赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

21世紀の官僚論

2015-04-21 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(16)

21世紀の官僚論




大きく変貌する国際社会と日本の役割

産業革命以前の富の源泉は農業でした。近代西欧諸国は農産品を求め、アジア・アフリカの土地を奪い合うように開拓しました。それが植民地主義を生み出しました。そして、産業革命以降から20世紀までは工業生産物が富をもたらせました。同時に生産を可能にするエネルギーの奪い合いが帝国主義を生み出しました。これまでの国際社会における紛争は「富」とその「独占」に原因があったといえるでしょう。

しかし、21世紀になって、知識集約型社会の到来とともに社会は大きく変貌しようとしています。国際社会は「頭脳集約型の知的労働」と「情報の共有」によって、争奪をせずに「繁栄」がもたらされるだろうといわれています。知識労働が富の源泉となり、情報にアクセスさえできれば、何処にいても富を手に入れることが可能になったからです。

現に、インターネットは瞬く間に世界に広がり、グローバル化した情報が世界を席巻するようになりました。しかも、情報は人為的に引かれた国境を瞬時にまたいで伝達されています。「距離」と「時間」の壁は取り除かれました。これにより、国際社会全体に調和を促し、利益を共有するための「国境を越えた政策」もスムーズに伝達が可能となったわけです。

このような時代の大転換期にあたって、日本の国際社会に対する果たすべき役割も極めて大きなものになってくるはずです。なぜなら、非西欧社会でありながら西欧社会の文明を吸収し、しかも独自の伝統文化を守っているのが日本の実像です。このスタイルが、非西欧諸国に対する「発展のモデル」となり、また、西欧文明と非西欧文明の架け橋となると思われるからです。


わが国最大のシンクタンク

ところで、知識集約型社会における知識が生産的であるためには、知識の高度化が要求されますが、それを実現するのは組織によるチームプレイが必要です。また、人体に頭脳があるように、組織にもブレーンが必要です。今日のような知識社会の到来においてはブレーンという集団が大きな意味を持つはずです。

日本においてブレーンと称される組織は、政府系の9団体【※1】をはじめ、金融機関系、証券会社系、企業系、業界系、その他を含めて300以上あるといわれています。

【※1】経済社会総合研究所(内閣府)、経済産業研究所(経済産業省)、地球産業文化研究所(経済産業省)、財務総合政策研究所(財務省)、総合研究開発機構、行政管理研究センター(総務省)、日本銀行金融研究所(日本銀行)、日本国際問題研究所(外務省)、防衛研究所(防衛省、)経済社会総合研究所

しかし、日本にはそれらのシンクタンクを大規模に上回る頭脳集団があります。それは日本の官僚組織です。戦後の70年、しっかりコントロールしていたのが官僚集団でした。「官僚制社会主義の日本」と言われる所以でもあります。

ただし、日本の官僚にも欠点があります。前例踏襲主義と変化を極端に嫌がることです。これは責任を取りたくないが故の問題点です。それに加えて、官僚集団が「許認可権」を一手に独占していましたので、保護主義政策に陥りやすく、日本の発展を一方では阻害してきたという一面を持っています。

こうした両面性を理解した上で、知識集約型社会に対応するために、日本最大のブレーン組織を生かすことを考えねばなりません。


国家公務員の人員規模

中央省庁は1府12省【※2】からなり、国家公務員64万人中で人事院勧告の対象となる非現業職員【※3】は約27万人といわれています。

【※2】内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省と国家公安委員会の1府12省。

【※3】非現業職員とは一般職の国家公務員のうち、国有林野事業を行う国営企業の職員(現業の国家公務員)や特定独立行政法人の職員、検察官を除いた職員。


一般政府雇用者の国家公務員(自衛隊員、国立大学の教授など含む)の数については、全労働人口の5.3%で、OECD諸国で最も小さい数値だといわれています。また、先般のISIL(通称 「イスラム国」)問題への対応でも担当する公務員数の少なさが指摘されています。

しかし一方では、行政改革の上で、かつてみんなの党が「国家公務員5万人削減案」を主張したように、人件費削減せよという意見もあります。

おそらくは、余剰人員を抱えているところと、極端に人員不足のところがあり、極めてバランスを欠いているものと思われます。たとえば、これからは法務省の入国管理局などは大幅な人手を必要とするはずですが、農水省は余剰人員を抱えていると思われます。しかし、農水省から法務省にはおいそれと人事異動ができない仕組みがあるのです。


国家公務員の登用に新たな選択肢を

人事制度の最大の欠陥は、学歴を重視し、有力校を卒業したもののみに高級官僚の道が開かれている点です。しかも、登用の時点での成績が後々の昇進に影響します。大器晩成型の人にとっては不利な条件となっています。さらに、省庁間の壁が厚く、互いを敵視するために業務が非常に非効率となっています。

現在は人事交流も行われ、予算も財務省の手を離れつつありますが、未だ縦割り行政の弊害が残っています。この際、人事採用も「○○省入省」などといった枠組みを取り払って、省庁をまたいで仕事をする方式にしたら縦割り行政の諸問題は解決するのではないでしょうか。

また、意欲のある幹部職員は、内閣府などに再結集させて、国家のブレーンとして遇する方法もあるのではないかと思います。


日本の官僚に求められるもの

さて、21世紀の国際社会において日本が多大の貢献を果たすためには、国際社会全体が共感し、理解し、納得する「戦略」や「プログラム」の提示が必要です。すなわち、国際社会の平和と安定、繁栄を全体で享受する提案です。しかも、効率よく情報として伝達していく方法も検討されなければなりません。そのための研究と開発をコントロールすることも必要になってきます。

この知的営為の中心に存在すべきなのが官僚です。アメリカの場合は、大統領が変わるたびに官僚も入れ替わるのでこれには適していません。日本の官僚がこの任に一番ふさわしいはずです。なぜなら、多数の知的従事者の分化された仕事を統合してチームにまとめ、機能させていくには、日本の官僚システムが最適であるからです。

ただし、これらのシステム構築の前に、官僚自身の変革が強く要請されます。

知識や頭脳集団というだけでなく、「理性」や「感性」、「幅広い分析力」、「洞察力」、「高度な判断力」、もっと言えば、「他人を深く理解する能力」、「愛情」といったもの。要は、愛情に裏打ちされた知識や分析能力、仕事能力が要求されるのです。これらは今の官僚に欠落しています。まだ、本当の意味で役に立っているとはいえません。これらの資質が伴ってはじめて世界に誇る日本の官僚といえるはずです。

この精神に立脚した日本の官僚システムの登場が21世紀の国際社会の発展に寄与できると確信しています。



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