徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

2005年の大晦日 - 雲上快晴

 激動の2005年も残り12時間を切りました。

色々なことがあった一年でした。

 “雲上快晴”

全日空の故石崎機長の言葉です。

辛く苦しいことがあっても(地上はどしゃ降りでも)、頑張って雲の上に出れば、そこは快晴。成層圏の真青な空もすぐそこです。

来る2006年はどんな年になることやら....。

on top Clear and Smooth であることを願いましょう。
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憶えていますか

 今年も残すところあと僅かになりました。テレビや新聞、雑誌などでは、2005年を振り返る特集が真っ盛りですね。
JA8072 at VHHH
さて、ここでちょっとした記憶力テストです。

右の写真にご注目、nose gear door にペイントされた“072”の文字が意味するものは....そう、この航空機の登録番号がJA8072であることを示しています。

JA8072 Boeing747-446 と聞いて今年思い浮かぶことは?

即座に出てくれば、それはかなりの通(ツウ)ですね。

そうです、あの8072です。

今年5月8日11時41分頃(日本時間)、NOPAC ルート R220 NODAN waypoint 付近(新千歳空港の南東約370kmの海上)で、(サンパウロ~)ニューヨーク発成田行きの日本航空47便( JAL047/07MAY )Boeing747-400(搭乗者は乗員19名、お客様355名の合計374名)がFL360(高度約11000m)を飛行中、減圧により10000フィート(約3000m)まで緊急降下し、新千歳空港に緊急着陸を行いました。憶えていらっしゃいますか?

国交省が重大インシデントに指定し事故調がのりだしていますので、言われれば想いだした方も多いことでしょう。

当該便の機体が、このJA8072だったのです。

EICAS: Engine Indication and Crew Alert System の WARNING Message "CABIN ALTITUDE" が赤色で表示され、減圧により客室内の気圧高度が 10000 feet を超えたことが示されました。
※通常の運航では、客室内の与圧、気圧高度は 5000 ~ 8000 feet です。

その後、運航乗務員は Cabin Decompression 時の手順通り安全高度まで緊急降下を行いました。EICAS Message は Advisory Message "OUT FLOW VALVE RIGHT" となりました。当該メッセージは、Boeing747-400 のシステム上は、右側 OUT FLOW VALVE の自動制御システムが故障した場合、または、右側 OUT FLOW VALVE が MANUAL (手動モード)になっている場合に表示されます。

EICAS の他に、ECS: Environmental Control System (客室の与圧・空調を表示する)画面では、VALVE は左側が OPEN 右側が CLOSE の状態であることを示し、OUT FLOW VALVE MODE は MANUAL であったとのことです。

未だ事故調査報告書が出されていませんので、原因はまだ明らかにはなっていません。

日本航空は、機体構造関係のテストを行って不具合の無いことを確かめ、与圧システム関連の全ての部品を交換した上で、当該機体をライン(有償飛行)に戻しました。取下ろした各部品で何か不具合は見つかったか、と言うと「不具合は見つかっていません」というところが気にかかりますが....。

※だから、こうして写真も撮れたし先日搭乗もした訳です。

[ライン復帰後の6月1日、Block In して Engine Shutdown 後に再び "OUT FLOW VALVE RIGHT" のメッセージが出たそうですが………]

搭乗ゲートに向かって、レジ(機体登録番号)を確認するのは、小生の行動パターンでは無意識のうちに行なわれているのですが、その番号を見て『あれっ』と思ってしまうことも少なくありません。

あれこれと憶えているのも考えものですかねぇ。肝心なことに限ってすぐ忘れてしまうくせに....。

元気に活躍してましたね、JA8072。

今後とも、(給料カットのことばかり考えてないで)お客様にも乗員にも納得できる「安全最優先」で頼みますよ、S町さん。
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偏西風の威力 590km/h vs 1170km/h

 冬場は中緯度偏西風、所謂ジェット気流が南下してきて、その速度も速くなります。

きょうの午前3時(日本時間)に発表された ICAO AREA M の悪天予報図(明日の日本時間で午前3時まで有効)を見ても、日本付近の上空には2つのジェット気流のコアが西から東へと流れており、コア中心部の速度は約150ノット(時速約280キロ)もあります。

