
~「大学の一年間なんてあっという間だ」入学、一人暮らし、新しい友人、麻雀、合コン…。学生生活を楽しむ五人の大学生が、社会という“砂漠”に囲まれた“オアシス”で超能力に遭遇し、不穏な犯罪者に翻弄され、まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく。パワーみなぎる、誰も知らない青春小説。~
<主な登場人物>
北村・・・主人公。盛岡出身。鳥瞰的に物事を見る、クールさを持っている。
鳥井・・・「やませみ」型の長髪を湛え、「ぎゃはは」と笑う東京生まれの横浜育ち。
南・・・鳥井と中学生が同じの東京・練馬区出身。肩までの黒髪、化粧はしない、無口だが陽だまりのいる雰囲気の女性。超能力を持つ。
西嶋・・・丸々とした輪郭、腹のあたりに少し贅肉をたたえる。黒い眼鏡をかけ、眉は力強く、髪は短い。千葉県出身。
東堂・・・長髪でほっそりした、目が大きく、鼻筋も通り、顎が尖った、筋金入りの美人だが、無愛想。仙台出身。
莞爾・・・なんでも仕切りたがる「幹事役」。
鳩麦・・・ブティックで働く女性。ほっそりとした体型で、肩にかかる髪にパーマをかけている。丸い輪郭のせいか、幼く見える顔立ち、
先日映画化された「重力ピエロ」が話題です。昨年の「死神の精度」、そして今年は「フィッシュストーリー」、「ラッシュライフ」、来年は「ゴールデンスランバー」、さらに「グラスホッパー」も映画化が予定されている、まさに伊坂幸太郎ブームであります。私はこれまで小説としては、「死神の精度」、「重力ピエロ」を読み、映画としては「アヒルと鴨のコインロッカー」、「死神の精度」を観ましたが、いずれも秀作だと思っています。
さて、本作「砂漠」について、井坂さんがインタビューで次のように語っています。
~『砂漠』のことを考え始めたのが2002年の終わりくらいなんですけど、「クラッシュ」のジョー・ストラマーが亡くなったんですよ。その前の2001年に、「ラモーンズ」のジョーイ・ラモーンも亡くなっていて、ぼくのなかでは、大ショックというほどではないけれど、「ああ、死んじゃったんだなあ」という感慨があったんですよ。高校時代によく聴いていたので。 『砂漠』は最初から大学生の話にしようと決めていたので、「ジョー・ストラマーが死んじゃったのに、俺たちは何やってるんですか」っていう人を出したいなって思ったんですよ。~
<楽天ブックス:本 『砂漠』伊坂幸太郎さんインタビュー/ オンライン書店>
http://books.rakuten.co.jp/RBOOKS/pickup/interview/isaka_k/
私はパンクロックに詳しくありませんが、1979年にザ・クラッシュがリリースした「ロンドン・コーリング」は好きな曲でした。ここではご存知ではないという方に、その二人についてリンクをはっておきます。

<ジョー・ストラマー - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%9E%E3%83%BC

<ジョーイ・ラモーン - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%B3
また、本作には三島由紀夫、坂口安吾、サン=テクジュベリなどの作家が取り上げられます。三島由紀夫については、アメリカの中東攻撃を批判する西嶋に、北村が、街頭でマイクや拡声器片手に、政治について叫んでいる者たちのように行動を起こせばいいじゃないかとたしなめたとき、西嶋が1970年の、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地での楯の会メンバーによるクーデターを狙った三島由紀夫を引き合いに出したことに対し、「西嶋には、三島由紀夫の気持ちが分かるんだ?」と問われて、西嶋が次のように答えます。

~思想とか共感しないですけどね。でもね、そこまでして何かを伝えようとしたという事実が衝撃なんですよ。俺には。しかも伝わらなかったんだから、衝撃の二乗ですよ。別に俺は、あの事件に詳しいわけじゃないですけどね、きっと、後で、利口ぶった学者や文化人がね、あれは、演出された自決だった、とか、ナルシストの天才がおかしくなっただけ、とかね、言い捨てたに違いないんですよ~
~でもね、もっと驚かないといけないのはね、一人の人間が、本気で伝えたいことも伝わらない、っていうこの事実ですよ。三島由紀夫を、馬鹿、と一刀両断で切り捨てた奴らもね、心のどこかでは、自分が本気を出せば、言いたいことが伝わるんだ、と思っているはずですよ。絶対に。インターネットで意見を発信している人々もね、やろうと思えば、本心が届くと過信しているんですよ。今は本気を出していないだけだってね。でもね、三島由紀夫に無理だったのに、腹を切る覚悟でも声が届かないのに、あんなところで拡声器で叫んでも、難しいんですよ」(P200)
坂口安吾からは次のような一節。
「一心不乱に、オレのイノチを打ち込んだ仕事をやりとげればそれでいいのだ」
「目玉がフシアナ同然の奴らのメガネにかなわなくとも、それがなんだ」(P105)
本作のタイトルと重要なプロットとなっているサン=テグジュペリからは次のような一節が。
「ぼくは砂漠についてすでに多くを語った。ところで、これ以上砂漠を語るに先立って、ある一つのオアシスについて語りたいと思う」(「人間の土地」)
「僕が泣いているのは、自分のことでなんかじゃない」(P228)
「どこか遠くの彼方には難破している人たちがいるんだ、こんな多くの難破を前に腕をこまねいてはいられない、我慢しろ、今、ぼくらのほうから駆けつけてやるから!」(P242)
「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」(P408)

