徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

日はまた昇る

大晦日です。明朝、初日の出は拝めるでしょうか。

さて、「日は東から昇る」は常識に囚われた、やや柔軟性に欠ける発想でして、一度暮れた日が西からまた昇ることもあるのです。

勿論、最近の小生のように、地上に根を生やし、ますます出不精となりつつある輩は、日が東から昇るのを待つだけであります。

西からの日の出を拝むには;

1)日没直後、離陸して高度を稼ぐ(出来れば西に向かいつつ)
  羽田から関西・九州方面への国内線でも、日没時刻と離陸時刻とが絶妙の関係だと、チャンスがあります。

2)太陽を追い越す(その1)
  いささか科学的ではない表現ですが、要は、地球の自転速度よりも速い移動手段を用いるということです。
  コンコルドが退役した今となっては叶わなくなりましたが、倫・巴里からニューヨークへ大西洋を西進したコンコルドは、それぞれの現地時刻で、出発時刻よりも到着時刻のほうが前になり、つまりは日の動きを追い越す速度で移動していた訳です。

3)太陽を追い越す(その2)
  地球は丸い。さらに、自転軸が太陽の周りの公転面に対して約23度傾いている。この事実を利用する。
  現在商用に供されている航空機の速度は絶対的に太陽の移動速度には敵いませんが、地の利?を利用すると追い越すことも可能です。
それは、高緯度を飛行する、ということ。赤道付近での経度1度分の距離と極地近くでの経度1度分の距離とには差がありますので、高緯度を飛行すれば、日の動きを追い越すことが可能になります。

3)の実例をご紹介しましょう。

本邦を正午頃に出発して欧州に向かう便、米国を正午頃に出発して本邦に向かう便、いずれも日を追いかけて西進するので十数時間の飛行にも関わらず、日暮れを迎えることなく目的地に到着します。

それらの便は、所謂「大圏ルート」を飛行しますので、飛行ルートをプロットすると、途中かなりの高緯度まで北上します。

一方で、この季節、冬至は過ぎましたが(北)高緯度の日中は短い。日の出は遅く日の入りは早い。つまり、大圏ルートに沿って、ぐっと北上すると、(そのローカル時刻の)午後でも日が暮れてしまいます。が、目的地に到着したとき目的地は日没前………ということは、一旦沈んだ日が、西からまた昇っている訳ですね。

下のスクリーンショット(クリックで拡大)は、ニューヨーク12月22日発の赤社5便がアラスカ州付近飛行中をトラックしたときのものですが、フェアバンクスよりも北を飛んでいる当該便は、現地時刻が午後3時前にも関わらず、日没後の夕暮れの中を飛行しています。
 ※薄い網掛けは日没後の明かりがある領域、濃い網掛けは夜の領域です

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この後、しばらくすると、夕暮れ領域から脱し、つまりは『日の動きを追い越して』、“日はまた昇り”、夕方の成田へ到着しました(成田着陸時刻は午後3時37分、ブロック・インは午後3時49分でした)。

下のスクリーンショット(クリックで拡大)は、同日に同じくニューヨークから成田に向かっているデルタさんが、まさしく“日がまた昇る”瞬間であろう頃のトラックです。
※この頃、赤社5便は既に西からの日の出を向かえ、西日の中を飛行中です。

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2010年の初日の出は間もなくが、昨今の世の中に陽が射すのはいつになるのでしょうか。一度夕暮れになっても“陽はまた昇る”よろしく、来年は良い年になって欲しいものです。

皆様、本年もお世話になりました。怠惰なボロ愚にも関わらずお立ち寄りいただき感謝・感謝です。

来る2010年が皆様にとりまして佳き年となりますことを! どうぞ良いお年をお迎えください。
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Magnetic Variation

 はやいものできょうから師走、2009 年も残すところあと一か月になりました。

ここ数年は、毎年のように一年経つのがあっという間と感じています。歳なのでしょうか...。
が、変化(進化か退化かはあえて気にしない)を感じながら、時間と共に老いるのもこれまた楽し、であります。

時間と共に変化すると言えば、スパンは比べものになりませんが、地球の磁場もその仲間です。

同じ経度の点を結んでできる経線は、北極・南極を通る大円であります。ここでの北極・南極とは、地球の自転軸が貫いている地点のことであり、北極・南極と言った場合、ここをイメージするのが普通でしょう。

方角を知る道具、方位磁石。これは地球の磁場を利用して方角を知る道具でして、N ▲ が指し示すのは、地球磁石の北極、磁北であり、経線が示す所謂地形図の北、真北ではありません。

地球上のかなりの地点で真北と磁北とは一致しておらず、真北と磁北とのなす角度を“磁気偏角”といいます。

本邦付近のそれは、2000年1月1日の値で、4 ~ 10度程度磁北が真北よりも西に偏向してます。

出典:国土地理院技術資料 B・1-No.35 磁気図(偏角図) 2000.0年値

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毎度のことですが、本邦付近とか2000年1月1日で、とことわったのは、磁気偏角は地球上の場所によって異なり、また、同一地点でも、時間と共に変化しているからです。

航空機に搭載されている“コンパス”も方位磁石なので、真北ではなく、磁北基準です。

ここで、地球上のどこへでも飛んでいく飛行機ならではの悩ましいことがあります。

自機の場所の磁気偏角を常に考慮しなければならない…(駄洒落にあらず)。

航空地図には、この磁気偏角の情報が記されてますし、航空路方角等の方位は、極地帯を除き“磁北”基準です。

(空き地:適当な Enroute Chart 画像を紹介予定場所)

JEPPESEN ENROUTE CHART より ©JEPPESEN, 1999, 2009
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↓極地付近の航空路では真方位が用いられる
(数字°の後ろのTは真方位であることを示している)
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今日のハイテク機には、IRU: Inertial Reference Unit、ADIRU: Air Data Inertial Reference Unit といった自律航法装置が搭載されており、たとえ、地上航法支援施設や GPS からの情報が無くても、自機の位置を正確に割り出し、FMC: Flight Management Computer とカップリングして、プログラムしたルートに沿って飛ぶことが可能です。

ルートに沿って飛ぶためには、方位情報は欠かすことができません。また、磁方位を用いた方位計測では、その計測地点における“磁気偏角”を考慮することも欠かすことができません。

という訳で、ハイテク機は“磁気偏角”の情報も持っています。“磁気偏角”のことは、Magnetic Variation と言いますので、航空機が持っている“磁気偏角”情報のことを MagVar Table なんて言います。

この MagVar Table なるもの、つねにその時点での最新のものを使用しないとなりません。前述したように、“磁気偏角”は、同一地点でも時間と共に変化しているからです。

ちなみに、1980年から2005年までの25年間(四半世紀ですね)でどれだけ変わったか、世界地図上に色分けして示した図があります。

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[出典: Boeing AERO Magazine 2009 Q4]


本邦付近ではほとんど変化が無いのですが、南米や北米では、10度近く変化しています。10度を大きいとみるか小さいとみるかはそれぞれでしょうが、安全運航への脅威として考えた場合、決して無視できる変化量ではありません。

航空機の整備というと、エンジンや翼など、“飛行”の最前線をイメージしがちですが、中には「MagVar Table を最新に保つ」といった目立たなくても、日々の安全運航に重要な役割を果たし、欠かせないものもあるのです。


【おまけ】
Boeing747-400 のグレアシールドには、真方位を用いるか TRUE、磁方位を用いるか NORM の切り替えスイッチがあります。
このスイッチを切り替えると、PFD 下部のコンパス・ローズや ND の表示が変わります(厳密には Auto Pilot の Mode にも影響する)。

極地付近では、磁気偏角がちょっと飛んだだけで大きく変わってしまうので、磁方位を用いる NORM モードでも、北緯82度以北(場所によっては北緯70度以北)および南緯82度以南(場所によっては南緯60度以南)飛行時には、真方位が用いられるようになっています [値は Boeing747-400 の場合]。

  
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ツインのカルテット !?