PGDE30 KKCI 281800

西から東へ飛ぶ場合には、この偏西風の恩恵を最大限に活かすようなルートや飛行高度の選択をして、対地速度を稼ぎます。
逆に東から西へ飛ぶ場合には、極力偏西風の影響を受けないようにルートや飛行高度の選択をして、対地速度の低下を防ぎます。

が、この時期の偏西風は半端ではありません。また全ての便が、PACOTS のように気象状況を考慮して柔軟に設定した飛行ルートを飛んでいるとは限らず、決められた航空路の範囲内での選択しか出来ない場合もあります。
PFIS XXX???/21DEC NRTHKG
先日、VHHH (香港)を往復したときは、ジェットが200ノット近く吹いており、往路は大変難儀しました。飛行時間は多少ショートカットをさせてもらったにも関わらず、4時間51分、ブロック・タイム( Pushback から SPOT In まで)は5時間13分にもなりました。
ジェットのコアは四国の南あたりを流れてましたが、そこにさしかかる手前の段階で、PFIS: Passenger Flight Information System が示す対地速度は、たったの時速594kmです。Mach. 0.86 でぶっ飛ばしている Boeing747-400 がですよ。
その後、ジェットを横切る際には揺れを抑えるために速度を落としたことも手伝って時速550km近くまで下がりました。
PFIS XXX???/24DEC HKGNRT
一方、VHHH から RJAA (成田)へ戻る便は、日本付近に近づくにつれ、ジェットに乗って対地速度を稼ぎ、本州南を飛行しているときの対地速度は、時速1172kmにも達しました(飛行時間は3時間20分、ブロック・タイムは3時間47分)。

成田-香港間は、航空路上の距離はほぼ同じなのに、往路4時間51分・復路3時間20分と1時間20分もの差がついてしまうのです。

偏西風、恐るべし。
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RNAV Route がぞろぞろと

 約1ヶ月前になりますが、11月24日から日本付近の RNAV Route が随分と増えました。

JEPPESEN Enroute Chart FE5(H/L),FE6(H/L) (日本と韓国をカバーするチャート)も、先日12月16日の Revision で差替えです。

先日 VHHH へ出掛けた際に早速に新しい RNAV Route を飛行することが出来ました。
RJAA は Rwy 16R から Airborn、SID は Narita Reversal 8 [NRE8R](RWYS 16L/R) の筈でしたが、夜で Traffic の状況が許されたことと(そんなに遅くなるまで delay するなよ)、Tokyo Control が良質なサービスを提供してくれたお陰で、D14 NRE で左旋回ではなくて右旋回をして Direct HYE (横須賀VORDMEに直行)となりました。

そこから早速、新たな RNAV Route Y50 にのって Flight です。

夜だったため+連れに窓側を譲ったため、外を眺めることは出来ませんでしたが、羽田→伊丹・関空便等で用いられる HAYAMA THREE / YOKOSUKA より富士山の近く(富士山の南側)を飛ぶことになるので、お天気の良い日には右の窓からは富士山や都心の景色も綺麗に見えることでしょう。
羽田の SID、HAYAMA THREE DEPARTURE / YOKOSUKA TRANSITION の場合、HYE (YOKOSUKA VORDME) から磁方位 263 °で XMC (KOWA VORDME) へ向かいます。
一方、RNAV Route Y50 は HYE (YOKOSUKA VORDME) から磁方位 270 °で HORAI FIX へと向かいます。
この7°の差が無視できないのです。
Y50 Mt.Fuji Y20
PFIS Screen Shot
Y50はその先、KOSUN FIX で左に変進、セントレアのほぼ真上を通って LABEL FIX (XMC VORDME から磁方位 266 °で 39 海里のポイント) へ向かいます。
それから SKE (SHINODA VORDME) をヒットした後、淡路島上空の PROOF FIX で磁方位 237 °にさらに左に変進して KRE (KOCHI VORDME) へと向かいます。

