４・２５県民大会に向けて ２

　名護市では１９日月曜日の県内紙の朝刊に、４・２５県民大会への参加を呼びかけるチラシが入っていた。夕方には各区の公民館に設置されている屋外スピーカーからも、県民大会への参加を呼びかける市と実行委員会の放送が始まっている。
　１９日夕方のテレビのニュースでは、県内４１の自治体のうち３８自治体の首長が県民大会への参加を表明し、残りの２自治体は公務のため代理出席、１自治体は未定と報じられていた。県民大会に向けての実行委員会も２３自治体で結成されているとのことで、これからもっと増えていくだろう。
　実行委員会は１０万人の参加を目ざすというが、今回の県民大会は取り組み期間が短いうえに、２５日は沖縄市長選挙や辺野古区民大会など各地で行事も多く、状況は厳しい。しかし、沖縄のこれからにとってきわめて重要な大会であり、多くの県民が集まって目標を達成できるものと思う。１８日に徳之島で開かれた基地移設に反対する集会で、１万５千人（主催者発表）が集まったことも、良い意味での刺激になったはずだ。

　徳之島の集会は、手作りのプラカードを手にしたお年寄りの姿や、子どもたちも大勢参加している大会の様子をテレビで見ながら、沖縄でこれまで数多く開かれてきた集会と重なり、既視感を覚えた。
　既視感はそれだけではない。基地問題と経済問題が結びつけられ、基地「移設」受け入れと引き替えに雇用創出や航空運賃、ガソリン価格の低減など経済振興を図るとする「アメとムチ」の手法や、賛成の声も少なからずあるが表に出せない、ということを強調して反対集会を相対化するヤマトゥの大手メディアの手法も、沖縄でこれまで繰り返し目にしてきたことだ。
　大会に参加した徳之島の人たちは、今回初めて米軍基地問題を真剣に考えたという人がほとんどだろう。いざ自分の生活の場に米軍基地が「移設」するとなれば、不安や恐怖、反発、怒りにかられて大規模な集会を開き、抗議の声を上げる。それは自然な反応なのだろうが、問題はそのあとだ。では、自分たちがそれほど恐れ、忌み嫌い、反対する米軍基地の大半を、戦後６５年も押しつけられてきた沖縄のことをどう考えるのか。徳之島の集会の様子をテレビや新聞で見て、そう考えたウチナンチューは多いはずだ。
　言うまでもなく、この問いは徳之島だけでなく、全国の人たちに向けられている。日米安保条約改定から５０年になるが、７０年安保闘争を最後に、日米安保の問題は大きな政治的争点にならなくなっていった。それを可能にした最大の要因は、米軍基地の大半を沖縄に押しつけることにより、ヤマトゥに住む人々のほとんどが米軍基地のもたらす被害を日常生活で経験しなくてすむようになったことだ。
　ヤマトゥの各地を旅するごとに、米軍基地のない生活が当たり前のようにある地と沖縄との差を感じずにいられない。敗戦から２７年間沖縄を米国の支配下におき、米軍基地を集中させたうえで自由に使用させ、施政権返還から３８年が経ってもその現実を変えようとしない。日米安保体制の下で「平和」を享受する日本＝ヤマトゥと基地負担を強制される沖縄。そういう欺瞞的構図を続けることで、日米安保体制を肯定・支持することは米軍基地の負担を担うものである、ということを、ヤマトゥに住むほとんどの人は意図的に忘れ、見ない振りを続けている。
　鳩山政権は「県外移設」の対象を徳之島とすることにより、普天間基地の「移設」問題をヤマトゥから切り離し、北緯３０度という分断線を蘇らせてその南に封じ込めようとしているようだ。沖縄県内か徳之島かと、普天間基地をどこに「移設」するかという議論ばかりがメディアを賑わしているが、本来問われるべきは、沖縄に基地負担を押しつけて成り立ってきた日米安保体制下のヤマトゥと沖縄の欺瞞的構図であり、日米安保体制そのものなのだ。「戦後」６５年も米軍基地の被害に苦しんできた沖縄の歴史と現実を見れば、普天間基地はもとよりその他の基地も無条件で返還されるべきであり、日米安保体制そのものが根本的に見直されるべきだ。