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芦川いづみの『その壁を砕け』、待望の初DVD化!

毎年春先に芦川いづみにどっぷりハマる時期があるのだが、今年もまた、何とも嬉しい芦川いづみ情報が飛び込んできた!これまでDVD化されていなかった幻の名作、『その壁を砕け』がついに待望の初DVD化されたのだ。この作品は、監督の中平康作品のDVD化企画『リスペクト中平康!』で新たに何タイトルかリリースされているが、その中の1本となる。リリースされるということを知って、速攻で購入した。



『その壁を砕け』は、1959年に公開された白黒の日活映画。クライムサスペンス的な社会派ドラマで、上映時間100分の映画だが、とてもテン?ヌく物語に引き込まれていくので、あっという間に終わってしまったような印象すらある。今の時代の感性で初めて観てみると、何ともオシャレでスタイリッシュな映画である。



まずは簡単なあらすじだが、東京の自動車修理工として働く渡辺三郎(小高雄二)という男が登場する。翌日の午後10時には新潟駅で婚約者のとし江(芦川いづみ)と会う予定だが、三郎は必死な思い出お金を貯めてこのワゴン車を購入し、新潟で独立してとし江と結婚する予定であった。そして幸福感にひたされた三郎は、東京から新潟に急いで向かう為、スピード感たっぷりに国道をワゴン車でひた走る。そして三郎は途中の小さな山間の町を抜けた時、道に出て手を振っていた一人の青年を乗せ、駅近くの橋で下す。その後町中をそのまま走りぬけて行くと、郵便局近くで警察に車を止められ、そのまま逮捕されてしまう。どうやら車で通り抜けたその町で、つい先ほど殺人事件があり、三郎がその容疑者となってしまったのだ。本人は必死に抵抗し、車に乗せた青年の話もするが、証明出来るものもなく、また現場検証の為、警察にむりやり連れて来られた三郎を殺害された男性の妻が見て、“犯人はこの人です!” と言ってしまったことから、三郎がほぼ間違いなく犯人であると断定されてしまう。この結果、不利な状況証拠が多い中で裁判へと向かって行くという展開。



この映画を観て、僕の大好きなヒッチコックの映画を思い出した。まさに“間違えられた男”というプロットは、ヒッチコックの十八版。『間違えられた男』という映画もあるが、有名な『北北西に進路を取れ』も間違えられた男の物語だった。ヒッチコックの映画に影響を受けたかどうかはわからなかったが、映画の中でヒッチコックが良く用いるカメラ撮影テクニックの一つとして、“俯瞰ショット“(高いところから主人公を捉えたショット)を、富山駅のシーンで印象的に使っており、もしかするとヒッチコックにインスパイアされたのではないかと思ってしまった。



話を戻すと、『その壁を砕け』は遊びが全くない渋い映画だが、全体的に緊張感があり、またスピーディーな展開で無駄が無く、とても見応えがある。前半は幸せいっぱいであった結婚間近な男がいきなり不幸な展開になり、その後の展開が気になっていく。そして中盤は裁判に入って行くが、三郎の弁護士を演じるのが、芦川いづみとの共演も多い芦田伸介が演じている。そして更に主役の一人である、町の警官を演じるのが、あの長門裕之。しかし彼は裁判の過程で、しだいに真犯人が別にいるのではないかと思い始め、殺害された家に嫁いできた女性が何か知っているのではないかと疑い始め、一人捜査を開始する。そして後半は真犯人を突きとめて、三郎の無実が証明されていき、ラストはめでたくハッピーエンドで映画は終わる。長門裕之が実に後半いい味を出しているのが印象的だ。



そして、肝心なお目当ての芦川いづみ。やはり圧涛Iな“旬“の美しさであった。前にブログで書いたが、芦川いづみは1959年から1962年頃が美しさのピークだと思っているが、その意味でこの作品は見たいとずっと思っていた。芦川いづみは比較的長い時間登場するが、役どころとして間違えられて逮捕された恋人を支える役なので、基本的には辛いシーンが多い。そんな中でこの映画では、①ナース姿の芦川いづみ、②最高の笑顔を見せる芦川いづみ、③ 涙が美しい芦川いづみ、④毅然と困難に立ち向かう芦川いづみ、などが満喫出来るので、芦川いづみファンは大興奮間違い無し。社会派ドラマという意味では、前回紹介した『日本列島』にも全体のトーンは近いが、今回の作品の方が、バリエーションのある芦川いづみの魅力が満喫出来るのが嬉しい。



『その壁を砕け』は実に引き締まった、素晴らしい社会派ドラマであったし、さすが中平康の作品らしく、斬新でスタイリッシュな描写や映像テクニックが盛り込まれていて、今観てもかなり新鮮な作品であった。こうしてまた、日活の秀作、そして中平康作品を観ることが出来たのは感慨深いし、初DVD化によって、何よりもまだ観ることが出来ていなかった芦川いづみ主演作品をこうして観賞出来たことは、最高に幸せである。そして、これからもまだ観ぬ芦川いづみ作品を追い求めて行きたい!
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