徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

明日から「文月」 - 機内誌も一部が…

 2006年も半分が過ぎようとしています。明日から「文月」であります。

赤社の機内誌 SKYWARD (小生の世代は WINDS なのですが…)の巻頭の挨拶にやっとN松さんが登場してくれました。前任者は何てお名前でしたかね、すっかり忘れました。

簡単に自己紹介をしておりますね。一部、引用してご紹介しましょう。

skyward July 2006
  :
私は、これまで財務の仕事を中心に歩んでまいりました。この仕事は、一見内向きと思われがちですが、実は常に社外の方々のご意見を肌で感じ、現場感覚が必要とされる毎日でした。
これからも、お客様と接する現場意識を常に持ち、「安全」と「お客様の視点」をさらに大切にするJALグループとなるよう、誠心誠意努力してまいります。
  :

  :
Until now, I have worked in the finance end of the business. That type of work is sometimes thought to be rather self-contained, but my job required thorough understanding of outside opinions and an appreciation of what was shaping the mind-set of frontline staff.
My approach as CEO will be to continue to keep in contact with our customers and do my best to make the JAL Group into an enterprise that places primary importance on safety and the customers' point of view. ...
  :
…ですと。

前任者、相変わらずお名前を思い出せないのですが、の方と比較するのではなく、己の信念と絶対的価値観をもって自己評価して下さいますようお願いしますよ。

前と比較すりゃぁ、世間一般では平均以下のことをしていても大概が“マシになった”になってしまうのですから。

確か、ご出身は浜松で、入社後はフランクフルト支店にもおられたと記憶しております。

折りしもドイツでW杯が開催されている時期に就任したわけですから、芸術的なゴールを次々と決めてくれることを現場は期待していると思いますよ。

機内誌への原稿とは若干異なり、上の引用部分は載っていませんが、 社長挨拶 が Web でご覧になれます。
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GPWS: Ground Proximity Warning System - Mode 5

 勢いだけで続けてきている GPWS: Ground Proximity Warning System 「地上接近警報装置」の説明、今回は Mode 5 にチャレンジです。

これが終わると、残るは Mode 6 のみですから、何となくゴールが見えてきそうです。

さて、 GPWS Mode 5 ですが、これは飛行機が Glide Slope を下回ったときに警告を発するためのものです。

つまり、当該モードが有効なのは、ILS: Instrument Landing System (計器着陸装置)を使って進入・着陸を行う場合に限られます。

GPWS Mode 5 は Landing Gear が Down Locked となり、ILS の周波数が設定され(つまみを回して ILS の周波数を選局し、モールス符号で所望の滑走路の ILS であることを確認する、なんていう操作は過去のものになりつつあるほど、最近のハイテク機は発展が凄い;着陸滑走路を FMC: Flight Management Computer に設定するだけ…)、飛行機の高度が地上925フィート未満、の3つの条件が全て揃うと自動的に動作を開始します。

下に示した図が、 GPWS Mode 5 の警告特性です。

GPWS Mode 5 Warning Envelope


横軸が ILS Glide Slope (計器着陸装置の誘導電波の内、的確な進入角度(通常は3度)を示すビーム)ビーム中心からのズレで、縦軸が電波高度計で計測した地上高です。

図からも明らかなように、警告は2つの領域に分かれています。

飛行機が "Glide Slope (Soft)" 領域に入った場合、人口音声は比較的穏やかに "Glide slope" と警告を発し、"Below Glide Slope" の黄色の警告灯が点滅します。

“比較的穏やか”と記しましたが、どの位かというと、他の警告音よりも6dB(デシベル)小さい音量だそうです。

電波高度計が約300フィート以下になると、ビーム中心からのズレが大きい場合(大きく沈み込んだ場合)、他の警告類と同じ音量で人口音声が "Glide slope" と怒鳴ります。

図を良く見ると解かるかと思いますが、電波高度計が150フィート未満では、 "Glode Slope" の警告音を発する境界が甘くなっています( ILS Glide Slope のビーム中心からのズレの許容範囲が増えている)。

これは、電波高度計が150フィート未満まで降りている=滑走路端が近い= ILS Glide Slope のアンテナが近い、ということを考慮していて、 Glide Slope 電波に過敏反応して発せられる警告が得てして厄介者になることを回避するためです。

ILS の Glide Slope, Localizer の電波は非常に繊細なので、CAT II, CAT III 等で地上が SSP: Special Safeguard and Procedures 体制をとっているときは良いのですが、そうでない場合、 アンテナ付近やそのビーム近傍に車両が一台通っただけでも ILS のビームは影響を受けるのです。
※SSP体勢とは、ILS制限区域内に人ひとり入れずILSが発するビームが擾乱を受けることがないようにする体制です。
※ILS制限区域内を確保するだけでなく、他にも進入灯火類が規程の輝度で点灯していること、非常用バックアップ電源がオンになっており瞬間停電にも影響を受けないことなども含まれています。

これまで見てきた GPWS Mode と同様、GPWS Mode 5 もパイロットが意図的に無効化することが出来ます。
G/S INHIBIT SW of Boeing747-400
無効化するときには、"Below Glide Slope" 警告等(あるいは Glide Slope Inhibit スイッチ)を押します。

これにより、滑走路接地帯よりもやや手前に接地させて、着陸後の滑走路長をかせぐ、といったオペレーションも可能になります。

上述したように、 Glide Slope 電波は非常に繊細であるため、それ故、不安定な Glide Slope ビームが原因で GPWS Mode 5 の警告が厄介者になってしまう可能性も否定できません。
よって、これまで述べてきた他の GPWS Mode の警告類よりも、この GPWS Mode 5 の警告は優先度が低くなっています(唯一、同一優先度扱いになるのが Mode 6 の警告です)。

最後に、 GPWS Mode 5 の警告がどのように作動するかをイメージした図を下に示します。

GPWS Mode 5 Warning Example
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さながら梅雨末期の大雨の様相です

