徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

Incident @ KBOS

 今月(2007年6月)20日午前8時20分頃〔現地時刻〕、アメリカはボストンのローガン国際空港( BOS: KBOS )で、カナダのトロント・ピアソン国際空港( YYZ: YYYZ )からボストンへ向かっていた、アメリカン・イーグル4539便( Embraer 135LR 型機; N731BE )が、着陸時に滑走路に接触、機体に損傷を与えるというインシデントが発生しました。

幸い、当該便のお客様とクルーに負傷者は出ておりません。NTSB: National Transportation Safety Board (米国運輸安全委員会)は、この件をインシデントとして調査を開始し、それを知らせるメールが本日未明に舞込んでおりました。

この種のメールは、NTSB から時々配信されます。取り上げようかどうか迷ったのですが、Cockpit Crew の Situation Awareness の観点から、“他山の石”として review するには良い事例であると思い、拙いオツムに鞭打って、横文字と格闘することにしました。

当該便は、KBOS Rwy 22L への最終進入を開始、特に問題なく進入を継続し、Local Controller から着陸許可を受けました。

着陸の前には「 Before Landing Checklist 」を実施し、ポカミスが無いかを再確認するわけですが、この Landing Checklist に必ず含まれているのが、
 Cear ....... Down, 3 Green
という項目です。(脚を出して、その脚は全てロックされたかを確認する)

管制官も着陸許可を発出する際に、
 " コールサイン, Check Gear Down, Runway ペケペケ,Cleared to Land. Wind ホニャララ at ナニガシ "
というフレーズを用いて、脚の出し忘れを注意喚起することもあります。

Normal Operation をしている Cockpit において、着陸前の確認事項としては、
 Gear .... Down and Locked (== 3 Green)
 Flap (and Slat) .... 設定ポジション,(Leading Edge as Green)
 No Flags
 Raw Data
 Stabilized
が重要なポイントになります。これらは、Checklist と共に、PF, PM (, F/E) の Crew 間で、Standard Callout といって、声に出して確認しあうよう各社ともAOMで定めています。(Callout の文言やどのタイミングで、といった細部では会社間で差異がありますが、基本は変りません)

こと、脚,フラップについては、Cockpit から目視確認が出来ないので、Cockpit に表示される indicator が頼りになります。

近年の所謂グラス・コックピット機においては、この Gear や Flap の状態表示は EICAS: Engine Indication and Crew Alert System ディスプレイ内に表示されるようになり、昔のように電球は使われなくなったので、“玉切れ”による誤報からは開放されたといっても良いでしょう。

※昔は、このたかだか豆電球一個が“玉切れ”したことにより、随分と誤報があったと聞いています。マイアミでは、L1011 がこの“玉切れ”にクルー全員が気を取られ、Autopilot が外れて(操縦桿をわずかに押したため Autopilot が外れ、高度維持から、一定降下率での降下が始まってしまった)、だれもそのこと( Autopilot Disengage と 地上接近)に気付かす、直前で気付いたものの、湿地帯に激突するという事故まで起こっています。

が、逆説的見方をすると、EICAS 表示された Landing Gear status を盲目的に信用せざるを得なくなっている訳です。

アメリカン・イーグル4539便も同様でした。脚の状態を示す表示は、タイトル画像のように、Gear Lever は Down position、そして、ちゃんと脚が出てロックされている3つの緑色表示(3つは、それぞれ前脚,左右の主脚に対応)がでていました。

接地寸前になって、Flight Computer からの
 " landing gear lever disagree "
なるメッセージにクルーが気付きます(同時に Beeper が鳴ったかどうかは Embraer に詳しくないので不明です)。

クルーは即座に Go-Around を決断しますが、いかんせん接地寸前まできていたので、Thrust にエンジンが追従せず、機体の一部を滑走路に接触させてしまいました。これは、ジェットエンジンの特性からいって、どうしてもタイム・ラグが生じますから仕方が無いことです。

この滑走路と機体の接触により、機体が一部損傷し、損傷個所にフラップも含まれていました。

Go-Around した当該機は、 Abnormal Checklist, Procedure にしたがって脚出し操作を実施した後、管制塔の近くを二度にわたり Low Pass し、地上から脚の状態を目視チェックしてもらいました。