双発機の躍進は世の流れなのでしょうか。

青さんでは随分前から米州線には777を導入していましたが、赤さんも先日、LAX, ORD が777となり、既に導入済みの JFK, SFO と加え、週28往復が777での運航となりました。
午後の北太平洋上空では米州4都市からの赤さん777が夕陽を追いかけ西に向かいます。

西海岸からですと、日々設定される KZOA TDA Track で、Jet の向い風や悪天域を避けての戻りとなり、大圏ルートでも、あまり北にあがることなく、北上したとしても ANC の南あたりまでで、その後は、NOPAC Route の R580, A590 などに乗って南西に下りてくるルートになります。

西海岸からの大圏ルートとなるアリューシャン列島付近は、『アリューシャン低気圧』とか『低気圧の墓場』といった言葉があるように、冬場は悪天候に見舞われることが多く、あまりにもひどい時には、Jet Core を南に避けて、北緯35度近辺を、ひたすら西に向かう大周りを強いられることになります。

東海岸(含むシカゴ)からの戻りは、カナダ上空を北西に進み、アラスカは状況に応じて FAI (Fairbanks) 付近まで北上、その後は、お天気とも相談して NOPAC Route か、それよりも北側のロシア空域に設けられたルートをとり、カムチャッカ半島を横断、オホーツク海上空を南下して、北海道の紋別,旭川を経るルートで帰ってきます。

当然ながら、冬場の北極近くを通るので、機外は極寒であり、燃料凍結にも気を配らなければなりませんし、下界が悪天の場合には、ETOPS 運航における Enroute Alternate にも影響が出てくるので、気を遣うことだらけでありましょう。

同じ北の極寒でも、シベリア上空は、冬場は割と安定してくるので、米州よりも欧州の方が…。

本日着の JFK からの戻り、アラスカ州アンカレッジ付近から先、赤さんは NOPAC R220 で下りてきているようですが、青さんは、カムチャッカを横切りオホーツク海上空の ANIMO point から FUKUOKA FIR に入り、旭川~千歳~大子を経て成田に戻るルートでプランされているようです。

[青さん]
  GAYEL J95 STOMP J63 SYR YYB YYU NCA24 GABRO NCA24 GAL J122 OME ERNIK B240 PAKLI B337 ANIMO B337 AWE V7 CHE Y10 GOC R211 KASMI

[赤さん]
  GAYEL J95 STOMP J63 SYR 4630N 08000W 5400N 09000W URMUD NCA19 KITAV NCA19 GAL J512 ENM NAYLD R220 NUBDA R220 NANAC OTR10 ARIES

[あめりかんさん]
  GAYEL J95 STOMP J63 SYR TULEG YYB YYU NCA25 EBGUT NCA25 YVQ NCA24 GAL J122 OME R338 NATES R220 NANAC OTR10 ARIES ARIESN

[でるたさん]
  GAYEL J95 STOMP J63 SYR YCF YYB J490 YTS YYU NCA24 YVQ FAI J120 MCG NOSHO R220 NEONN R220 NIKLL R220 NOGAL R220 NUBDA R220 IXE SWAMP R211 COMET WHARFN

四社とも、機材はどれも 777 です。


おまけ
無事に着いて何よりでした。

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RNAV Route って

 今や、携帯電話にもGPSが搭載され、屋外の見晴らしの良いところでは、そこそこの精度で自分の居場所が地図上に表示され、屋内でも、最寄の基地局情報を使っておおよその居場所が特定できる世の中となりました。

航空機の航法システムも当然のことながら進歩し、地上の航法支援施設( NDB, VOR, TACAN, DME など)を新設することなく、衛星を利用した航法システム GNSS: Global Navigation Satellite System や、航空機に搭載された自律航法装置(いわゆる、INS: Inertial Navigation System や IRS: Inertial Reference System )+ FMS: Flight Management System を利用することによって、航空路や標準出発経路・標準到着経路を設定できるようになってきました。

GNSS とは ICAO が提唱した(航法システムの)名称で、 ICAO Annex 10 Volume I Radio Navigation Aids に定義が書かれています。
GNSS を用いるための要件としては、次の4つが満たされる必要があります。
 - Accuracy ... 精度(位置情報の正確さ)
 - Integrity ... 完全性(情報が確実であること)
 - Continuity ... 継続性(サービスが中断しない)
 - Availability ... 利便性(稼働率の高さ)
このそれぞれに、さらに細かな要件が定められていますが、ここでは割愛します。

国際標準・勧告方式 SARPs: International Standards And Recommendation Practices では、 GNSS の構成要素として、以下を挙げています。
 - 全地球的衛星測位システム
  ・ GPS: Global Positioning System
  ・ GLONASS: Global Navigation Satellite System
 - 補強システム
  ・ ABAS: Aircraft Based Augmentation System *1
  ・ SBAS: Satellite Based Augmentation System *2
  ・ GBAS: Ground Based Augmentation System *3
 - GNSS受信装置

 *1 ABAS:衛星航法の補強を行う航空機に搭載されたシステム ... 自律航法装置はこれに相当します。
 *2 SBAS:補強情報を静止衛星を介して航空機に提供するシステム ... 本邦では、運輸多目的衛星 MTSAT を経由して補強システム信号が送信されています。 MSAS: MTSAT Satellite-based Augmentation System と呼ばれています。
 *3 GBAS:地上から補強情報を航空機に提供するシステム ... 従来からの地上の航法支援施設では、VORDME, ILS がこれに相当します。

このような、新たな航法システム(インフラ、定義、運用方式)を利用した航法のことを、広義で PBN: Performance Based Navigation 、意訳すると「性能・実行力を基にした航法」とでも言えましょうか、と言います。

今では本邦の上空にも RNAV Route (Yなんちゃら、Zなんちゃら)が網の目のようにはりめぐらされています。
 ※Zなんちゃら(現在は4本しかないけど)は、調整経路 っても呼ばれます [一昨年、駄文を書いてました]。

RNAV: Area Navigation (広域航法)とは;

 地上航法支援施設やGPSから受信した信号をもとに自機の位置と次の地点へのコースを航法機器が算出して飛行する航法概念であり、地上航法支援施設からの信号の受信装置、自律(自蔵)航法装置もしくは衛星航法装置、またはこれらを組み合わせることによって飛行可能になる。

といったことが AIM-j には書かれています。

AIM-j には、また、

 RNAV 経路は、従来の経路とは異なり、地上無線施設の配置等に左右されることなく(地上無線施設の直上を結ぶように経路を設定する必要がなく)、任意の地点を結んだ経路の設定が可能である。このため、地上無線施設を新設しなくても経路の設定が可能となる他、経路中心線の間隔が接近した平行経路や円弧状の経路の設定も可能である。これは空域の有効利用と円滑な航空交通の確保に効果があり、管制運用の柔軟性や効率的な運航等が期待できる。

