コラム(176):憲法は誰のものか
今回の参議院選挙では、憲法学者の小林節慶大名誉教授が代表を務める政治団体「国民怒りの声」が立候補しています。
怒りは失う恐怖と不安から生まれる
怒りの感情の奥底には、恐怖が内在します。
憲法を改正されると、これまで自分が積み上げてきた学問的成果、地位や名誉などの全てが失われてしまうのではないかという恐怖心が生まれ、小林氏の怒りにつながっているようです。
時代の変化に気がつかないまま、自分の学説にこだわる学者は大勢います。日本の学術の世界は、意識変革が遅れています。いまだに、日本が帝国主義国家だと言い続ける学者もいるほどです。学者は社会の変化に応じて、自らの学説や解釈を変更することは承服しがたいようです。
特に、憲法学者は新しい憲法が制定されると、場合によっては過去の蓄積をいったん廃棄しなければならないのです。
小林氏が「立憲主義の危機だ」と叫んでいるのは、実はご自身の「地位と立場の危機」ではないかと思います。
怒れる政治に未来は無い
彼は個人としての怒りを、政党を作り政治に転嫁する形で晴らし、そこで自己実現を図ろうとしているのです。
しかし、怒りや不満の結集は、人びとの破壊の思いが現実の破壊行動をもたらします。怒りが暴力と過激主義を引き起こし、かつての共産党革命やナチズムのように、強大な軍事力を築き上げ、人類の大量殺戮や破滅につながった歴史がそれを物語っています。
人びとの不満と怒りの思いを結集して出来上がった国家は、例外なく、民主主義を壊し、独裁体制を築いて極端な排外主義や人権弾圧を行います。指導者の根底には恐怖心があるので、国民の不満や怒りの矛先が自分に向くことが怖いのです。結局、怒れる政治は恐怖政治を招きます。
誰のための護憲か
もし、怒りの感情で日本の政治が動かされるのなら、暴力から政権が生まれた現代中国のような国になってしまいます。
国内には暴力主義を隠し「平和を愛好する勢力」と偽装し、「護憲」を盾に反体制活動をしている政党もあります。「立憲主義の危機」という言葉で政党を作る行為も同様に偽装なのです。
結局、護憲の主張は日本国民の幸福や平和を本当に願って言っているのではなく、憲法学者の自己保身とエゴ、革命のための偽装手段にすぎないのです。
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