脚が確実に下りていることを確認してもらい、37名のお客様と3名の乗務員は無事にボストンに降り立ちました。

着陸後、NTSB による調査が開始されています。

当該機体をジャッキ・アップし、飛行過程を再現した調査では、ギア・レバーを Down 位置にセットすると、EICAS にはタイトル画像のように、脚が全て下りてロックされて事を示す3つの緑色の表示が出たものの、実際、全ての脚は格納されたままだったとのことです。

当該機の Landing Gear 装置は、Parker Aerospace 社製ですが、同一モデルに微細な変更を施した Landing Gear unit を別の機体に取り付け、Gear Down / Gear Up を繰り返したところ、同じ現象が再現したそうです。

Embraer 社は先週「 Field Service Letter 」を発行、Embraer -135, -140, -145 型機の型式限定を有するパイロットに対し、"landing gear disagree" メッセージが表示された場合には、チェックリストに沿った対応をするよう周知徹底しています。

このインシデントについては、FAA: Federal Aviation Administration (米国連邦航空局)、運航していたアメリカン・イーグル、機体製造メーカの Embraer 社も加わり、引き続き調査が行なわれているとのことです。


このインシデントも、Cockpit Crew が接地寸前であっても "landing gear lever disagree" message に気付いて適切な対処を行なったから、この程度で済んだ訳で、仮に注意散漫で気付かずに降りていた場合、胴体着陸となって、もっと被害は拡大していたかも知れず、あるいは、これは PF の技量とも関連してしまいますが、仮に Hard Landing していたら、と思うとぞっとします。

着陸とは、大空を3次元運動していた航空機が、滑走路の接地帯に接地させ、有限長内で減速(~停止)するという、「針の穴に糸を通す」ような難しい操作です。

厳しい訓練を経て、ラインに出てからも定期的な審査とエアマンシップなどで技量維持・向上に日々研鑽しておられるパイロットの方々ですが、今回のインシデント事例を読むと、その集中度、Situation Awareness、さらには緊張感たるや常人の想像を遥かに超えた異次元のレベルであることを痛感します。

キャビンに居ると、Gear Down は ゴーっという風切り音の増加で知ることができますし、脚位置近くに着席している場合には、脚格納扉の開け閉めや脚出しの際のメカニカル音でも知ることができます。
Cockpit でも Gear Down に伴って空気抵抗が増加することから、エンジン出力を調整しなければならないこと、操縦感覚が Clean Configuration から異なることで知ることができます。

が、Lock されているかどうかは、Indicator だけが頼りです。

勿論、このインシデントのような事例が発生するのは極めて稀でしょう。が、ゼロではないことをこのインシデントが示しています。

極めて Workload が多く、様々なことを考え機をコントロールしなければならない着陸のフェイズにあって、万が一、否、それよりも低い確率の Malfunction のことも頭の片隅に置いて、そのようなことをいち早く察知するため五感を研ぎ澄まさねばならない、【言うは安し行うは難し】であります。


参考までに、Flight Safety Foundation の当該インシデントに関する記述(英語)へのリンクと、NTSB からのメール原文を以下に引用します。

ASN Aircraft accident description Embraer 135LR N731BE - Boston-Logan International Airport, MA (BOS)

Subject: NTSB INVESTIGATING LANDING GEAR MALFUNCTION

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           NTSB ADVISORY
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National Transportation Safety Board
Washington, DC 20594
June 29, 2007

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NTSB INVESTIGATING LANDING GEAR MALFUNCTION

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Washington, D.C. - The National Transportation Safety Board is investigating an incident in Boston that occurred on June 20, 2007, in which an American Eagle Embraer ERJ-135 regional jet briefly touched down on the runway without the landing gear extended before initiating a go-around and completing a second landing attempt.

     None of the 37 passengers or 3 crewmembers was injured. The aircraft sustained minor damage. The event is being investigated as an incident.

     Prior to the first landing attempt in which the gear was not extended, the crew stated that the three landing gear indicator lights were all green, indicating that the gear was down and locked. Shortly before touchdown they noticed a "landing gear lever disagree" message on a flight computer console.