とのメリットも記されています。

ここで、従来の経路と RNAV 経路との違いをイメージするために、お得意の拙い画を2つ用意しました。

図1は、従来の航空路の概念図を示したもので、地上航法支援装置(図では VORDME を想定した)間を結んだり、三点測量の原理で定義される交差点、 Intersection を用いて航空路が設定されます。

図1 従来の航空路の概念図

「目的地の空港近くまで真っ直ぐに飛びたい」と思っても、地上航法支援装置が発する電波は有限距離までしか到達しませんし(羽田に駐機中から、千歳の VORDME は受信できない .... 当然か)、地上航法支援装置からの距離が離れるにつれて、電波強度が弱くなることや、 VOR 無線局での1度の差に伴う横方向距離が大きくなることから、地上航法支援装置から離れるにつれて、航空路中心線から左右方向へのずれによる安全を確保するための Protect Area も広く設定しなければなりません。


図2 RNAV 航空路の概念図

これに対して、 RNAV Route では、『“任意の地点” Waypoint を結んだ経路の設定が可能 』となるので、図2に示すように、従来航法に比べて、ショートカットした効率的な経路を設定でき、それによって、飛行時間の短縮、 CO2 排出を減らし地球に優しい航空機の運航が可能になります。

Waypoint はどのように決められるか一つをとっても、またさらに細かくあるのですが、説明力不足+1万字の制限を越えそうなので、別の機会に譲ることとしましょう。
ざっくりと、緯度経度+それを補強するための手段により位置決めされている、と考えておいても間違いではないと思います。

RNAV 経路は、その成り立ちからも想像できるでしょうが、どんな飛行機,パイロットでも航行OKではありません。
航行するにはお大臣様(国土交通大臣)の許可が必要です。航空法第83条の2に定められた『特別な方式による航行』にあたるので、 RNAV 経路が RNAV システムの航法要件を満たしていること(インフラ側+航空機側)に加え、パイロットが教育・訓練を履修していなければなりません。

このなかの航法要件の一つとして、航法精度が出てきます。

Waypoint を結んだ線は幅0です。その上を、ドンピシャにトレースすることは所詮無理な話なので、経路中心線から左右にどれだけの距離精度で航行できるかを、 RNAV の航法要件として規定しています。

そこで「私は、どれだけ正確に飛べる性能・実行力 ( Performance ) を持ってますよ」ということを、フライトプランに明記します。
具体的には「 RNAV 種別 」「 RNP 種別 」を記入します。
「私は、全体の飛行時間の95%は、RNAV 経路中心線から左右それぞれ1マイルを逸れることなく航行できますよ」という場合には、RNAV1 or RNP1 、とか。
 ※厳密には横方向だけでなく、縦方向誤差にも適用されます。

ここで、 RNP: Required Navigation Performance なる新しい言葉が出てきました。

RNAV ~, RNP ~の両者は「経路の横方向の誤差は全飛行時間中の少なくとも95%はnマイルの範囲になければならない」という点では同じなのですが、 RNAV ペケペケと RNP ペケペケとが異なる点は、 RNP ペケペケ においては、機上装置自身で、航法性能を監視して、ペケペケの要件を満足しなくなったらパイロットに対して警報を発する、監視と警報機能“ On-Board Peformance Monitoring and Alerting ”を備えていることがその一つとしてあげられます[図3に概念図を示しました] 。

図3 RNAV と RNP との違い


RNAV 経路のなかにも、機上装置による精度監視と警報機能を必要とする( RNAV 航法能力に加え、航法能力の要件をも規定する)ものがあります[図4]。

図4 監視と警報機能が必要とされる RNAV 航空路( RNP )の概念図

RNP は、その精度に応じ、 RNP10 (*), RNP4, RNP2, Basic RNP1, Advanced RNP1, RNP APPROACH, RNP AR APPROACH に区別されています。
* RNP10 は監視と警報機能を必要としていないが、 ICAO では RNAV10 ではなくて RNP10 の表記を容認している。

RNP AR APPROACH ともなると、RF: Radius to Fix 旋回といって、FMS のアシストによって旋回中も経路中心線を一定誤差( ICAO PBN Manual Draft 5.1 には、その水平方向精度は 0.1 ~ 0.3 NM 、垂直方向精度も√(理解不能な数式)フィートとの要件が示されている) 未満で飛行可能との要件も規定されるので、地形やその他の理由で、現状 ILS による精密進入を設定できない滑走路へも、精密進入が可能となり、安全性の向上や就航率の向上などが期待できます。


現在、本邦の RNAV 経路は RNAV5 の基準で、原則として、レーダ覆域でレーダ管制業務が提供されている場合に限定して運用されています。
また、羽田をはじめ、いくつかの空港では RNAV1 の基準に基づく RNAV SID や RNAV STAR が整備されている他、 RNAV 進入( RNP 0.3 = RNP APPROACH 移行過渡期 )が公示されている空港・滑走路も増えてきました。

2012年度を目処に、ノンレーダ空港も含めその路線の多くは RNAV 運航が可能とすべく、 RNAV 整備が行われているそうです。

航空機の航法能力もどんどん向上し、またそのような航空機の割合が増えてくるでしょうから、そう遠くない将来には、 RNP に基づく RNAV 運航が当たり前となる日がくることでしょう。
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CJC3407/12FEB EWRBUF update

 NTSB: National Transportation Safety Board が現地時間の15日午後4時から、 Media Briefing を開きました。

それによると、当該機はわずか5秒間に800フィート( 1800 feet から 1000 feet [ 高度は AMSL: Above Mean Sea Level. バッファロー空港 Rwy 23 の接地帯の標高は 728 feet なので、 1000 feet と言っても地表の極めて近くということになります])も降下し、墜落に至ったとのことです。

CVR: Cockpit Voice Recorder には、墜落直前、 Autopilot が disengage した警告音や、失速を知らせる stick-shaker の音が記録されていたそうです。

当該機の着氷防止装置 de-icing system のスイッチは、ニューワークを離陸後11分後に ON されて、ずっと ON のままだったとのこと。

ニューワーク出発時点で、目的地バッファロー付近では、弱~中程度の着氷 light to moderate iding の予報が出ていましたが、フライトをキャンセルする程でないとの判断で、出発したようです。

実際、当該機到着予定時間帯にバッファローに到着した便のパイロットから、進入・着陸に支障がある着氷の報告はありませんでした。

当該機は、自動操縦を使用してバッファロー空港へ向けて降下・進入していました。

( NTSB の調査官は、「 自動操縦による進入は当時の天候下で不適切だったのでは?」 との問いに、「それはない」と答えています )

※ボンバルディア社が発行した AOM: Aircraft Operation Manual では、着氷が起こりうる状況下での自動操縦の使用に関して“ SEVERE ICING ” condition 時にのみ使用制限を設けているとのことです。

NTSB 調査官は、当時の気象状況は、“ SEVERE ICING CONDITION ”では無く、自動操縦を使用していたことに問題は無い - 当時の気象状況下で自動操縦を使用すること(解除しないこと)は一般的だ、と述べています。

