赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

ロシア報道の限界 コラム(421)

2022-05-16 13:20:56 | 政治見解



コラム(421): ロシア報道の限界 


ロシアのウクライナ侵略戦争、日本のメディアは戦況を伝えるのはお手の物ですが、本質的な問題については何も伝えることができないように思えます。


メディア報道では真相がわからない

ウクライナの悲劇を目のあたりにする日々が続いています。これをしっかり見届けておかなければ、ロシアはますます狂暴になるでしょう。仮に世界中のメディアがウクライナに注目しなければ、ウイグルでやりたい放題をやっている中国と同じ状況をつくってしまいます。21世紀になっても前世紀以前の蛮行を繰り返すロシアに歯止めをかけるために、ウクライナの現実をメディアが直視し、関心を持ち続けることは当然だと思います。

ただし、いまの報道はワイドショーに見られるようにゲーム感覚のニュースに見えて不快です。表向きはロシアは「けしからん」と言いながら、裏ではウクライナの悲惨な現実をはしゃいで映像を流しています。また、それを見た専門外の解説者はしたり顔で論説し、コメンテーターに至っては頓珍漢な意見を述べています。これでウクライナの人びとを救っている気分になっているのでしょうが、現実はなにも変わっていません。

もし、日本が外国から侵略を受けた場合、世界中のメディアがその真実の一部しか伝えず、大半を解説ばかりに費やしていたら、日本国民はどんな気分になるでしょうか。ウクライナのことを自分のこととして考えたときに、解説と評論ばかりの日本の報道のあり方はこれでいいのか、ということをもっと真剣に考えなければならないと感じます。要は、表面の取材だけでなく、物事の本質を見極めて取材し報道することで、メディアとしての存在価値をあげるべきだと考えますし、今がその転換点にあると思うのです。


経済制裁は「効果がない」というメディアと現実の乖離

日本のメディアにはロシアへの経済制裁は「効果がない」と言い切るメディアが結構多いように思います。

たとえば、「英石油大手BPは2022年1~3月期決算で、ロシア事業からの撤退に関連し、240億ドル(約3.1兆円)の巨額損失を計上したと明らかにした」とか「英石油大手シェルはロシア事業(サハリン2)からの撤退に伴い、同期に42億3500万ドル(約5500億円)の損失を計上した」との記事を見れば、制裁する西側諸国も大ダメージを受けているように見えます。

実際、一部の経済誌や評論家は「ロシアへの経済制裁が期待したほど効かない」と述べ、さまざまな理由をつけて解説しているのですが、彼らの言うお金の流れではなく、サプライチェーン(製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの全体の一連の流れ)の視点から見ると、ロシアは戦車の部品から食料にいたるまで圧倒的に物不足で、戦争が継続できない状態にまで追い詰められているのがわかります。

すでに3月2日には、日経新聞に、「トヨタ自動車は、ロシアでの自動車生産を4日から一時的に止めると発表した。欧米日の対ロシア経済制裁を受け、同国外からの部品供給に問題が生じているためで、再開は未定。ホンダは自動車や二輪車などのロシアへの輸出をとりやめる。」という記事がでました。ただし、この記事、経済制裁は日本企業にも及ぶと読む人もいたのは事実です。

また、前述の石油資本がロシアから撤退して巨額の赤字を負ったという記事も、ロシアが設備を横取りしてロシアが儲かったという話ではなく、石油資本の撤退が石油掘削機などのメンテナンスを放棄することになる、そのため、まもなくロシア側が大事な資金源の一つである石油を採掘できなくなると理解すべき記事なのです。経済を知らない記者が記事を書くとまるで世の中が逆に見えるのです。

IT分野でも同じことが起きています。ロシアが半導体の調達に苦労しているのです。しかも、半導体が多く含まれるスマートフォン、サーバー、通信基地局、ネットワーク機器などの完成品も輸入できなくっています。これで、ロシアの得意分野の“サイバー攻撃”も部品の故障で順次弱体化することになりますし、IT技術の塊である最先端兵器や戦車も部品不足に泣くことになります。すでに戦車製造工場の操業停止情報もでています。

しかも、ロシアが頼りにしたい中国も、各企業が、ファーウエイ問題以降、ロシアに輸出を試みればファーウエイ同様の制裁を受けることを恐れているだけでなく、米中経済摩擦による最先端のIT関連用品を手に入れられなくなっているため、ロシアと同じ深刻な部品不足に陥っている現実があります。

一方、食料品にも影響がでているようです。4月の消費者物価が17.83%上昇したと報じられていますが、そのうち食品は20%上昇したとのこと。すでに。3月初めには、小麦粉、砂糖、油などの基本物資に関して、客の購入量を制限しているという話もあります。なお、このうち、砂糖は原材料のビートの種子は海外からの輸入に依存しているため、種子の取引まで禁止されたら砂糖はできなくなります。甘いもの好きのロシア人には大打撃になります。


以上の検証だけでも、メディア報道のロシアと現実のロシアには相当の乖離があります。原因はメディアの勉強不足です。したがって、メディアの解説ばかり見ていては、いま何が起きているのか、そして、それがどうなろうとするのかはわかりません。

私たちは、自分が見えた世界ばかりを報ずる日本のメディアを遠ざけて、様々な角度から情報を集めていくしか方法はないようです。



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