 梅雨前線の活動が活発化し、各地で被害が出ているようです。被災された方々にお見舞い申し上げます。

タイトル(今朝6時のレーダー・エコー)画像及び下に示すアニメーションは、熊本県地方の今朝6時から6時50分までの10分間隔のレーダー・エコーです。

Rader Echo from 2100Z to 1250Z 25JUN2006 around RJFT


梅雨前線の帯上に、猛烈な降水域がめまぐるしく動いている様子が見てとれます。

今朝6時過ぎから正午までの熊本空港の気象通報式は以下の通りです。

RJFT 260300Z 23009KT 200V270 3000 TSRA BR FEW002 BKN004 BKN010 FEW010CB 23/23 Q1009
RJFT 260238Z 28009KT 200V340 1000 R07/0300VP1800D TSRA BR FEW001 BKN003 BKN015 FEW015CB 23/23 Q1009 RMK 2ST001 5ST003 6CU015 2CB015 A2979 RI++ MOD TS 10KM NW MOV NE
RJFT 260233Z 23008KT 190V290 0600 R07/1000VP1800N +TSRA FG FEW001 BKN003 BKN015 FEW015CB 23/23 Q1009 RMK 2ST001 5ST003 6CU015 2CB015 A2982 MOD TS 10KM NW MOV NE
RJFT 260230Z 21007KT 170V260 2500 +TSRA BR FEW001 BKN003 BKN015 FEW015CB 23/23 Q1008 RMK 2ST001 5ST003 7CU015 1CB015 A2979 FBL TS 10KM W MOV NE
RJFT 260215Z 21006KT 160V250 3000 -SHRA BR FEW001 BKN003 BKN015 23/23 Q1008 RETS RMK 2ST001 5ST003 7CU015 A2978
RJFT 260200Z 21009KT 170V240 4000 +TSRA BR FEW001 BKN003 BKN015 FEW015CB 23/23 Q1008
RJFT 260142Z 21010KT 180V250 2500 +TSRA BR SCT001 BKN003 BKN015 FEW015CB 24/24 Q1008 RMK 3ST001 5ST003 7CU015 1CB015 A2979 FBL TS 20KM W MOV NE
RJFT 260130Z 21008KT 4000 SHRA BR FEW001 BKN005 BKN015 24/24 Q1008 RMK 2ST001 6ST005 7CU015 A2979
RJFT 260100Z 20007KT 170V230 5000 BR FEW002 BKN005 BKN015 24/24 Q1009
RJFT 260000Z 19006KT 160V220 9999 FEW002 SCT005 BKN010 23/23 Q1009 RETS
RJFT 252344Z 19006KT 140V220 7000 FEW001 SCT005 BKN010 23/23 Q1009 RETS RMK 1ST001 4ST005 6CU010 A2980
RJFT 252330Z 20008KT 7000 -SHRA SCT001 BKN005 BKN015 23/23 Q1009 RETS RMK 3ST001 5ST005 6CU015 A2980
RJFT 252300Z 22007KT 5000 -TSRA BR FEW001 BKN003 BKN015 FEW015CB 23/23 Q1009
RJFT 252246Z 23010KT 180V260 5000 -SHRA BR FEW001 BKN003 BKN015 23/23 Q1009 RETS RMK 2ST001 5ST003 6CU015 A2981
RJFT 252217Z 22010KT 170V250 2500 -SHRA BR FEW001 BKN003 BKN010 FEW015CB 23/23 Q1009 RETS RMK 2ST001 5ST003 6CU010 2CB015 A2981 CB 10KM NE MOV NE
RJFT 252203Z 23008KT 200V270 1500 R07/0700VP1800U TSRA BR FEW001 BKN005 BKN015 FEW015CB 23/23 Q1009 RMK 2ST001 5ST005 6CU015 2CB015 A2980 TS 5KM NE MOV NE
RJFT 252200Z 23009KT 200V260 1500 R07/0700VP1800D TSRA BR FEW001 BKN005 BKN015 FEW015CB 23/23 Q1009
RJFT 252145Z 23010KT 190V280 2000 TSRA BR SCT001 BKN003 BKN015 FEW015CB 23/23 Q1008 RMK 3ST001 6ST003 6CU015 2CB015 A2979 TS OHD MOV NE
RJFT 252134Z 22006KT 170V250 1200 R07/0400VP1800N +TSRA BR SCT001 BKN003 BKN015 FEW015CB 23/23 Q1008 RMK 3ST001 6ST003 6CU015 2CB015 A2977 RI++ TS 4KM S MOV NE
RJFT 252110Z 26010KT 210V310 1000 R07/0400V1000U +TSRA BR FEW000 BKN003 BKN015 FEW015CB 23/23 Q1008 RMK 2ST000 6ST003 6CU015 2CB015 A2979 RI++ TS OHD MOV NE

午前11時33分には、

 23008KT 190V290 0600 R07/1000VP1800N +TSRA FG FEW001 BKN003

と、並みの空港ならお手上げの状況ですが、そこは ILS 猫三匹Bが運用されている熊本空港、ちょっとやそっとでは音を上げません。
(参考投稿: いよいよ本邦でも CAT IIIB

23008KT 190V290 であれば、追い風成分も制限範囲内ですから、有資格クルーであれば ILS Auto Land が可能です。
(手元に AOM が無いのですが、確か Auto Land の追い風制限値は 15kt 程度だったと記憶しています)

青社も鶴社もSNAも熊本線に今のところイレギュラー無しです( May Return, May Divert はかけて出てるかも知れませんが.... )。

大雨で滑走路面に水膜ができてハイドロプレーンは大丈夫か?と心配になるかもしれませんが、滑走路面には grooving といって水はけを良くするこまかな溝が切ってありますし、最近の機種は Spoiler (着陸後減速用に用いる主翼上面の可動翼)が(主脚の) Not Tilt を検出して立つようになっていますので、Auto Brake ... MAX と相まって安全に減速できます。

それにしても、凄いお天気です。10時半から正午までの10分間隔のレーダー・エコーも“猫の目”のようです。

Rader Echo from 0130Z to 0300Z 26JUN2006 around RJFT


九州北部などで大雨 引き続き警戒呼び掛け (共同通信) - goo ニュース
活発な梅雨前線の影響で、九州北部地方は非常に激しい雨が降るとして、気象庁は26日、土砂災害や河川のはんらんに警戒するよう呼び掛けた。九州では福岡、長崎、熊本の3県を中心に土砂崩れなどが相次ぎ、熊本県で2人が負傷した。

気象庁によると、梅雨前線が九州地方に停滞して活発化している。熊本県の益城で、午前6時までの1時間に105ミリの猛烈な雨を観測するなど、同県の各地で22日の降り始めからの雨量が400ミリを超えた。西日本や東海地方でも激しい雨が降る見込みという。

梅雨前線は26日午後、活動がやや収まるものの、27日にかけて九州地方から西日本を通り、東日本の太平洋沿岸に停滞。27日朝には九州地方で再び活動が活発化する恐れがあるとしている。

2006年 6月26日 (月) 12:47
<大雨>熊本に記録的短時間大雨情報 土砂災害など警戒を (毎日新聞) - Yahoo! ニュース
九州北部に停滞する梅雨前線が活発化し、九州北部・山口地方は26日午前も断続的に強い雨が降った。熊本県益城町の熊本空港で午前6時10分までの1時間で113ミリの猛烈な雨を記録し、熊本地方気象台は「記録的短時間大雨情報」を出した。熊本県北部でがけ崩れや床上・床下浸水が出た。
 福岡管区気象台によると、雨はいったん小康状態になるが、27日朝には梅雨前線の活動が再び活発になる見込みで、土砂災害や河川増水などに厳重な警戒を呼びかけている。
 24日午後3時から26日午前5時までの雨量は、大分県日田市238ミリ▽熊本県玉名市225ミリ▽同県阿蘇市219ミリ▽山口県下関市187ミリ▽福岡県大牟田市176ミリ▽福岡市75ミリ――など。
 熊本県内では、九州自動車道菊水―植木インター間でのり面が崩れ、同区間の上り線が通行止め。玉名市では床上浸水1戸、床下浸水12戸のほか、がけ崩れが15件起きた。
 26日の1時間当たりの予想最大雨量は熊本県で90ミリ。他は30~60ミリと予想される。各地の26日午前6時からの24時間雨量は、熊本160ミリ▽大分、長崎120ミリ▽福岡、佐賀100ミリ▽山口30ミリ――と見込まれている。【山本泰久、伊藤奈々恵】
 ◇大雨、27日午後には関東北部でも
 気象庁は今後、大雨は次第に弱まりながら、地域は東に移動すると予測している。27日朝までの予想24時間降水量は▽九州北部160ミリ▽中国、四国、九州南部、近畿、東海80~100ミリ。27日午後には関東北部でも大雨になる可能性があるという。【五味香織】

(毎日新聞) - 6月26日12時55分更新
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GPWS: Ground Proximity Warning System - Mode 4

 GPWS: Ground Proximity Warning System 「地上接近警報装置」 説明にチャレンジ、もなんとか Mode 4 にまでなりました。

先ず、これまでのまとめとして、Mode 1, Mode 2, Mode 3 が何たるかを簡単におさらいしてみます。
  1. GPWS Mode 1
     
    電波高度計・気圧高度計から、電波高度( Radio Altitude )と降下率( Decent Rate )をモニターし極端な降下率に対して警告・警報を発する

  2. GPWS Mode 2
     
    電波高度計から、電波高度( Radio Altitude )と地上接近率( Closure Rate )をモニター、さらに飛行速度も加味し地上との余裕の極端な減少に対して警告を発する

  3. GPWS Mode 3
     
    “離陸”“着陸復行”を自動的に検知、それに続く上昇フェイズにおいて、電波高度計・気圧高度計から、電波高度( Radio Altitude )と気圧高度低下( Altitude Loss )をモニターし上昇が止まり地上に接近する危険性に対して警告を発する