当該機に異変が発生したのは、ギアを出し、フラップをセットしようとしたときでした。

当該機のピッチ角は、31°の機首上げ状態になった後、45°の機首下げを記録していました。ロールは、左に46°傾いた後、右に105°(90°[垂直]を超えている)にまでなりました。

NTSB の調査官は、地上に衝突するまで、当該機からの部品脱落はなかった、との見方をも示しています。
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Icing ? -- CJC3407/12FEB EWRBUF

 NTSB: National Transportation Safety Board が Cockpit Voice Recorder から得られた情報として、

 Landing Gear を出して、Flap を展開した後、ピッチ,ロールが激しく変化したこと。

 Cockpit Crew は、 Windshield (フロント・ウィンドウ)と主翼前縁への著しい着氷について会話を交わしていたこと。

 録音終了間際には、Landing Gear Up と Flap Up しようとしていたこと。

を発表しました。
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CJC3407/12FEB EWRBUF

 痛ましい事故のニュースを目にしました。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたします。

未だ明らかになっていないことが多い中で、推測するのは不謹慎ではありますが、気になった点がひとつ。

事故現場が、ほぼ、 BUFFALO NIAGARA INTL 空港への最終進入経路上近辺であったことです。


AviationSafetyNetwork のサイトにあった地図と、事故当時 BUFFALO 空港の到着機が使用していたであろう Rwy 23 への ILS or LOC Approach , RNAV (GPS) Approach チャートを見比べると、滑走路に向けて、あたかも正常に進入していて、突然、事故が発生したように思えるのです。

 

事故発生時刻は、現地時間の12日午後10時20分頃(国際標準時:13日03時20分)で、その前後の BUFFALO 空港のお天気は、

KBUF 130254Z 24015G22KT 3SM -SN BR FEW011 BKN021 OVC027 01/M01 A2979 RMK AO2 SLP097 P0001 60004 T00061006 51015=
KBUF 130354Z 24011KT 3SM -SN BR SCT011 OVC021 01/M01 A2981 RMK AO2 SLP103 P0002 T00061006=

でした。

弱い雪で低い雲が垂れこめ、視程も約4800m。しかし、精密計器進入をする飛行機にとっては、とりたてて悪い状況でもなく、風もほぼ滑走路方位から吹いていたようです。

気象条件からは、突然の強烈なダウンバーストにでも遭遇しない限り、事故は起こらないように思えます。

FAA により公示された BUFFALO ILS or LOC Rwy 23 Approach Chart によると、Glide Slope Capture は、 2300 feet で、これは、地上[厳密には Rwy 23 の接地帯]から約 1500 feet (約 470 m )の高さになります。


事故現場は、GS Capture して降下を開始した直後のあたりと思われます。

【 CFIT: Controlled Flight Into Terrain 】
- Altimeter Setting を間違えたか....。
- 2300 feet で level-off せず、そのまま continuous descend で降りていって(しかもそれなりの降下率で)しまったか....。

CNFG にもよりますが、 GPWS が Warning を発したかもしれないのですが、too late だった?

【 機材トラブル・他 】
- 突然の機材故障

NTSB は十数名からなる調査団を現地に派遣した模様です。今後の調査に注目しましょう。


[23:33 追記]

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NTSB ADVISORY
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National Transportation Safety Board
Washington, DC 20594

February 13, 2009

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NTSB TEAM INVESTIGATING AIRLINER CRASH NEAR BUFFALO

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The National Transportation Safety Board has dispatched a Go Team to investigate the crash of a turboprop airliner last night near Buffalo, New York.

At about 10:15 p.m. (EST) Thursday, February 12, a Bombardier Dash 8-Q400 twin-engine turboprop airplane, registration N200WQ, operated by Colgan Air, Inc., as Continental Express flight 3407 from Newark, New Jersey, crashed into a house during an instrument approach to Buffalo International Airport. It appears all aboard the aircraft lost their lives and there is a report of at least one ground fatality.

NTSB Senior Air Safety Investigator XXXXXXX XXXX will serve as Investigator-in-Charge of the team comprising approximately a dozen NTSB investigators. NTSB Member XXXXXX XXXXXXXXX is accompanying the team and will serve as principal spokesman for the on-scene investigation. XXXXX XXXXXXXX is the press officer joining the team. Once on scene, Mr. XXXXXXXX can be reached on his cell phone, XXX-XXX-XXXX.

The Federal Aviation Administration, Colgan Air, and the Air Line Pilots Association will be parties to the NTSB's investigation. The aircraft and engines were manufactured in Canada, and the Transportation Safety Board (TSB) of Canada has appointed an Accredited Representative who will arrive on scene today along with technical advisors from TSB, Bombardier Aerospace and Pratt & Whitney Canada.

An NTSB media briefing will be announced later today.

- 30 -
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USA1549/15JAN LGACLT 3rd update from NTSB

 今朝、 NTSB から USA1549/15JAN LGACLT に関するアップデートが入っていたので、取り急ぎ引用しておきます。

(後程、加筆予定)
相変わらずの意訳ですが、ちょっと加筆しました。


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NTSB ADVISORY
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National Transportation Safety Board
Washington, DC 20594

February 4, 2009

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THIRD UPDATE ON INVESTIGATION INTO DITCHING OF US AIRWAYS
JETLINER INTO HUDSON RIVER


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The following is an update on the National Transportation Safety Board's investigation of US Airways flight 1549, which ditched into the Hudson River on January 15, 2009.

The left (#1) engine, which was recovered from the Hudson River on January 23 and subsequently shipped to the manufacturer in Cincinnati where the NTSB is directing a teardown, was found to contain bird remains. The organic material found in the right (#2) engine has also been confirmed to be bird remains. The material from both engines has been sent to the Smithsonian Institution in Washington where the particular bird species will be identified.

As part of its investigation into this accident, the NTSB investigated an engine surge event that occurred in the right (#2) engine during a flight on January 13, two days prior to the accident. The engine recovered from the surge and the remainder of the flight was completed uneventfully. The NTSB determined that the surge was due to a faulty temperature sensor, which was replaced by maintenance personal following approved procedures. After the engine was examined with a boroscope and found to be undamaged and in good working order, the aircraft was returned to service.

On December 31, 2008, the Federal Aviation Administration (FAA) issued an Airworthiness Directive (AD) covering all CFM56-5B series turbofan engines, the same type that was on the accident aircraft. After examining the engine maintenance records and interviewing relevant personnel, the NTSB determined that all of the requirements of the AD were complied with prior to the accident flight.

During the accident flight, the flight data recorder revealed no anomalies or malfunctions in either engine up to the point where the captain reported a bird strike, after which there was an uncommanded loss of thrust in both engines.

Last week the aircraft was moved from the barge where it had been docked in Jersey City, NJ, to a secure salvage yard in Kearny, NJ, where it will remain throughout the NTSB investigation, which is expected to last 12-18 months.