     After the jet contacted the runway, a go-around procedure was initiated. The crew extended the gear by following the emergency abnormal landing gear procedure, then flew by the control tower twice for a visual inspection to ensure the gear was down prior to the second landing attempt.

     At this point in the investigation the following has been accomplished:

     In an initial test, the incident aircraft was placed on jacks and investigators duplicated the in-flight situation: Three green lights in the cockpit indicated the gear was down and locked but none of the gear extended.

     The cockpit voice recorder and flight data recorder were sent to the Safety Board's laboratory in Washington last week where the content of each is being evaluated.

     Both members of the flight crew were interviewed this week.

     An electronic component of the landing gear control system, made by Parker Aerospace, was bench tested this week at their facility in New York. The same unit, with small modifications, was then placed in a different airplane and the indications were once again duplicated.

     Embraer issued a "Field Service Letter" late last week to all operators of the EMB-135, -140, and -145 models, reminding pilots to follow the checklist in the case of a "landing gear disagree" message.

     The Federal Aviation Administration, Parker Aerospace, American Eagle and Embraer are working with the Safety Board as the investigation continues.

##

NTSB Press Contact: XXXXXXX XXXXXXX
XXX-XXX-XXXX
XXXXXXX@XXXXXXX.XXXXXXX

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季節?のお届け物

 年2回、茶封筒に入った所謂“冊子小包”が届きます。夏のこの時期、近年は専ら クロネコメール便 でヤマト運輸さんがポスト投函、お届け物が来ると、『嗚呼、今年もまた一年の半分が過ぎてしまったなぁ』と歳を痛感するようになって早何年....でしょうか。

第46号(2007 年度後期版)の主な改訂点は;

どれどれ、

1.那覇国際対空通信局が~云々~

2.高速離脱誘導路の誘導路中心線灯に~云々~

3.太平洋上の洋上管制区におけるデータ通信の~云々~

と、39.まで。

なるほど、なるほど。

今夜の睡眠導入書は、この最初のピンク・ページですね。

真剣に読んでしまってかえって逆効果かなぁ。


と、言うことで、NPO法人 AIM-Japan 編纂協会 事務局から

 AIM-j 2007 年後期版 2007.July.1 ~ December.31

が届いていた、梅雨の蒸し暑い夜なのでした。
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Flying into WINTER !!

 梅雨入り、今週の金曜日には“夏至”だと言うのに、何を今更 Winter Operation 、ついに頭が壊れたかな....。

と決め付けるのは、“北半球”に住んでおるもののエゴというものであります。

正直、小生も Cover Story にタイトルを見たとき、『半年前のが今頃到着か?』なんて一瞬戸惑ってしまいました。

が、
From May until October, the southern inland regions of Australia experience a dramatic drop in temperature as winter conditions take hold.

pp 25, FLIGHT SAFETY AUSTRALIA, MAY-JUNE 2007
FLYING SAFETY AUSTRALIA
©Copyright 2007 Civil Aviation Safety, Australia

「今年の夏は云々」などと言っている頃、南半球のオーストラリアは「今年の冬は云々」となる訳ですね。

と言うことは、オセアニア線路線室の Cockpit Crew は、年間のかなりの部分、 Winter Operation を気にしなければならないのでしょうか....。

SYDあたりは大丈夫と思うのですが、Alternate で、MEL とることもあるでしょうし。( New Zealand なら必須でしょうね )

しかも、本邦から逆の季節に飛ぶのには、熱帯収束帯( ITCZ: Intertropical Convergence Zone )につきものの悪天域回避をしなければなりませんから、途中も気が抜けません。大変な路線です。

暑気払いではありませんが、夏場に、“ WINTER FLYING : Into the cold ”なる記事を読むのも乙なものかな....(これを読んで、catch cold では洒落になりませんが…)。

WINTER FLYING
©Copyright 2007 Civil Aviation Safety, Australia


その一方で、『やはり6月はアラスカでしょう』との声も、あちらこちらから聞こえてきそうで....。

欧州線が、シベリア越えの直行となって久しい今、ANC は Cargo 便 Crew の楽天地?

