徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

残り1ヶ月

 今年も早いもので明日から“師走”です。

小生は“師”には程遠いので“走る”ことはなさそうですが、まぁ、それなりに慌しい2006年最後の月になりそうです。

物珍しがり屋さんは、所持しているパソコンの一台を「 Internet Explorer 7 」にしたのですが、その IE7 ではこのブログが意図するように表示されず、型崩れと言いましょうか、見栄えが悪いのであります。

何とかしようと、継接ぎ状態のバッチイ HTML と CSS とを「えいやぁ」で編集したら、それなりにはなったのですが、今度は IE6 や Mozilla でも見栄えが悪い状態になってしまって....。


ただでさえ中身が貧相なブログが、体裁までお見苦しい状況になってしまいましたが、暫しご容赦下さい。

P.S.
「残り1ヶ月」で何とか直します、と commit している訳では全くありません。
先日のPE、“異常所見なし”の結果を受け取りまして、来月は心置きなく“忘年”に専念できそうですので....。
Comment ( 2 ) | Trackback ( 0 )

A380 12月中旬に FAA 型式証明取得へ

 先日、成田にも飛来し、多くの航空愛好者を興奮?させたエアバス社のだるまさんA380、FAA: Federal Aviation Administration (米国連邦航空局)の型式証明取得間近のようです。

FAA によると、12月中旬、担当者がエアバス社の本拠地であるトゥールーズに出向き、A380 に FAA としての型式証明を与える模様です。

当初の予定からすると、シンガポール航空が既に商用運航に供していたかもしれない時期ですが、型式証明を取得しないことにはこの先に進めない訳ですから、エアバス社にしてみれば、有難いクリスマス・プレゼントとなることでしょう。

流石は“四発だるまさん”、いろいろとあっても、どっしり構えて七転び八起き?

News Update for Monday, November 27, 2006

A380 Scheduled to Receive Type Certificate in December: In mid-December, FAA Administrator Marion Blakey, along with Associate Administrator Nick Sabatini and other FAA officials, will be in Toulouse, France — headquarters of the aircraft manufacturer Airbus — for the official ceremony granting FAA’s type certificate to Airbus for the A380, the manufacturer’s jumbo aircraft currently undergoing proving flights leading up to certification. The proving flights are taking the aircraft from Europe to seven airports in the Asia/Pacific region. The final series of flights will involve an around-the-world trip via both poles, returning to Airbus' Toulouse, France headquarters on November 30.

Updated: 12:00 am ET
November 27, 2006


エアバスA380のテスト飛行終了、フランスへ向け出発―上海市 - Yahoo! ニュース
2006年11月24日の午後2時25分、世界最大の旅客機 「エアバスA380」は、上海浦東国際空港を飛び立ち、フランスのトゥールーズに帰っていった。

エアバスA380機は全長72.7m、主翼幅79.6m、機体幅6.55mという超大型旅客機で、標準座席数は555、機首から機体後方まで続く「オール2階建て」構造が特徴だ。

同機は正式運航を開始する前に型式証明を取得するため、今月14日からシンガポール、韓国、香港、日本、中国の広州、北京、上海を訪れて離着陸などのテストを行っていた。

最後の訪問予定地である上海での日程が無事終了したため、同機は予定通り中国を後にした。

(Record China) - 11月26日8時32分更新
Comment ( 4 ) | Trackback ( 0 )

これが DIGITAL AVIATOR さん効果か!

 ネット社会、著名どころで紹介されたときの波及効果を垣間見ることができました。

一昨日、□ Bookmark にも登録させていただいている DIGITAL AVIATOR さんのブログに“ Multi Lateration 評価運用開始 ”なる記事が投稿され、その記事中で小生が記した稚拙な記事にリンクをはっていただきました。

「知る人ぞ知る(=有名でない)」本ブログ、優しく忍耐強いありがたい読者の方々に支えられ、日々、細々とアクセスが続いている状況でありますが、著名な DIGITAL AVIATOR さんのブログで取り上げられた途端に、アクセス数が急増したのです。

ネット社会のファブリック的な結合の成果ですね。

単純に感激したと共に、ある意味での恐ろしさも感じました。

それにしても凄い影響力。乱気流判定基準だったら、( DIGITAL AVIATION さんのブログで紹介された後の)アクセス数の変化は、EXTREAM になるのでしょうね。