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ハドソン川から引き揚げられた左側の No.1 エンジンからもバードストライクの痕跡が確認されました。

右主翼の No.2 エンジンから発見された生体組織も鳥のものと確認され、No.1 No.2 共にバードストライクに遭ったことが裏付けられました。

当該機は、事故の前々日のフライトで No 2 エンジンがサージを起こしていたのですが、サージからの回復後は、そのフライトは問題なくオペレーションされていたとのことです。

サージの原因は、温度センサーの誤作動によるものでした。その後、誤作動した温度センサーは点検整備により交換されましたが、交換作業手順に問題はなく、 BSI: BoreScope Inspection でエンジンに(交換作業に伴う)損傷がないことを確認の後、運航に供されています。

当該機が装備していいたエンジンと同型の CFM56-5B シリーズには、昨年( 2008 年 ) 12 月 31 日に FAA: Federal Aviation Administration から、耐空改善命令 AD: Airworthiness Directive (※1)が出されておりましたが、 NTSB は「当該機は事故前にその AD の要件を満たしていた」と結論付けています。

当該フライトで機長からバードストライクの通報があるまでは、FDR: Flight Data Recorder には異変・不具合は記録されていなかったとのこと。

NTSB の調査は継続され、調査期間は1年から1年半に及ぶ見込みだそうです。

※1
FAA-2008-1353; Directorate Identifier 2008-NE-46-AD; Amendment 39-15779; AD 2009-01-01

Airworthiness Directives; CFM International, S. A. CFM56-5B Series Turbofan Engines

ACTION: Final rule; request for comments.

DATES: This AD becomes effective December 31, 2008.
     We must receive any comments on this AD by March 2, 2009.

この AD は CFM56-5B1/P を装備した A321 が離陸・上昇中に高圧コンプレッサ HPC: High-Pressure Compressor ストールを起こしたことを受けて、 HPC ストール防止のために発効されたもので、 HPC の BSI と共に、エンジン排気ガス温度 EGT: Exhaust Gas Temperature マージンを継続モニタリングするように、とされています。

Title Photo: Photo of feather found in the left (#1) engine
Copyright © 2009 National Transportation Safety Board
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A380 の後ろ (アプローチ編)

 めげずに A380 のセパレーションについてです。(今回で〆のつもりです)

ここでご紹介する値は、アプローチ、しかもレーダ管制下におけるセパレーションです。

Radar separation
The separation used when aircraft position information is derived from radar sources.

そもそも、アプローチの定義を明確にする必要があるのですが、墓穴を掘りそうなので、ここでは勘弁して下さい。

紹介するセパレーション値が適用される条件の一つに

 b) both aircraft are using the same runway, or parallel runways separated by less than 760 m;

とありますので、同一滑走路に A380 と他の機種が着陸進入してくる場合や、760m未満の間隔で隣接した平行滑走路(例えば、新千歳 Rwy 01L と Rwy 01R )に A380 と他の機種が着陸進入してくる場合を想定して下さい。

アプローチにおける A380 の後方乱気流の影響は、前回ご紹介した A380 の後ろを A320 (Medium), A300B2 (Heavy) を徘徊させる方法に加え、 A380 と B747 ( or B777 ) の二機を下地島チックに場周経路を飛ばし、地上に設置した LIDAR: LIght Detection And Ranging で Final ( 260 feet above ground ) 地点の渦の状態を観測する方法で行われました。

上の図のようなイメージで、2005年から2007年にかけて15日、のべ125時間の試験飛行を、フランスとドイツの計4つの空港で実施したそうです。

で、 LIDAR のデータを解析して、渦の発生から消滅していく過程を現状の Heavy 機と比較しました。
その結果が下の図です。


[出典: Claude Lelaie, "A380: New Wake Vortex Flight Test Methods and Results",
Joint meeting of the FSF 61st annual International Air Safety Seminar IASS, IFA 38th International Conference, and IATA, October 2008 ]

縦軸は渦の強さ、横軸は通過直後からの経過時間です。

従来の Heavy 機 Boeing 747-400, Boeing 777 も、 A380 も時間が経てば渦の強さは同じような傾向で低下していきますが、通過直後に発生する渦の強さが A380 の方が大きいため、従来の Heavy 機が発生する渦と同じレベルまでに至るには、 A380 の方が時間を要します。

ここで、定義済みの間隔(先行機は従来の Heavy 機)で通過した時点でX軸に垂直線を引き(図の1)、その線と、従来の Heavy 機の渦の強さ遷移平均値(図中の赤線)とが交わるY軸の値(リファレンスとなる渦の強さ)で、水平線を引きます(図の2)。
その水平線を右方向に延ばすと、 A380 が発生させる渦の強さ遷移平均値カーブ(図中の青線)と交わる点が出てきますので、その交点から垂線を下ろし、そのX軸の経過時間を距離換算して、 A380 が先行機の場合の後続機とのセパレーションの指針としています。

これらの試験飛行の結果などを反映し、2006年10月のICAO State letter の内容が一部見直され、2008年7月8日に新たな State letter
 Reference : TEC/OPS/SEP-08-0294.SLG
 Subject: Wake turbulence aspects of Airbus A380-800 aircraft
が発表されました。

2006年10月の State letter で規定された、レーダ・アプローチにおける A380 後続機の最小セパレーションは、タイトル画像にも示した通り、

先行機後続機最小間隔
A380-800A380-8007.4 km (4.0 NM)
A380-800Non-A380-800 HEAVY11.1 km (6.0 NM)
A380-800MEDIUM14.8 km (8.0 NM)
A380-800LIGHT18.5 km (10.0 NM)


でしたが、
ICAO State letter July 2008 では、

先行機後続機最小間隔
A380-800
non-A380-800 HEAVY
A380-800Not required
A380-800Non-A380-800 HEAVY11.1 km (6.0 NM)
A380-800MEDIUM13 km (7.0 NM)
A380-800LIGHT14.8 km (8.0 NM)


となりました。

A380 を含む HEAVY 機の後に A380 が続く場合には、後方乱気流に起因するセパレーション上の制約は必要とされず、管制機関が定めるレーダ最小間隔が適用できるので、例えば 2.5 NM 間隔で A380 連続なども可能になりました。

また、後続機が MEDIUM 、 LIGHT の場合の間隔もそれぞれ 1 NM 、 2 NM 短縮され、 7 NM 、 8 NM になりました。

※従来の HEAVY 機が先行機の場合の後続する MEDIUM 、 LIGHT への間隔はそれぞれ 5 NM 、6 NM ですから、 A380 の出現により、中型機、小型機が後続するシーケンスでは、2NMの間隔増加となった訳ですね。


「澄んだ夜空 + 到着機で混雑する空港近く」のコンビネーションでは、レーダ誘導により整然と並べられた提灯行列を眺めることができます。

混雑する空港では、単に二機間のセパレーションだけでなく、次々とやってくる到着機をどのように並べるかが重要になります。

最新の ICAO State letter で、 A380 が後続機の場合のセパレーションが、レーダ最小間隔まで詰めて良し、となった背景には、 A380 の出現で交通流が大きく淀まないようにすることも考えられているのではないでしょうか。

HEAVY - HEAVY - HEAVY のアプローチを考えた場合、真ん中の HEAVY 機が A380 か Non-A380 かで3機を並べるのに必要な距離が変わってきます。

ICAO State letter 改訂によるセパレーションの変遷と、 Non-A380 だけの並びを図にしてみました。


最上段は、 Non-A380 HEAVY 機が3機並んだアプローチで、4NM間隔に並び、8NMあれば3機を詰め込むことができます。

最下段は、最初の ICAO State letter で定義されたセパレーションを適用し A380 を真中に配した場合で、 A380 の後ろが10NM必要とされていたので、3機並べると14NM必要でした。つまり、 A380 が入り込んだだけで、 Non-A380 HEAVY 1機分を超えるロスが生じていたわけです。

