公開2日目にすぐ観に行き、その1週間後に2回目の鑑賞。あと2回くらいは観に行ってもいいかと思っているくらい、なかなか良い作品だった(ちなみに、『君の名は。』はシネコンで計4回鑑賞した)。
今年の梅雨はかなり長かったが、ちょうど映画が公開され始めたタイミングではまだ梅雨が完全
に明けていない状況であり、そろそろ雨が鬱陶しくなりかけていた時期に、雨をテーマに描いた『天気の子』の公開はまさに絶好の公開タイミングであった。しかも、今回の映画では雨が降り止まないという異常気象の設定がされており、やがて浸水して行く東京が描かれる。その意味では、世界の異常気象が大きな問題となっていることもテーマとして取り上げられている点はどこか現実的にも感じられるようで、タイムリーな作品と言える。
『天気の子』は、本当になかなか素晴らしい作品であった。『君の名は。』の大ヒットに続く作品ということで、相当なプレッシャーがあったと思う。また、最初に『君の名は。』を観た時のような新鮮さを求めるのは厳しいが、そんな中でかなりの秀作を完成させたのではないかと思う。もっとも、僕はかなり前から新海誠ファンなので、どんな作品でもとりあえずは観てみたいと思ってしまう為、採点はかなり甘いと思うが。
僕は特に『言の葉の庭』が新海誠作品の中で一番好きで、雨をテーマにした映像美が見事な作品であったが、『天気の子』は、新海誠お得意の雨を効果的に使用しているだけでは無く、“雨そのもの”をテーマにしているところが新しい。また雨の美しい描写にもより一層磨きがかかっており、何とも美しい作品となっている。
物語の組み立て自体は、『君の名は。』にも近いスタイルを継承し、若い男女の純粋な恋模様に焦点を当てて描いている。そして、『君の名は。』で成功した、リアル世界とファンタジー世界の狭間の世界観を巧みに描くことに成功している。物語の設定は描写がリアルな東京だが、物語自体は、実際にはありそうでありえない。『君の名は。』では、過去と未来が交差し、男女が入れ替わってしまうし、『天気の子』では、天気を晴れに出来る能力を身に付けた少女を違う世界から連れ戻すというファンタジーが盛り込まれている。そんなリアルさと、ありえなさが背中合わせになった不思議な感覚が新海誠作品の魅力なのだ。
登場人物もかなり魅力的に描かれている。
島から家出してきた16歳の少年、帆高(ほだか)が船で東京にやってくるが、マックで働いていた少女陽菜(ひな)と出会い、この陽菜が天気を晴れにする能力を持つことがわかり、帆高と陽菜で天気を晴れにするサービスを始めるのだ。そしてやがて二人の間に恋が芽生えて行く展開に。
この二人に、東京に到着した船に同乗していた出版記事ライターの圭介、そして圭介の姪っ子で圭介の事務所で働く夏美、陽菜の弟の凪(なぎ)など、魅力的なキャラクターたちが関わって行く。この中で、夏美は男性の理想を絵に描いたような女子大生。可愛くて、適度に大人の色気もあり、性格はサバサバしていながらも女性らしい、魅力的な女性。声は僕の好きな本田翼が担当しているのもまたグッド(笑)。
実は『天気の子』には、『君の名は。』に登場していた瀧と三葉が、ちょい役でゲスト出演しているのが面白い。新海誠はこういうことを良くやるが、『君の名は。』には、『言の葉の庭』に登場する雪野先生が同じく教師役で登場しているのだ。
また、今回の映画で一番気になったのは、『天気の子』のプロットが、巧みにも他の作品との関連性が見て取れる。まず映画の冒頭で、帆高が読んでいる本が2度ほど映るが、これがJ.D.サリンジャーの『Catcher In The Rye (ライ麦畑でつかまえて)』。しかも、村上春樹訳のものだ。この物語も家出する少年の成長物語だが、その意味で家出する帆高への意図的な関連付けが見て取れる。また、更に注目したいのは、この本が村上春樹訳versionであることで、村上春樹の作品であり、同様に家出する少年を描いた『海辺のカフカ』との関連性・類似性を見てとることも出来る。またもう1本、類似性を感じたのが昨年公開された映画『ペンギン・ハイウェイ』。この映画も、『天気の子』と同様、水にまつわる不思議なファンタジーとして描かれており、別の世界から連れ戻そうとする様子が描かれている。結末は大きく異なるのだが、世界観がとても似ていると感じた。『君の名は。』以降、世の中には“パラレルワールド”やら、“過去と現在をトリップ”する実写やアニメ映画が実に多く、この手のファンタジー作品には少々食傷気味になってしまったが、やはり新海誠の作品は一味違うのだ。
最後に、主題歌に関してコメントを。
RADWIMPSの“前前前世”が大ヒットした『君の名は。』だが、今回の『天気の子』も、引き続きRADWIMPSが起用された。新たに書き下ろされた“愛にできることはまだあるかい”、そして合唱コーラスが美しくスケール感のある三浦透子が歌う挿入歌、“グランドエスケープ“がまた見事な出来映えで、映画を盛り上げる。またまた大ヒット中だ。
総合的に『天気の子』は、新海誠らしい最新作で、僕の、そして世の中の新海誠ファンにとって充分期待に応えてくれた新作であったと思う。興行成績的には『君の名は。』の250億円を超えるのは難しいと思うし、新鮮さは薄れたと思うが、そんな中でも公開3日にして40億円を売り上げ、かなりの好スタートを切ったようだ。新海誠マジックはしっかり機能しているようだし、何度も観ればまた深い味わいが出てくる作品である為、僕のようなリピーターも期待出来る良い作品となっている。皆さんもぜひシネコンの大スクリーンで、その映像美を浴びて欲しい。
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