力は十分だと思うのですが。

 むしろ定期便とプライベート機が混在している様な空港で、管制用英語でさえままならないプライベートパイロットの方々の英語力の方が問題であると実感しますね。

 それと、我々管制官も同様に厳しい「語学力検定」が間もなく開始され、ICAOの基準に基づき、「一定以上の語学能力を有すること」が義務付けとなります。結構、厳しい内容の様です。

決してパイロットの方々だけへの義務付けでは有りませんので誤解の無きように・・・。
 
 
 
お晩です (PAX)
2005-09-01 17:55:54
「RUSAR」さん、コメントおよびご指摘ありがとうございます。

管制官の皆さんも同様の義務付けが開始されるのですね。不勉強ですみませんでした。

早速、Proficiency Requirements in Common English Study Group (PRICESG) ICAO study groupsについて調べています。
 
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