私が伊坂さんの小説を好きなところは、登場人物のキャラがきちんと立っているところです。最後に、大学祭で企画される「超能力者、対、麻生晃一郎」というイベントについて、超能力否定論者の社会文化人類学者の麻生を嫌う北村に、鳩麦が「賢くて、偉そうな人に限って、物事を要約したがるんだよ」と語り、次のように話す件に、思わず納得したセリフを引用します。
「超能力はこうだ、とか、信じる人はどうだ、とかね。たとえば、映画を観ても、この映画のテーマは煮干しである、とかね。何でも要約しちゃうの。みんな一緒くたにして、本質を見抜こうとしちゃうわけ。実際は本質なんてさ、みんなばらばらで、ケースバイケースだと思うのに、要約して、分類したがる。そうすると自分の賢いことをアピールできるから、かも」
肝心の「砂漠」は何を表しているのかについては、ここでは触れないことにします。
伊坂幸太郎関連記事;
<人生が調査される時に示される、「死神の精度」(伊坂幸太郎著/文春文庫)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/9af23f95afd67fc64832e55bec500214
<遺伝子が紡ぎだす人間の性と「重力ピエロ」(伊坂幸太郎著/新潮文庫)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/4fce89f83a367cea387e8c99771bb96e
<最後にわかるタイトルの意味、「アヒルと鴨のコインロッカー」(2007年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/903cec9877f1679b2a2d6a679f5ddc43
<こんな邦画をもっと観たい、「Sweet Rain 死神の精度」(2008年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/4f266cf475fbd546a1fee22f83fe7fb4
<主な登場人物>
北村・・・主人公。盛岡出身。鳥瞰的に物事を見る、クールさを持っている。
鳥井・・・「やませみ」型の長髪を湛え、「ぎゃはは」と笑う東京生まれの横浜育ち。
南・・・鳥井と中学生が同じの東京・練馬区出身。肩までの黒髪、化粧はしない、無口だが陽だまりのいる雰囲気の女性。超能力を持つ。
西嶋・・・丸々とした輪郭、腹のあたりに少し贅肉をたたえる。黒い眼鏡をかけ、眉は力強く、髪は短い。千葉県出身。
東堂・・・長髪でほっそりした、目が大きく、鼻筋も通り、顎が尖った、筋金入りの美人だが、無愛想。仙台出身。
莞爾・・・なんでも仕切りたがる「幹事役」。
鳩麦・・・ブティックで働く女性。ほっそりとした体型で、肩にかかる髪にパーマをかけている。丸い輪郭のせいか、幼く見える顔立ち、
先日映画化された「重力ピエロ」が話題です。昨年の「死神の精度」、そして今年は「フィッシュストーリー」、「ラッシュライフ」、来年は「ゴールデンスランバー」、さらに「グラスホッパー」も映画化が予定されている、まさに伊坂幸太郎ブームであります。私はこれまで小説としては、「死神の精度」、「重力ピエロ」を読み、映画としては「アヒルと鴨のコインロッカー」、「死神の精度」を観ましたが、いずれも秀作だと思っています。
さて、本作「砂漠」について、井坂さんがインタビューで次のように語っています。
~『砂漠』のことを考え始めたのが2002年の終わりくらいなんですけど、「クラッシュ」のジョー・ストラマーが亡くなったんですよ。その前の2001年に、「ラモーンズ」のジョーイ・ラモーンも亡くなっていて、ぼくのなかでは、大ショックというほどではないけれど、「ああ、死んじゃったんだなあ」という感慨があったんですよ。高校時代によく聴いていたので。 『砂漠』は最初から大学生の話にしようと決めていたので、「ジョー・ストラマーが死んじゃったのに、俺たちは何やってるんですか」っていう人を出したいなって思ったんですよ。~
<楽天ブックス:本 『砂漠』伊坂幸太郎さんインタビュー/ オンライン書店>
http://books.rakuten.co.jp/RBOOKS/pickup/interview/isaka_k/
私はパンクロックに詳しくありませんが、1979年にザ・クラッシュがリリースした「ロンドン・コーリング」は好きな曲でした。ここではご存知ではないという方に、その二人についてリンクをはっておきます。

