地区の連合会と社会福祉協議会の連盟で、地区内で満100歳になった人に金一封の祝い金が送られる。1万円なり。
受け取った親父は、賞状は4つに折りたたみ、赤い水引のかかった熨斗袋は、何とか二つに折って、着ていたジャンパーのポケットにねじ込んでいた。隣の100歳のばーちゃんは家族が「預かるね」というと素直に渡している。
我が家の親父は、取り上げると、きっと暴れるに違いない。1ヶ月は覚えているだろう。
もちろん、施設内で現金の携帯は不要だし、トラブルの元になるので、誰も1円も持っていない。成り行きを全部見ていた施設長が、そのうちそっと取り上げて、預かっておきますから、と私に耳打ちする。私が、親父の行動を予言して、その通りになったからだ。
まあ、それでいい。100歳になったのは、私ではない。今年は地区で4人。昨年は1人だと。
元気なばーちゃんが「弟さんけ?」と私のことを言う。施設長が、「息子さんやあ」と答える。
「親父が100までも生きるから、こっちも年とるわ。」と言うと、数人がゲラゲラと笑う。