が、“熱しやすく冷めやすい”のも昨今の世相とネット社会の特徴。既に揺れはおさまりつつあり、また以前のように「知る人ぞ知る」ブログに戻ってきております。(分相応が一番ですわ

Comment ( 4 ) | Trackback ( 0 )

全日空589便 事故調査報告書を読んで

 確かに容易でないことは解りますが、もうちょっと踏み込んだ調査ってものは出来ないものですかねぇ。事故調さん。

本年1月22日午後1時54分ごろ、ANA589/22JAN HNDMYJ (Boeing767-381 JA8669) が松山空港に着陸進入中、突然の揺れに遭遇し、後部ギャレーを担当されていた客室乗務員2名がそれぞれ重症・軽症を負うという航空事故が発生しました。

本ブログでも、本年1月24日に
 「微妙な高度で揺れに遭遇したのが残念です
で取り上げました。

当該事故の事故調査報告書が発表されたのですが、まぁ相変わらずですわね。

原因を引用してみますと、
4 原 因
 本事故は、同機が、降下旋回中に局所的な乱気流に遭遇し、大きく揺れたため、同機の最後部ギャレーで作業中の客室乗務員が転倒し、負傷したことによるものと推定される。
〔参考〕
「推定される」は、“断定できないが、ほぼ間違いない場合”に用いられるフレーズです。


当該報告書を読んで、久々に瞬間湯沸かし器が沸騰しましたね。

報告書の内容が事故調査委員の資質に大きく左右されるのは、これまで発表された数多の事故報告書や重大インシデント報告書を見れば解ることですし、ある意味、多少の程度の差は仕方がないのかなぁ、とも思います。
が、報告書として発表する前に、事故調査委員会として何度もレビューをするのでしょうに、それでいてこの内容とは『お粗末』と言われても仕方ありますまい。

長年の某覚書が委員会にも浸透してしまって“公僕さん”がお出ましにならない事故は軽くあしらわれているのではないでしょうね。



当該便は、羽田を離陸後、飛行計画にしたがって FL380 で巡航していましたが、FL380 での向かい風が 200 kt と強かったため、全日空中部と社内無線で気象状況の問い合わせを行い、「西日本では、FL200 以下はスムーズです」との地上からの報告も考慮し、PIC: Pilot In Command は FL180 への高度変更を管制に要求し承認されました。

琵琶湖上空付近で、FL380 から FL180 まで降下しました。

降下中は、マニュアルに従い、客室内ではカートを収納、サービスを一旦中断しています。

巡航高度を FL180 に下げてからは、報告どおり大気の状態はスムーズであり、サービスが再開されました。

巡航高度からの降下を前に、ACARS: Aircraft Communication Addressing and Reporting System (航空機空地データ通信システム)で松山の気象状況ならびに ATIS を入手し、天気( 0100Z 25017 CAVOK Rwy 32 Visual )に問題はないことを確認しています。

その後、暫らくして客室責任者であるチーフ・パーサーから「機内サービスが終了」の報告がコックピットに入り、それに対して、PIC はチーフに13時の松山のお天気と共に「松山の到着時刻が当初より少し早まること」および「(自身の考えで)揺れはない」旨を報告しています。

福岡 Control からの管制指示で、高度 10000 feet までの降下指示が出され、その後、岩国 Approach に移管され Radar Vector による Heading 指示と 2600 feet までの連続した降下指示が出されています。

10000 feet を過ぎた時点で、ベルト・サインを点灯し、と同時に気象状況は問題ないとして、客室乗務員に機内安全性チェック実施を許可する旨の合図が送られました。
※この時点で FMS が示す松山空港までの飛行予想時間は11分であった。

--- 【機内安全性チェック】 ---
着陸に備えての最終チェックで、お客様の座席ベルトの状態、手荷物、座席の背もたれ・テーブル位置、化粧室にお客様がいないか等をチェックします。

なお、コックピットから許可の合図が送られても、チーフは客室内の状況により当該チェック作業が行なえないと判断した場合には、PIC にその旨を報告し、お客様には機内アナウンスで確認項目について「お客様ご自身で今一度ご確認下さい」など確認を周知させることになります。
------------------------------

チーフは、この合図に基づき、自分の担当エリアの機内安全性チェックを実施、ギャレー内カートのロックを確認しました。ちょうど、し終えた頃に「コトコト」と揺れが来たので、これは揺れるかもとの判断で着席しています。

