赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

地方創生と統一選挙に寄せて

2015-04-14 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(14)

地方創生と統一選挙に寄せて




政府は、人口急減・超高齢化という課題に対し、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生できるよう、「まち・ひと・しごと創生本部」を設置しました。

4月12日には、10の道府県知事選、41の道府県議会選、5の政令指定都市市長選、17の政令指定都市市議会議員選挙が行われ、26日には、89の市長選、295の市議会議員選挙、東京都の特別区では11の区長選、21の区議会選、さらに122の町村長選、373の町村議会選が行われます。

これを機に有権者は、候補者が何を目的にし、何を訴えているのかじっくり観察することが大切です。

とくに、首長選挙は、候補者の「街づくり」の考え方が前面に出てくるので、首長としてふさわしい人物であるか否かが判断できる機会になると思います。


かつて地方自治体は三割自治【※1】といわれてました。この時代は予算執行の裁量範囲が全体の1/3しかなかったので首長は誰がなっても同じようなものでした。

【※1】三割自治:自治体における歳入(収入)のうち地方税の収入が三割しかなく、この財源分しか具体的な使途がきめられなかったことに由来する。残りの七割は地方交付税、国庫補助金など国からのお金である。

現在は、基本的に地方が自由に使える交付金として、国から「一括交付金」と、国直轄事業を中心とした「公共事業関係費(使途が決まっている)」が助成されるようになったので、裁量権が大きくなり首長の信念やアイデアで、地域のあり方を大きく変えることができるようになっています。【※2】

【※2】佐賀県武雄市は市役所WebサイトをFacebookへと全面移行した。また、福岡市はソーシャルメディアを通じて市政情報や市の魅力に関する情報を写真や動画などで発信、市内で無料公衆無線LANの整備も進める。東京都荒川区では全小学校・中学校にタブレットPCの導入を行った。


自治体の首長は行政業務を民営化する勇気を

地方行政には無駄が多いのも事実です。また、労働組合【※3】の力の強いところでは組織改革もままならない状態【※4】が続いています。

【※3】全日本自治団体労働組合(自治労)。地方自治体職員などによる労働組合の連合体で、日本労働組合総連合会(連合)に加盟。加盟団体数2,737単組、組合員数83万2,814人(2010年現在)。

【※4】かつて杉並区長であった山田宏氏は『日本よい国構想』のなかで、「口角泡を飛ばす、職員との『サンダル論争』」、「猛反対にあった給食の民間委託(給食職員年俸750万円)」などで、区役所内部の意識改革に苦労した旨を記述している。


しかし、時代の推移とともに住民の意識も変わってきましたし、首長のやる気があれば地域住民も積極的に賛同しますので、必然的にその地域は変わります。

たとえば、博多駅から電車で1時間あまりの距離にある人口が約5万人の佐賀県武雄市。ここでは、前市長が図書館を民営化【※5】しました。また、自治体病院も民営化【※6】して15億円の累積赤字を解消しました。批判も相当あったようですが、首長の決意一つで地域は変わるのです、

【※5】武雄市図書館はTSUTAYA等を経営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社を指定管理者として運営委託を行う。委託以来3カ月間で26万人を突破したが、これは前年の年間来館者数を超える人数となっている。

【※6】武雄市民病院の民営化で働く人たちの給料も増え、市には固定資産税が入るようになった。ただし一連の改革で市職員の32%が退職したという。なお、給料は減らしていないので、一人あたりの生産性を高めることとなった。



民営化のメリット

行政の枠にとらわれない発想や様々なノウハウの蓄積がある民間企業にアイデアを出してもらい、行政業務を委託しても良いと思います。

実際、民間企業は動きが素早いです。かつて小さな町が発電所を誘致しようとした際、街づくりを専門に行う企業に計画立案を委託したのを見たことがあります。その企業は住民のアンケートをとり住民の意向を調べ、プランを作成し、議会対策用の説明書、住民対策の説明書を1ヶ月で作り上げました。もし、これが役所仕事なら1年以上はかかったかもしれません。民間企業はスピードと効率を両立させてくれるのです。


役所業務は全面的に民間委託にすべき



お役所仕事も民営化されますと途端にサービスがよくなります。かつての三公社五現業【※7】も殆どが民営化され、実にサービスがよくなり、メリットのほうが大きかったと思います。

【※7】日本国有鉄道、日本専売公社、日本電信電話公社の3つの公社と郵政、国有林野、印刷(日本銀行券や郵便はがき等の印刷の事業)、造幣、アルコール専売の5つの事業のこと。国有林野を除き、民営化又は独立行政法人等に移管している。

また、民間に委ねることで上手く機能した事例があります。介護保険制度です。これは、高齢者の介護を社会全体で支えあう仕組みで、その最大の特徴は、利用者へのサービスを民間の企業が中心になって運営していることです。利用者のケアの認定(要支援2段階、要介護4段階)はケアマネージャー【※8】と呼ばれる民間人が行っています。

【※8】ケアマネージャー=介護支援専門員:要介護者等からの相談に応じ、及び要介護者等がその心身の状況に応じ、適切な居宅サービスまたは施設サービスを利用できるよう市町村、居宅サービス事業を行う者、介護保険施設などとの連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有する。

ケアマネージャーは介護を希望する人の家にいって、直接話を聞き、状態をよく見て申請します。また、申請してから毎年状態を確かめてその都度、更新の判断を役所に提出します。そのため、ケアマネージャーには公平な判断力が求められます。資格をとるためにはかなり難易度が高いといわれています。そして、実際にケアは、民間のホームヘルパー(訪問介護員)などが行うようになっています。

このように民間が事業に取り組めば、役所の仕事は削減されます。同時に、民間の力を使いますから雇用も増え、地域の活性化に貢献することになります。

こうした考え方をさまざまな分野で活用すれば世の中がもっとよくなるはずです。何事もアイデア次第ではないでしょうか。


生活保護やその他の福祉にも応用ができる

社会福祉の分野では、役所でいくら職員を増やしても、本当に困っている人には救いの手が伸びず、窓口で大声で騒ぐ人や一部の政党の議員に頼んだ人の審査が通りやすくなるという矛盾の実態【※9】が見受けられます。このような生活保護の許認可、児童相談なども民営化した方がいいのではないでしょうか。

【※9】生活保護受給者217万人、生活保護負担金3.8兆円、そのうち半分が医療扶助となっている。生活保護に一度なってしまうと働かなくても生きていけるので、頑張って働く気が薄れてしまう弊害があるといわれる。また、病院も生活保護の人を過剰診療することで、必要以上の処置をして国や自治体に請求して病院の経営が潤うようにする事件も起きている。

また、児童虐待などの対する児童相談なども、相談員数の不足から満足な対応ができていないという問題もあり、ここも介護と同様に民間委託した方がもっときめ細かい対応ができる可能性があるはずです。

そのほかにも役所は住民と接する仕事はたくさんあります。再開発事業での折衝、滞納整理、公営住宅の家賃徴収、高齢者住宅での身寄りのない人への対応や苦情処理などもあります。そのほとんどを民営化して、それの成功したモデルケースを全国的に展開するという考え方もできると思います。


地方の行政は、首長の強い信念と決断で大きく変革することができると思います。その意味でも、統一地方選の首長選挙には強い関心を抱いていきたいと思います。




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