赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

パワー半導体市場の行方

2024-02-20 00:00:00 | 政治見解



パワー半導体市場の行方 :240220情報


パワー半導体は、高い電圧、大きな電流を扱うことができる半導体です。半導体は、その名前が示すように電気を通しやすい“動態”と電気を通さない”絶縁体”の両方の特性を持った物質ですが、パワー半導体は、高い電圧、大きな電流に対しても壊れないよう通常の半導体とは違った構造を持っています。

そのため、パワー半導体は主に電圧、周波数を変えたり、直流を交流、交流を直流に変えるなどの電力変換に使われます。 モーターを低速から高速まで精度良く回したり、太陽電池で発電した電気を無駄なく送電網に送ったり、様々な家電製品、電気器具に勢いづいているようです。安定した電源を供給する場面でパワー半導体は欠かすことのできない主役として大活躍しています。近年、省エネ化・省電力化への意識が高まり電気の無駄を極力少なくできるパワー半導体の需要がより高まっています。

いま、パワー半導体市場は電気自動車の普及というメガトレンドを背景に成長が予想されます。同市場の世界トップ10には複数の日本企業が名を連ねています。これをとらえて、株式投資のプロが注目しているようです。

今回は、特別に『NEKO TIMES』さんからの許可を頂き、パワー半導体市場の解説をしていただきます。


日に日に人工知能(AI)、特に生成AIに対する期待値が高まります。しかしながら、株式市場では投資家による四半期ごとの業績予想に届かなかった企業への失望も見てとれます。米国半導体大手・アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は四半期決算発表にて売上が市場予想を下回った結果、一時株価は6%のマイナスとなりました。新たに市場に投入したAI向け製品の伸びに期待がかかります。(ブルームバーグ)


生成AIでまだまだ伸びる半導体市場ーインテル・東京エレクトロンなどは株価下落

一方で、2月に入りより期待されるのは本命・エヌビディアの存在です。2/21に四半期決算発表を予定しています。さらに、半導体関連指数はおよそ3ヶ月で30%超の上昇率となりました。これはS&P500種株指数の上昇率の2倍になると言います。

ところで、半導体は業界として裾野は広いです。素材や製造装置もありますが、半導体そのものも分類できます。データ処理や記憶、すなはち「頭脳」にあたる半導体もありますし、電力の制御や変換、すなはち電子機器の「心臓・筋肉」にあたる半導体もあります。後者を特に「パワー半導体(パワーデバイス)」と呼び、ひとつの市場を形成しています。本日はこのパワー半導体について考えて行きます。


パワー半導体の使い道

電力の制御や変換を行うことを目的とした半導体として「パワー半導体」はモーター駆動やバッテリー充電、CPUやLSIなどの集積回路、半導体の駆動などに利用されています。パワー半導体の主要分野はやはり産業機器ですが、家庭向けではスマートフォンやタブレットパソコン、テレビやエアコン、冷蔵庫といった機器や電気自動車や鉄道、太陽光発電や風力発電などに幅広い用途があります。

近年においては、電気自動車(EV)へのシフトが進む自動車業界での需要が大きく高まっています。自動車業界では急激な半導体需要の高まりにより、生産計画の見直し・販売不振に陥ったというニュースも記憶に新しいことでしょう。

2022年2月にASTUTE ANALYTICAが発表したレポートによると、EVの世界市場は2021年の2,298億ドルから、2050年には72兆7,980億ドルに成長すると予測されています。EV市場のCAGR(年平均成長率)は21.73%と急速に成長する中、パワー半導体市場も同様に伸びが予想されています。(アンプ)

生産量だけではなく、品質向上の取り組みも進められています。これまでパワー半導体はシリコン素材が主流とされてきましたが、電力損失が発生しにくく、高電圧に対応できる新しい素材の研究開発が始まっています。


新素材の研究開発進む

半導体の歴史を遡ると、創成期の1950年頃はゲルマニウムが利用されていました。その後、シリコンがより優れた素材として採用され、技術の向上とともに進化を遂げてきました。パワー半導体においては、その用途からより大きな電力・高い電圧への対応が求められます。そこで素材(物質)を組みわせることで、その性能を高める研究が進められています。

たとえば、炭素とケイ素の化合物である炭化ケイ素(SiC)、ガリウムと窒素の化合物である窒化ガリウム(GaN)は新素材として期待されています。これらの素材を利用したパワー半導体はシリコンに対してSiCは440倍、GaNは1130倍の性能を持つと言います。(参考:サンケン電気)今後さらに性能の高い素材として酸化ガリウム(Ga₂O₃)やダイヤモンドなどの候補が上がっているといいます。(参考:東京エレクトロン)

海外では米・ウルフスピード、国内ではレゾナックや住友工業がSiCやGaN領域を牽引しています。旭化成は名古屋大学との共同研究により窒化アルミニウム(AIN)の研究を進めているといいます。

なお、経済産業省による産業戦略においても半導体自動車の電動化というメガトレンドをふまえて、まずはSiCパワー半導体の性能向上と低コスト化を目指します。その後、次世代素材の実用化に向けた開発を進めます。


国内外のトップ企業

パワー半導体企業のトップは独・インフィニオンで世界25%のシェアを持ちます。同社はSiC事業を拡大しており、2024年に新工場が段階的に稼働し、売上高は70億ユーロを目指すといいます。現在の売り上げの10倍になるといいます。このほどホンダと戦略的協業を行うべく覚書を交わしました。

Infineon、ホンダと車載半導体で戦略的協業:パワー半導体やADAS、E/Eアーキテクチャで - EE Times Japan
eetimes.itmedia.co.jp

世界第2位は米・オンセミです。およそ10%のシェアを占めています。同社も同じくSiC事業で成長を遂げており、垂直統合による安定供給が強みがあるといいます。フォルクスワーゲン、現代自動車グループ、BMWグループなどとの提携や供給契約を締結しています。

そして、スイス・STマイクロが3位、以降日本企業が続きます。日本企業としては全体でおよそ20%の世界シェアを占めていますが、個別企業では3-7%前後でシェアを分かちます。国内トップは三菱電機、富士電機、東芝で、ルネサスとロームが続きます。

最大手三菱電機はこの程パワー半導体のモジュールをおよそ6割小型化することに成功しました。2025年には量産化を開始します。また、東芝とロームは半導体の安定供給に向けて製造面で連携します。総事業費はおよそ4000億円、経済産業省からの助成は1300億円規模になります。

脱炭素に向けた世界的な取り組みが進む中で、産業用電源や電気自動車に広く利用されるパワー半導体は世界シェアを見ても競争力のある領域といえます。素材に注目するならばシリコン(Si)が市場シェアの大部分を占める中で、新たな素材の研究が着実に進んでおりより中長期的な視点で投資していく必要のある分野です。



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