チーフは左側エリア担当の客室乗務員からチェック終了の報告を確認しなければなりません。揺れるかも、で着席した段階で、隣に座る前方右側担当と中央左側担当からはOKのサインと着席していることを確認しましたが、後部左側担当からはその時点では未だでした。

一方、機は降下を続け、8000 feet 付近から Light 程度の揺れに遭遇、その揺れは 5000 ~ 6000 feet 付近まで続きましたが、下の方が風が強かったため、揺れの程度は下の方が揺れたようです。

(乱気流判定基準は、「乱気流判定基準に概要を述べていますが、全日空での Light の定義によると、機内サービスについては「実施可能であるが、特に熱い飲食物の提供には注意を要する。」となっています)

ここで、揺れは一旦おさまり、ややもやがかかっていたものの、コックピットでは10哩先の滑走路を視認出来ています。


RJOM Rwy 32 Visual Local Procedure に従い、中島と興居島(ごごしま)の中間へ向けて機首をむけ、その付近を 2600 feet で通過、午後1時53分25秒ころから左旋回(ターゲット・バンク角は約27°)に入り、同33秒~34秒にかけて、「ドン」という Light 程度の揺れ(「 Light 程度の揺れ」は PF であった機長昇格訓練OJTの左席の副操縦士の供述による)があり、そのときに、後部ギャレーで飲み物の投棄作業をしていた2名の客室乗務員の方が負傷されました。

DFDR: Digital Flight Data Recorder による記録を見ると、上下方向の加速度は、33秒に0.654G、同34秒に1.57Gと振れています。この値が、飛行機重心位置での値とすると、+方向には0.5Gを超えているので、ICAO の乱気流判定基準では、MODERATE になります。

飛行機は、場所により揺れ方に差異が生じるのが普通で、えてして機体後部の方が揺れは大きい傾向にあります。

特に今回は旋回中だったこともあり、水平尾翼・垂直尾翼(それぞれに昇降舵・方向舵を備えています)がある機体後部の揺れは大きかったことが想像されます。

負傷されたお二人の客室乗務員の方の供述でも、「揺れとしては、盛り上げられるような揺れ、左前にねじれたような変な揺れだった」と「下に落ちるような揺れがドンと来て、(中略)次に横揺れが来て」となっています。

この乱気流に遭遇した時点で、機は AUTO PILOT で飛行しており、揺れに対しても運航乗務員は AUTO PILOT を解除することなく、そのままでした。(それは、僅か1秒ちょっとで、コックピットでは Light 程度にしか感じていないのですし、旋回中だったということも考えると、機の制御を AUTO PILOT に任せておいたのは適切だったと思います)

ちなみに、AUTO PILOT は13時57分46秒、高度 1496 feet まで ENGAGE されていました。

「第1腰椎横突起骨折」の重症を負ったにも関わらず、後部右側担当の客室乗務員の方はプロ根性で役目であった“最後のお客を見送る担当”を遂行したのです。その後、お客様が全員降機された後にチーフに「尻餅をついた」旨(本当は尻餅どころではなく痛かったのだと思いますが)を報告したとのことです。

乗務パターンの関係から、機長が客室乗務員が負傷したことを知ったのは、復路便の出発準備中となりました。
(折り返し乗務のため、航務に向かう運航乗務員に、チーフは一旦は「客室は異常ありません」との報告をしてしまっていた)。

以上が、事故調査報告書から読み取れる当該便の状況です。



この報告書で“詰めが甘いなぁ”と感じたのは、Boeing767-300 型機がオートパイロットで降下旋回中に擾乱に遭遇した際の、オートパイロットの挙動とそのロジックに関する考察が一切なされていないことです。

一切というと語弊があるかもしれません。

 『また、最大の加速度記録とほぼ同時刻にラダー位置が、通常の動きに比べ大きく動いていたことも、この揺れに関与した可能性が考えられる。』

の件があるからです。

このラダーが何故“通常の動きに比べ大きく動いていた”のか。ラダーを制御していたのはオートパイロットですよ。

このあたりから切り込んで、Approach Configuration (あるいは Clean Configuration ) 下でオートパイロットを使用中に擾乱に遭遇した際、乗員はどのように対処すべきなのか、Boeing 社が示している AOM: Aircraft Operation Manual の記載に不足や不備は本当にないのか、調査してもらいたかったですねぇ。