-400F が導入され、-400 組みにも「やっと楽しみが回ってきたわい」とお歓びのことでしょう。

短期間の Stay 中に成果を得られず悔しい思いをした方には、酷なペイントの機体ですね( N792AS ; Boeing737-400 )。

Salmon-Thirty-Salmon Boeing 737-400
© Copyright 2007 ALASKA AIRLINES

Wild Alaska Seafood Alaska の文字とサーモン、何でも、24日間かけてペインティングしたそうです。
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あなた一途に

 LAN と聞いて、Local Area Network を浮かべてしまうようでは仕事に毒されている証拠ですな。

LAN Airlines (Japanese) 」は、南米はチリを代表する航空会社で、チリ国内はもとより、17ヶ国へも足をのばしております。

過日、鶴社が加わった“ oneworld (Japanese) ”の一員でもあります。

この LAN Airlines、2005 年に 20 機ほどの Airbus A318 をオーダーしておったのですが、このほど、初号機をやっとこさ受領し、国内路線への投入準備を始めました。

「 A318 って実績ある飛行機だし、何で2年近くも待たされるの?」

ご尤もな質問でございます。

待たされた原因はエンジンにあります。

LAN Airlines はオーダーした A318 のエンジンとして、米国 Pratt & Phitney 社の PW6000 (777 で有名になった PW4000 ではありませんよ)を選択したのです。

航空機の型式証明・耐空証明は、機体とエンジンとの組み合わせ、で発行されるものでして、いくら A318 が実績のある機体だからといって、海のものとも山のものとも解らぬエンジンを付けて飛行することは出来ないのです。

PW6000 は Pratt & Whittney 社の推力2万ポンドクラス(18,000 ~ 24,000 lb)の新開発のエンジンでして、このクラスのマーケットでは圧倒的なシェアを持っていた、CFM International 社(米国の General Electric 社とフランスの Snecma 社が中心となったのジョイント・ベンチャー)の CFM56 (こちらは、シリーズにより 18,500 ~ 34,000 lb の推力を揃える)に対抗して市場投入されたモデルです。

CFM56 シリーズが Boeing 737 NG や Airbus 320 (318, 319, 321) や 340-300 に装備され、順風満帆なのを P&W としては指を銜えて見ている訳にはゆかなかったのでしょう。

が、ジェット・エンジンの開発はそう簡単ではないのでしょうね。

開発初期段階では、性能(推力や排ガスや騒音)が目標値をクリアできず、随分と格闘したようです。

欧州では、昨年12月に European Aviation Safety Agency から A318 / PW6000 での型式・耐空証明を受けたのですが(これを受けて、今年の2月27日に PW6000 を装備した A318 が初飛行しました)、本年5月25日に 米国 FAA: Federal Aviation Administration (米国連邦航空局)からも証明を受けました。

CMF56-5 シリーズが A320 family ( A318 / A319 / A320 / A321 ) 全てにラインアップを揃えている(何せ、あちらさん[ CFM56 ]はこのクラスでは1982年以来の老舗ですから.... )のに対し、PW6000 は A318 だけを一途に見据えてビジネスするようです。
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青は赤よりも厳し…

 前にも RJFK で似たようなことがありましたですねぇ。

JAL1864/24FEB KOJHND 遅延問題 -対応が甘い!

このときの KD の対応の甘さに瞬間湯沸かし器が沸騰しておったポンコツオヤジでありましたが、その投稿中でも以下のような件がありました。
どうも、この類の安全阻害行為対応は、青社の方が毅然とした態度で(きちんとしたガイドラインに則って)対応しているように思えます。
それを裏付けたことになりますね。

青社と言えば、このような法律が施行される以前から、どこぞの代議士秘書をしておられたお方が(当然、自分はお偉い、と錯覚なさっているのでスーパーシートにご着席)、離陸に際して座席のリクライニングを戻さなかった、とのことで、PICがGTBを決断、お偉いさんに降機願って再出発したことがありました。

その頃から、社内の文化として、表現が適切かどうか微妙ですが“媚びない”文化が根付いていたのでしょう。

「あっぱれ」青社!