PFIS Screen Shot
この高知VORDMEが Y50 の終点です。

この先、航空路A1へは、KRE から磁方位 241 °で DONKY FIX を経て HKC (KAGOSHIMA VORDME) で合流します。

PFIS Screen Shot


この他にも12月16日から RNAV Route が増えて、飛行計画を作成する際の PREFERRED ROUTES (推奨経路)も変更になっています。

AIC Nr014/05 では、飛行計画経路の変更について、と題して;

平成17年11月24日0000JSTから、飛行計画は次のとおり計画されたい。

として、RNAV Route を有効活用した経路がぞろぞろならんでいます。
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ThinkPad 修理完了

 冷却ファンの故障で修理に出していた ThinkPad T42 (model 2373-9XJ) が退院してきました。

保障期間内だったので、修理費用・往復の配送料は無償です(助かった)。

やはり、fan error の表示通り、冷却ファンがぶっ壊れていたようで、添付されていた「サービス報告書」によると、

修理内容:FAN エラー障害を確認致しました。ファン交換にて修復いたしました。

交換部品:FAN LONG M10 (13R2657)

とあります。

お正月前に戻ってきてなによりです。
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Season's Greeting - イルミネーション

 イブは基地に戻って....。

タイトル画像は昨日撮影した香港(尖沙阻 Tsim Sha Tsui の近く)で見つけたイルミネーションです。

飛行機にまたがったサンタさんです。なかなかユニーク。
Firework at Victoria Harbour
夜8時から20分くらい、維多利亞港 Victoria Harbour では花火も交えて Symphony of Lights が開催され、これまた綺麗です。

←は香港島側を望んで昨夜撮影したものです。


今夜はイブ、きっと昨夜を上回る賑わいであったに違いありません。
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クリスマス・イブの朝 - 美しい朝焼け

 イブ(=キリスト降誕祭の前夜)の朝、という紛らわしいタイトルですが、要は“12月24日の朝”ということです。

ほどよい Ac: Altocumulus (高積雲) のお陰で、きれいな“朝焼け”が見れました。

昨日の雲ひとつない日の出↓とは、また違った趣きがあります。

Sunrise 23DEC2005 at HKG

時には厄介者にもされてしまう雲すが、大空に浮かぶ雲が織り成す表情は豊かですね。
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とある街はクリスマス一色

 列島に大寒波をもたらしている低気圧を飛び越して(ちょいと揺れました)強烈な寒さからは何とか逃れております。

高層ビルの窓にはサンタさんの電飾が浮かび上がり、街中はクリスマス直前の買い物客で賑わっています。

お店としても、今日と明日が勝負でしょうから、お店によっては半ば投売り状態のところも見受けられました。

街中で見かけたワンちゃんも赤い装いです。
(お顔がちょっと迷惑そう?)

来年は干支であることを知っているのかいないのか....。

Dog at Downtown
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ぞろ目

 odometer (自動車の積算距離計)が“ぞろ目”になりました。

22222 km です。
今年の3月2日に1万キロ達成でしたから、約9ヶ月で1万2千キロを走行した訳です。
秋以降、Surface Transport が頻繁なので、そこで一気に距離を伸ばしたのだと思います。

高速走行の比率が多いことも影響していると思われますが、これまでの平均燃費は 11.3 km/Liter と健闘中で、10・15 モード燃費のカタログ値を超えております。


一時期に比べるとやや値下がりしましたが、依然としてガソリン小売価格は高値感がありますから、今後も省エネ(エコ)運転を心掛けねばなりません。

タイヤもスタッドレスに履き替えて、冬支度もOKです。


あっ、日付が変わってしまった。ETCの前払い積み立ての締め切りが過ぎてしまいました。

もうちょっと積み足しておこうと思ったのですが。
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航空路誌 106号

 国土交通省航空局が発行している『航空路誌』、その改訂版( AIP AMENDMENT )第106号が本日届いておりました。今回の改定版は少しばかりボリュームがあります。

