徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

マンダラ航空091便事故に生存者? + メダン空港 Airport Diagram

 BBCは生存者がいる模様と報道しています。

生存者談として "After taking off, the plane really shook and then suddenly it plummeted to a main road on top of the cars below" と伝えていることから、何らかの理由で失速に陥り墜落した可能性が考えられます。

メダン空港の Airport Diagram (Jeppesen Chart) をここに置きました。

空港の形状、当時の気象状況からして、Runway 23 から離陸したのではないかと思われます。



インドネシアで国内便墜落、120人以上死亡か (朝日新聞) - goo ニュース
 インドネシア・スマトラ島北部メダンの空港で5日午前10時(日本時間同正午)すぎ、マンダラ航空ジャカルタ行き091便のボーイング737―200型機が離陸直後に近くの住宅地に墜落、炎上した。乗客・乗員計117人のうち、同日夜までに15人が救出されたが、そのほかは大半が死亡したと見られる。また、少なくとも10人以上の住民が死亡、多数がけがをしている模様だ。

 メダンの日本総領事館によると、事故機には、日本人を母親に持つ3歳の女児がインドネシア人の祖父母と搭乗していたとみられ、現在同館で安否の確認を急いでいる。

 現地からの報道によると、滑走路から数百メートル離れた事故現場では、民家や車が延焼し、焼け焦げた遺体があちこちに散乱するなか、救助や消火の活動が続けられた。

 マンダラ航空は、国軍の関連団体が所有しており、インドネシアで最近増えている格安航空会社の先駆け的な存在。ジャカルタを拠点として、全国各地を結んでいる。

 メダンは、スマトラ島最大の都市で、人と物の流通拠点となっている。

2005年 9月 5日 (月) 20:50

Indonesia jet crashes on take-off - BBC NEWS UK EDITION
An Indonesian passenger jet has crashed after take-off from the Sumatran city of Medan, killing most of the 117 on board and about 30 more on the ground.
The Boeing 737-200, run by low-cost airline Mandala, crashed onto a busy road in the Padang Bulan residential area near the city's airport.

Fire engulfed the wreckage and local TV showed images of dozens of homes and cars destroyed by the impact.

Airline and rescue officials said that up to 16 of those on board survived.

One survivor, passenger Freddy Ismail, spoke to Indonesian radio from his hospital bed.

"I could not believe it. After taking off, the plane really shook and then suddenly it plummeted to a main road on top of the cars below," he told El-Shinta.

Another passenger, Rohadi Sitepu, said all the survivors were seated in the back row of seats when an apparent explosion ripped through the front of the plane.

Mr Sitepu said he escaped the wreckage by fleeing as powerful explosions erupted behind him.

Emergency crews of paramedics, police and firefighters struggled to reach the wreckage because of raging fires.

One local reporter told Reuters news agency: "Around 10 houses were burned, along with five to six minibuses. The plane was torn into pieces, we could only see the tail."

'Tragedy'

Indonesia's Transport Minister Hatta Radjasa called the crash "a great tragedy".

Indonesia's President Susilo Bambang Yudhoyono ordered an inquiry into the crash, which happened in overcast conditions.

The acting director of Mandala Airlines, Asril Tanjung, said investigations were focusing on "take-off failure", but could not say if human error, engine failure or weather problems were to blame.

The Governor of North Sumatra province, Rizal Nurdin, was on board the plane, which was heading to the country's capital, Jakarta.

Former North Sumatra Governor Raja Inal Siregar was also reported to be on board the flight.

Mandala is largely owned by Indonesia's military, and has been forced to cut costs in recent years to stave off losses.

The plane entered service in 1981, but was not due to be retired until 2016, and received a full service in June this year.

Indonesia's worst air disaster, in 1997, also happened in Sumatra, when an Airbus crashed into mountains near Medan, killing all 234 people on board.

Sumatra also bore the brunt of last year's Indian Ocean tsunami, which killed 160,000 people there and left 800,000 more homeless.

