石原裕次郎と芦川いづみが共演した作品の中でも一番ヒットした作品と言えば、1961年に公開された『あいつと私』という映画だろう。その年興行収入4億円以上を上げ、第一位となった日活映画だ。4億円と言えば今では大したことないように思うかもしれないが、当時は物凄いペースで映画が制作され、裕次郎映画だけでも年に8-10本という驚異的なペースで公開されていた映画界で、3-4億円くらいの興行収入を上げれば、その年で1位になるような状況だったので、如何にこの4億円が大ヒットだったかがおわかりだろう。
僕が一番好きな芦川いづみ映画は1960年公開の『あした晴れるか』だが、『あいつと私』も、鬼才、中平康監督の作品としても有名。また原作は『陽のあたる坂道』でも有名な石坂洋次郎。しかし、この映画が当時大ヒットしたのはもう一つ大きな要因があった。この前年に石原裕次郎はスキー場での骨折事故によって半年間休養しており、この映画が復帰作ということもあり、大きな話題となった。人気絶頂であった裕次郎のファンとしては待ちに待った作品だったのも容易に想像がつく。
石原裕次郎と芦川いづみのダブル主演とも言える『あいつと私』は、芦川いづみファンとしてかなり前にDVDを購入しており、1度観賞もしていたのだが、観賞した当時何故かあまり好きになれず、その後観返していなかった。しかし、今回改めて観てみようと思い、DVDを鑑賞。
物語は、安保闘争で騒然とする1960年代を舞台に、裕次郎演じる経済的にも裕福な大学生と、クラスメートの芦川いづみのひと夏をリリカルに描いた青春ドラマ。テンポの良い会話やウィットに富んだダイアローグが当時を思わせる意味で興味深く、また芦川いづみの妹役で吉永小百合、酒井和歌子も出演している点も魅力。大学のシーンは、僕の母校でもある慶応義塾大学の日吉校で撮影されたらしく、改めて観ると、当時のキャンパスを観ることが出来るという意味では貴重である。
アクティブな大学生を演じた芦川いづみは、ショートヘアでとても美しい。軽井沢の別荘で、雨の中裕次郎とのラブシーンがあることでも印象的な芦川いづみ作品だが、彼女のピーク時の魅力を満喫出来る作品であることは間違いない。4-5年前、初めてこの映画をDVDで観賞した際、どこか小難しいテーマや展開がイマイチ好きになれなかったのだが、改めて観賞してみると、少し印象が変わって、純粋に当時の世相を垣間見ることが出来るという意味では興味深い映画であると感じた。また、改めて芦川いづみだけにフォーカスして観賞すると、やはりそのカッコいいまでの美しさに目を奪われてしまう。
芦川いづみとの共演が多い渡辺美佐子も僕の好きな女優の一人だが、『あいつと私』にも出演していて、裕次郎の元恋人という役柄で芦川いづみをモヤモヤさせる。出演シーンは残念ながら多くは無いが、相変わらず可愛い。
そんなわけで、今年は『あいつと私』の良さを改めて見直すことが出来たのと同時に、僕の好きな芦川いづみ映画ランキングも下記の通り、『あいつと私』がランクアップする形で少し変動があった。
僕の好きな芦川いづみ映画ベスト15!
1) あした晴れるか
2) 喧嘩太郎
3) 堂々たる人生
4) その人は遠く
5) あじさいの歌
6) あいつと私
7) 東京の孤独
8) 青年の椅子
9) 若い川の流れ
10)誘惑
11)しあわせはどこに
12)乳母車
13)祈るひと
14)男なら夢をみろ
15)風のある道