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(since 17 AUG 2005) |
Magnetic Variation
はやいものできょうから師走、2009 年も残すところあと一か月になりました。
ここ数年は、毎年のように一年経つのがあっという間と感じています。歳なのでしょうか...。
が、変化(進化か退化かはあえて気にしない)を感じながら、時間と共に老いるのもこれまた楽し、であります。
時間と共に変化すると言えば、スパンは比べものになりませんが、地球の磁場もその仲間です。
同じ経度の点を結んでできる経線は、北極・南極を通る大円であります。ここでの北極・南極とは、地球の自転軸が貫いている地点のことであり、北極・南極と言った場合、ここをイメージするのが普通でしょう。
方角を知る道具、方位磁石。これは地球の磁場を利用して方角を知る道具でして、N ▲ が指し示すのは、地球磁石の北極、磁北であり、経線が示す所謂地形図の北、真北ではありません。
地球上のかなりの地点で真北と磁北とは一致しておらず、真北と磁北とのなす角度を“磁気偏角”といいます。
本邦付近のそれは、2000年1月1日の値で、4 ~ 10度程度磁北が真北よりも西に偏向してます。
出典:国土地理院技術資料 B・1-No.35 磁気図(偏角図) 2000.0年値
毎度のことですが、本邦付近とか2000年1月1日で、とことわったのは、磁気偏角は地球上の場所によって異なり、また、同一地点でも、時間と共に変化しているからです。
航空機に搭載されている“コンパス”も方位磁石なので、真北ではなく、磁北基準です。
ここで、地球上のどこへでも飛んでいく飛行機ならではの悩ましいことがあります。
自機の場所の磁気偏角を常に考慮しなければならない…(駄洒落にあらず)。
航空地図には、この磁気偏角の情報が記されてますし、航空路方角等の方位は、極地帯を除き“磁北”基準です。
(空き地:適当な Enroute Chart 画像を紹介予定場所)
JEPPESEN ENROUTE CHART より ©JEPPESEN, 1999, 2009
↓極地付近の航空路では真方位が用いられる
(数字°の後ろのTは真方位であることを示している)
今日のハイテク機には、IRU: Inertial Reference Unit、ADIRU: Air Data Inertial Reference Unit といった自律航法装置が搭載されており、たとえ、地上航法支援施設や GPS からの情報が無くても、自機の位置を正確に割り出し、FMC: Flight Management Computer とカップリングして、プログラムしたルートに沿って飛ぶことが可能です。
ルートに沿って飛ぶためには、方位情報は欠かすことができません。また、磁方位を用いた方位計測では、その計測地点における“磁気偏角”を考慮することも欠かすことができません。
という訳で、ハイテク機は“磁気偏角”の情報も持っています。“磁気偏角”のことは、Magnetic Variation と言いますので、航空機が持っている“磁気偏角”情報のことを MagVar Table なんて言います。
この MagVar Table なるもの、つねにその時点での最新のものを使用しないとなりません。前述したように、“磁気偏角”は、同一地点でも時間と共に変化しているからです。
ちなみに、1980年から2005年までの25年間(四半世紀ですね)でどれだけ変わったか、世界地図上に色分けして示した図があります。
[出典: Boeing AERO Magazine 2009 Q4]
本邦付近ではほとんど変化が無いのですが、南米や北米では、10度近く変化しています。10度を大きいとみるか小さいとみるかはそれぞれでしょうが、安全運航への脅威として考えた場合、決して無視できる変化量ではありません。
航空機の整備というと、エンジンや翼など、“飛行”の最前線をイメージしがちですが、中には「MagVar Table を最新に保つ」といった目立たなくても、日々の安全運航に重要な役割を果たし、欠かせないものもあるのです。
【おまけ】
Boeing747-400 のグレアシールドには、真方位を用いるか TRUE、磁方位を用いるか NORM の切り替えスイッチがあります。
このスイッチを切り替えると、PFD 下部のコンパス・ローズや ND の表示が変わります(厳密には Auto Pilot の Mode にも影響する)。
極地付近では、磁気偏角がちょっと飛んだだけで大きく変わってしまうので、磁方位を用いる NORM モードでも、北緯82度以北(場所によっては北緯70度以北)および南緯82度以南(場所によっては南緯60度以南)飛行時には、真方位が用いられるようになっています [値は Boeing747-400 の場合]。
ここ数年は、毎年のように一年経つのがあっという間と感じています。歳なのでしょうか...。
が、変化(進化か退化かはあえて気にしない)を感じながら、時間と共に老いるのもこれまた楽し、であります。