それもその筈、神戸空港の開港が迫ってきましたからねぇ。
既に航空路誌補足版( AIP SUPPLEMENT )を介して、航法支援装置が試験電波を発する旨の通達は出ているので、開港にむけて準備は着々というところですが、こうして「改訂版」が来ると、『おっ、いよいよだな』と思います。

明後日、22日には地方空港官署として「神戸空港出張所」が設置され、その後、来年2月16日には、RJBE の地点略号を得て“神戸空港”が開港します。

神戸空港の資料には RJBE AD 3.20 LOCAL TRAFFIC REGULATION 1.滑走路27への周回進入について の件もあるぞ....。なるほど、なるほど。

そして、以前「 東京+那覇=福岡 」で紹介した、東京及び那覇FIRが福岡FIRに統合されることに伴う変更も同日2006年2月16日に有効となることが正式に公示されました。

これに関する資料も随分あります。

こりゃぁ暫らく楽しめそうですが、そろそろ近距離 INTL なので、その間はおあずけかな ??
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機材トラブルが目立つこの頃

 ボンバルディア社も適切な対応をとらないと、Q400でトラブルが連発しているだけに、Pratt & Whitney 社みたいになってしまいますよ。

CRJ200 の AOM: Aircraft Operation Manual が手元にあるわけでもなく、確かなことは言えませんが、Flap は Alternate で出せる筈です。
が、その後のこと(整備・修理)を考え名古屋に戻ったのでしょうね。

昨日は JAL3725 MD81 が Gear Down 3 green とならずに、Body Gear を Alternate で出して降りた事例が発生したようです(Cassiopeia Sweet Days脚は引っ込まなくても出せるようにはなっています」参照)。

また、昨日は松山を離陸した Boeing767-300 が Compressor Stall を起こし、ATBした事例も発生しているようです。
 エンジンから炎2度、全日空機引き返す…松山空港 (読売新聞) - goo ニュース

機材トラブルが、みなすべからくイレギュラー運航や重大インシデントにつながるものではありませんが、全てのお客様がトラブルの深刻度を適切に判断することもできないので、やはり運航サイドとしては起こらないにこしたことはありません。

今回の CRJ の事例では“同じ機体が先月8日にも”というのが気に入りません。

メカニックさんはメーカーに指示を仰ぎ、適切に対応したのでしょうに、なぜ同じトラブルが繰り返すのでしょう。

ボンバルディアではQ400にトラブルが連発している事実があります。メーカーとしては、「一オペレータの一トラブルに過ぎない」と軽く見ないで、どんな些細なことであっても真剣に対応してもらいたいものです。

これから年末年始の繁忙期、運航する側もお客様も安心してフライトができるように....。



[蛇足]機材トラブルとは関連ありませんが、冬場の日本海側では(特にここ数日の強烈な冬型の気象状況下では)落雷も珍しくはありません。この雷雲は、梅雨時や夏場の積乱雲とは機上のレーダーでの映像の見え方が異なりますので、機上レーダーの情報だけで完璧に回避できるとは限りません。
昨日も全日空の Airbus A300 が山形着陸前にレドームに被雷したようです。
 ANA機に落雷 着陸時、乗客ら103人無事 庄内空港 (産経新聞) - goo ニュース

記事の中で元全日空機長の前根氏も述べていますが、“航空機は落雷を前提に設計”されており、被雷しても放電する仕組みがありますので、機体が致命的な損傷を受けることは極めてまれです。「落雷」と言うと気分の良いものではありませんが、安全に飛行できますのでご心配なく。

むしろ、左席で機長昇格訓練中の PF が右席のライン操縦教官から被雷する方が余程恐怖でありましょう。至近距離からの直撃ですからね。


ジェイエア機が引き返し 不具合続くボンバルディア (共同通信) - goo ニュース
 18日午前9時10分ごろ、秋田空港へ着陸しようとした名古屋発のジェイエアのボンバルディアCRJ200(乗客乗員19人)で、主翼のフラップが動かなくなるトラブルが発生した。