国土交通省航空局が平成16年9月に発表した 航空機内における安全阻害行為等(機内迷惑行為)の防止のための改正航空法の施行について の実運用については、現場 -このご時世、機長が操縦席から出てきて無礼者の相手をするのは不可能なので、客室乗務員の責任者が機長の命令を代行することになる - でも難しい判断が要求され、各社ともに、「こういった場合はどうなの?」といった資料を作成してディスカッションしていたのですが、施行後3年近く経てば、大体はそれぞれにガイドラインが定着したとみて良いのでしょう。

「当該行為の反復性・継続性」をどのように解釈するかは、ひとつの悩ましいところですが、引用記事の文面を読むに、適用は妥当であったと言えるでしょう。

それにしても、施行後、初の逮捕ですか....。まだまだ搭乗されるお客様の意識は低いようで、流石は「美しい国」は一味も二味も違いますね。

それはそれとして、このように客室乗務員が毅然としてPICの禁止命令を代読し(当のご本人は足が震えていたかもしれませんが)、安全運航と機内秩序の維持に努めていたことを知るに、ある種の安堵感を覚えたのでした。

しつこいようですが、「あっぱれ、青社!」「当該便のクルー、皆さんは偉い!」

それににても悔やまれるはKOJのKD、一年前に「~施行後初の逮捕者」の勲章を、目の前に“油揚げ”がありながら逃してしまいましたねぇ。(こりゃ、失敬)。


機内の携帯使用で逮捕状 組員の男、航空法違反で初(共同通信) - goo ニュース
旅客機が出発する際、機長の命令に従わず機内で携帯電話のメールや通話を続けたとして、警視庁東京空港署は13日までに、航空法違反(安全阻害行為)の疑いで神奈川県の暴力団の男の逮捕状を取った。同署によると、機内の携帯電話による迷惑行為で書類送検された例はあるが、逮捕状は初めてという。客室乗務員に「うるせえなあ」「今、切ってんだろ」など威圧感を与えたことから強制捜査に踏み切る。

2007年6月13日(水)13:37
<携帯電話>離陸前に電源切らなかった組員に逮捕状 警視庁(毎日新聞) - Yahoo! ニュース
航空機の安全な運行に支障を及ぼす恐れがあるにもかかわらず、離陸前に携帯電話の電源を切らなかったとして、警視庁東京空港署が航空法違反容疑(安全阻害行為)で神奈川県内に住む暴力団組員の男(34)の逮捕状を取っていたことが分かった。同署は行方を追っている。
 調べでは、男は今年3月10日午後2時ごろ、羽田発宮崎行き全日空609便内で、機長が禁止命令書を出したにもかかわらず、携帯電話の電源を切らなかった疑い。
 客室乗務員が再三注意したが、男は「携帯を5台持っているので切るのに時間がかかる」「自動的に電源が入る携帯だ。逮捕すればいいじゃないか」などと怒鳴り、指示に従わなかった。滑走路に向かっていた同機は引き返して男を降ろし、約30分遅れで離陸したという。機内での安全阻害行為の禁止を盛り込んだ改正航空法(04年1月施行)後、初の逮捕となる。

最終更新:6月13日13時37分
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戯言(たわごと)

 今や公共交通機関として(ちょっと苦しいけれど)庶民の足として定着した航空機。先日の青社の able down で影響を受けた方々の旅客数が「公共交通機関」としての地位確立を奇しくも示してくれたとも言えましょう。

近年の(適切に整備を施された)航空機の事故率の低さは特筆すべきものがあります。それは大いに歓迎すべきことであるのですが、旅客として搭乗した場合、やはりあるレベルの危機管理(自己防衛)意識は維持する必要があるように思います。

航空機事故の発生頻度が高い critical 11 minutes は良く知られていますが、ここ最近の航空交通の輻輳状況をみるに、地上においても“油断は禁物”との印象がより強くなってきています。

