ビター☆チョコ

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あるスキャンダルの覚え書き

2007-06-04 | 洋画【あ】行

ロンドンの公立中学の歴史教師バーバラ(ジュディ・デンチ)は孤独で偏屈で周囲に煙たがられている。
味けない生活がにわかに輝きだしたのは、美術教師のシーバ(ケイト・ブランシェット)が赴任してきてからだ。
若くて美しいシーバと「親友」になりたい、と願うバーバラは、シーバを観察してその様子を日記に綴る。
学校でシーバの窮地を救ったことがきっかけで、バーバラはシーバと急速に親しくなっていく。
そんな時、バーバラはシーバの秘密を目撃してしまう。

ジュディ・デンチとケイト・ブランシェットという夢のような共演に惹かれて
なんの予備知識もなく、それでもいそいそと初日初回、はるばる遠征してきました。
原作はイギリスの優れた文学に与えられるブッカー賞の最終候補に残った作品だそうです。

年の離れた夫(ビル・ナイ)と子供二人に囲まれて、傍目には幸せそうに暮らしているシーバ(ケイト・ブランシェット)ですが、心の中には空洞があります。
その空洞を埋めるため、15歳の教え子と性的な関係をもってしまいます。
その二人の関係を知ったバーバラ(ジュディ・デンチ)は、シーバのスキャンダルを握って、歪んだ愛情を露にしていきます。

二人の子持ちなのに、透明感のあるシーバの美しさと、どこか頼りないふわふわとした感じや危うさは、教え子、同僚、周囲の人を魅了してしまいます。
バーバラがシーバを見つめる眼差しには、単なる友情を越えた恋愛にも似た感情が伺えました。
恋愛なら、もし報われなくも相手のことを思いやったりするものだと思うのですが
バーバラは、誰がなんと言おうと相手を独占したい。支配したい意欲に燃えます。
そのためには、どんな策略でもめぐらします。
そして、どんなに手を尽くしても、相手に受け入れられないと知ったときは
手のひらを返したように、冷たくなれるのです。
その仕打ちには狂気すら感じられました。

ブルジョワ家庭の主婦。
初老の偏屈な教師。
二人に共通してるのは「孤独」です。
違うのは
シーバは必要以上に自分の孤独を感じているのに、
孤独を感じていい境遇にいるバーバラは、それほど自分が孤独だという事を感じていないようなのです。
孤独というよりも
自分にふさわしい相手を見つけるまでは「孤高」を守るのだ。という意識を持っているのかもしれません。
バーバラにふさわしい相手。。
若くて、美しくて、恵まれた家庭を持ち、誰をもひきつけずにはいられない女性。
それは、実はバーバラが手に入れたいと望んで叶わなかったものを、全て持ってる女性なのかもしれません。

嫉妬と愛情と孤独が入り混じって、独占、執着、支配へとバーバラの気持ちは変化していきます。
バーバラが見せる表情には、その全ての感情がドロドロと渦巻いているようで
迫力のある音楽にも後押しされ、最初から最後まで緊張させられました。

誰もが心の中に孤独を抱えてるのだと思います。
なにかにはけ口を求めるのでなく
なにかを支配しようとするのでなく
ただ、時々誰かとそっと寄り添ったり、そっと離れたり
そんなことを繰り返しながら、歩いていけないものだろうか。。そんなふうに思いました。

ジュディ・デンチとケイト・ブランシェット。
この二人の演技は素晴らしかったです。
ジュディ・デンチと言えば、私としては「ショコラ」のアルマンドおばあちゃんが思い浮かびます。
アルマンドは頑固なおばあちゃんでしたけど、チャーミングな人でした。
今回のバーバラは、「鬼」です。
チャーミングの欠けらも感じられませんでした。
見事な「鬼」でした。
そして、ケイト・ブランシェット。
透き通るような白い肌、しなやかな身のこなし、目元のかすかなシワまでが美しくて
そして、その美しさを捨てて変貌する様が圧巻でした。