さらに、気象の観点からも、

 『松山空港の12時の実況から西風が卓越し、その後強くなっていたことから、冬型気圧配置による西風が強くなっていたものと推定される。
 同機は、降下中に高度8,000ft付近から揺れに遭遇していることから、それまで静穏だった中層から下層域の西風が強まり、気流の乱れが発生していたものと考えられる。』

 『風は12時の観測から西方向に変わり、14時ころから地上風のガストが予想されていたことから、高度20,000ft以下は静穏という情報を運航支援者が修正できた可能性が考えられる。』

だけに留まらず、地形や飛行コースをも考慮して、もう一歩踏み込んで「これこれこの区域は晴天時であっても西風が卓越している場合には擾乱が生じやすく、飛行ルートとして注意が必要」とか(中島の 971 feet の山の風下には入りたくないでしょう)調査検討できなかったものでしょうか。
偏屈オヤジ
相も変らず事故調査報告書の裏表紙には

 『~航空事故の原因を究明し、事故の防止に寄与することを目的として行われたものであり~』

と書かれていますが、当該報告書を読んでも「航空事故の原因が究明された」とも思わないし「今後の事故の防止に寄与する」とも思えないのは、小生のオツムが稚拙だからですかねぇ....。

まだまだ修行がたりませんね。
Comment ( 2 ) | Trackback ( 0 )

RVSM: Reduced Vertical Separation Minimum 導入その後

 本邦上空で RVSM; Reduced Vertical Separation Minimum (短縮垂直間隔)が導入されてから一年以上が経過しました。

Domestic RVSM の導入については本ブログでも
 日本の空もRVSMへ
 RVSM: Reduced Vertical Separation Minimum
で取り上げました。

要は、従来 2000 feet のだった FL290 以上の IFR 機の垂直間隔が、FL290 ~ FL410 間のそれが 1000 feet に短縮され、それだけ航空交通量の増加に対応できる管制方式です。

勿論、それだけ垂直間隔を短縮する訳ですから、RVSM 空域を飛行する航空機は RVSM 対応機であり、当該機の運航乗務員もそれに対応する教育・訓練を受けている必要が求められています。

しかし、残念ながら“安全”に“絶対”はありません。

RVSM を導入したら、「導入しっぱなし」とはしないところが流石は航空界と言えましょう。

今月上旬、タイのバンコックで開催された ICAO: International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関)のアジア・太平洋地区の第6回地域空域安全監視諮問委員会 ( RASMAG/6: Sixth Meeting of the Regional Airspace Safety Monitoring Advisory Group )において、国土交通省航空局が RVSM 導入後の状況について発表を行ないました。

RVSM 実施空域における安全アセスメントについては、ICAO Annex 11 の「 ATS Safety Management 」に基づき、 ICAO Doc. 9574 "Manual on Implementation of a 300 m (1,000 ft) Vertical Separation Minimum Between FL290 and FL 410 Inclusive" において規定されています。その目標安全レベル( TLS: Target Level of Safety )は、
 
 飛行1時間あたり、10億分の5 未満

です。つまり、事故発生リスクは、2億時間飛行して1回あるかないか、でなければなりません。

(ここでの事故発生リスクは総合での値で、その内訳は、技術的な問題によるリスクと、オペレーション上の問題によるリスクとに分けられます。技術的な問題に起因するリスクは、飛行1時間当たり、10億分の2.5 未満が求められています)

航空局では電子航法研究所の協力を得て、昨年10月初めから本年9月末までの国内 RVSM 空域での安全アセスメント状況のモニター結果について、ICAO RASMAG/6 で発表を行ないました。

RVSM は垂直間隔を短縮する方式ですから、その安全をモニターする尺度としては、指示された高度からの大幅な逸脱、LHD: Large Height Deviation が用いられます。(指定された高度から 300 feet以上逸脱した場合、LHD となります)

調査期間中、計24件の LHD が報告されました。

その内訳は、11件がオペレーション上のエラーに起因するもの、13件が技術的なエラーに起因するものでした。

オペレーション上のエラーとは、例えば ATC unit 間での移管時のミスとか、パイロットが管制指示を聞き違えてオーバーシュート・アンダーシュートするもの、などであり、