となっています。

地上への激突に対して、より現実的な状況を想定したり、飛行局面を限定したより細かな計算を行なう等して、『意味ある警報装置』として機能追加されていることがわかります。

さて、今回はさらに一段階進んだ GPWS Mode 4 の動作説明です。

GPWS Mode 4 が目的とするところは、パイロットに対して『地上地形に対する高度の余裕が不足していること』の警告です。

GPWS Mode 3 が「“離陸”“着陸復行”後の上昇時」に特化していたのに対し、GPWS Mode 4 は( Mode 3 でカバーされるフェイズに続く)上昇・巡航・降下・着陸進入の飛行局面を対象としています。

GPWS Mode 4 は飛行機がおかれた飛行局面に応じて3種類の異なる警告を発します。

全ての飛行局面とまではいきませんでしたが、 GPWS Mode 4 の3種類の警告がどのようなときに発せられるかを模式化したのが下の図です。

GPWS Mode 4 Example (Descent, Approach, Landing phase)


通常の運航においては、離陸後、高度の上昇に伴い高揚力装置(いわゆるフラップ)を徐々に格納し、ある一定高度になると高揚力装置は完全に格納され、主翼は高速での巡航に適した形になります。
これを、Clean Configuration [強いて和訳すると「さっぱりした(すっきりした)形状」となりましょうか]と言います。
この Clean Configuration は、巡航高度までの上昇~巡航~巡航高度から着陸進入へ向けた降下の後半、まで続きます。

Clean Configuration の状況においては、GPWS Mode 4 は Mode 3 に準じたモニターを行なうことで“見張り”を行なっています。

Mode 3 の説明において「地上高925フィートを超えた状態が15~20秒継続するとスタンバイ・モードとなり」の件がありましたが、 Mode 3 が“スタンバイ・モード”になると同時に、Mode 4 のこの“見張り”が開始されるます。

この“見張り”を行なうことを「 "Warning Floor" を提供する」などと言い、飛行機と地上地形との間に安全間隔を確保するための仮想的な床面(フロア)を設定するようなものです。

GPWS Mode 4 は、その床を突き破って飛行機が降下してきた場合、以下に示す Warning Floor 特性カーブに基づき警告を発します。

GPWS Mode 4 Warning Floor Operating Curve


最初に示した模式図では、オレンジ色で縁どりをした "Too low, terrain" の警告が、この Warning Floor を想定したつもりです。

さて、着陸へ向けた降下が進むにつれ、飛行機は速度を徐々に速度を減らして行きます。

余談ですが、空にも制限速度を設けた空域があります。空域の大小、上限高度の高低はありますが、空港の周辺は制限速度が設定された空域です。

本邦ではそのような空域での制限速度(指示対気速度の値で計ります)を;
 高度1万フィート以下 … 250ノット
 高度3千フィート以下 … 200ノット[レシプロ機は160ノット]
と定めています。

減速して対気速度が減ってくると、 GPWS Mode 4 の降下・着陸進入の飛行局面を想定した警告機能が出番となります。

その特性曲線を以下の図に示します。

GPWS Mode 4 Operating Curve


着目していただきたいのは、X軸に“対気速度( Airspeed )”と「速度」が判定基準の前面に出てきたことです。

対気速度が200ノット(時速約370キロ)以上の速度域で飛行中、電波高度が750フィートを割り込むと、合成音声による "Too Low, Terrain" の警告が発せられ、赤色の "GPWS Warn" 警告灯が点滅します。

 「(高度が)低すぎるぞ、地形」

と警告される訳です。

特性曲線からも読み取れますが、750フィートから500フィートの間では、閾値となる対気速度が高度に応じて変化しています。

750フィートでは200ノットだった閾値は、500フィートでは178ノット(時速約330キロ)になります。

降下・着陸進入において、対気速度が178ノット未満になると、GPWS は飛行機が着陸進入の初期段階に入ったと考えます。

その状態で、地上高500フィート以下になり、それなのに脚( Landin Gear )が未だ格納されたままだと、合成音声が "Too Low, Gear" の警告を発し、赤色の "GPWS Warn" 警告灯が点滅します。

 「(高度が)低すぎるぞ、脚」

事故を未然に防ぐ装置ですから仕方ないのでしょうが、さながら“鬼教官”であります。

飛行機が着陸進入の最終段階に入ったことを GPWS は地上高度が170フィートまで降下したことで判断します。

その最終段階で、高揚力装置(いわゆるフラップ)が着陸のために定められたポジションになっていないと、 GPWS Mode 4 は合成音声で "Too Low, Flap" の警告を発するとともに、赤色の "GPWS Warn" 警告灯点滅します。

 「(高度が)低すぎるぞ、フラップ出せ」

と鬼教官の喝が…。

下の図が、フラップに関する警告の特性曲線です。

GPWS Mode 4 Operating Curve (Flap Override)



Mode 1, 2, 3 と同様に Mode 4 にも "GPWS Flap Override" 機構があります。

ただ、この Mode 4 の "GPWS Flap Override" 機構は、感度を鈍らせる云々では無くて、この "Too Low, Flap" の警告そのもが発せられないようにしてしまいます。

この "GPWS Flap Override" スイッチはパイロットが意図的にオンにするのですが、誤ってオンにしてしまわないように、スイッチにはカバーが付いています。
※タイトル画像参照。

どのようなときに "GPWS Flap Override" スイッチをオンにするか。

着陸はいつでもフラップ最大下げで行なうとは限りません。

空港・気象・機体など様々な要因によって、フラップを少ししか降ろさず、対気速度を増加させて着陸に臨むこともあります。

そのような場合、 GPWS Mode 4 は「フラップは partial flap であり landing configuration ではない」と判断し、警告を発することになります。

その警告を抑止するために(「オレは解って意図的にこのようなフラップ設定にしてるのだぞ」と GPWS Mode 4 に意思表示するために) "GPWS Flap Override" スイッチをオンにするのです。

と、 GPWS Mode 4 の動作説明チャレンジはここまで…。



無謀にも何と Mode 4 まで終えました。怖いもの知らず、とはよく言ったものです。

残りは Mode 5, 6 となりましたが、ここからが正念場。今月中にまとめられるかどうか、現在只今の憔悴具合からすると微妙かなぁ。

一般的には何の役にも立たず、また、航空機の運航に携わっておられるかたには「何を今更」の内容で、結局はただただ駄文を連ねているだけの投稿であり、何をやっているんだか....。

が、このような常に進化を続ける予防的システムと厳しく訓練されたパイロットをはじめとする航空関係者の方々のたゆまぬ努力により、我々は「飛行機を安全な公共輸送機関」として利用出来ているのだ、との一助になれば。
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三発機・FE乗務機はいいねぇ

 先ずは怪我人も無く、警報も誤作動だったようで無事戻れて何よりでした。

“火災”は飛行中の航空機にとって非常に危険な因子でありますし、ましてや状況を直接目視確認できない旅客機の貨物室の火災は尚更です。

よって「警報」が作動したら『どうせ誤報だろう』との考えは絶対に許されず、Emergency かけて Land at Nearest Suitable Airport です。

昨年の8月21日にも、日付が変わって間もなくですが、成田からオーストラリアはパースに向かっていた Quantas 70/20AUG (Airbus A330) が、貨物室の「発煙警告灯」が点灯したため、関空に緊急着陸、PIC は Evacuation を命じました。
 [関連記事: カンタス機緊急着陸 センサー誤動作か
     (以下2件は血圧上昇中)
 ・相変わらず警察が出てきてる これじゃ神様も怒る訳だ
 ・つける薬は無いものか (しつこくてすみません)
     (で、少しおさまる;本当に瞬間湯沸かし器の見本のようだ…恥ずかしい)
 ・当然の結論です、が懲りずに頑固な公僕も ]

このときは、脱出時にお怪我をされた方がいらっしゃったので、無知なマスコミがよってたかって騒ぎ立て、これもお約束で“浪花の公僕さん”が「業務上過失傷害容疑」で捜査に乗り出すなど、本邦の航空後進国ぶりを存分に発揮したのでした。

