待ちぼうけ

暖かい春先のようなお天気だから、玄関先の私が作った黄色いベンチに腰掛けて、オヤジはデーサービスバックを脇に置いて、お迎えの車を待っている。時折、「ばーちゃん！」などと、お袋が出て来ないので、「早くしろ」と呼んでいる。

事務所に出る前に、コイン精米所に寄って、玄米30キロを精米するとか（母親から、米がない、と督促を受けているのだ！）ガレージの取り外した蛍光灯を捨てる準備とか、私が家の中と外を出たり入ったりしているのを、じっと座って眺めている。

時折、「今日は月曜日」などと声を掛けるが、聞こえていない。

最後に、目の前のコンクリートに白墨で「今日は19日、月曜日」と書いたら声を出して読みながら、「20日、火曜日！」と言い返す。首を横に振って、手をクロスさせて、✖を送ると、「おかしいなあ」と大声で言う。

（おかしいのは、おめえの頭じゃ！）と言いたいのだが、言っても無駄だから言わない。そして、黄色くシミがついて、余りにも汚いマスクを、真新しいのと交換させる。いつも自分の座っている座卓の下に、真新しい使い捨てマスクが、箱ごと置いてあり、たっぷり入っているが、昔のガーゼマスクの常習者は、洗って使う習慣があって、捨てる等しない。

今のマスクは使い捨てながら、丈夫で、上手に石鹸で洗って漂白して乾かせば、2，3度繰り返し使えるのは私の経験だが、では、洗うのかといえば、オヤジは洗わない。汚れに対して、全く不感症になっているようだ。

玄関先で納得するまで座らせておいても、今日は「陽気な天気」だから、放置しておくことにして出てきた。24時間待っていれば、お迎えが来る。