が、2006年の改定で、ロスは2NMまで縮まり、2008年の改定では、( A380 を先行機のぎりぎりまで詰めることが前提ですが)ロスは0.5NMまでになりました。

勿論、それぞれの管制機関が最終的には判断することになりますが、 ICAO としては、 A380 が参入してきたことによる航空交通流の乱れを極力少なくすべく、後方乱気流という視点からの基準を、安全性を担保しつつ策定している、と思われます。
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USA1549/15JAN LGACLT update from NTSB

 今朝、 NTSB: National Transportation Safety Board からメールが入っていましたので、ひとまず引用しておきます。左側の No. 1 Engine もハドソン川で発見され、(現地時間の)木曜日には回収されるとのこと。


************************************************************
NTSB ADVISORY
************************************************************


National Transportation Safety Board
Washington, DC 20594

January 21, 2009

************************************************************

NTSB ISSUES UPDATE ON INVESTIGATION INTO DITCHING OF US
AIRWAYS JETLINER INTO HUDSON RIVER

************************************************************


In its continuing investigation of US Airways flight 1549, which ditched into the Hudson River adjacent to Manhattan at approximately 3:30 p.m. on January 15, 2009, the National Transportation Safety Board has developed the following factual information:

The right engine has been externally examined and documented. An examination of the first stage fan blades revealed evidence of soft body impact damage. Three of the variable guide vanes are fractured and two are missing. The engine's electronic control unit is missing and numerous internal components of the engine were significantly
damaged.

What appears to be organic material was found in the right engine and on the wings and fuselage. Samples of the material have been provided to the United States Department of Agriculture for a complete DNA analysis. A single feather was found attached to a flap track on the wing. It is being sent to bird identification experts at the Smithsonian.

The left engine has been located in about 50 feet of water near the area of the Hudson River where the aircraft ditched. The NTSB is working with federal, state and local agencies to recover the engine, which is expected to occur sometime on Thursday.

The NTSB has learned that the right engine experienced a surge during a flight on January 13, 2009, and that subsequent maintenance actions included the replacement of a temperature probe. Investigators from the NTSB's Maintenance Records group are researching this report by examining applicable maintenance records and procedures.

The NTSB's Survival Factors group is in the process of interviewing passengers to learn more about the events surrounding the ditching and the emergency evacuation and rescue. The Operations and Human Performance group is interviewing US Airways flight operations training personnel.

The checked and carry-on baggage is in the process of being removed from the aircraft. Representatives from the NTSB's Office of Transportation Disaster Assistance are working to coordinate efforts with US Airways to return these items to the passengers.

The on-scene documentation of the airplane is expected to be completed by the end of the week. Preparations are underway to facilitate movement and more permanent storage of the airplane so that more detailed documentation of the damage can be performed at a later date.

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(追記)

「第一段ファンブレードに soft body がぶつかった痕跡あり。ブレード3枚損傷、2枚欠落」からして、凄まじいバードストライク(と思われる)であったことがうかがわれる。

と思われる と書いたのは、 NTSB では未だ断定していないので....。

エンジンと翼から生体組織が見つかり、採取したサンプルは DNA 鑑定されるとのこと。また、フラップに見つかった衝突痕跡は、スミソニアンの鳥類専門家のもとで、鳥の種類鑑定が行われるとのこと。

(変な表現ですが)「普通のバードストライクと違いうな」と目を惹いたのは、
 “ The engine's electronic control unit is missing and numerous internal components of the engine were significantly damaged.
の部分。

第一段のファン・ブレードが損傷することは珍しくないけれど、エンジン・コントロール・ユニットが見つからない、のは、エンジン内部が激しく損傷していたこと以上に衝撃的。コントロール・ユニットはいつの段階で外れてしまったのだろうか。

また、 No. 2 Engine は事故前々日の13日の飛行中、サージを起こして、その後の整備で温度プローブを交換していたとのことで、その整備作業(サージへの適切な対処だったか、交換手順は適切だったか)についても調査中。

ハドソン川河畔現地での調査は今週中に終え、その後、機体を移動してより詳細な調査が行われる。
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A380 の後ろ (エンルート編)

 『君子危うきに近寄らず』ではありませんが、民間機として世界最大の旅客機である Airbus A380 が起こす後方乱気流は如何許りか、と考えると迂闊に近づくこともできません。しかし、今後、確実にライン就航が増えてくるであろう A380 を怖がってばかりもおられません。

今回はエンルート、しかもレーダ管制下にある場合のセパレーションについてです。
AIM-j 514. 【レーダー間隔】 (IFR)

レーダー管制下では、縦間隔および横間隔にかえて 次のレーダー間隔が適用される。
 a) レーダーサイトから40マイル未満の空域:3マイル
 b) レーダーサイトから40マイル以遠の空域:5マイル
 ただし、RDPがデジタルモードで使用されている場合は:5マイル
A380 誕生以前には、エンルート・レーダ管制下における Heavy 機と後続機との最小間隔は 5 NM (約 9.3 km )と定められていました。

現在、A380 でもエンルート・レーダ管制下における後続機との最小間隔は、Boeing 747 などと同様に 5 NM まで詰めることができます。
ここでの後続機とは大きさを問いません。 Heavy, Medium, Light の何でもOKです。


ただ、最初から 5 NM と決まった訳ではなく、先ずは、それまでの Heavy 機の主流である Boeing 747 に対し +10 NM のマージンをとって 15 NM の間隔が必要とされました。(2005年11月に発表された ICAO State letter T3/4.4 - AP111/05 (ATM) "Airbus A380 wake vortex aspects" )
*さらには、最小垂直間隔の 1000 feet の高度差がある航空機に対しても、その影響は未知数として、垂直間隔の指針は未定でした。

その後、 Mach 0.85 で A380 を巡航させ、その 1500 feet 下(後方乱気流の渦は下方に流れるため、同一高度でなく下の高度を選んだ) 後方 5 NM ~ 15 NM の範囲を A318 が徘徊?し、その様子を A380 の 2000 feet 上空を飛行する Falcon 20 に搭載した LIDAR から測定する、という大掛かりなテストが実施されました。
※ LIDAR: LIght Detection And Ranging ドップラーライダ:レーザ光を発射して、大気中の塵や微粒子からの反射光を受信して、その移動速度を風速として計測する装置。

更に、従来の Heavy 機との差異を調べるために、 A380 と A340, B747 とを 0.25 ~ 0.3 NM の間隔で並走?させての同様のテストまで実施されました。

A380 Wake Cruise Test with Virtical LIDAR
(右脳が全く働かずに描いた図ゆえ、イメージでし難くてすみません)

この試験飛行は、2006年1月~6月の間に、計6回実施され、それらの結果から;
 -渦の降下率は B747 も A380 も同じで、1000 feet 下 12 ~ 15 NM の範囲に達する
 -様々なパラメータの測定結果では、 B747 と A380 とでは大きな差異はみられない
 -後続機のパイロット( FAA のテストパイロットも同乗した)の印象でも B747 と A380 とで差異がない
ことが解りました。