今回のNWAのケースは本土からは随分と離れた洋上であり、難しい対応を迫られたと思いますが、当該便の Crew は総合的に良い判断をしましたね。

それもこれも、機体システムに精通した Flight Engineer が乗務して三名で運航していたこと。ETOPS の制限を受けない三発機であるため、仮に戻りの最中(通報が0時半で着陸が3時過ぎですから2時間半を要しています)にエンジンが一発トラブルを起こしても大丈夫と、心にゆとりも持てますし。

一週間前の NWA80/18JUN TPEKIX (Boeing747-400) の IFSD: In-Flight Shut Down させた件といい、NWAさんは搭載エンジン数につきがありますね。

[補足+参考]
成田空港というと、午後11時~翌朝午前6時までの厳格な Curfew で有名ですが、空港機能そのものは24時間運用されています。
さらに今回のように緊急事態の場合(緊急事態とは機材トラブルに限った訳ではなく、お客様の急病で一刻を争うような場合も含まれます)には着陸が許可されています。

ちなみに、Jeppesen Airway Manual の成田空港の騒音規制に関わるページ( 20-4 )には以下のように書かれています。

TIME RESTRICTIONS ON DEPARTURES AND ARRIVALS
  1. No take-off or landing shall be permitted during the hours from 1400Z to 2100Z with the exception of aircraft in an emergency or in an unavoidable situation.
    Note: "In an emergency or in an unavoidable situation" as described above shall be limited to the following cases:
    (a) Aircraft encountered with an abnormal situation.
    (b) When abnormal situations arise among crew or passengers.
    (c) Aircraft operating for the purpose of search and rescue activities.
    (d) Aircraft operating for the purpose of urgent news collection activities.
    (e) When take-off or landing is considered really unavoidable due to typhoon evacuation or other reasons.
    (f) When the necessity of urgent refuelling arises due to unusual weather conditions.
  2. The airport office JCAB shall not accept flight plans in violation of the paragraph above.
今回のNWAの場合は1.の(a)ですね。

※このページの裏面(20-4A)のテキストが変更になり、先日差替えたのでした。


NW機で火災警報 関西発ホノルル行き (共同通信) - goo ニュース
25日午前零時半ごろ、関西発ホノルル行きノースウエスト航空16便DC10から「貨物室で火災が発生したという警報が出た」と国土交通省成田空港事務所に連絡があった。

同機は成田空港に引き返し、25日午前3時ごろ緊急着陸する見込み。同機は24日夜、関西空港を出発した。

国土交通省によると、煙は確認されていないという。

2006年 6月25日 (日) 01:45
NW機で火災警告が点灯 成田に着陸、誤作動か (共同通信) - Yahoo! ニュース
25日午前零時半ごろ、関西発ホノルル行きノースウエスト航空16便DC10から「貨物室の火災警告灯が点灯した」と国土交通省成田空港事務所に連絡があった。
 同機は同日午前3時すぎに成田空港に緊急着陸した。同航空によると、着陸後の点検で貨物室に火災が発生した様子はなかった。けが人はないという。警報装置の誤表示とみられる。

(共同通信) - 6月25日6時4分更新
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GPWS: Ground Proximity Warning System - Mode 3

 「懲りないねぇ」の言葉が至る所から聞こえてきそうですが、挫けることなく GPWS: Ground Proximity Warning System 「地上接近警報装置」 Mode 3 の説明にチャレンジです。

『離陸と着陸、どちらが大変ですか?』との素朴な疑問は、パイロットが尋ねられる質問トップ10に入るのではないでしょうか。

門外漢の推測と一乗客としての搭乗経験からすると、『“離陸”は緊張し“着陸”は難しい』との回答に賛同して下さるパイロットさんは少なくないのでは…。

“離陸”とは二次元平面上で(ほぼ)停止状態にある機体を、エンジンが持てる最大パワーを使って有限長内で加速し、揚力を得て三次元運動に移行させる操作です。

“離陸”直後、三次元運動に移行した飛行機は、安定して安全に上昇しなければなりませんが、その状況を監視して、危うくなったら警告を発してくれるのが GPWS Mode 3 です。

実際には、着陸・進入を断念して上昇する“着陸復行”においても「安定した安全な上昇」が不可欠なので、この GPWS Mode 3 が機能します。

GPWS Mode 3 が何をしているかというと、離陸・着陸復行後、極端に高度を失う状態に陥ると警告を発します。

GPWS Mode 3 は電波高度計を用いて地上からの高さ( Radio Altitude )を計測・計算し、そこから高度上昇の総計をモニターしています。

気圧高度計で計測した高度低下が、この高度上昇総計値の約10%を超えると、合成音声で "Don't Sink" との警告を発し、その間 "GPWS Warn" 警告灯が点滅を続けます。
(※警告・点滅は、プラスの上昇率( "Positive Climb" といいます)が再度得られると止みます。)

"Don't Sink" とは「沈むな」とか「高度を減らすな」といった意味になるでしょうか。

GPWS Mode 3 の特性曲線を以下の図に示します。

GPWS Mode 3 Warning curve


上図からも読み取れますが、 Radio Altitude で約750フィート付近を境に警告領域に入る閾値特性に違いがあります。ある程度の高度が得られたら、閾値特性を若干緩めています。

ここで、 GPWS は「“離陸”したな」とか「“着陸復行”したな」ということを自動的に判断します。

何を基に飛行機の状態を判別しているかと言うと;
  • 対気速度の増加
  • 気圧高度計の値
  • 脚( Landing Gear )が格納された
  • など等
です。

GPWS Mode 3 のオン・オフ(スタンバイ)ですが、以下の通りです。

1)飛行機が地上高50フィートを超えると警告に向けた監視が始まり、
2)地上高925フィートを超えた状態が15~20秒継続するとスタンバイ・モードとなり、
3)その後は“着陸復行”を検出すると、警告に向けた監視が再開される。

GPWS Mode 3 が、離陸後どのように機能するかは下の図によりイメージできるのではないでしょうか。

GPWS Mode 3 Warning Example after Takeoff


離陸した飛行機が、まだ不安定な状態において上昇が止まり若干の沈下が始まったとし( Wake Turbulence など気流条件ではあり得ることです)、飛行ルート下の地形に起伏がある場合を想定した図です。

最初に示した特性曲線と見比べてみましょう。

例えば、電波高度計で計測・計算した高度上昇総計値が250フィートで上昇が止まり、気圧高度計が約30フィートの高度減少を検知したとすると、それは「 "Don't sink" 」の領域に入りますので、警告が発せられる訳です。

さて、Mode 1, Mode 2 には「 GPWS の感度を鈍らせる」機能がありました。

Mode 3 も同様で「感度を鈍らせる」機構があります。呼び名は Mode 2 と同じで "GPWS Flap Override" と言います。

ただし、Mode 3 はそもそも“離陸”や“着陸復行”といった低空でのオペレーションが対象になっていますので、この「鈍化機構」をオンにする状況は Mode 1, Mode 2 のそれらとは異なります。

パイロットが意図的に "GPWS Flap Override" をオンにするのですが、オンにするのは主として訓練時です。
(※今やシミュレータによる訓練が主流であり、実機でエンジン故障を想定した訓練をする機会は稀だと思いますが…)

この "GPWS Flap Override" により「感度を鈍らせた」場合の GPWS Mode 3 特性カーブは最初の図で点線で示したものとなり、
 「約10%を超えると」
の部分が
 「約20%を超えると」
にまで感度が低下します。

GPWS Mode 3 、以上。



勢いに任せて何とか折り返し点にまで達しました。残るは、Mode 4, 5, 6 です。

Mode 3 が“離陸”後の上昇をターゲットにしていたところからして、Mode 4 は“着陸”かな、と思いますよね。

そう単純・簡単でないところが手強いのであります。

残り三つ、的確に説明できるかどうか大いに疑問ですね。これから勉強しなおしです。
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GPWS: Ground Proximity Warning System - Mode 2