この素晴らしい女優さんに囲まれて
つい忘れてしまいそうになるのですが
「ラブ・アクチュアリー」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」のビル・ナイ。
私としてはかなり注目して観にいきました。
やっぱ、彼はいいです。
どんなコミカルな役を演じても哀愁を感じます。

これは私に限った事かもしれませんけど
結婚生活も長くなると、自分の感情にばかり目が向きます。
大きな不満はないけど、物足りなさを感じたり、不安になることは
なにも女に限った事ではないのだなぁ~という事を
ビル・ナイ演じるリチャードを見て感じました。
自分ひとりで孤独に陥ってないで、少し謙虚にならなくてはいけないですね。
みんな、同じように孤独を抱えているのですから。


 


 













 

 

 




 


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25 コメント

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原作の翻訳 (ぶーこ)
2007-06-04 20:06:41
珍しく私が映画の話題にコメントを・・・。

この映画の原作、翻訳したのが友だちなのですぅ。
何年か前にハードカバーで出版されましたが、今回、
映画の公開に合わせて文庫が出ました。
ランダムハウス講談社より。

もしも機会がありましたら、本のほうもお手にとって
みてくださいまし。(ペコリ)。

私もまだ読んでいないのですが。
読んでみようと思ってマス。
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すごい (チョコ)
2007-06-05 07:26:27
ぶーこさん

をを♪
素晴らしいお友達をお持ちですね♪

私は原作の本が出てる事も知らず、
ただただ豪華共演が観たくて
はるばる日比谷まで出かけたのですが
すっごく良かった、というか。。恐かったです。

映画だと
音楽だとか、いろいろなものが絡み合って
原作とはまた違う趣になる事もあるので、
ぜひ、原作も読んでみたいと思いマス。

ぶーこさんも機会があったら映画もぜひ♪
今のところ、都内でも2館だけの上映みたいで。。
評判がよければ徐々に拡大していくかもしれないので。



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是非、拡大公開を願います! (ぼふふわ)
2007-06-05 16:09:45
私は、ぶーこさんから教えていただき、この映画を知りました~。
映画は、四国でやっていないようなので、水曜入荷の文庫本をまずは読んでみようと思っています。

俳優さんたちも、見ごたえありますよね、
うんうん、私もショコラで初めて見て、すごく存在感のある人だな~、と思いました>ジュデイ・ディンチ。素敵なおばあちゃんでしたよね。
「ラヴェンダーの咲く庭で」という映画でも、孫くらいの男の子に恋をする、独身女性を演じていて、せつなかったです。
が、今度は、鬼なのね!!(笑)
007シリーズでは、そういえばしっかり者の秘書?だったのかな。
私も、いずれ見るので、TBしにきますね~♪チョコさん☆

ビル・ナイのひそかなファンになりつつある私ですぅ~~、タコ助~~
おっと、今夜は、学校に行こう、ですね
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学校に行こう♪ (チョコ)
2007-06-05 16:59:18
ぼふふわさん

観たい映画って、単館上映だったりすることも多いので、そのたびに遠征なんですよ。
地方の時代、とか言うけど
なんつーか、全てが東京を中心に回ってる事を実感する瞬間です(笑)

原作も素晴らしいでしょうけど
ジュディ・デンチとケイト・ブランシェットは原作では見れないので(笑)
ぜひ、劇場、もしくはDVDで観てくださいね♪

ジュディ・デンチは本当に醜くてヤらしい初老の女を見事に演じていて、凄みを感じました。
「ラヴェンダー~」とは全然違います。
さすが名女優です。
もちろんケイトもタコ助も良かったですよ。

今夜はもちろんテレビの前に正座、ですよ♪
ちょこちょこつまらないインタビューを受けるより
こんなふうに、番組を絞って出てくれるのって嬉しいですね。
楽しみましょ♪