同機は修理のために名古屋空港に引き返し、同10時半に着陸した。乗客らにけがはなく、他社便などに振り替えた。

国土交通省中部空港事務所によると、同機は当時、高度約1070メートルを飛行中で、着陸に備えて揚力を増やすためにフラップを下げようとしたが、動かなかったという。

CRJ200は、カナダのボンバルディア社が製造した最大50人乗りの小型ジェット機。同じ機体が先月8日にも山形空港に着陸しようとした際、フラップが動かなくなる不具合が起きたばかりだった。

2005年12月18日 (日) 17:40
ジェイエア機、名古屋空港に引き返す フラップに不具合 (朝日新聞) - goo ニュース
 18日午前9時10分ごろ、秋田空港近くを飛行していた名古屋空港発秋田行きの日本航空グループ「ジェイエア」4311便、ボンバルディアCRJ200型機(乗客15人、乗員4人)に不具合が見つかり、同機は名古屋空港に引き返した。

 国土交通省中部空港事務所によると、フラップと呼ばれる揚力装置が作動しなかったとみられ、乗客は同空港と中部国際空港で後続便に乗り換えた。

2005年12月18日 (日) 19:21
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PW4000 シリーズ・エンジン、硫化腐食問題

 ThinkPad が入院した途端に、予備機材が大活躍です。(皮肉なものですね)

Boeing777 のエンジンの選択肢の一つである米国 Pratt & Whitney 社の PW4000 シリーズ、やはり製造メーカによる不良が見つかりました。

製造ミスで部品不具合 B777のエンジン (共同通信) - goo ニュース
 全日空は15日、9月と10月に相次いだボーイング777のエンジントラブルについて、米国のメーカーで製造された段階のミスから、高圧タービンのブレードが腐食を起こしていたのが原因だったと発表した。日航も同じ部品の不具合が、着陸後や整備中に3件見つかっていたことを明らかにした。

エンジンは米国のプラット・アンド・ホイットニー社製。全日空は国内線と国際線、日航は国内線で運用している。

全日空は、プラット社が製造工程を改めた03年12月以前に製造されたエンジン42基についてブレードを交換する。費用は約52億円。日航も該当するプラット社製エンジンを39基保有し、約43億円かけて部品を交換する。

両社ともに内視鏡を使っての点検回数を国際線で20倍以上、国内線で6倍に増やす。

2005年12月15日 (木) 13:55
エンジン部品、製造ミス トラブル原因 全日空・日航が発表 (産経新聞) - goo ニュース
 全日空は十五日、九月と十月に相次いだボーイング777のエンジントラブルについて、米国のメーカーで製造された段階のミスから、高圧タービンのブレードが腐食を起こしていたのが原因だったと発表した。日航も同じ部品の不具合が、着陸後や整備中に三件見つかっていたことを明らかにした。

 エンジンは米国のプラット・アンド・ホイットニー社製。全日空は国内線と国際線、日航は国内線で運用している。

 全日空は、プラット社が製造工程を改めた二〇〇三年十二月以前に製造されたエンジン四十二基についてブレードを交換する。費用は約五十二億円。日航も該当するプラット社製エンジンを三十九基保有。約四十三億円かけて部品を交換する。

 両社ともに内視鏡を使っての点検回数を国際線で二十倍以上、国内線で六倍に増やす。

 全日空によると、トラブルを起こしたエンジンを調べたところ、高圧タービン二段目の内部に製造段階でメッキ液が残ったため、高温の影響を受けてブレードが腐食し、運航中に破損していたことが分かった。プラット社も製造ミスを認めた。

2005年12月15日 (木) 15:39


今年になって、PW4000 シリーズにトラブルが多いことは当ブログでも幾つかの記事で紹介してきました。
また PW4000 シリーズでオイル漏れ (11月3日)
ちょっと気になる Pratt & Whitney PW4000 シリーズ (10月31日)
Boeing777のエンジンについて (6月26日)
JAL1935/21JUN HNDOKA KIX Divert 続報 (6月25日)