Last Updated: Monday, 5 September 2005, 12:30 GMT 13:30 UK
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Hydraulic Failure ... 適切に対応しましたね

 Hydraulic Failure (油圧の故障)は最も恐ろしい部類に入るトラブルです。

それは、操縦系統の殆どが油圧アシストによって作動するように設計されているからです。最近主流となりつつある Fly by Wire 機でも、制御は電気信号により行なわれますが、操舵面(エルロン・エレベータ・ラダーなど)を動かしているのは油圧アクチュエータです。それだけ重要な油圧ですから、航空機には通常3系統の油圧システムを備え、バックアップ体制をしいています。

ですから、「Hydraulic Pressure warning」が表示されたら、パイロットは出来る限り早く地上に戻ることを考えます。

当該便の運航乗務員は適切な対応をとったと言えるでしょう。Hydraulic Failure から僅か16分でKIX(関西国際空港)に戻っています。迅速な対応であったと言えましょう。
KIX-PVGですから、燃料も国内線並みにしか搭載されていなかったであろうことも幸いでした。

Boeing757 は運航している日本の航空会社はありませんが、Boeing767 程は輸送力を必要としない路線に主に投入されている機体です。Boeing767 同様、グラスコックピット初代の飛行機で、運航乗務員の型式限定資格は Boeing767 と共用できる(つまり、Boeing767 の型式限定資格を持っているパイロットは Boeing757 も操縦できる)ことから、航空会社のマンニング上もメリットを有している機種です。

Boeing757 の Cockpit
Cockpit_of_Boeing757

日本のオペレータがいないことから、日本に飛来する Boeing757 は人気の機体です。

トラブルの深刻度に比べて扱いが小さいのは....、なるほど、ニュースソースを見て納得しました。



ロイヤルネパール航空機、関空に戻る 油圧パイプが破損 (朝日新聞) - goo ニュース
 4日午後1時ごろ、ロイヤル・ネパール航空の関西空港発上海行きボーイング757―200型機(412便)で、計器に油圧の低下を示す表示が点灯したため、同機は午後1時16分、関空に引き返した。乗員乗客計54人にけがはなかった。国土交通省大阪航空局関西空港事務所の調べでは、前輪収納庫のドアを開閉するための油圧シリンダーで、接続するチューブの一部が破れていた。

 同関西空港事務所によると、チューブは長さ1メートル、太さ3センチで、破損個所から油が漏れていたという。ただ、着陸時にはドアは正常に開き、影響はなかった。同機は4日にチューブを交換、5日朝に関空から上海へ向かう予定。

2005年 9月 4日 (日) 23:15
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またもや事故 今度はインドネシア

 この一ヶ月間に何件の航空機事故関連の記事を書いたことでしょうか。

異常な状態です。

今度も機体は Boeing737-200 (日本では既に退役して、この型の航空機を運航しているエアラインはありません)、機齢は24年、“老齢機”と書かれていますが、きちんお金をかけて整備していれば問題になる“機齢”とは言い切れません。

離陸直後で相応の燃料を搭載していたことと、住宅密集地に墜落したことが被害を大きくしているようです。

もう事故はたくさんです。はやく事故の連鎖が断ち切られることを願ってやみません。



多数死亡のもよう=117人乗りインドネシア旅客機墜落 (時事通信) - goo ニュース
【ジャカルタ5日】117人が乗ったインドネシア・マンダラ航空のボーイング737-200型旅客機が5日、同国の北スマトラ島メダンのポロニア空港から離陸したすぐあと、空港のすぐ隣の人口密集住宅地区に墜落した。(写真はいずれも5日メダンで墜落したボーイング機の残骸と、生存者を探す救助隊員たち)