時間と共に変化すると言えば、スパンは比べものになりませんが、地球の磁場もその仲間です。
同じ経度の点を結んでできる経線は、北極・南極を通る大円であります。ここでの北極・南極とは、地球の自転軸が貫いている地点のことであり、北極・南極と言った場合、ここをイメージするのが普通でしょう。
方角を知る道具、方位磁石。これは地球の磁場を利用して方角を知る道具でして、N ▲ が指し示すのは、地球磁石の北極、磁北であり、経線が示す所謂地形図の北、真北ではありません。
地球上のかなりの地点で真北と磁北とは一致しておらず、真北と磁北とのなす角度を“磁気偏角”といいます。
本邦付近のそれは、2000年1月1日の値で、4 ~ 10度程度磁北が真北よりも西に偏向してます。
毎度のことですが、本邦付近とか2000年1月1日で、とことわったのは、磁気偏角は地球上の場所によって異なり、また、同一地点でも、時間と共に変化しているからです。
航空機に搭載されている“コンパス”も方位磁石なので、真北ではなく、磁北基準です。
ここで、地球上のどこへでも飛んでいく飛行機ならではの悩ましいことがあります。
自機の場所の磁気偏角を常に考慮しなければならない…(駄洒落にあらず)。
航空地図には、この磁気偏角の情報が記されてますし、航空路方角等の方位は、極地帯を除き“磁北”基準です。
↓極地付近の航空路では真方位が用いられる
(数字°の後ろのTは真方位であることを示している)
今日のハイテク機には、IRU: Inertial Reference Unit、ADIRU: Air Data Inertial Reference Unit といった自律航法装置が搭載されており、たとえ、地上航法支援施設や GPS からの情報が無くても、自機の位置を正確に割り出し、FMC: Flight Management Computer とカップリングして、プログラムしたルートに沿って飛ぶことが可能です。
ルートに沿って飛ぶためには、方位情報は欠かすことができません。また、磁方位を用いた方位計測では、その計測地点における“磁気偏角”を考慮することも欠かすことができません。
という訳で、ハイテク機は“磁気偏角”の情報も持っています。“磁気偏角”のことは、Magnetic Variation と言いますので、航空機が持っている“磁気偏角”情報のことを MagVar Table なんて言います。
この MagVar Table なるもの、つねにその時点での最新のものを使用しないとなりません。前述したように、“磁気偏角”は、同一地点でも時間と共に変化しているからです。
ちなみに、1980年から2005年までの25年間(四半世紀ですね)でどれだけ変わったか、世界地図上に色分けして示した図があります。
[出典: Boeing AERO Magazine 2009 Q4]
本邦付近ではほとんど変化が無いのですが、南米や北米では、10度近く変化しています。10度を大きいとみるか小さいとみるかはそれぞれでしょうが、安全運航への脅威として考えた場合、決して無視できる変化量ではありません。
航空機の整備というと、エンジンや翼など、“飛行”の最前線をイメージしがちですが、中には「MagVar Table を最新に保つ」といった目立たなくても、日々の安全運航に重要な役割を果たし、欠かせないものもあるのです。
【おまけ】
Boeing747-400 のグレアシールドには、真方位を用いるか TRUE、磁方位を用いるか NORM の切り替えスイッチがあります。
このスイッチを切り替えると、PFD 下部のコンパス・ローズや ND の表示が変わります(厳密には Auto Pilot の Mode にも影響する)。
極地付近では、磁気偏角がちょっと飛んだだけで大きく変わってしまうので、磁方位を用いる NORM モードでも、北緯82度以北(場所によっては北緯70度以北)および南緯82度以南(場所によっては南緯60度以南)飛行時には、真方位が用いられるようになっています [値は Boeing747-400 の場合]。
Comment ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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さすが、業界一"通"のネタです(笑)。
えーと、これを理解するのにAHRSのことやら、カルマンフィルターのことやら・・・(カルマンフィルターは磁方位とは関連ない・・・ハズ(滝汗))勉強しないと。
>“磁気偏角”
ですね、国際線では非常に重要となりますよね。
ところで、その昔(11世紀頃?)、羅針盤に使う方位磁石(魚の形をしたやつもあったようです)を作るときに、魚の頭を真北に向けて作っていたとか。そうすることで磁気を強めることを知っていたんでしょう。
あー、やばい・・・IRU、ADIRU、AHRS・・・知恵熱が出てきました(爆)
年末、飲み会が増えると思いますが、お互いジジーパワー炸裂で乗り切りましょう!