 GPWS: Ground Proximity Warning System 「地上接近警報装置」 Mode 2 の説明にチャレンジです。

GPWS Mode 1 の警告・警報は極端な降下率に基づくものでした。

想定する激突対象が、海面や障害物の無い水平な地表面であれば「地上接近警報」として有益ですが、飛行ルートの下は常に海面や広大で水平な大平原とは限りません。

起伏に富んだ地形に対しても、GPWS は有益な警告・警報を発してくれなければ、実用的とは言えません。

Mode 2 には、地形の影響により、飛行機と地上との間隔が急激に減少して地上へ激突する危険性が増したときの警告を強化する目的があります。

Mode 2 が警告を発するためにモニターしている値は、地上からの電波高度( Radio Altitude )と地表接近率( Closure Rate )です。

地表接近率と GPWS Mode 2 が発する警告は、下の図に基づいています。

GPWS Mode 2 Warning Condition


GPWS Mode 2 は次の二種類の合成音声による警告を発し、その間、赤色の "GPWS Warn" 警告等が点滅します。

"Terrain, Terrain!", "Pull up!" 、それぞれ「地形、地形」、「引き起こせ!」の意味です。

上に示した地上高度と地表接近率の関係に応じ、実際の飛行においてはどのように警告が発せられるのかをみてみましょう。

GPWS Mode 2 Example into Mountain


この図は、水平飛行している飛行ルートの行く手に起伏に富んだ小高い山があることを想定したものです。

航空地図では全世界を細かなメッシュに分割し、その領域内での最低安全高度( MSA: Minimum Safe Altitude )を設定してその値が記載されていますし、空の道、航空路でも、区間毎に、最低安全高度を規程しており、“その最低安全高度より下に降りての巡航や飛行”は禁じられており(離着陸時を除く)、この図の例は規程違反とも見えなくもありません。

が、万一、ミスを犯して低高度まで降りて水平飛行していたとしても(ここが Mode 1 と決定的に異なる部分です)、地上高度と地表との接近率をモニターしている GPWS Mode 2 は、当該地上高度-対-地表接近率が規定値を超えると、"Terrain, Terrain!" の警告を一回発し、さらに間髪を入れずに "Pull up!" の警告を危険が回避されるまで発し続けます。

例として用いた図では、GPWS Mode 2 が警告を発するタイミングは、そのまま水平飛行を続ければ激突するまで15秒を切ってからです(15秒って、あっという間ですよ)。

間髪入れずに回避操作に入ったとしても、高速で飛行するジェット機であれば最悪の結末を迎えてしまう可能性も否定できません。

そのため、 Mode 2 では飛行機の速度に応じた機能拡張が可能です。飛行機の速度が速ければ、地表接近率をより厳しく設定し(より早くから警告を発する)、衝突回避操作に対する時間的余裕を持たせるのです。

この飛行速度を考慮した機能拡張をした場合の地表接近率と GPWS Mode 2 が発する警告は、下の図のようになります。

GPWS Mode 2 Warning Condition with Speed Expansion


さて、GPWS Mode 1 において「進入・着陸時には感度を鈍らせる」ことが出来たのと同様の機構が Mode 2 にも備えられています。

これにより、パイロットは空港への進入時、 GPWS Mode 2 の警告を受けることなく、より自由度のある機体操作が可能になります。

この機構を "GPWS Flap Override" 、和訳すると「地上接近警報装置の高揚力装置優先」とでも言いましょうか。

この機構は、パイロットの意思で(手動で)オンにするか、あるいは飛行機が着陸態勢( landing configuration と言います;フラップが下げられランディング・ギアも降りた状態)に入ったことを GPWS が自動的に検出してオンになります。

当該機構がオンになると、GPWS Mode 2 の特性カーブは下の図のように変化し、感度がかなり鈍くなります。

GPWS Mode 2 desensitized curve


このオーバーライド機構は、進入経路上に起伏に富んだ小高い丘などがある空港に目視進入する場合などに有効です。

目視進入・着陸は、十分な視程・雲低高度が確保されいる VMC: Visual Meteorological Condition 下で行われますので、当然、パイロットとしては空港・滑走路は勿論のこと、地上の障害物も視認できていると考えられるからです。

"GPWS Flap Override" をオンにしての進入・着陸については、下の図でイメージがつかめるかと思います。

GPWS Mode 2 Flap Override in visual approach


以上が GPWS Mode 2 の動作説明です。



無謀ともいえるこのチャレンジ、何とか Mode 2 まで来ました。

が、まだ3分の1。この先のモードは何かと複雑で高度になるし、ということは図面も大変。

しつこくて恐縮ですが、いつ完結するかは不明です。
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GPWS: Ground Proximity Warning System - Mode 1

 GPWS: Ground Proximity Warning System 、和訳すると「地上接近警報装置」と言います。

CFIT: Controlled Flight Into Terrain 、つまり機材故障などではなく正常に制御され飛行していた機体が地上・海上に激突する、この類の事故を撲滅することは今日の航空界に課せられた課題の一つです。

昔に比べ CFIT が原因の事故は激減したとは言え、まだ時として人智の無力さを嘲り笑うかのように CFIT が原因と推定される事故は無くなりません。

GPWS は CFIT 対策の一つとして米国において1973年から航空機への装備が始まり、それ以降、確かに CFIT による事故は減少傾向をたどっています。
その意味で、GPWS は CFIT 対策に一定の効果をあげていると言って良いでしょう。

初期の GPWS, Mark I は誤報が多いなど性能面で満足できるものではありませんでした。8割を超えるパイロットが GPWS の発する警報に懐疑的だった、との調査結果もあります。

その後、GPWS は改良を重ね、Mark I から II、そして Mark V, VII と進化を遂げて行き、完成の域に近づきつつありますが、未だ完全ではありません。

近年のハイテク機は、GPWS を更に進化させた EGPWS( E は Enhanced の意味)を装着しており CFIT 撲滅と闘っています。

この先、数回に分けて、GPWS の仕組み、発する警報について簡単な説明にチャレンジしてみます。

例として取り上げる GPWS のモデルは、GPWS としてはほぼ完成形に近い Mark V, Mark VII, Mark VIII 、Advanced GPWS と呼ばれるグループです。
多少の差異はありますが、設計思想はほぼ同じです。説明の図では Mark VI という名前を用います。

先ず、この GPWS にはモードが六つあります。

初回のきょうは、Mode 1 の動作です。

Mode 1 は飛行機が地面(海面)に激突することを考えて、極端な降下率に対する警告( Warning )と警報( Altert )を発します。

モニターしている値は、電波高度(地表に向けて電波を発射し、その反射波が到達するまでの時間経過から高度を測定します: Radio Altitude )と気圧高度を基にした降下率(降下率は FPM: Feet Per Minute 、一分間あたり降下した高度( feet )を単位としています)です。

これらの値を、下の図に当てはめ、警告・警報を発します。

GPWS Mode 1 Warning Condition


"Sinkrate" が警告( Warning )で、"Pull up!" が警報( Altert )です。それぞれ「降下率」、「引き起こせ!」の意味です。

(これらの言葉の前に "Whoop", "Whoop, Whoop" が入る場合あり)

"Sinkrate" は3秒毎に繰り返され、さらに降下が続くと、より大声で "Pull up!" が操縦室内に響き渡ると同時に赤色の "GPWS Warn" 警告等が点滅します。
※音声は合成音声です。

次の図をみると、実際に飛行機が急激に地上接近した際 GPWS Mode 1 がどのように警報を発するかが理解できるかと思います。
※図はあくまでも説明のためのものです。

Avoid possible collition by GPWS Mode 1


極端な降下率で高度を下げてきた飛行機は、高度と降下率から "Sinkrate" 警報領域に突入します。
上の図の例では、そのまま降下を続けた場合、地上に激突する約20秒前のことです(20秒って意外と短いですよ)。

