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映画『悪人』と深津絵里の不思議な魅力

もう封切られてからかなり経つが、ようやく映画『悪人』を映画館で見た。モントリオール世界映画祭で主演の深津絵里が最優秀女優賞を受賞したことで一気に注目が集まり、興行的にも大ヒットとなったが、話題通り、素晴らしい映画に仕上がっていた。原作は芥川賞作家の吉田修二で、監督は『フラガール』の李相日。製作チームも豪華な顔ぶれだ。




土木作業員、清水祐一は出会い系サイトで保険外交員の石橋佳乃と出会うが、その内金だけ取られてバカにされた挙句、冷たくされてしまう。それに逆上し、ついに彼女を殺してしまう。清水祐一はその後また出会い系サイトで出会う馬込光代に対して、自分が殺人を犯してしまったことを打ち明け、共に逃避行する。



この映画は、人間の善と悪の本質に焦点を当てた作品であると同時に、愛の物語でもあるのだが、清水祐一は本当に悪人なのか、本当の悪人は誰なのかということを、殺人事件の被害者、加害者両方の視点で鋭く物語をえぐる。善と悪の本質に迫る作品という意味では同じく今年大ヒットを記録した映画『告白』や、2008年に公開された『誰も守ってくれない』などにも共通したテーマである。どちら側から物事を見るかによって、見え方が異なるということを痛感させられる深い作品である。映画後半の灯台でのシーンやラストシーンなどはかなり感動的だ。音楽も切なく、まさに映画『タイタニック』を思わせるような雰囲気を漂わせているから不思議である。




主人公の清水祐一には妻夫木聡。この映画での演技でまた一皮向けて良い役者になった印象だ。そして祐一と逃避行する光代には深津絵里。相変わらず見事な演技力を見せてくれるが、モントリオール世界映画際で主演女優賞を受賞するだけのことはある演技であった。そして周りには柄本明、樹木希林、若手イケメン俳優として最近人気である岡田将生、永山絢斗、そして殺されてしまう保険外交員の石橋佳乃には満島ひかりが扮しており、多彩な顔ぶれが揃った。



それにしても、深津絵里は本当に不思議な女優だ。
決して圧倒的な美人でもなく、スタイルがいいわけでもない。しかし、女優としての独特な雰囲気と絶妙な存在感、TVに出過ぎず、でも適度なペースで連ドラにも主演し、映画にも主演する。代表的な作品はやはりドラマから映画に渡って活躍した『踊る大捜査線』シリーズだろう。個人的には妻夫木聡と共演した2005年のドラマ、『スローダンス』や、本木雅弘と共演し、『うさぎちゃん』というあだ名で人気者となった1995年のドラマ『最高の片思い』が印象に残っている。数多い女優の中でも異彩を放っていると言える。ジャンルはやや異なるが、菅野美穂も同様に独特なポジショニングにいる女優かもしれない。




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