これらの実証試験結果を受けて、ICAO では2006年10月10日に State letter T3/4.4 - AP099/06 (ATM) "Wake turbulence aspects of Airbus A380-800 aircraft" を発表、当初の +10 NM のマージンは不要で、エンルート・レーダ管制の最小間隔は 5 NM まで詰めることが認められたのです。
*最小垂直間隔も 1000 feet が適用されます。
(でも offset track 無しで、1000 feet の高度差で A380 とすれ違うのは相当に迫力でしょうねぇ)

よって、現在は、レーダ管制下にあるエンルート同一高度上に、
 ... A380 ~(5 NM)~ B737 ~(5 NM)~ A380 ~(5 NM)~ B777 ...
のように並べることもOKとなりました。

あと何年先になるかは見当もつきませんが、5マイル間隔で A380 が行列する光景が見られるのかもしれません。

今回ご紹介した 5 NM の最小間隔は、エンルートにおける Minimum Radar Spacing であり、エンルートでも洋上のような Non-Radar 域には適用されません。

また、アプローチでは、後続機の大きさに応じた、異なる MRS: Minimum Radar Separations 値が規定されています。

A380 のアプローチにおけるセパレーションはまたあらためて。
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大寒

 きょうは二十四節気の“大寒”、午前7時40分に太陽黄経が300°となりました。「冷気が極まって、最も寒さがつのる」頃とされています。
だからと言って、寒いオヤジ・ギャグではないのですが....。

“大寒”にちなんで KAL の話題を。

昨年のことになりますが、Korean Air で韓国初の女性機長が誕生しています。

昨年11月、韓国航空局(厳密には Civil Aviation Safety Authority )は、Soo-jin Shin さんと Soo-in Hong さんに定期運送用操縦士技能証明(限定事項 B737-800)を発行し、お二人は11月15日に機長として初フライトしました。

Shin さんと Hong さんは1995年、 KAL のチェジュ飛行学校で student pilot としてそのキャリアをスタートし、1997年に事業用操縦士技能証明(飛行機)限定事項 MD-82 を取得しました。

その後、 Shin さんは、2001年10月に Boeing 747-400 に機種移行、 Hong さんも2001年に Boeing 777 に機種移行。お二人共にキャリアを積んで、2008年11月に機長としてのフライトを果しました。

韓国では、機長昇格訓練へのお声がかかるには、 First Officer として5年以上、飛行時間4000時間以上、着陸回数350回以上の条件を満たす必要があるそうで、お二人はそれをクリア、昇格訓練を経て4本線を手にしたのですね。

Shin さんの総飛行時間は4458時間、Hong さんのそれは5510時間だそうです。
(いつの時点での数字かは不明)

KAL では、昨年11月の時点で、A330 の First Officer としてキャリアを積んできた Yeon-jung Hwang さんも昇格訓練中だそうで、2008年中には定期運送用操縦士技能証明(限定事項は不明)を取得するだろうとのことでした。

以上、 Airliner World 2009 年 1 月号の記事から得た情報でした。
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後方乱気流区分

 きょうは七草粥、と聞いて、ふと昨年晩秋の健康診断を思い出してしまいました。メタボ検診とやらで腹まわりを計測されるとあって、一所懸命腹式呼吸の練習をしたものの徒労に終わったでありました。

さて、後方乱気流の投稿が続いていますが、今回は後方乱気流区分についてのお話です。

初回の投稿で、wake vortex の強さは
 - 重量
 - 主翼の大きさ Wingspan
 - 速度
が関係すると書きました。

“デカク”て“重い”飛行機ほど、後方に形成される渦は強くなる訳ですが、ICAO: International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関)では、後方乱気流区分 Wake Turbulence Categories を定めています[@ Doc 4444 ATM/501 PANS ( Procedures for Air Navigation Service ) ATM ( Air Traffic Management ) 4.9 WAKE TURBULENCE CATEGORIES ]。

そこには、
4.9.1 Wake turbulence categories of aircraft


4.9.1.1 Wake turbulence separation minima shall be based on a grouping of aircraft types into three categories according to the maximum certificated take-off mass as follows:

a) HEAVY (H) ― all aircraft types of 136 000 kg or more;

b) MEDIUM (M) ― aircraft types less than 136 000 kg but more than 7 000 kg; and

c) LIGHT (L) ― aircraft types of 7 000 kg or less.

と記されており、最大離陸重量により Heavy, Medium, Light の3つに区分されています。

下の図のように、136トン、7トンがそれぞれ境界値となっています。



後方乱気流区分が、何故に ICAO PANS ATM で定義されているかというと、それは後方乱気流が管制間隔に影響するからに他なりません。

飛行に際しては、計器飛行,有視界飛行に関わらず、飛行計画、所謂フライトプランを提出しなければなりませんが、そのフライトプランにも、“後方乱気流区分”を記載する欄がちゃんと用意されています。

下は、ICAO フォーマットのフライトプラン(本邦の飛行計画書もこのフォーマットに準じています)の当該部分です。
(わかりやすくするため、勝手に着色しました)

ICAO FLT PLN ITEM 9 portion

この部分に、航空機の型式と共に“後方乱気流区分”を示す H, M, L の何れかを記入しなければなりません。
書き方説明書 ?にもちゃんと書いてあります。

日に沢山の便を運航するエアラインでは、一便ごとに1枚のプランを提出していたのでは、作成する方もそれを処理する方も大変ですし、何よりも貴重な紙資源を消費してしまうので、 Repetitive Flight Plans (RPLS) という形式で(乱暴ですが、空港のカウンタや旅行代理店などで見かける ○○○ △月時刻表のようなもと思えば良い)予め提出しておきます。その提出フォーム RPL listing は下のようなものですが、



こちらにも、後方乱気流区分を記載する欄があって、こちらの 書き方説明書 ?にも、後方乱気流区分についての記述があります。

以上、後方乱気流区分は、最大離陸重量に基づき、 HEAVY, MEDIUM, LIGHT の3段階に区分されていますよ、とのおはなしでした。


【余談】

『 RPLS で予めフライトプラン提出しておく、って言ったって、その日のお天気やお客さんの状況によって巡航高度(や速度)あるいはルートだって変わるだろうし、ときどき機材変更だってあるじゃないか 』と疑問に思ったあなたは鋭い。

RPLS は後から訂正がかけられるようになっています。

例えば、機材変更やそれに伴う後方乱気流区分の変更、巡航速度,巡航高度を RPLS で提出済みのそれから変更する場合は、可及的速やかに出発予定時刻の30分前までに管制機関に連絡すれば良いことになっています。
さらに、変更が巡航高度だけであれば、パイロットが管制にクリアランスをもらうための initial contact 時に伝えればOKです。

それと、 RPLS への記入項目には、代替飛行場、搭載燃料(持久時間)、搭乗人数、緊急装備品などが含まれていません。これらの項目は「お問い合わせ先はこちら」(例えば AAL Briefing Office みたいに....)を記入すればOKです。

RPLS は、 Repetitive の名が示すとおり、繰り返し・定期的に運航される計器飛行方式でのみ使われるもので、これを提出してもらうことで、管制機関側は、フローコントロールの戦略が立てられる訳ですね。
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後方乱気流 (その2)

 お正月気分も早々に抜けて、明日が仕事始めであります。「始めがあれば終わりもある」ではありませんが、前回説明した“後方乱気流”について、渦が出来てから消滅するまでを軽くご紹介します。