そのまま降下を続けると、"Pull up!" 警告領域に入り、合成音声が高らかに鳴り響きます。
上図の例では、"Sinkrate" を発してから約6秒後です。

この段階で、迅速かつ的確な回避措置をとらないと、地上に激突します。

図の例では、何ら回避措置をとらなかったら地上に激突したであろう約5秒前に何とか機首をたてなおし、危機一髪で難を逃れています。

ジェット機(殊に大型機)の場合、エンジンのパワーを入れてから実際に吹き上がるまでにタイムラグがありますし、機体の慣性の影響で操縦桿を操作してから機体姿勢に変化が現れるまでにも時間を要します。

さらに、パワーと機首上げ角度とのバランスを考えずに、ただ操縦桿やサイドスティックを引き起こしたのでは機体は失速します。

よって、この説明に使った図の飛行経路は、"Sinkrate" の警報が発せられた直後、直ぐに適切な回避操作をとったであろう機体の動きです。

[しつこいようですが、この図はあくまでも説明のためのものです。最近のハイテク機はコンピュータ制御されており、この図のような upset には陥らないよう制御則が働くよう設計されていますので。]

Mode 1 説明の最後は、意図的に地上に接近する場合、進入・着陸についてです。

進入・着陸のために機体を操っているとき、突如 GPWS が鳴り出したのでは心臓によくありません。

よって、GPWS の引き金を引くまでの“あそび(ゆとり)”の部分を増やし、パイロットの機体操作に自由度を持たせる機構が Mode 1 には備えられています。

飛行機が ILS Glide Slope (計器着陸装置の誘導電波の内、的確な進入角度(通常は3度)を示すビーム)に乗って降下している場合には、警告・警報を発する感度を鈍らせます。具体的には、警告・警報を発する閾値を変化させています。

イメージとしては下の図のようになります。

GPWS Mode 1 automatically desensitized


ただし、ひとたび機体が Glide Slope 中心よりも下に降下した場合には、落とされていた GPWS Mode 1 の感度は元に戻り、Glide Slope よりも過度に高度が下がった場合の警告・警報を発するようになります。

と、ここまで GPWS Mode 1 の動作説明にチャレンジしました。

この先、Mode 2, 3, 4, 5, 6 と説明にチャレンジするつもりでおりますが....。いつ完結するかは不明です。

(図を用意したり、これでも結構大変なのです、ハイ)
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金銭感覚の麻痺+「もの言った株主」

 1473万円の利益=「必ずしも少額ではない」と“小額”という言葉が出てくる時点で、我々国民の意識とは乖離度が著しいと思いますが。

さて、「もの言う株主」として注目をあつめたM氏でありますが、そのような“活動的投資家”とは程遠く縁遠い小生でございますが、「(定時株主総会召集ご通知 在中)」なんていう封書が届くと一通り目を通しております。

最近ではインターネットにより議決権の行使が行えますので、しっかりと是々非々、「もの言う株主」させてもらっています。

が、しかし“議決権の数”がたかが知れていますから、「もの言った」ところで“負け犬の遠吠え”にもなりますまい。

元手が無ければ1473万円もの利益は生まれないんでしょ?

さて、缶ジュースでも買ってこよう。


日銀総裁の辞任不要と首相、国民は厳しいと官房長官 (読売新聞) - goo ニュース
小泉首相は21日昼、村上ファンドへの拠出で1473万円の利益を得た日本銀行の福井俊彦総裁の進退について「何か問題があると、すぐに辞めればいいという問題じゃない」と述べ、辞任の必要はないとの考えを示した。

 首相官邸で記者団の質問に答えた。

 安倍官房長官は同日午前の記者会見で、「国民の受け止めは厳しい。利益は必ずしも少額ではない。資産公開や内規の見直しをすべきだというのが国民の声で、それなしには信頼を得ることは難しい」と述べ、資産の透明性確保が重要だとの考えを示した。

2006年 6月21日 (水) 13:07
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四発機はいいねぇ

 もともと関空行で、Engine Failure を報告してきたのが MADAN か MANEP 辺りだと思いますが、何で Declare Emergency かなぁ。

多分、PIC にはそれなりの理由があったのだと思います。

閑話休題、4発機は羨ましいですな。

こんな梅雨時のいや~なお天気でも馬力があるから、3万7千なんて(台北~関空なら問題なく)軽々と上がれるし、一発ダウンしても推力にはまだまだ余裕があるし....。


ノースウエスト機がエンジントラブル、関空に緊急着陸 (読売新聞) - goo ニュース
18日午前10時25分ごろ、高知県土佐清水市沖の上空約1万1000メートルを飛行中の台北発関西空港行きノースウエスト航空70便(ボーイング747―400型機、乗員17人、乗客329人)から、「エンジントラブルが発生した」と国土交通省関西空港事務所に連絡があり、同機は約40分後、関西空港に緊急着陸した。

 けが人はなかった。

 同事務所によると、同機は右翼にある第3エンジンの計器に異常が表示されたため、同エンジンを止めて着陸した。同社などが原因を調べている。

2006年 6月18日 (日) 13:26
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気圧高度計の補正:アルティメタ・セッティング( Altimeter Setting )

 一週間ほど前の6月12日、『 国際標準大気 ISA: International Standard Atmosphere 』なる記事を投稿しました。今回はその関連投稿です。

航空機が高度を求める一つの手段として、国際標準大気モデルを用いた“気圧高度”があります。

ただし、日々のお天気が国際標準大気モデルと同一であることは稀で、気圧・気温共に刻々と変化しています。

そのため、飛行の局面・局面において気圧高度計を補正し、気圧高度計が意味ある値を示すようにする必要が出てきます。

気圧高度計の補正方法としては、QNH,QNE,QFEの3種類による高度規正が義務づけられています。
※日本ではQNHとQNEの2種類による高度規正が義務づけられています。

それぞれの規正方法は以下の通りです。

規正値
規 正 の 方 法
QNH平均海面からの高度を表示するよう、高度計を平均海面上10フィート(約3m)に補正した気圧に合わせる。または出発時に出発地点の標高を表示するように気圧高度計を規正する。
QNE標準大気モデルによる高度を表示するように高度計を 29.29 inch HG または 1013.2 hPa に規正する。
QFE飛行場の標高または着地地点からの高度を表示するように気圧高度計を現地気圧で規正する。または出発時に気圧高度計が0を示すように規正する。


では、福岡FIR内における気圧高度計補正の要領について概要を説明します。
● 国内を飛行する場合
QNH適用区域内の空域では次の値に高度計を補正する。
  1. 出発時には出発地のQNH。出発地のQNHが入手できない場合には飛行場の標高。
  2. 平均海面上 14000 フィート未満は、最寄の飛行経路上のQNH。※通常は管制機関からQNH( Area QNH )が提供される。
  3. 平均海面上 14000 フィート以上はQNE。
このQNHとQNEとを切り換える高度、(福岡FIRにおける公示では)平均海面上 14000 フィートのことを、transition layer と言います。

● 洋上を飛行する場合
上述した空域外の洋上では常に気圧高度計をQNEにセットする。

高度の表現の方法ですが、本邦では、QNHを用いているときは、Altitude (feet) で表現され、QNEを用いているときは FL: Flight Level (feet) を用いまています。

【例】
  1. [PILOT] All Nippon 104(WUN ZE-RO FOW-we), climbing to flight level 370 (TREE SEV-en ZE-RO), leaving 1500(WUN TOU-SAND FIFE HUN-dred).
  2. [ATC] Japan Air 1719 (WUN SEV-en WUN NIN-er), cross ZAMA at flight level 210(TOO WUN ZE-RO), other altitude restrictions are cancelled.
  3. [ATC] All Nippon 673(SIX SEV-en TREE), decend and maintain 13000(WUN TREE TOU-SAND), area QNH 2996(TOO NIN-er NIN-er SIX).