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観たいし♪読みたいし♪ (ちょんこ)
2007-06-06 11:30:15
ジュディ・ディンチの怖さ、私も観てみたいデス!
この年齢の女優さんって、やっぱりすごく演技が上手・・・引き込まれそうよね~。

「プラダを着た悪魔」のメリル・ストリープも
綺麗なのは当たり前だけども、ふっと力を抜いた時の、年齢がもろに出ていた疲れきった表情(これも演技ではあるのでしょうけれどね)には、やっぱり年齢を積み重ねてきた女優さんの、真の凄みを感じて、ある意味怖かったです。

タコ助が、普通の(?)夫役でどんな顔を見せてくれるのか、にも興味ありますぅ。
来日記者会見の時は、彼もめがね男子だったよねぇ

ぶーこさんのお友達、翻訳家なのね
映画化されるような小説を翻訳なさる方って
憧れます
私は、映画を観てから小説に入りたいなって思います。
イメージを自分で膨らませてしまう前に、って言うのかな。
だけどそれって、翻訳家の方にとってはどうなのかしらん
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ぜひぜひ (チョコ)
2007-06-06 20:29:56
ちょんこさん

ぜひ、行ってみて~♪
新宿の武蔵野館でも上映してるみたいです。

女優さんも、年をとればとるほど輝く人と
なぜか、??になってしまう人と
どこが違うんでしょうね。
ジュディ・デンチって、悪いけど美人、ではないけど
彼女が出るだけで引き締まりますね。

ビル・ナイ。
普通の夫とは素直に言いにくいけど(笑)タコ助に比べたらちゃんと普通の役でしたよ。
そうそ、プレミアの時だったかな?日本語のスピーチの時、原稿読むのに老眼鏡かけてましたよね。
かわいかったですぅ~♪
アナハイムのレッドカーペットの時は、なーんかすごい早足で過ぎ去ったのよね。
もっとゆっくり見たかったです。

原作が先か
映画が先か
コレも悩むところですね。
「別物」と割り切ったほうがいい場合もあるかも、デス。
一度膨らませたイメージってなかなか消えないですからね。
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翻訳した友人より (ぶーこ)
2007-06-09 12:45:08
チョコさんのレビュー、翻訳した友人に教えたら、
感激しておりました。
その友人からのメッセージです。

*****
作品によるでしょうけど、これは原作が先でも映画が先でもそれぞれに楽しめると思います。

劇場用パンフに、原作と映画の違いをあまりネタバレしない程度に書いたので、もしよかったらということで、そちらもご覧いただければ幸いです。
*****

とのことでした~。
私は、まだ本が見つかりませんのですぅ。
アマゾンで買おうかと思案中。
でも、本屋さんで見つけたいんだよねぇ。
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これは、益々~♪ (ちょんこ)
2007-06-09 13:22:56
わぉ、翻訳家のかた、ご本人様の生のアドバイスですね♪
パンフにも、書いてらっしゃるのですね~。
なんだか勝手に、身近に感じてしまいました。

次の水曜に、まずは映画とパンフから入らせていただこうと思ってますぅ。
楽しみですぅ
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生アドバイス (ぶーこ)
2007-06-09 16:10:24
ちょんこさん、はい、生アドバイスですぅ。
ぼふふわさんは、本をゲットしたようです。
四国での上映は、今のところ予定がないみたいで。

私は、まずは本からいってみたいと思いまーす!
返信する
パンフ♪ (チョコ)
2007-06-09 17:55:03
ぶーこさん

お友達からのメッセージ、ありがとうございます♪

私も原作を読んでみようと思って
今日も本屋さんを見たのですが
見つからないんですよ。
やっぱ、アマゾンが早そうですね。

劇場用のパンフ!!
最近、買ってないんですよ(大泣)
前は必ず買ってたんですけど
買うと捨てられないし
そうなるとたまる一方だし。
ああ、残念なことをしました。

でも、パンフよりも原作ですよね。
必ず読ませていただきますね♪
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