技術的なエラーとは、乱気流や悪天候に遭遇して高度維持が困難になる場合や、TCAS: Traffic alert and Collision Avoidance System (航空機衝突防止装置)の作動により、高度を逸脱する場合、などです。

LDH が発生した原因については、以下の表に示す15種類に分類することになっており、調査では、どのコードに属する原因によりどのような状態が発生したかが、日時・場所と共に把握されています。

CodeLDH 発生の原因
AFailure to climb/descend as cleared
BClimb/descend without ATC Clearance
CEntry into airspace at an incorrect flight level
DDeviation due to turbulence or other weather related cause
EDeviation due to equipment failure
FDeviation due to collision avoidance system (TCAS) advisory
GDeviation due to contingency event
HAircraft not approved for operation in RVSM restricted airspace
IATC system loop error; (e.g. pilot misunderstands clearance message
or ATC issues incorrect clearance)
JEquipment control error encompassing incorrect operation of fully functional FMS
or navigation system (e.g. by mistake the pilot incorrectly operates INS equipment)
KIncorrect transcription of ATC clearance or re-clearance into the FMS
LWrong information faithfully transcribed into the FMS (e.g. flight plan followed
rather than ATC clearance or original clearance followed instead of re-clearance)
MError in ATC-unit-to ATC-unit transferred/transition message
NNegative transfer recieved from transferring/transition ATC-unit
OOther

月別の LDH 発生件数は以下の通りです。
Operationl Error 件数の欄には上の表に示した原因コードを、Technical Error 件数の欄も原因を記しました。

年月Operational Error
件数
Technical Error
件数
2005/101 (M)0
2005/1100
2005/121 (I)0
2006/0100
2006/0202 (Equipment)
2006/0302 (WX)
2006/042 (I,M)3 (TCAS)
2006/0502 (WX,TCAS)
2006/0600
2006/077 (M)0
2006/0801 (TCAS)
2006/0903 (TCAS)
total1113

この24件を多いと見るか少ないと見るか、人それぞれかと思いますが、この数字を衝突リスクモデル( CRM: Collision Risk Model )と呼ばれる統計学モデルのパラメータに当てはめて算出された推定リスクは、

 飛行1時間あたり、10億分の4.97

となり、ICAO の目標安全レベルを何とかクリアしています。

殊に、技術的な問題に起因するリスクは、

 飛行1時間あたり、10億分の0.44

と、ICAO の目標安全レベルよりも相当によい値を示しています。

逆に言うと、「オペレーション上の問題によるリスク」を減らす努力をすれば、RVSM をより安全に運用でき、空域の有効活用が出来ると言えましょう。


慣れと油断は禁物、管制サイドとオペレータ・サイドが協力し合って、今後ともより一層安全な日本の空が築かれることを願っています。



参考文献: SUMMARY ON ONE-YEAR POSY-IMPLEMENTATION RVSM SAGETY ASSESSMENT FOR THE JAPANESE DOMESIC AIRSPACE (Presented by Japan). ICAO RASMAG/6-IP/7.
Comment ( 0 ) | Trackback ( 0 )

本邦、初お目見え

 一年ほど前には、シンガポール航空が来月にでも最初のオペレータとして A380 を受領する予定だった( 欧州(フランス)から初物が飛来 )のですが、引渡しスケジュールがずるずると延期になっているようです。

総二階建てのこの旅客機、就航した暁には引用記事にあるように空港施設の問題もクリアになっていなければなりませんが、もう一つ、忘れてならないのは“後方乱気流”、所謂 Wake Turbulence であります。


エアバスA380初お目見え=総2階建て世界最大旅客機-成田空港(時事通信) - Yahoo! ニュース
総2階建ての次世代旅客機エアバスA380型機が19日、テスト飛行とPRのため、成田空港に到着し、世界最大の雄姿が日本に初お目見えした。20日に航空関係者に披露した後、本社のあるフランスへ戻る。
 全長約73メートル、翼福約79.8メートル。客席は3クラス制の550席が標準で、最大850席程度まで設置可能。同空港で滑走路や誘導路の走行、搭乗橋への接続など、空港施設が機体に適合するか確認する。

11月19日15時1分更新
世界最大旅客機が初飛来 A380、ファンら殺到(共同通信) - goo ニュース
“巨鳥”が日本に初飛来-。欧州の航空機大手エアバスが製造した世界最大の次世代旅客機A380が19日、成田空港に着陸した。

実際の商業飛行を想定し、空港での運用を確認する実証飛行の一環。今回はエアバス本社のあるフランス・トゥールーズから香港を経由して飛来した。

成田空港近くの公園には最新鋭機を一目見ようと多くの飛行機ファンが集まり、白の胴体に青の尾翼のA380が滑走路に進入してくると、一斉にカメラのシャッターを切っていた。

神奈川県大和市から撮影に来た会社員白石尚道さん(33)は「かっこいいのひと言。やっぱり迫力が違う」と興奮した様子だった。

2006年11月19日(日)16:33


後方乱気流基準については、ICAO: International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関)の PANS-ATM: Procedures for Air Navigation Services - Air Traffic Management 、Document 4444 で規定されており、それに従うと最大離陸重量が560トンにもなる A380 は当然のことならが“ HEAVY ”に区分されます。

航空機と航空機のセパレーションは、この後方乱気流区分にも影響を受けます。

混雑時の羽田空港、先に離陸した Boeing747-400 に続く A320 のお客様で「先行くジャンボはとっくに離陸したのに、何でこんなに待たせるの!」と苛立つ方もおられるかと思いますが、Boeing747-400 は後方乱気流区分が HEAVY (見るからにそうでしょ)、かたや A320 のそれは MEDIUM なので「管制方式基準」では『2分間の間隔を設定する』となっているからなのです。
※この2分とて、決して Wake Turbulence の影響が皆無であることを保証はしていないので、パイロットには自分の責任において後方乱気流の影響を回避することが要求されます。

PANS-OPS Doc. 4444 が規定された頃には、まさか総二階建てのこんな巨大機が商用運航に供されるとは思ってもいなかったので、現在、A380 との管制間隔をどのようにするか、ICAO でも議論がなされています。

つい先日ですが、タイのバンコックで開催された RASMAG/6: Sixth Meeting of the Regional Airspace Safety Monitoring Advisory Grougp でも A380 の Wake Turbulence についての発表がありました。

どれだけの管制間隔をとれば良いかは、未だ検討中で正式に公示された訳ではないのですが、現状をまとめておきます。

1.ICAO Flaght Plan の項目9に記す後方乱気流区分の文字は“J”

2.(日本では馴染みがないのですが)呼出符号=コールサインの後に続く表現は“SUPER”

3.到着機の間隔:A380 に続く到着機は、
 MEDIUM 機の場合:3分
 LIGHT 機の場合:4分
の間隔。

4.離陸機の間隔:A380 に続く離陸機は
 A380 を除く HEAVY 機の場合:2分
 MEDIUM 機、LIGHT 機の場合:3分

5.レーダ監視下における最小間隔
Preceeding aircraftSucceeding aircraftWake turbulence
radar separation
minima
A380A3807.4 km (4.0 NM)
A380Non-A380 HEAVY11.1 km (6.0 NM)
A380MEDIUM14.8 km (8.0 NM)
A380LIGHT18.5 km (10.0 NM)


となっております。

RVSM Airspace で、1000 feet 間隔ですれ違いたくはないなぁ(奴が +10 なら尚更です)。

 『君子危うきに近寄らず』

でしょうか。
Comment ( 9 ) | Trackback ( 0 )

こんなサイトもございます

 しばらく投稿をサボってしまったので、今回はちょっとばかり贖罪の投稿、とあるサイトをご紹介します。

その名も「 SkyVector.com Online Aeronautical Charts 」です。

SkyVector.com

航空地図には幾つかの種類がありますが、このブログでときどき紹介する Jeppesen Sanderson 社は航空地図では老舗と言えましょう。

世には航空会社が数多ありますが、そのなかのかなりのエアラインは、この Jeppesen 社のチャートをパイロットに支給したり機内配備したりしている筈です。

Jeppesen 社のチャートは IFR: Instrument Flight Rule (計器飛行方式)用のものが主流で、VFR: Visual Flight Rule (有視界飛行方式)用のチャートも出してはいるのですが、その品揃えは IFR Chart には遥かに及びません。
Boeing Electrical Flight Bag
この Jeppesen 社、現在は Boeing の資本が入り(まっ、買収された訳です)、最近のハイテク機で用いられている航法データベース( VORDME, NDB, ILS といった航法支援電波の周波数、識別符号、送信位置などが格納されており、それを用いて、ハイテク機は飛行状況(飛行機の位置)に応じて適切な電波標識を勝手に受信してくれます;勿論、パイロットが手動で設定することも可能)や、EFB: Electrical Flight Bag と呼ばれる、必要なチャートをコックピット内のディスプレイに表示させる新技術にもデータ提供をしています。
Jeppesen AWLD0141
老舗と言うからには Jeppesen 社のチャートがカバーする領域は全世界におよびます。