現地からのテレビには消防隊が同機の残骸から出る炎と闘うもようや、つぶれた車、自転車、数軒の破壊された住宅が映し出された。同航空によれば、同機には乗客112人と乗員5人が乗っていた。同機はジャカルタ行きだった。同航空幹部によれば、地上の住民を含め多数が死亡した可能性が大きい。国営の運輸保険会社の担当者がラジオ放送に語ったところでは、少なくとも30人の焼け焦げた遺体が収容された。

事故の原因はまだ分かっていない。同機は就航して24年の老朽機で、6月に機体の広範な検査が実施されたという。マンダラ航空は軍の組織が90%保有している。〔AFP=時事〕

2005年 9月 5日 (月) 15:53

ASN Accident description 05 SEP 2005 Boeing 737-230 PK-RIM
Accident description
Status:              Preliminary 
Date:                05 SEP 2005 
Time:                ca 09:40 
Type:                Boeing 737-230 
Operator:            Mandala Airlines  
Registration:        PK-RIM 
Msn / C/n:           22136/783 
Year built:          1981 
Engines:             2 Pratt & Whitney JT8D-15 
Crew:                ? fatalities / 5 on board  
Passengers:          ? fatalities / 112 on board  
Total:               102 fatalities / 117 on board  
Ground casualties:   47 fatalities 
Airplane damage:     Written off 
Location:            Medan-Polonia Airport (MES) (Indonesia) 
Phase:               Initial climb (ICL) 
Nature:              Domestic Scheduled Passenger 
Departure airport:   Medan-Polonia Airport (MES) 
Destination airport: Jakarta-Soekarno-Hatta International Airport (CGK) 
Flightnumber:        091
Narrative:
Crashed in a residantial area 500 metres past the runway. The number of fatalities is uncertain. Latest reports say 15 passengers who were seated in the rear of the plane had survived, while 47 persons on the ground are said to have been killed.
Weater around the time of the accident (02:40 UTC) was: WIMM 050300Z 15006KT 5000 SCT016 30/25 Q1008 NOSIG= (winds from the South-Southeast at 6 kts, Scattered clouds at 500 m/1600 ft MSL, temperature 30 deg. C, dewpoint 25 deg.C, 1008 hPa).
Medan-Polonia has a single 2900 x 45 meters asphalt runway (05/23).
弱い cross wind ですが、視程は 5000m で NOSIG ですから、特に気象状況が悪かったとも思えません。

Mandalian_Airline_Accident_Photo 画像は REUTER より
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飛行機は自力でバックできるのか?

 「飛行機は自力でバックできない、当然だ」と思っている方、「えっ、飛行機ってバックできないの?」と思っている方、両方おられると思います。

勿論、地上でのお話しであり、ここでの飛行機は固定翼機のことです。回転翼(俗に言うヘリコプター)はホバリングと言って上空で静止することもできるし、ゆっくりと後退することも可能です。

固定翼機(一部の戦闘機を除く)が上空で止まろう・後退しよう、とした場合、その前に失速に陥り、墜落という惨事を免れません。

飛行機の場合、その速度には対気速度と対地速度という二つの概念がありますので、上の話は対気速度でのことです。

対地速度で考えると、固定翼機が上空で停止・後退することも可能です。旅客機がそんなことしたら目的地にたどり着けずお客様の怒りをかうので、勿論日常運航ではそんなことしません。また、あくまでも理論上の話であり、対地速度で停止・後退状態に入れるまで、安全に安定して行なえるかは“風”が相手になりますから、極めて難しいでしょう。

原理は簡単なことです。川の流れと川上に向かうボートを想像していただけば、納得です。

 (川の水流)→→→
 (ボート) ←←
イコール
 (ボートは)→ で川を下る、つまり後退しています。

川の水流を上空のジェット気流に、ボートを飛行機に置き換えてみましょう。

毎時 150kt (時速約 280km )のジェット気流の中を、セスナ機が対気速度 120kt (時速約 220km )で風上に飛んだとすると、地上から見ていると、30kt (時速約 55km )でセスナ機はバックしていることになるのです。