昨日投稿した、KSFO での Runway Incursion の重大インシデントも 地上 で発生しています。

飛行機は、その名の通り『空を飛ぶこと』を前提に開発・設計されており、種々のシステム、安全装置も 上空 でのことを第一義に考えられています。
一例を挙げるならば、航空機の速度計は IAS, TAS と「対気速度」を示すものであり、地上滑走時に一目瞭然で読み取れる所謂自動車のスピードメータは装備されていません。
(※実際は、IRS (INS) や GPS を用いて地上での速度を読み取ります)

それを否定するつもりは毛頭無く、むしろ、益々進化して欲しいと願っています。

が、一方で Runway Incursion 防止をはじめとする「地上における安全対策」にも同時進行で知恵を出して欲しいところですし、旅客として搭乗する立場としても、地上での安全対策に積極的に貢献すべく、自分でできる限りの対策をすべきだと思います。

昨日投稿した KSFO の事例だと、SkyWest 5741 便のお客様は、まさか突然に急制動がかかるとは想定外だったでしょう。

また、仮に、Republic 4912 便が RTO 離陸中断で対処していたなら、当該便のお客様は、予期せぬ急制動にさらされることになったでしょう。

ビジネス層を主とした所謂“飛行機の旅に慣れた方々”は、特に早朝便や夕刻便などでは、着席すると同時に座席ベルトを締めて、眠りにつかれる方々を多く見かけます。

“眠りたい”状況は良く解ります。

が、SPOT を離れ、TAXI out ~ TAXI ~ Take-off Roll ~ Airborne ~ Climb Thrust まではどうか不測の事態に備えて起きていていただきたい。

到着時も、Gear Down 以降は眼を覚まして、BLOCK IN までは意識レベルを高く保っておいていただきたい。

それが、旅客にできる「自己防衛策」になります。

また、昼間の便で良くお見かけする団体のお客様方も、客室乗務員への依頼は極力 Pushback 開始前に済ませて、機体が動き出したら、客室乗務員への依頼は上空までお待ちいただけると、ご搭乗便客室乗務員の方々の事故リスクは大きく減らすことが出来ます。

数年前、地上走行中の客室乗務員の離席が問題となったことがあります。

着席して正しい位置でベルトを締めていると意外と解らないのですが、低速域での制動や、誘導路を曲がる際などは、想像以上にGがかかり、立って歩いている状況というのはとても危険なのです。

「 767 と D10 は Cabin Interphone が Cockpit にも筒抜けだから気を付けて!」と愚ともつかぬことを指示したチーフがいて、呆れ果てたことがありますが、そんなのは論外。保安要員が怪我をしてしまったら本末転倒です。

『電車は事故防止のためやむを得ず急停車をする場合がございます。お立ちのお客様は手すりつり革に~』

は電車で良く耳にするアナウンスですが、それと同じ意識を航空機が地上にいるときも持ちたいものです。

小生は TAXI 中、Runway Line Up の途中、滑走開始時、Short Final、Over Threshold とあらゆるチャンスを活かし、Windsock (吹流し)ややや遠くの草木に目をやり、風向き・風速を知ろうと(素人?)もがいています。

理由は、万一 Evacuation 緊急脱出の事態になったとき、さらにそのときに Fire を伴ったとき、脱出後、どちら側に避難した方が安全かイメージを持たせるためです。

あくまで一素人のイメージトレーニングであり、緊急事態においてはクルーの指示に従うのは言うまでもありません。
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Runway Incursion @ KSFO

 様々な防止策、アラートシステムが開発・導入されても、完璧はあり得ないことを改めて知らされたメールでありました。

このところ、野暮用+脳内重整備で、ろくに情報収集が出来ていないので、帰宅後のメール・チェックと就寝前の雑誌類で精一杯です。

米国カリフォルニア州のサンフランシスコ国際空港、SFO (KSFO) は二組の平行滑走路が直交する「井」の字型の滑走路配置となっています。
KSFO AD
それぞれの滑走路は、Rwy 01L/19R : 01R/19L と、それと直交する Rwy 10L/28R : 10R/28L の4本です。

お天気により運用形態が変わりますが、最もポピュラーな運用形態は、

 着陸機は、Rwy 28L, 28R の Simultaneous Parallel (同時平行進入)で降ろし、
 離陸機は、Rwy 01L, 01R で上げる;
  ただし、太平洋越えや欧州線といった長距離路線は 28L, 28R から Full Length
  (28 の延長上には、湾を取り囲む稜線があるので、上昇率には要注意)