さて、QNHで気圧高度計を補正する場合は、規正するための値を入手する必要があります。

QNHは以下の何れかの方法により入手できます。
  • QNHは通常、管制機関を通じるか、ATIS/AEISが運用されている場合はそこから入手することができる
  • 管制機関が提供するQNHには、観測地点名と、それ(観測によるQNH)が1時間以上前の値であれば、その時刻も明示される。
    が、通常は
    ☆ターミナル管制機関からは当該機関の中心となる飛行場のQNHが、
    ☆ACCからは、そのセクタ毎に予め定められた地点のQNHが "area QNH" として提供される。
  • 最低利用可能フライトレベルよりも低い高度へ降下するためのクリアランスが発出された場合は、その空域のQNHも併せて提供される。

本ブログではよく気象通報式を掲載しますが、その中にも高度計規正値(QNH)が報じられています。

随分と昔の投稿で恐縮ですが、『 気象通報式の読み方(その2) 』に極めて簡単ですが述べられています。
Altimeter settingを怠ると
ちなみに、先程入手した羽田のMETARは、

RJTT 180518Z 08009KT 3500 -SHRA BR FEW003 BKN007 BKN010 22/21 Q1006 RMK 1ST003 5ST007 7ST010 A2971
RJTT 180504Z 09009KT 3000 SHRA BR FEW003 BKN007 22/21 Q1006 RMK 1ST003 7ST007 A2972
RJTT 180500Z 09008KT 3500 -SHRA BR FEW003 SCT005 BKN010 22/21 Q1006 RMK 1ST003 3ST005 7ST010 A2972

ですから、羽田への到着機・羽田からの出発機はQNHを2972に設定して気圧高度計規正をする訳ですね。

最後に、理解度をチェックするための簡単なテストを…

【問】次の各問いに対し、正解(または最も正解に近いと思われるもの)を選択肢の中から選び、その記号を答えなさい。
  • 問1:アルティメタ・セッティングの単位で国際基準はありますか?
a) ある。単位は水銀柱をインチで読み取った値である。
b) ある。が、単位は全ての国で支持されてはいない。
c) ある。が、単位は米国のみで支持されている。
d) ない。


  • 問2:ヘクトパスカルで992と補正すべきところを、水銀柱単位で2992インチと設定してしまった場合、飛行機が飛行する高度は、気圧高度計が示す値よりも、
a) +600フィート
b) +1000フィート
c) -600フィート
d) -1000フィート


  • 問3:QNE規正で飛行しなければならないところを、間違えてQNH規正で飛行した場合、飛行機が飛行する地上からの高度は、
a) 指示された高度より高くなる
b) 指示された高度より低くなる
c) 指示された高度より高くなるか低くなるかは設定したQNHによる
d) その差など些細なものである

えっ?「どれもチョー簡単でツマンナイ!」。

失礼いたしました。
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オーダー・ミス

 Web で TRACKING ID を追跡していたので今日届くことは解っていました。

Greeting from Jeppesen.

We thought you'd like to know that we shipped your order ~

とのメールを受け取っていれば“血沸き肉躍る”というものです。

唯一の恐怖は、財務大臣かその家臣が荷物を受け取るであろう、ことのみ。

帰宅して恐る恐るリビングに入ると、夕食の代わりに配送されたJEPPESENからのダンボール箱が食卓に鎮座しておりました。

まっ、注文してしまったのだから仕方ありません。

「これ、全然高くないから。父の日だと思いお許しを…」

の低姿勢に、

「あっ、そっ」

と特に厭味もクレームも無しです。

箱を移動させるべく持ち上げたところ、想定外に軽いのです。

ありゃ~、やってしまいました。オーダー・ミス。

メールを注意深く確認しなかったのが悪いのですが、Enroute Only とちゃんと書いてありました。

そりゃぁ軽い筈だ。財務大臣もきょうは重さで判断したらしいです。

 軽い・小さい = 安い
 思い・大きい = 高い

で判定しておりますので、怒りの鉄拳を食らわずに済んだのでした。

しかし、なんでオーダー・ミスしてしまったものか....。情けない。
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乱気流強度基準

 梅雨真っ盛り、この時期は悪天候に伴う擾乱(いわゆる乱気流)に悩まされる時期でもあります。

擾乱の強度、つまり“揺れの強さ”は主観に負う部分も多くどうしても曖昧になりがちですが、乱気流に遭遇した飛行機の揺れ方の“震度”に相当する目安については、DIGITAL AVIATOR さんのブログ、『タービュランス(続)』に簡潔かつ的確にまとめられています。

「ど素人が出過ぎたことして」とのお怒りを覚悟の上で、関連した話題を取り上げてみました。

まず、“揺れの強さ”に対する客観的基準は無いのか、という点です。

これは(小生のブログではすっかりお馴染みとなった)ICAO: International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関)が『航空機重心位置における加速度変化』を基に、参考とすべき基本的な判断基準を定義しています。

ICAO のそれは、以下の3段階からなります。
LIGHT

航空機重心位置における加速度変化は0.5G未満

MODERATE

航空機重心位置における加速度変化は0.5G以上1.0G以下

SEVERE

航空機重心位置における加速度変化は1.0Gを超える

と、これだけです。

加速度変化を瞬時に読み取れる“加速度計”は操縦席の前面計器にはありません。
実際にどれだけ揺れたかの値は DFDR: Digital Flight Data Recorder に0.2秒間隔で記録されているのを、後から解析して(読み出して)初めて解ることになります。

※ACMS: Aircraft Condition Monitoring System や AIDS: Aircraft Integrated Data System 搭載機であれば、Cockpit 内の Maintenance Terminal から類似データを読み出すことができますが、いずれも即時性という点では満足できるものではありません。

この ICAO 基準ではあまりにも粒度が粗く、日常の運航で用いるに適しているとは言えません。

一方で、パイロットは『運航の妨げとなる気象状態に遭遇した場合は、出来る限り速やかにその情報を管制機関等に通報すべき』となっており、洋上飛行での位置通報と共に報じられる機上気象報告 AIREP: AIr REPort や随時通報する PIREP: PIlot weather REPort の書式が定められています。

乱気流に遭遇したパイロットは PIREP を報告します。
そこで用いられる乱気流の強度は、例えば FAA: Federal Aviation Administration (米国連邦航空局) では以下の6段階からなります。
  • Light Turbulence
  • Light CHOP
  • Moderate Turbulence
  • Moderate CHOP
  • Severe
  • Extreme
「FAA では」とあるように、この強度判定は概ね類似しているものの、“それ”に丸め込まれてしまいます。

航空会社では、よりきめ細かい乱気流強度基準を ICAO や FAA のそれに準拠して設定して、社内無線(カンパニー・レディオ)で通報し自社便の乱気流回避やサービス判定基準等に用いています。

例えば、全日空系では
  • LIGHT MINUS (LGT-)
  • LIGHT
  • LIGHT PLUS (LGT+)
  • MODERATE (MOD)
  • SEVERE (SEV)
  • EXTREME (EXT)
日本航空系では
  • SMOOTH (SMTH; TB0)
  • LIGHT MINUS (LGTM; TB1)
  • LIGHT (LGT; TB2)
  • LIGHT PLUS (LGTP; TB3)
  • MODERATE (MOD; TB4)
  • MODERATE PLUS (MODP; TB5)
  • SEVERE (SEV; TB6)
  • EXTREME (EXT; TB7)
これらは各航空会社内で閉じたレポートであり、日本の空域で共有されることが無かったことから、DIGITAL AVIATOR さんのブログ、『タービュランス』で紹介されているように、国土交通省航空局が共通の判定基準として C-PIREP: Common-PIREP なるものを定義し、試験運用が開始されたのは2001年6月のことでした。

今では会社を問わず乱気流情報を共有し、快適で安全な航空機運航のために寄与しています。

C-PIREP で定める乱気流強度基準は
  • SMOOTH (SMTH)
  • LIGHT MINUS (LGTM)
  • LIGHT (LGT)
  • LIGHT PLUS (LGTP)
  • MODERATE (MOD)
  • MODERATE PLUS(MODP)
  • SEVERE (SEV)
  • EXTREME (EXT)
となっています。



