安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

小島庸平著「サラ金の歴史」(中公新書)を読みました。視点が良くて面白い。

2022-09-02 19:30:00 | 読書

2021年に刊行された小島庸平著「サラ金の歴史 消費者金融と日本社会」(中公新書)を読みました。小島さんは、現在、東京大学大学院経済学研究科准教授。

   

表紙

(帯に記されている本書の紹介)

   

(簡単な目次)

序章 家計とジェンダーから見た金融史
第1章 「素人高利貸」の時代ー戦前期
第2章 質屋・月賦から団地金融へー1950~60年代
第3章 サラリーマン金融と「前向き」の資金需要ー高度経度成長期
第4章 低成長期と「後ろ向き」の資金需要ー1970~80年代
第5章 サラ金で借りる人・働く人ーサラ金パニックから冬の時代へ
第6章 長期不況下での成長と挫折ーバブル期~2010年代
終章 「日本」が生んだサラ金
「法律・行政」、「(サラ金)業界」、「社会・運動」という3段組の略年表も付されていて、これも労作。

(感 想)

消費者金融、とりわけサラ金について、戦前から現代までを俯瞰する内容で、極めて面白かった。統計数字も用いてありますが、雑誌を含む多数の文献に当たり、起きた出来事をヴィヴィッドに綴っています。

著者は、『サラ金業者の主体的で革新的な経営努力が、なぜ人びとを破滅に追いやったのか。その具体的なプロセスを、サラ金業者と利用者の双方の事情を踏まえ、説明しようというのが、本書の試みだった。』と記しています。これはかなり成功していると思われました。

1960年代半ば以降の「情意考課(職業能力を離れ人間評価を内容とする考課)」の下で出世を望むサラリーマンの飲み会やゴルフといった資金ニーズにサラ金が応えたこと、また、サラ金の債権回収業務が「感情労働(顧客の感情に働きかけるサービス業に独特な労働のあり方)」に当たるという指摘も新鮮でした。

(著者について)