ビター☆チョコ

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それでもボクはやっていない

2007-01-24 | 邦画

就職の面接試験に向かう朝の満員電車の中で、金子徹平(加瀬亮)は痴漢に間違われて逮捕されてしまう。
連れて行かれた警察署では、徹平の言い分も満足に聞かれず、ついに起訴され裁判になってしまう。
身の潔白を証明するため、徹平の長い戦いが始まった。

普通に生活をしていれば、裁判所など足を踏み入れることなく一生を過ごす人が大多数だと思います。
警察署だって余程のことがない限りお世話になることはないはずです。
でも、もし何かが自分の身に降りかかったとき、自分にやましいことがない限り
警察も裁判所も強い味方になってくれる所だと思っていました。
そんなこと思ってた私はとんだ世間知らずでした。
冤罪だろうがなんだろうが、逮捕されたらほとんどのことは「有罪」を前提にして進められてしまうんですね。

記憶に間違いがなければ中学の時に習った「三権分立」。
あれも建前みたいです。
裁判所だって国のひとつの歯車なわけで、「無罪」にするということは警察や検察の面子をつぶしてしまうことになるわけですね。
それは、やっぱり、あまり好ましくないわけですよね。。。。

殺人だとか大きな事件になれば、捜査もかなり慎重に行われるのでしょうが
毎日こまごまと起こる事件、当事者にとっては重大なことでも
「痴漢」なんて余程強力な目撃者でも出ない限り、無実の証明なんかできないし
なにより捜査するつもりも暇もないみたいです。
「無実」を叫んで裁判に持ち込んでも、勝てる見込みはほとんどなく
何ヶ月も拘留され尋問され、神経がズタズタにされます。
たとえ「無実」でも罪を認めてさっさと示談にしてしまえばそれでOK。
無実の罪を着せられた人は自分の誇りを捨てて
本物の痴漢だけが喜ぶ、そしてまた繰り返す。。そんな図式が出来ているようです。

映画は、その逮捕から拘留、取調べ、裁判、判決、と実に丹念に描いています。
自分が傍聴席に座っているような気がしました。
恐かったです。
静かに、恐かったです。
そして同時に可笑しさもありました。
その可笑しさは、どこからきてるのかと考えたとき、
この国の「裁判」のあり方そのものが可笑しいのだと気がつきました。

帰ってきてから新聞を開いたら「平成21年度から裁判員制度が始まりますよ」というお知らせが
大々的に載っていました。
法の番人であるはずの裁判官ですら人を裁くというのは難しいことです。
もし、自分が突然に人を裁く立場になったらどうしたらいいのでしょう。
そして、今、もっと切実に心配なのが、毎朝満員電車に乗ってるダンナと息子です。
ダンナはずっと前から、かなり気を遣って電車に乗ってるらしいです。
何年か前、まだ痴漢の冤罪事件の話など聞かなかった頃、
知り合いの警察官の人が、「満員電車に乗るときは必ず両手でつり革を持って乗る」と言ってたのを聞いて、「考えすぎ」と笑ったのですが、
もしかしたら彼は冤罪の恐さというものを、職業柄、身をもって知っていたのかもしれません。

周防監督、11年ぶりの映画だそうですが、丹念な取材がうかがえる映画でした。
あのラストにも監督の強い意志のようなものが感じられました。
警察と裁判所にはちゃんと正義の味方でいて欲しい。
そんな当たり前のことを願わずにいられないのは、なんとも情けなかったです。
「女性専用車両」を望んでいるのは、冤罪に怯えるおじさんたちなのかもしれません。






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4 コメント

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怖い映画 (睦月)
2007-01-25 18:27:36
こんにちわ!
『ホワイトライズ』での文中リンクありがとうございました。

さて。
この映画、私も初日に観て来ましたが・・・
なんと恐ろしい映画なんだろうと思いました。
いつ自分や身近な人間が巻き込まれるかも分からない状況を、実にリアルに、そして分かりやすく丁寧に描いていた作品だったと思います。

こういう映画を堂々と製作し、公開してくれた監督および映画会社に感謝の気持ちでいっぱいです。
裁判というもの、罪というもの、司法のあり方・・・そういうものに対する意識改革の面でも大変に意味のある映画。たくさんの方に観てほしいと思いました。

こうなったら、男性専用車両も作ればいいんじゃないかなあ・・・なんて思ったり。
男性はセクハラだの痴漢だの、性にまつわる事件ではあまりにも不利すぎます・・・。
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身近な恐怖 (チョコ)
2007-01-25 23:24:32
睦月さん

「ホワイトライズ」良かったです~
ラストに向かうあたりは背中がサワサワしました。
いい映画を紹介していただいてありがとうございました。

さて、
睦月さんもご覧になっていたのは知ってたのですが、
私も観にいくつもりだったので、睦月さんのレビューは読まずにいました(笑)

睦月さんからTB頂いてありがとう♪
ほとんど自分からTBを飛ばさない「引きこもりブログ」ですので(苦)いつも遅れをとってしまいますね。
後ほどゆっくり伺います。

ホントに恐い映画でした。
痴漢については、まさか自分が犯人にされることはないでしょうけど、思い込みで無実の罪を着せる側にはなるかもしれないですよね。
(私など、痴漢にあう心配ももうナイのですが、)
誰かの人生を変えてしまうかもしれない恐怖も感じました。

一番悪いのは本物の痴漢なんですけどね。
なんとかならないものでしょうかねー。
裁判についても、これからいろいろ変わっていくのでしょうが「未知数」ですから。
やっぱ、知ることが大切なんでしょうねー。
必ずしも「国」が決めたことが正しいわけでもなさそうだし。。。
この映画が問題を分かりやすく提示してくれたように思えます。



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こんばんは。 (ALICE)
2007-01-27 04:07:28
私もこの映画を見て「三権分立」はいったい
どうなってるんだって思いました。
たてまえだけなんですかね。

痴漢は日常茶飯事に起こる事件だけど
法の改正でかなり厳しくなってるんですよね。
私は女性専用車両は意識して乗らないけど
やっぱり満員電車でごぞごぞされたら不快ですよね。
両手を挙げて何もしてませんアピールは
必要なのかもしれないです。
手の甲だったらセーフだろって言ってた
友達が居ましたが女性が痴漢だって判断したら
痴漢になっちゃうからね。気をつけないと!

冤罪について考えさせられる映画でした。
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こんにちは (チョコ)
2007-01-27 15:07:10
ALICEさん

TB&コメントありがとうございます。

いろいろな方向から恐さを感じた映画でした。
「三権分立」が実際には出来ていないらしい、というのもそうですし、
自分の家族がいつ犯人にされてしまうかもしれないという恐怖、
自分や娘が思い込みから無実の人を犯人にしてしまうかもしれない恐怖、
そして、面白半分に無実の人を「犯人」にしてしまう人間が出てきてもおかしくないんじゃないか。。という恐怖。
自分が女性でありながら
この満員電車の痴漢冤罪には胸が痛くなりました。

今日の新聞、
あの堀江さんが逮捕から裁判にかけてのあり方の疑問について書かれたものが載っていましたね。
まさに、この映画のまんまでした。

堀江さんの事件については分かりませんが
冤罪とか裁判にまつわる疑問などは「痴漢」に限ったことではなさそうですね。



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