先ず、後方乱気流(の渦)は、飛行機の航跡をそのままトレースしてはいません。

発生した渦は、最初の約30秒間は毎分 300 ~ 500 feet の率で下方に伸びます。渦の降下率は時間経過と共に減少し、最初に一気に下がった後は、ダラダラと航跡の約 500 ~ 900 feet 程度まで下がります。その後、消滅します。

消滅までの時間は、渦を発生させる飛行機の“大きさ”( Wingspan, Weight )と“速さ”によって違いはありますが、概ね1分間前後です。

1分間というと短いように感じられるかもしれませんが、飛行機の速さを考慮すると、数kmは優に進んでしまいます。距離換算すると、大体 5 NM(海里)約9km程度になります。この距離も、飛行機の“大きさ”などに影響されます。

つまり、デカイ先行機の後方5 NM 下方 500 ~ 900 feet 圏内は後方乱気流要注意地帯と言えます。

Vertical Motion


上の図は、横から見たイメージですが、次に、上空の“風”、殊に横風成分を考慮してみましょう。

横風成分が0の場合には、渦は素直にまっすぐ後ろに伸びますが、横風があると、当然ながら渦は風に流されます。

横風成分が1~5ノット程度までは、渦はそれほど流されませんが、5ノットを超えると、風の影響を受けやすくなることが知られています。



最近のハイテク機では、ND: Navigation Display 上に、自機が受けている風の状態が表示されるようになっており、横風成分がイメージしやすくなっておりますが、だからと言って、勝手に間隔をつめることは出来ません。

風が急に変わるかもしれないし、そもそもIFRで飛行している機は、管制間隔が決められていますから....。

さて、この“管制間隔”ですが、先行機と後続機の“大きさ”、正確に言うと“後方乱気流区分”によって、どれだけあけなければならないかが定められています。

今まで、3段階( Light, Medium, Heavy )の後方乱気流区分では、 Boeing747 が Heavy の代名詞的存在でしたが、ここにきて、大物が現れました。

そうです、Airbus A380 の就航です。 ICAO では「 A380 の後方乱気流に関する Steering Group / Working Group 」からの勧告を検討し、 ICAO State Letter, PANS-ATM を発行・改定してきています。

成田にも定期就航している A380 ですから、A380 後続機がどれだけの間隔をとらねばならないかについては、改めてご紹介できれば、と考えております。
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あなどれない後方乱気流

 年始早々に“乱気流”で申し訳ありません。波乱の幕開け ??

前回の Reduced Thrust Takeoff に対して、 Picorino さんから以下のコメントをいただきました。

弱きもの 汝の名は

Reduced Thrust Takeoff は広く使われていますが、時と場合によっては「落とし穴が」と、我が知恵袋氏が話しておりました。
中小型機(100人乗れても中型の範疇)が、大型機のあと離陸する場合です。離陸直後に旋回するケースで、先行大型機の外側後流に入ると、旋回する側に回転している渦のためにBankが急激に深くなり逆舵を最大限に使うこともあるとのこと。
中小型機パイロットは、それを避けるため先行大型機の後流の上に出たいので、離陸性能とは別の理由で大き目のパワーを使うことがあるそうです。

「離陸直後に旋回するケースで、先行大型機の外側後流に入る」の適切な説明になっていないかもしれませんが、先行機が作り出す後方乱気流、所謂 Wake Turbulence と、それに巻き込まれると危険であることのお話です。

飛行機が文字通り“飛行”している状態においては、翼は揚力を得ており、つまりは、翼はそれだけの空気の流れの中に置かれております。
揚力は翼の上面と下面とで空気流速が異なることで翼の下面に上向きの圧力が発生し、云々と、小生には理解不能な空気力学で説明されておりましたっけ。

要は、翼には整った空気の流れができており、そのお陰で飛行機が浮かんでおる訳ですが、今回、厄介ものになるのは、翼を通り抜けた後の、自機にとっては用済みの空気流です。飛行機が飛んだ後に乱された空気の状態と考えることもできましょう。

詳しい理論は解りませんが、揚力を発生させた空気流は、翼端から渦を巻いて後ろに流れ去るのだそうです。その渦巻きの形は、図1に示すようなグルグルになるとのことです。

Wake-turbulence formation
図1 Wate Turbulence 後方乱気流の形成の仕方


この渦の強さは、飛行機の
 - 重量
 - 主翼の大きさ Wingspan
 - 速度
に加え、周囲の大気状態(風、ウィンド・シェア、擾乱など)、さらに地表面近くでは、対地効果も影響を与えます。

が、概ね、でかくて重くて速い飛行機が作り出す後方乱気流が強力になると考えて良いでしょう。

Boeing 737, Airbus A320 の後方乱気流を1とした場合、Boeing 767 のそれは 1.5 、Airbus A300 のそれは 1.7 、Boeing 777 は 1.8、 Boeing 747 だと 2.5 にもなります。
※厳密には、同一機種でも重量により渦の強さは変わりますので、上の値はおおよその目安に考えて下さい。
(参考までに、発生する渦の強さの機種別相対比較を下に示します [出典:FAA Wake Turbulence Training Aid, Final Report, April 1995 ])

Boeing 747 クラスの大型機が引起す後方乱気流は、ちょっと半端ではない強さになりまして、後続機がそれに巻き込まれたりしたら、とんでもないことになってしまいます。

実際に、米国のジョン・F・ケネディー国際空港を離陸直後のアメリカン航空587便 A300-605R (N14053) が、現地時刻の2001年11月12日午前9時16分頃、Belle Harbor の住宅地に墜落した事故は、Wake Turbulence が引き金になったと、NTSB の事故調査報告書に記載されています。
(当該機は後方乱気流区分 Heavy 機が離陸した1分40秒後に同一滑走路から離陸、浮上した lifted off 時点で、先行機とは 4.3 NM (約8km)の水平間隔、 3800 feet (約1160m)の垂直間隔があった。が、後方乱気流の影響を受けた)

渦 - 後方乱気流は、時間が経てば消滅しますので、先行機との間隔を十分にとれば、その影響を受けなくなりますし、管制間隔も、後方乱気流の影響を受けないであろうことを考慮して設定されています。

しかし、前述したように、単純に先行機の大きさ重さ速度だけでなく、そのときの気象状況によって、後方乱気流の渦の強さ、生存時間は影響を受けるので、混雑時間帯の離陸のように、最小のセパレーションで離陸許可が発出されているときには、先行機の後方乱気流への注意を怠ることはできません。

一例として、羽田 34R からの離陸を想定してみましょう。

羽田空港の Rwy 34R からの離陸機は、高度 500 feet (約150m)で右旋回に入ります。SID により、右旋回後の Heading に差異はありますが、離陸後は全て右旋回です。

ここで、下の図2に示すように、先行機の左翼から発生する渦に巻き込まれると、右へバンクするロールが誘発されます。

Induced roll
図2 後方乱気流の渦により誘発されるロール


それでなくても、右旋回時には、右にバンクをとっている訳で、それに加えてこの力が加わると、右旋回時とは逆の舵をあてなければなりません Counter Control 。

離陸して間もなくこのような状況に遭遇するのはスレット(安全を脅かすもの)となりますから、避けるにこしたことはありません。



羽田の場合、騒音対策上、一定以上外に膨らむことは出来ないので、先行機の跡をトレースしないようにするには、早めに高度をとって(=離陸定格出力を使って)早めに右旋回する、などの対策が必要になる訳ですね。
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