このように、異常とも言える頻度でトラブルが発生していた PW4000 シリーズですが、今回、硫化腐食により高圧タービン・ブレードが折損する可能性があることが明らかになりました。
この製造不良を見つけだすきっかけになったのは、全日空、日本航空で運航している Boeing777 の PW4000 シリーズ・エンジンで、6月~11月のわずか5ヶ月の間に IFSD: In Flight Shut Down (エンジン空中停止)4件を含む、シビアなエンジントラブルが6件も発生したこと。さらに、その半数の3件の事例でタービンブレードの硫化腐食が発見されたこと。さらには、日本航空では硫化腐食からのブレード欠損に起因するエンジントラブルが昨年2件発生していたこと。など等であったと言えるでしょう。
実は、この硫化腐食が発生する可能性があること自体はメーカーである Pratt & Whitney 社により既に確認されていたらしいので、メーカーのお客様(航空会社)に対する対応が適切であったのか、非常に疑問です。

ここで硫化腐食について簡単に説明します。

タービンブレード(殊に高圧タービンブレードは高温・高圧にさらされる)は極めて重要なパーツであるため、その素材には拡散チタニウムやニッケル合金など、強靭で耐久性に優れた特殊素材が用いられています。
そのタービンブレードを形成する工程では特殊な溶液を使用するのですが、本来残留してはいけないその溶液がブレード内部に残留し、そのなかに含まれる硫黄分が高温にさらされることでブレードの他の材料と反応して発生するのが硫化腐食です。
ブレードには冷却用に空気の通り道があるのですが、そこに硫化腐食が発生すると、ブレードが過度に加熱され、強度が低下、破断にいたることになります。

この硫化腐食は、2003年12月以前に製造された PW4000 シリーズに発生する可能性があることが確認されています。



JA772J
それ以降に製造された PW4000 シリーズは、この硫化腐食の問題は解決されているので、それ以降に納入された機体(例えば、日本航空の登録番号 JA772J の Boeing777-246 )や、整備でリ・エンジンした一部の機体は PW4000 シリーズでも問題がありません。

Boeing777 は開発時からエンジン選択制であり、日本の3社(全日空・日本航空・日本エアシステム)は、部品の流用性なども考え、すべて Pratt & Whitney を選択しました(他の選択肢は、General Electric 社 GE90 シリーズと Rolls-Royce 社 Trent800 シリーズ)。

その後、日本航空は国際線用の Boeing777-246ER (機体登録番号が JA701J ~)に General Electric 社のエンジンを選択、日本航空・全日空も導入した国際線用機材 Boeing777-300ER は、Boeing 社がエンジンを General Electric 社との組み合わせのみとしてデリバーしています(よって、最近全日空が導入した Boeing777-381ER JA733A のエンジンは General Electric )。

全日空は Boeing777-281ER による国際線進出が早かった分、国際線に用いている機材にも Pratt & Whitney 社のエンジンを用いており、しかも、それで ETOPS180 (一部は ETOPS207 )の洋上進出を行なっていますので、一刻の猶予もならぬ、といった決断をしたのでしょう。

全日空では、Boeing777 の IFSD を9月28日( NH243/28SEP HNDFUK Boeing777-381 エンジンは PW4090 )と10月29日( NH628/29OCT KOJHND Boeing777-281 エンジンは PW4077 )と、ここ最近で2回も遭遇しており、トラブルを起こしたエンジンは、それぞれ HPT: High Pressure Turbine (高圧タービン)2段目のブレード28枚に損傷が見つかる、HPT 2段目のブレード2枚が根元から折れているのが見つかる、との状態が確認され、何れも「硫化腐食が原因」と判明しています。

事態を重視した経営判断は立派です。

タービン・ブレードの交換は、整備キャパシティの問題や部品調達などの関係で全日空・日本航空の48機を一斉に行なうことは出来ません。

該当するエンジンを取り降ろし、ブレードの交換を積極的に進めることは言うまでもありませんが、それまでは、BSI: Bore-Scope Inspection (内視鏡検査)のサイクルを短縮し、早期発見に努めることになります。