<ジョー・ストラマー - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%9E%E3%83%BC

<ジョーイ・ラモーン - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%B3
また、本作には三島由紀夫、坂口安吾、サン=テクジュベリなどの作家が取り上げられます。三島由紀夫については、アメリカの中東攻撃を批判する西嶋に、北村が、街頭でマイクや拡声器片手に、政治について叫んでいる者たちのように行動を起こせばいいじゃないかとたしなめたとき、西嶋が1970年の、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地での楯の会メンバーによるクーデターを狙った三島由紀夫を引き合いに出したことに対し、「西嶋には、三島由紀夫の気持ちが分かるんだ?」と問われて、西嶋が次のように答えます。

~思想とか共感しないですけどね。でもね、そこまでして何かを伝えようとしたという事実が衝撃なんですよ。俺には。しかも伝わらなかったんだから、衝撃の二乗ですよ。別に俺は、あの事件に詳しいわけじゃないですけどね、きっと、後で、利口ぶった学者や文化人がね、あれは、演出された自決だった、とか、ナルシストの天才がおかしくなっただけ、とかね、言い捨てたに違いないんですよ~
~でもね、もっと驚かないといけないのはね、一人の人間が、本気で伝えたいことも伝わらない、っていうこの事実ですよ。三島由紀夫を、馬鹿、と一刀両断で切り捨てた奴らもね、心のどこかでは、自分が本気を出せば、言いたいことが伝わるんだ、と思っているはずですよ。絶対に。インターネットで意見を発信している人々もね、やろうと思えば、本心が届くと過信しているんですよ。今は本気を出していないだけだってね。でもね、三島由紀夫に無理だったのに、腹を切る覚悟でも声が届かないのに、あんなところで拡声器で叫んでも、難しいんですよ」(P200)
坂口安吾からは次のような一節。
「一心不乱に、オレのイノチを打ち込んだ仕事をやりとげればそれでいいのだ」
「目玉がフシアナ同然の奴らのメガネにかなわなくとも、それがなんだ」(P105)
本作のタイトルと重要なプロットとなっているサン=テグジュペリからは次のような一節が。
「ぼくは砂漠についてすでに多くを語った。ところで、これ以上砂漠を語るに先立って、ある一つのオアシスについて語りたいと思う」(「人間の土地」)
「僕が泣いているのは、自分のことでなんかじゃない」(P228)
「どこか遠くの彼方には難破している人たちがいるんだ、こんな多くの難破を前に腕をこまねいてはいられない、我慢しろ、今、ぼくらのほうから駆けつけてやるから!」(P242)
「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」(P408)

私が伊坂さんの小説を好きなところは、登場人物のキャラがきちんと立っているところです。最後に、大学祭で企画される「超能力者、対、麻生晃一郎」というイベントについて、超能力否定論者の社会文化人類学者の麻生を嫌う北村に、鳩麦が「賢くて、偉そうな人に限って、物事を要約したがるんだよ」と語り、次のように話す件に、思わず納得したセリフを引用します。
「超能力はこうだ、とか、信じる人はどうだ、とかね。たとえば、映画を観ても、この映画のテーマは煮干しである、とかね。何でも要約しちゃうの。みんな一緒くたにして、本質を見抜こうとしちゃうわけ。実際は本質なんてさ、みんなばらばらで、ケースバイケースだと思うのに、要約して、分類したがる。そうすると自分の賢いことをアピールできるから、かも」
肝心の「砂漠」は何を表しているのかについては、ここでは触れないことにします。
伊坂幸太郎関連記事;
<人生が調査される時に示される、「死神の精度」(伊坂幸太郎著/文春文庫)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/9af23f95afd67fc64832e55bec500214
<遺伝子が紡ぎだす人間の性と「重力ピエロ」(伊坂幸太郎著/新潮文庫)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/4fce89f83a367cea387e8c99771bb96e
<最後にわかるタイトルの意味、「アヒルと鴨のコインロッカー」(2007年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/903cec9877f1679b2a2d6a679f5ddc43
<こんな邦画をもっと観たい、「Sweet Rain 死神の精度」(2008年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/4f266cf475fbd546a1fee22f83fe7fb4
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます