強行軍のツアーガイドを終えたサウサンは、疲れているにもかかわらず、
私たちを自宅に招待するため、ホテルに迎えに来てくれた。
あの大門の町で生まれた息子のカリーム君の車で、早速マンションへ。
ピラミッド通りを過ぎると、まもなく目的地のガダーティーにあるマンションに到着した。
薄暗い電灯のともる玄関を通り、シンドラー社の古いエスカレーターに乗り込む。
夜だったことも手伝って、タイムスリップして、
幼い頃の昭和のビルディングに迷い込んでしまったかのような錯覚を覚える。
いよいよサウサンの自宅へ到着。
扉を開けると、それまでの印象とはまったく違ったアラブの世界が広がっていた。
高級な調度。素晴らしいじゅうたん。ゴブランや美しいビーズで作られた、手の込んだタペストリー。
そして、アラブの香料の良い香りが漂う。
サウサンの娘の大学生のジャスミンと小学生のモニアが、はにかみながら満面の笑みで出迎えてくれた。
サウサンは、ひとつひとつていねいに部屋を見せてくれた。
部屋が3つ、シャワールーム、台所、トイレ、リビング、ダイニングをいれると、結構な広さだ。
贅沢すぎるが、娘がお借りする部屋の間取りとほぼ同じとのこと。
次にサウサンが「一番の自慢はこれ!」といって、誇らしそうにベランダへ案内してくれた。
すると目に飛び込んできたものは…!
なんと音と光のショーのライトアップで白金のように美しく浮かび上がったピラミッドだった!
このピラミッドには、人間なら誰しも ハートをわしづかみにされるだろう。
白熱灯の温かい明かりの下、アラブ風の長いソファでくつろぎながら
ジャスミンが入れてくれた美味しいミルクティをいただいていると、
ここがエジプトだということも、ベランダから見えるピラミッドも、温かいエジプト人のご家族と談笑していることも
すべて夢の中の出来事のような気がしてきた。
なんと素敵な夢だろう……。
(右に座っているモニアは娘の滞在2年間でこんなに大きくなった。)
我に返った私は、不思議なご縁の大好きなサウサンと、この可愛らしいご家族なら、安心して娘のことをお願いできる
こんな幸運なことはないと判断し、アフマド氏のマンションをお借りしたいとサウサンに申し出た。
エジプトとの絆がますます深まり、娘の留学が決定的になったこの夜のことは、決して忘れることができないだろう。
そして、あのベランダに姿を現わしたピラミッドの美しさも…。
嬉しさと安堵と寂しさとが複雑に絡み合った気持ちを抱いたまま、私たちはサウサンのお宅をあとにした。
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