目安として、600サイクル毎に実施していた BSI を200サイクル毎と短縮するようです。出力の大きい PW4090 エンジン( Boeing777-300 および全日空の国際線用 Boeing777-281ER に組み合わされている)は、さらに頻繁に100サイクル毎に実施することにするようです。

修理が完了するまで、IFSD の可能性は通常より若干高くなるのは致し方ないことでしょう。
が、2発とも同時にアウトになる確率は天文学的ですし、1発アウトになった段階で、Land at Nearest Suitable Airport が原則です。Boeing777 は1発でも十分安全に飛行できますし、Cockpit Crew は Single Engine による着陸については、これでもか、という位に厳しい訓練を受けています。現に、IFSD に至ったトラブルでも、管制の優先権を得るために Declare Emergency していますが、いずれのケースも何事も無かったかのように地上に舞い降りています。

今回、全日空・日本航空共に適切な処置をとることになりましたから、いたずらに PW4000 シリーズの Boeing777 が危ない、と不安になることはありません。

できることなら、6月に発生した「 JAL1935/21JUN HNDOKA KIX Divert 」の後、すみやかにこのような処置をとってもらいたかったところです。

しっかりしましょう、Pratt & Whitney と Boeing。



ちなみに、海外のキャリアで PW4000 シリーズを選択した Boeing777 を運航しているのは、
 ユナイテッド航空、大韓航空、アシアナ航空、エジプト航空など
です。
ただ、海外のキャリアの場合、Boeing777 を日本ほど頻繁な運航サイクルでは使っていないので、事情が全く同じとは言えませんし、既にメーカーからの連絡で対応している可能性もありますので、参考程度にとどめて下さい。

他のキャリアの Boeing777 のエンジンですが、
エールフランスは GE、アメリカンは Trent、キャセイも Trent、シンガポールも Trent、コンチネンタルは GE、デルタは Trent、タイ・インターも Trent、ブリティッシュ・エアは Trent と GE の両刀、
などです。
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やっと動いてくれました

 以前から気になっていた、米国 Pratt & Whitney 社の PW4000 シリーズのエンジン対策、やっと動き出してくれました。

詳しくは別記事で投稿する予定ですが、該当するのは、Boeing777 で Pratt & Whitney 社のエンジンを搭載した(しかも製造年に依存する)機体です。

日本航空の場合、-200ER, -300ER は General Electric 社ですから、国際線機材は対象外です。

全日空では、-300ER は対象外です。


ボーイングのエンジンに重大な不具合 国内に48機 (朝日新聞) - goo ニュース
 日本航空と全日空が保有する大型ジェット機ボーイング777型のエンジンに重大な不具合が見つかり、両社は15日、部品の交換を始めたことを明らかにした。エンジン内部の金属製ブレード(羽根)の一部が製造工程のミスで破損して飛び散り、内部のほかの部品を激しく損傷する恐れがある。昨年以降、飛行中にエンジンが異常を起こして最寄りの空港に緊急着陸するトラブルなどが相次いでいた。いずれも乗客らにけがはなかった。

 両社によると、対象は国際線用と国内線用で計48機。部品交換終了まで1年かかる。その間、部品の点検間隔を短くするなどの緊急対策を実施する。日航の改修費用は約43億円、全日空は約52億円。

 このエンジンは米プラット・アンド・ホイットニー社が製造した。トラブルが相次いだため、内部を精密検査したところ、エンジンを回転させる高圧タービンの2段目のブレード82枚が腐食し、先端から破損する恐れがあることが分かった。腐食の原因は製造工程のミスで、耐熱加工で使用する化学溶剤がブレードの内部に残ったため、エンジン使用時の高熱で変質するとみられている。

 エンジンは高速回転しているため、ブレードが破損すると内部に飛び散ってほかのブレードなどを損傷。エンジンの振動が大きくなって配管に亀裂が入ったり、排出ガスの温度が上昇したりするという。


 9月には羽田発福岡行きの全日空便が離陸後の上昇中、「ドン」という大きな音がしてエンジンが異常振動し、排出ガス温度が急上昇したため、機長がエンジンを停止して羽田空港に緊急着陸。10月にも鹿児島発羽田行きの全日空便で同様のトラブルがあり、大阪空港に緊急着陸した。

