雨の桂川
用事があって、洛北北大路VIBUREまでバイクで桂川左岸を北へ走る。梅雨の曇り空で、いつ雨が降ってもおかしくはなかったが、あまい予想で思い切って出る。桂小橋で桂離宮の傍を走り抜けた直後から、空の雲の様子が一変し、大きな黒い雲が立ち込めて、北山方面の視界がほとんど遮られた。かと思うと小さな雹のような雨が降り注いでくる。しばらく我慢して走っていたが、阪急京都線の踏み切りのあたりで我慢できず、大きな木の木陰を探して、車を止めて雨具を着る。
着替えながら眼前の桂川を見ると、水嵩も増し、土色の激しい濁流となって流れてくる。いつもなら遠くまで眺望できる景色が、深い霧でほとんど視野も遮られている。自然のこうしたちょっとした変化も、ふだん見られない様相を現して、それなりに美しいと思う。デジカメはもって出なかったので記録できず残念に思った。日記で記録しておく。
しかし、この雨もほとんど長くは続かなかった。衣笠から金閣寺横を走る頃には、小降りになっていた雨もすっかり上がった。この日記を書いていて、芭蕉の句を思い出す。
五月雨を あつめて早し 最上川
できれば、この桂川の濁流を眺めて、私自身が俳句や短歌でその光景を記録しておくはずなのだろう。その技量のないのを残念に思った。
五月雨の 降り来る隙も
なき空に 初めて知りぬ 汝がかんばせ