こんばんは。今夜も冷えます。この寒さで知恵熱も解熱 !!?? っていうか、各所のオイルTEMPが下がりすぎて動きませんです。
師走で何かと慌ただしい日々が続きますが、お身体に気をつけてご活躍ください。
ご無沙汰しております。ML・・SSP・・どのHNを使っていたかも忘れてしまいました苦笑。
RJFTから・・・現在、福岡支部にて大量の冷や汗をかいております某公僕でございます。覚えてらっしゃいますでしょうか?
久しぶりに参りましたが、また少しずつ再開されておられるようで・・・突然休止された際は、非常に残念でしたが、またこうして貴殿ブログを拝見できますこと、非常に喜んでおります。
小生といえば・・・老いたポンコツ脳に鞭打ちながら、なんとか次世代管制システム(IECS)を使えるようになったかと思えば、追い打ちをかけるように来年の那覇支店『沖の西セクター』の福岡支店への移行のクルー責任者を押しつけられ、訓練だの試験だの・・・ますます冷や汗とストレスの日々を送っております。そんな中でも、未だ某SNSにて細々とくだらない日記を続けている毎日です苦笑。
お時間のある時にでも良かったらお立ち寄りくださいませ。
それでは良いお年をお迎えください。
こんにちは。勿論、覚えておりますとも!
こちらこそご無沙汰いたしております。
重責を担って、ご活躍のご様子で何よりです。
小生(も、と言ったら失礼ですね)、退化が指数関数的でして、「人生対数軸」が身にしみているこの頃であります。
最近では最新技術が目白押しで、好奇心は相変わらずなれど、情報収集も追いつかず、収集してもチンプンカンプン。老兵去り行くのみ、かな…と(苦笑)。
また、いろいろと教えて下さいませ。
では、よいお年をお迎え下さい。
P.S.
某所、Exploreしてみます。機影が見えたらコンタクトしてみますネ!
新年、明けましておめでとうございます。
2009年最期に航法関係話題、やはり空とAirlinerを愛しているということでしょうね!
時間とともに変化するMagnetic Variationは自然の一部なんですね驚かされます。人間もまた地球の歯車、刃向かうことはできないのですね。
飛行機の技術は日進月歩とはいきませんが、B7,L1011のように磁気センサー(フラックスバルブ)なるものはB744,A330,B777,A300-600では装備されていません。現在の飛行機に装備されているFMCにメモリーされているのでしょうか?それとも計算されてTRUE/MAG HeadingをND/PFDにDisplayしているのでしょうか?PAXさんどうなんですか?
こんばんは。今年もよろしくお願いいたします。
メカニズム詳細の正確なところは解りません。すみません。(平謝り)
777のAOMによると、ND/PFDの表示はInertial System, ADIRU: Air Data Inertial Reference Unitからのデータを基に計算し表示され、この時current positionでのMAGVAR Table値が用いられているようです。