巡航時に用いるのは Enroute Chart です。世界を網羅する Enroute Chart を一年間差替え付きで購読するとお値段はいくらだと思いますか(本邦で購読した場合; Air Mail での送料が含まれます)?

「こちらの商品のお値段は....、ピッ、
   US$5662
 でございます(現在の為替レートで約67万円也)」

Jeppesen の Airway Manual 購読者特典?の Trip Kit と呼ばれるワンタイム(差替えは無し)で購入しても、

「こちらの商品のお値段は....、ピッ、
   US$2039
 でございます(現在の為替レートで約24万円也)」

Enroute Chart だけでこのお値段ですからね。これに Area Chart や Approach Chart, STAR, SID, Airport Diagram, Text などが含まれる、所謂 Standard サービスになると、お値段は
「 Please call Jeppesen Customer Service at 800-XXX-XXXX when ordering this particular service. 」
となり、調べることが出来ませんでした。

さて、VFR の場合、飛行中に参照するのは Sectional Chart (区分航空地図)と言われるものが一般的です。

当然、Sectional Chart もそれ相応のお値段がする訳ですが、なんと、ご紹介するサイトでは Sectional Chart がタダで見れてしまいます(対象地域は米国本土+アラスカ+ハワイだけですが)。
さらに、空港の情報も(詳細な Airport Diagram ではありませんが)気象通報式現況と共に見ることができます↓。

PHNL Airport Info

このようなサイトが存在することからして、米国の GA: General Aviation は恵まれてるなぁ、と感じてしまいます。

【重要】ただし、このチャートのデータで飛んではいけません。飛行する際は、FAA Approved の最新チャートを使用して下さい。

Flight Simulator の愛好者で米国を飛んでみよう、とか、VFR で用いる Sectional Chart ってどんなもの、という方には十分ではないでしょうか。
Comment ( 2 ) | Trackback ( 0 )

竜巻から学ぼう - 座席ベルトを

 この衝撃的なニュースを耳にしたときには自然の脅威をまざまざと見せつけられた感を拭えませんでした。

避けようが無かったこととは言え、突然に命を落とされた方々とそのご遺族の方々、またお怪我をされた方々にはお悔やみとお見舞いを申しあげます。

ニュース映像で、その凄まじさを目の当たりにした方も多いことと思います。竜巻が通り過ぎた痕は、正に地獄絵であります。

気象庁、ならびに気象庁気象研究所の方々が調査にあたっておりますが、何が起こったのかを解明するのが精一杯でありましょう。

このような局所的で突発的な気象現象を的確に予測することは、やはり限界があることは否めないと思います。

さて、この惨状をもたらした竜巻の強度は「F2」かそれ以上と推定されています。

引用記事にもありますが、その風速は秒速50メートルを超える猛烈な風が吹きぬけたということです。

勿論、竜巻の50メートル/秒の風の吹き方と、上空を流れる定常的な偏西風とを単純比較することは出来ません。

が、すこし逆説的な言い方をすれば、50メートル/秒の風は、これほどの惨事をもらすエネルギーを秘めているとも言えましょう。

これからのシーズン、中緯度偏西風、所謂ジェット気流が日本上空まで南下し、その風速も強さを増します。

航空気象では、風速の単位として knot (ノット)が用いられています。

「RULE OF THUB (ルール・オブ・サム)」と言われる経験等に基づく近似計算(上空で即座に近似値を知りたいときなど、パイロットはこの RULE OF THUM を用いることが少なくありません)によると、
 秒速(m)から knot
を求めるには、その数値を2倍すると近似値が得られます。