このように、飛行機と風は切っても切れない関係にあり、自機に対する風速の影響のことを WF: Wind Factor と言います。

全く風の影響を受けない場合、WF0 であり、追風の恩恵を受けるときは WF が Plus、向かい風に逆らわねばならない場合には WF は Minus となり、パイロットや運航管理者の眉間にしわがよります。

WF については、航空会社の時刻表でも垣間見ることができます。これから冬場に向かい、ジェット気流が中緯度帯までおりてきて、その速度が増すと、同じ区間でも、東へ向かって飛ぶ便の飛行時間は短くなり、西へ向かって飛ぶ便の飛行時間は長くなります。
国内線だと、羽田-福岡の飛行時間を羽田行き(東へ向かう)と福岡行き(西へ向かう)で比べてみてください。



前置きが随分と長くなりましたが、いよいよ本題、地上において「飛行機が自力バック」出来るか・出来ないか、です。

答えは「出来る」です。ただし、条件がありますが....。

先ず、国内で「飛行機が自力でバック」することはありません。そんな運航をしたら、マスコミ各社が寄って集り、格好のネタを提供することになってしまいます。

国内では
 -「自力でバックしなくても良いように駐機する」
 ...プロペラ機の駐機方法や伊丹空港の Spot 20 や 16 など。
 -「自力前進できる安全な場所までトーイング・トラクタで押し戻してもらう」
 ...この押し戻すことを Push Back と言います。国内のジェット機は殆どこの方法。
のいずれかで運用されていますので、「飛行機が自力でバックする光景」はお目にかかれません。

では、絶対に不可能かと言われれば、出来ないことはありません。ジェット旅客機を例に説明します。

1.安全が確保された平坦で広大な場所があること
2.風は無風か微風であること
3.飛行機の自重をできるだけ軽く抑えること(例えば、MD81やMD90クラスの機体や、大型機でも貨物・旅客は搭載せず、燃料も最小限に抑える)

この状態で、周囲に十分な安全な空間が確保された場所に飛行機を駐機させ、Parking Brake を Set して、通常の procedure でエンジンをスタートさせます。この間、Parking Brake は Set したままにしておきます。

エンジンがスタートし回転が安定したら、Throttle (くるまのアクセルに相当)を Reverse Thrust に適度に(この加減が難しい)入れます。すると、通常は後方に排出されるジェットエンジンの排気流が、エンジン・カウルの途中がパックリ開いたり、エンジン後方部分の逆流用の壁が立ち上がったりして、排気流の一部が前方に噴出されます。
Thrust_Reverse_of_JA731J

Thrust_Reverse_of_AAL_Photo
Reverse Thrust に入れてワンテンポおいて、Parking Brake を Release すれば、機はゆっくりと後退を始めます。
一度、後退を始めると暫らくは慣性でバックを続けますので、Throttle を Forward Idle に戻し、排気流を通常のように全て後方に排出させます。そうすると、前方への推力が生じますので、バックしていた機体のスピードは徐々に下がり、そのままにしておくと、停止~前進になります。もう少しバックしたければ、機体が停止に至る前に Forward Idle に戻したThrottle をまたちょいと Reverse に入れてバックを続ける、といった具合です。

これを、日常の運航に使っているのがアメリカの一部の空港です。

小生が現場を目撃したのは、ニューオリンズ New Orleans(MSY)(ハリケーンの被害で今は大変な状況ですが)とオースティン Austin(AUS) です。

この方法で自力後退していたのは MD81, MD90, と言ったエンジンが機体最後尾かつやや高めの位置に付いていて、ターミナルへの排気流の影響を最小限に防げる機体に限っていたように思えます。
Austin(AUS) で American Airline の MD90 が自力後退したのと同一の Spot から一時間後に United Airlines の Boeing737-400 で出発したのですが、United の B737 は通常の Push Back で後退しました。

「飛行機は自力でバックできない」は大筋で正解なのですが、機種と条件次第では「できない訳ではない」と言うことが出来るでしょう。
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