 日航でも8月、新千歳発成田行きで着陸後、ブレードの変質が見つかるなど、昨年以降計3件のトラブルが報告されている。

 このため、両社は2段目のブレードを新品に交換する。交換には1年ほどかかるため、その間は点検間隔を現状の半分にしてブレードを点検する。


2005年12月15日 (木) 12:40
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エンジン・トラブルが多いと感じるのは気のせいでしょうか

 今回は IFSD: In Flight Shut Down (空中でのエンジン停止)ではなかったものの、ここのところエンジン・トラブルが多いですね。

記事によると、“約200メートル走った地点で”No. 1 Engine Failure とのことですから、当時の気象状況↓をふりかえると、

METAR RJSA 140641Z 26010KT 1600 R24/0550VP1800N -SHSN FEW003 BKN008 BKN012 M04/M05 Q1005 RMK 1ST003 5ST008 6ST012 A2970
METAR RJSA 140621Z 27012KT 0600 R24///// SHSN FEW003 BKN006 BKN010 M04/M05 Q1005 RMK 2ST003 5ST006 7ST010 A2970

完全な Winter Operation。(Oil Temperature は大丈夫だったかな?)

Check Thrust かけて Stabilized、Takeoff Power に入れようとしたのと同時くらいに、No. 1 Engine が Stall してしまったのかもしれません。

雪の Runway であっても、さして速度が出てなかったでしょうから、Reject としては難しくは無かったでしょう。

それにしても、このところエンジン・トラブルが多いと感じるのは気のせいでしょうか....。


JAL機、左エンジン停止で離陸取りやめ…青森空港 (読売新聞) - goo ニュース
 14日午後3時40分ごろ、青森市の青森空港で、青森発福岡行きの日本航空3520便(MD81型機)が離陸のため助走を開始した直後、エンジントラブルを示す計器のランプが点灯したため、離陸を取りやめた。乗客13人にけがはなかった。

 同社や県青森空港管理事務所によると、滑走路を約200メートル走った地点で左エンジンが停止した。機長も異音を聞いたという。乗客は東京経由の別の便で目的地に向かった。同社でトラブルの原因を調べている。

2005年12月14日 (水) 20:57
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ThinkPad 故障

 機械である以上はいつかは故障する、なんて偉そうに言っていたからでしょうか、天罰が下りました。

最近、このブログへの投稿メイン・マシンとして稼動していた、旧IBMの ThinkPad T42 が、今朝ほど Windows Update の再起動後、
 “Fan Error”
と表示され、BIOS 設定画面に入ることも出来ず、勝手に電源が落ちるようになってしまいました。

さては、埃を吸い込んでモーターの動きが鈍くなってエラーが出たのかな?と、出勤前の慌しい時間に、ノン・フロンのエア・ダスターでファンの周辺を吹き飛ばして見たものの、一向に改善されません。

保守マニュアルを取り出して見てみたら、当該表示は『「ファン」がぶっ壊れている』とのこと。マニュアルどおり、キーボードとパームレストを取り外し、状況を見てみたら、本当にファンが回っていません。

ちゃんとインターロックがかかり、CPUが壊れるのを防いでくれたのはありがたいことですが、こりゃぁ、ファン・アセンブリの交換か、下手すると冷却ファン制御ロジックがぶっ壊れ、マザーボード交換の可能性も....。

自分で修理できる範囲を超えていると断念して、メーカに入院させることになりました。
明日、宅配便で引き取りに来るそうです。修理が終わるのはいつになることか....。今月の INTL 前に戻ってくるか、微妙なところです。

と言うことで、暫し機材繰りが....。予備機を使っての運用になります。更新頻度にも影響が出るかもしれません。“想定外”の事態ですから、悪しからずご了承下さい。


この先、忘年会も幾つか入っているし、その後には近距離国際線(結局今年は近距離と Domes だけでした)の予定。

旅に出ますか 
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