です。

現地時間の5月26日、午後1時30分頃、着陸した Embraer 120 型機の僅か30~50フィート(約10~15m)上を、Embraer 170 型機がかすめて離陸するという、危機一髪の重大インシデントが発生しました。

当該インシデントに関する NTSB: National Transportation Safety Board (米国運輸安全委員会)からのメールによると、状況は以下の通りです。

1)ローカル席の管制官は、Rwy 28R に進入中の SkyWest 5741 (Embraer 120) 便に着陸許可を発出した

2)当該管制官は着陸許可を発出したことを失念した

3)当該管制官は Rwy 01L からの Republic 4912 (Embraer 170) 便に離陸許可を発出した

この時点で、2機は Runway Incursion の危機にさらされ、最悪、激突の可能性が生じました。

以前にも記したことがありますが、米国 FAA: Federal Aviation Administration (米国連邦航空局)では、AIP: Airport Improvement Program (空港改善プログラム)を実施中で、Runway Incursion もその撲滅対象の一つになっています。

そのため、AMASS: Airport Movememt Area Safety System という空港地表面を監視するシステムがサンフランシスコ国際空港にも既に導入されており、2機の衝突の危険を察知した AMASS は警告を発しました。

4)AMASS の警告を受け、Rwy 01L に接近していた着陸した SkyWest 機に対し "Hold, Hold, Hold" と呼びかけ、

5)それを受けた SkyWest 機は Maximum ブレーキをかけたが、機は Rwy 01L との交差部分中央で停止した

6)一方、離陸滑走を開始していた Republic 機では、PF duty の副操縦士からただちに機長が took over した

7)が、その時点で既に速度がかなり出ていた Republic 機は、機長が離陸続行を決断、immediate takeoff で機首上げを実施

8)Republic 4912 便は、行く手中央で停止している SkyWest 5741 便の頭上わずか30~50フィートをかすめ離陸した

この経過を見ると、どこぞのお国の公僕さんは2)の「失念」に全てを押しつけ、“業務上なんちゃら”だなんだと言い出し、マスコミさんも、「ミスで云々」と同類項で騒ぐことでしょう。

人間の注意力を軽視する訳ではありませんが、所詮、人間はミスをする生き物です。

そのミスを責め立てたところで、同種のインシデント、事故は必ず発生します。

サンフランシスコ国際空港は、パイロット連中の間でも「危険度が高い空港」として警戒されているそうです。

小生も、KSFO には as PAX で幾度となく行っておりますが、着陸進入時は、Parallel Approach 機はどこだと窓にへばり付き、着陸が迫ると、01 から上げている離陸機の動向が気になり、着陸後も A Twy に入るまでは緊張し続けです。
離陸時は、01 を横断する際、28R assign の場合は 28L 横断、そして、着陸機の合間をぬって滑走路に入り離陸滑走を開始するときには、01 から上げている離陸機の動向と 28 に進入中の機が Missed Approach したらなど、様々な状況を考えてしまいます。

今回は AMASS の有効性がかろうじて示されたと同時に、それがまた全くもって完璧ではないことも示されてしまいました。

空港ごと、Traffic の状況ごと、一律に「これ」といった決め手は無いのが現状である訳ですが、今回のこの危機一髪のインシデントを教訓に、運用面、システム面で更なる改善がなされ、着実に一歩前進することを期待して止みません。

NTSB: National Transportation Safety Board (米国運輸安全委員会)からのメールを原文で引用します。

Subject: NTSB INVESTIGATING RUNWAY INCURSION IN SAN FRANCISCO

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NTSB ADVISORY
************************************************************

National Transportation Safety Board
Washington, DC 20594

June 11, 2007

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NTSB INVESTIGATING RUNWAY INCURSION IN SAN FRANCISCO

************************************************************

The National Transportation Safety Board is
investigating a runway incursion in San Francisco two weeks
ago in which two airliners may have come within 50 feet of
each other on intersecting runways.