50メートル/秒の風は、ノットに換算すると、100ノットの風となります。

ここで、きょうの午後9時〔日本時間〕まで有効の国内悪天予想図( FBJP )を見てみましょう。

FBJP VALID 091200Z NOV 2006


本州の南を、コアの高度が FL400 でその速度が140ノットのジェットが吹いています。

風速だけを見れば、大災害をもたらした竜巻よりも強烈な風と言えます。

ジェット気流の吹き方は概して安定しているので、ジェット気流の中を飛ぶ飛行機が先日の竜巻と同じであるとは言えません。

が、風速から推測されるエネルギーは、先日の竜巻と同等、またはそれ以上の力を秘めていると考えられます。

上に示した国内悪天予想図( FBJP )に赤い点線で囲まれ CAT と記された領域があります。

CAT とは Clear Air Turbulence のことで「晴天乱気流」です。つまり、見た目は晴天で乱気流を予見させる雲は無いのに、乱気流が存在します。

上の国内悪天予想図では、FL340 ~ FL390 の高度帯で「並」の強さの「晴天乱気流」を予想しています。

航空機の運航にあたっては、この他にもや雲解析図、大気断面図などの各種天気図や、PIREP と言われるパイロットからの悪天に遭遇した旨の報告を総合的に判断して安全性・快適性に気を配っていますし、コックピットに表示される風向・風速や外気温などを随時モニターし、揺れに対しては神経を遣っています。

しかし、予報図に記されていないところで「晴天乱気流」が発生していたり、ジェット気流の中で、突然流れが乱れている場所があったりと、文字通り「予見できない突然の揺れ」に遭遇する可能性が僅かではありますが存在します。

好天ですと、つい気が緩み、眼下の紅葉や初冬の雪景色などに身を乗り出してしまいますが、スムーズに飛んでいる飛行機、実は秒速50m超、時速200~300kmの空気の流れの中を飛んでいるのです。

自分の身は自分で守る意味からも、“座席ベルト”サインが消灯していても、着席時には座席ベルトを腰の低い位置で(少し軽めでも良いので)お締めおきいただくことをお勧めします。


竜巻 国内最大級か プレハブ直撃で被害拡大(産経新聞) - goo ニュース
気象庁は8日、北海道佐呂間町で発生し9人が死亡した突風は竜巻だったと断定した。住民の目撃情報や当時の映像から、竜巻に特徴的な漏斗状の雲が発生していたほか、建物の屋根が上空に吹き飛ばされたことが新たに分かり、竜巻による上昇気流と結論づけた。竜巻の強さは国内最強レベルに次ぐ「F2」以上とみており、さらに詳しく調査する。

 一方、竜巻による重軽傷者は3人増え26人となった。北海道は同日、佐呂間町に災害救助法と被災者生活再建支援法を適用することを決めた。

 気象庁の現地調査によると、被災地域は幅最大約200メートル、長さ約1キロにわたって南西から北東へ細長く帯状に伸びていた。現場の北約600メートルの場所にある高さ約100メートルの山の上では、吹き飛ばされた住宅の柱や屋根などが見つかった。

 積乱雲による急速な下降気流「ダウンバースト」の場合は、被害が放射状に広がるほか、物が上空に吹き上げられる現象は起きない。竜巻を起こした今回の積乱雲は時速80キロの猛スピードで現場を通過していた。

 佐呂間町付近の北海道オホーツク海側では、竜巻は過去35年間、観測されていなかった。今回の発生原因はよく分かっておらず、気象庁の牧原康隆予報課長は「究明は非常に難しい」と話す。

 竜巻の強さは「Fスケール」と呼ばれる6段階の指標で表される。気象庁は多数の屋根がはぎ取られ、自動車が吹き飛ぶなどの被害状況から毎秒50メートル以上の猛烈な風が吹く「F2」か、それ以上と推定した。

 昭和46年以降の気象庁統計でFスケールが分かっている竜巻のうち、最も強いのは上から3番目の「F3」で、平成2年12月に千葉県茂原市(長さ3・5キロ)と、11年9月に愛知県豊橋市周辺(同19キロ)で過去2回観測されている。

 今回の竜巻は、これらのケースと比べて範囲が狭い局地的な現象だったが、強度が比較的弱いプレハブの工事事務所を直撃し、大きな被害をもたらした。最強の「F3」だった可能性もある。

 Fスケールは元九州工業大助教授で、米シカゴ大教授だった竜巻の権威、藤田哲也博士(故人)が昭和46年に考案。竜巻の国際的な指標として使われており、米国では「F5」も観測されている。

2006年11月9日(木)02:50
Comment ( 6 ) | Trackback ( 0 )