ICAO の判定基準は“客観的指標”を示している、という点では有益なのであり、不幸にして乱気流に遭遇し、負傷者が出た場合などは DFDR を取り下ろしてそのデータを解析、実際の揺れはどの程度だったかを明らかにします。

ただし、これにも盲点があります。

この値は『航空機重心位置における加速度変化』であるという点です。

飛行機の揺れ具合は、重心位置付近とそこから遠く離れた後部座席付近とでは異なる場合が殆どです。
よって、DFDR の値が0.5G未満であっても、お客様が着席されている座席位置によってはそれを上回る揺れがある可能性があります。

乱気流には機上レーダにも映る対流雲に伴う乱気流だけでなく、圏界面( tropopause )やジェット気流近傍で起こる晴天乱気流( CAT: Clear Air Turbulence )もあります。
この晴天乱気流は機上レーダにも映らない、当然雲もない状況で突然の風の変化で起こる厄介なものです。
DFDR Plot
晴天乱気流は、右の図( DFDR のプロット図)のように突然、『ドン』とくることが多いので、ベルト着用サインが消灯していても、着席時には少々窮屈であっても座席ベルトを腰の低い位置で締めておくことがお客様の立場でできる最善の自己防衛手段です。

パイロットの皆さんは、C-PIREP や PIREP、Company-PIREP、Air-to-Air の無線交信などを駆使し、揺れに関する情報を共有し、安全で快適なフライトのために頑張っておられます。

お客様も搭乗して着席したらベルト着用、でその努力に応えましょう。

パイロットの皆様も自分が遭遇した気象状況が各種気象FAXや衛星画像でどのように捉えられていたのか、C-PIREP, METAR, TAF などではどのように表現されていたのか、是非“ Look Back ”されることをお勧めします。
3レグ、4レグ後で疲れた後にそんな気力は残っていないかもしれませんが、決して無駄ではないと思います。

【蛇足】
ICAO や FAA, 航空局の判定基準は良いとして、航空会社の判定基準やら DFDR のグラフを何故知っているのか?
「日々是勉強」でございます。
このときばかりは事故調が発表する事故調査報告書や重大インシデント報告書を隅々まで読むのであります。
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GE社 CF6-80A2 エンジン故障 (Americal Airlines Boeing767)

 本日早朝、NTSB: National Transportation Safety Board (米国国家運輸安全委員会)からメールが配信されておりましたので、その件を。

米国西海岸標準時、6月2日の12時27分、ロサンゼルス国際空港で整備中だったアメリカン航空の Boeing767 の左翼第一エンジンがテスト中に故障、一段目高圧タービンが破損し、その破片は約1000mの範囲にわたって散乱すると共に、機体主翼にも突き刺さり、そこから燃料が漏れ、その漏れた燃料が発火、火は空港の消防職員により消し止められました。

この事故による死傷者はおりませんが、事故当時、3名の整備士が航空機内にいたため、NTSB が調査にあたっています。

破損したエンジンは、米国 General Electric 社製の CF6-80A2 というエンジンです。

【補足】
ボーイング社は767に当初二つのエンジンを選択肢として用意しました。
一つは、この General Electric 社の CF6-80 シリーズ、もう一つは Pratt & Whitney 社の JT9D-7R4 シリーズです。
その後1990年2月に Rolls-Royce 社の RB211-524H シリーズが三番目の選択肢として加わり、英国航空が早速 Rolls-Royce のエンジンを搭載した767を導入しました。

NTSB の調査官は6月3日~7日にかけて事故現場で破損した高圧タービンブレードの破片を回収、Washington DC の研究所に送り解析を始めました。

初期解析によると、破片からは金属疲労による破断が見つかっているそうです。

アメリカン航空は、故障したエンジンをオクラホマ州にあるアメリカン航空の整備拠点に運び込み、今週、NTSB 監督下のもと、当該エンジンを分解する予定です。



Boeing767 は本邦のキャリアでも運航している機体であり、昨年12月1日に鹿児島空港において、スカイマークエアラインズの Boeing767-300ER (JA767B) が離陸直後にエンジン故障を起こしATBするという事故が起きています。

関連投稿:スカイマーク機、鹿児島離陸直後にエンジントラブル

確か、このときにも NTSB の調査官がやってきたと記憶しています。

昨今のハイテク機に搭載されているエンジンは、省燃費・高効率化と共に信頼性においても格段に向上しているのは確かです。それ故、双発機でも ETOPS180, ETOPS207 を取得して長距離路線にどんどんと進出してきています。
噂によると、FAA: Federal Aviation Administration (米国連邦航空局)は ETOPS360 (つまり片肺で6時間の飛行が可能)を認可するらしいとも聞いています。

が、いくらエンジンの信頼性が向上しても、双発機では一発止まれば即 Emergency です。

机上の確率論だけでなく、このようなエンジン故障の事例を教訓としてマージンを十分にとり、安全が担保される検査・整備体制や運用制限等を確立して欲しいものです。
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国際標準大気 ISA: International Standard Atmosphere

 航空機の高度を計測するには、その飛行のフェイズに応じ幾つかの方法があります。

最も気だるい(失礼、訂正)時間的に長い巡航時には、気圧高度計を用います。気圧高度計の仕組みは、登山をする方が気圧を基におおよその標高を測るのと同様です。

最近は腕時計でも カシオの PROTREK のように、高度測定機能 を備えたものがあり、そのコストパフォーマンスも日々進化しているようです。

※小生も数世代前の PROTREAK 高度測定機能付を持っていますが、機内の与圧高度が変化する様が解かり面白いです。

気圧高度計の基本は「上空に上がれば地上より気圧が低くなる」という自然界の法則を利用し、測定した気圧を高度に置き換えているのです。

「上空に上がれば地上より気圧が低くなる」大気のモデルとしては共通のものを用いなければ厄介な事態になってしまうので、ICAO : International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関)が“国際標準大気[ ISA : International Standard Atomosphere ]”なるモデルを定めており、航空機の気圧高度計はこの標準大気モデルを用いて高度を求めています。

国際標準大気には、以下のように難しい講釈が幾つもあるのですが....;

1.完全な乾燥気体(湿度0)であること

2.物理定数としては、
  -海面上における温度が15℃(59F)238K
  -海面上における気圧が、1013.25 hPa、水銀柱で760mm( 29.92inch )
  -海面上における密度が、1立方メートルあたり 1.2250 kg
  -標準重力は 9.80665 m/s^2

3.温度低減率は
  -100m上昇するにあたり-0.65 ℃[ただし、-56.5 ℃ までで、それ以降、高度20kmまでは低減率0]

等など。

それらは
理科年表 平成18年 机上版

丸善

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に詳しく載っております。

ここでは、手元にあると便利な早見表を掲載しておきます。

ある高度における気温・気圧に加え、地上との気圧比、空気密度、音速などをまとめてみました。

(※一所懸命 table タグを作って作表して、それを貼り付けたら「10000文字以上は投稿できません」と来たもんだ。
仕方がないのでブラウザでプレビューした画像を貼り付けます。
何とかしてよ、gooブログアドバンス!!)

これを片手にご搭乗いただくと、PFIS: Passenger Flight Information System の表示も楽しめるかな?

INTERNATIONAL STANDARD ATMOSPHERE (ISA)




ただし、お天気は時々刻々と変化し、空港付近の気圧や温度も一定ではありません。

飛行のあらゆるフェイズでこの国際標準大気モデルにより気圧高度を使っていたのでは、空港が低気圧に覆われたときには空港の海面高度が実際のそれよりも高く表示され、高気圧に覆われたときには低く表示されてしまいます。

それを防止するために、ある一定高度以下では飛行している周辺の地上気圧を基に高度計の気圧補正を行います(航空機が海面高度にあったとしたときに機上の気圧高度計が0mを指す;空港の滑走路にいるとき、機上の気圧高度計が当該空港の海抜標高を示すようになります)。

これについては、また別の機会に。
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