At about 1:30 p.m. on May 26, 2007, the tower air
traffic controller cleared SkyWest Airlines flight 5741, an
Embraer 120 arriving from Modesto, California, to land on
runway 28R. Forgetting about the arrival airplane, the same
controller then cleared Republic Airlines flight 4912, an
Embraer 170 departing for Los Angeles, to take off from
runway 1L, which intersects runway 28R.

After the SkyWest airliner touched down, the Airport
Movement Area Safety System (AMASS) alerted and the air
traffic controller transmitted "Hold, Hold, Hold" to the
SkyWest flight crew in an attempt to stop the aircraft short
of runway 1L. The SkyWest crew applied maximum braking that
resulted in the airplane stopping in the middle of runway
1L. As this was occurring, the captain of Republic Airlines
flight 4912 took control of the aircraft from the first
officer, realized the aircraft was traveling too fast to
stop, and initiated an immediate takeoff. According to the
crew of SkyWest 5741, the Republic Airlines aircraft
overflew theirs by 30 to 50 feet. The Federal Aviation
Administration has categorized the incident as an
operational error.

The NTSB sent an investigator to San Francisco, who
collected radar data, recorded air traffic control
communications, and flight crew statements, and interviewed
air traffic control personnel.

A preliminary report on the incident is on the Board's
website at:
http://ntsb.gov/ntsb/brief.asp?ev_id=20070610X00701&key=1

- 30 -

NTSB Media Contact: --------------
            (XXX) XXX-XXXX
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あと一か月もすると...

 月日の経つのは本当にはやいものです。もはや「水無月」。「水無月(みなづき)」の“な”は“無い”の意で「無」があてられておりますが、本来は“な”ではなくて“の”が正しく、「(みのづき)水の月」、つまりは「田んぼに水を引く必要のある月」の意味が正しいのだそうで。そう考えると、陰暦六月の異称としては合点ですね。

夏の水不足防止のためにも、お水は大歓迎なのですが、適度に降っていただきたいものです。全面「真赤っか」のエコーに青ざめ、Cb と格闘するのはご勘弁願いたいですな。

さてさて、苦あれば楽無し?慌ただしさは相変わらずでありまして、そんなこんなで、ちょいとスランプ気味です。

が、『雲上快晴』。

ボーイング社では、来月の特別な日に向けて、着々と準備が進んでいるようです。

夢先案内人ならぬ“ DREAM )LIFTER ”が一所懸命 787 Dreamliner のパーツを運び、あと一か月もすると、初号機が Everett 工場で roll out です。

ボーイング社の社内誌?(的存在の雑誌)にも、「 Getting ready to roll 」と題して、以下のような書き出しで始まる記事が載っておりました。

787 team's aiming for 07/08/07 rollout ―― and to fulfill promises

Keep this date in mind: July 8, 2007. That's 07/08/07 in the United States.

It's an easy date to remember for Boeing stakeholders ―― especially for employees of Boeing and its global partners who support the Boeing 787 Dreamliner airplane. On that day, the first 787 is set to roll out of the Boeing factory in Everett, Wash.

Employees on the 787 team at Boeing and its supplier partners are woring toward the July 8 787 Dreamliner Premiere ―― one of the many milestones along the path of this revolutionary airplane. Through their efforts and use of innovative Lean manufacturing processes, the 787 Dreamliner soon will roll out of the factory ―― and will be aloft later this year, on its way to provide improvements in passenger comfort, economic performance and enviironmental stewardship.

(Scott Lefeber, Travis Nees, BOEING FRONTIERS Volume VI, Issue II pp.28)

787 だから 2007 年 07 月 08 日ねぇ。これをきっかけに、米国式の日付表記方法を覚えられるかな....。

遙々、名古屋から Everett に運ばれた主翼も取り付けられ、787 が Roll Out してくるのは「七夕」の翌日(日本だと時差の関係で翌々日かな)ですか。

短冊に「無事故、安全運航」を願わねば....。


コメントを寄せて下さっている皆様、返信が大幅遅延で申し訳ございません。
重整備中でして....、もう少しすると TST FLT できると思いますので、耐空性が証明されるまでお許し下さい。
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