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Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

伏兎と脾胃の経絡と女性

2012-04-06 | 女性と中医学
調べものをしている際に、非常に面白い報告を発見。

米山博久「月経痛の皮電点
『日本東洋医学会雑誌』VOL12、NO.4 1962
第12巻、第4号、昭和37年3月

 米山博久先生は科学派を代表する先生。この報告では、月経痛の女性を皮電計で計測したところ、伏兎に皮電点があらわれやすいことに気づき、63名で調査したところ、月経痛や月経不順の症状がある女性は伏兎の皮電点があらわれやすい傾向があったというもの。もっとも、伏兎だけでなく、伏兎や血海に広範囲にあらわれる。卵巣や子宮に障害がある場合、卵巣デルマトーム(T10~L4、S1~S3)から伏兎あたりに異常な皮電点があらわれるのではないかと考察されている。

 これを読んで思い出したのが、昭和の名灸師、深谷伊三郎先生が、女性の不感症伏兎の灸を使われていたことだ。

伏兎とその上下点は、不感症の人にはよく出ている圧痛点で、人によっては中心ではなく、左右、すなわち内か外に偏って出ることもあるが、これは見逃してはいけない治療点である」
『お灸で病気を治した話第3集』鍼灸之世界社2ページ

 深谷伊三郎先生は伏兎を中心にして、上下四横指の範囲を「伏兎3点」として婦人科の疾患の診断点にされていたようだ。
 古典的には、1680年、明代の『鍼灸大成』は伏兎の主治として、「婦人,八部諸疾」を挙げている。「婦人、八分諸疾」が何を意味するのかは知らないが、婦人科疾患に用いられていたことは類推できる。

 米山博久先生の伏兎の論文を読んだ際には『日本東洋医学会雑誌』を調べていたのだが、こんなのも見つけた。

寺師睦宗「脾胃を整えて妊娠した3例
『日本東洋医学会雑誌』VOL31NO3 1981
第31巻第3号(通巻117号)昭和56年3月
・六君子湯、小半夏加茯苓湯など脾胃を整える漢方治療をして妊娠した症例。

 以前、不妊症に気衝衝門など胃経・脾経のツボを何故使うのかが、議論になったことがある。そのとき、わたしが発表したのは以下の意見。

「肝腎は先天なので、加齢によって摩り減っており、肝腎の先天の精血を補うというのは難しいことが一つと、もう一つは、現代の女性は、食べすぎや冷飲食による子宮の冷やしすぎによる痰湿が子宮内膜症や子宮筋腫などの原因になっており、足陽明胃経の気衝と足太陰脾経の衝門の温灸は、脾胃から去湿しながら、子宮や鼡径部周辺を温めることができること、あと、『脾胃は気血造化の源』であり、脾胃から去湿すれば、脾胃から後天の精、気血が増えることがポイントだと思います。現代の女性は、脾胃に湿たまって、脾胃が気血をつくれずに、脾虚湿盛から三陰交あたりがむくんだり、中気下陥・脾気下陥から内臓下垂となり、臍から下の、下腹部がポッコリと出ている人が多いです。
さらに、気衝が、衝脈と足陽明胃経の交会穴であり、衝脈は『血海』ともいわれ、先天の腎経と後天の胃経を結ぶところであり、全身の気血を増やすポイントのツボであることです。『素問』には、衝脈と任脈が盛んになれば、月経が始まり、年をとって衝脈と任脈が弱ると月経が止まって子供ができなくなると書かれています。神闕と関元は任脈に属し、気衝は衝脈に属すので、神闕・関元・気衝は不妊症に効果があるというのが、東洋医学的な説明になると思います」

 上記の意見が妥当なのか、どうかはともかくとして、脾経・胃経が女性の生殖器疾患と関係しているのは経験的に理解できる。胃経の大巨や帰来、気衝や髀関や伏兎、足三里。あるいは脾経の公孫、三陰交、漏谷、血海、箕門、衝門は明らかに女性の疾患と関係している。ただ、現代の標準的な中医学の臓腑弁証理論では、「脾は統血する」ぐらいしか、説明がないように思う。

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