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李東垣の陰火

2018-06-04 | 中国医学の歴史

『李東垣「陰火」に関する諸説と初歩的考察』

篠原明徳・中村市立中医学研究所

『中医臨床』 26(1): 59-63, 2005.

 これは、日本で書かれた李東垣の『陰火』学説に関する最高の解説だと思います。

論文中にも書かれていますが、中国の広州中医薬大学の靳士英教授(『中国医学大百科全書』の著者)でさえ『(陰火学説は)中国でもいまだ定説がない難問です』とお答えになっています。

 

 「陰火」とは、中国語では「鬼火」の意味だそうです。

 

「腎間の動気は、脾胃から下に流れる湿気に冷やされており、この脾胃が失調すると、腎間の動気が暴走して、上は頭頂部、皮毛などに燥熱が起こる。少陽三焦と厥陰心包は、この相火の通路である」という考え方です。

 

以下、李東垣『脾胃論』饮食劳倦所伤始为热中论より、引用。

「喜び、怒り、驚き、恐れは気を損耗し、既に脾胃の気が衰えば、気が不足し、心火(心包火)が独り盛んとなる。心火(心包火)は陰火である。陰火は下焦に起こり、心(心包)につらなる。心(心包)がうまく働かないと、相火という下焦の心包絡の火は気の賊となる。」
喜、怒、忧、恐,损耗气。既脾胃气衰,气不足,而心火独盛。心火者,阴火也。起于下焦,其系系于心。心不主令,相火代之。相火,下焦胞络之火,气之贼也。

 

「脾胃の気が虚せば、下は腎に流れ、陰火は土に乗じて、故に脾証が始まる。気が上逆して喘し、身熱となり熱く、イライラする。脈は洪脈・大脈で頭痛し、渇きが止まらず、その皮膚は風寒に耐えず、悪寒発熱が発生する。これは陰火の上昇で、逆気や煩熱や頭痛や渇きや洪脈が生じているのだ」
脾胃气虚,则下流于肾,阴火得以乘其土位,故脾证始得,则气高而喘,身热而烦,其脉洪大而头痛,或渴不止,其皮肤不任风寒,而生寒热。盖阴火上冲,则气高喘而烦热,为头痛,为渴,而脉洪。
以上、引用終わり。

    脾胃は弱く、虚証が極まり、それでいて、虚熱が頭画面部や皮膚に上がりきっているタイプはいらっしゃいます。「気虚発熱」を李東垣先生は上記のように説明しています。

   李東垣先生は、この「気虚発熱」を「甘温除熱」する「補中益気湯」を創案しました。昇陽と、柴胡による理気により、清陽を昇らせて、「陰火」を治療します。


   大家は、劉完素の「火熱論」に始まり、李東垣の「陰火理論」が虚証の「気虚発熱」の治法を創案し、朱丹渓が「相火」により、陰虚陽亢・相火妄動の理論をまとめて補陰学説としました。このの「火」の認識が、明清の「温病学」の滋陰を重視する思想に連続してつながります。

    この「気虚発熱」の「陰火」を「甘温除熱」するという思想こそ、医学革命の中心の部分になると思います。


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