赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

2.経済学者への質問(中国編)

2023-11-28 00:00:00 | 政治見解



2.経済学者への質問(中国編) :231129情報

国際経済学者のコラムの中に、大変興味深い質疑応答がありましたので、昨日に引き続き、その質疑応答を許可を得て引用いたします。


中国がアメリカを抜いて世界最大の 経済大国になる可能性はありますか?

——チャイナの成長は頭打ち。 その可能性はほぼゼロです!

「人口ボーナス」という言葉をご存知でしょうか? これは働かない人 間(子供・老人)より働いている人間のほうが多い状態を指します。反対に、働いていない人間のほうが多い状態を「人口オ—ナス」といいます。

人口ボーナス状態のときには、どんな国でも経済は伸びます。日本も2000年くらいまではそうでした。しかし、高齢者が多くなって人口オーナス状態に入ると、だんだん国が衰え、元気がなくなってきます。チャイナもすでに人口オ―ナスの段階に入っています。

今チャイナは、労働賃金が高くなり、国際的にも警戒されるようになっているため、海外からの資本の流入が以前のようには見込めません。今後は以前のような経済成長はないでしょう。

そこで習近平が何を考えているかというと鎖国化です。イランやロシア、北朝鮮など、自分の仲間だけで経済圏を作って生き延びていこうという方針です。

経済が上り調子のときは、国民に不満があっても物質的な繁栄があれば乗り切れます。しかし今は不動産バブルの崩壊もあるし、国民にも不 満が溜まってきている。そこからも 習近平の3期目に中国共産党内部で 必ず大きなことが起こると予測できます。

つまり、アメリカを抜いて世界最大の経済大国になる可能性は、極めて低いということです。

チャイナにはデジタル人民元や中 国製EV車の隆盛など、今も大きなトピックスがあるので、投資先として依然有望だと考える人もいるかもしれませんね。しかし、経済が伸びていくだけだった2000年代くらいまではチャイナヘの投資はお勧め でしたが、今は絶対にお勧めしませ ん。

しかも、中国共産党はかなり強権 的なことを実行します。昨年末にも、 チャイナのディディ【※1】(滴滴出行)が、政府の命令で、ニューヨーク証券取引所での上場を断念しました。中国共産党はアメリカで上場することによって情報が海外に漏れることを恐れているのです。

【※1】ディディ:滴滴出行;DiDiは、中華人民共和国の北京に本社を置き、5億5000万人以上のユーザーと数千万人のドライバーを抱えるハイヤー企業。

ディディは配車アプリ企業ですから、誰がどのような車を使ったかが分かってしまう。ユーザーの個人データを違法に収集しているとして、ディディの新規ダウンロードまで禁止しました。そういうことが政府の一存で決まってしまうのがチャイナという国です。

チャイナ株を買っていても、「外国市場での株式公開を禁ずる」とか「外国人の株は全部没収」と政府に言われたらおしまいです。実際、 過去にそういうことが起きている。 そういう国に安心して投資すること はできません。

同じことは、 チャイナヘの依存度が高い企業にも言えます。日本企業 でもアメリカ企業でも、対中投資がやたら多いところがありますが、そういう会社への投資は要注意です。


ディディや恒大、アリババ等々 中国スタートアップ企業の株の暴落が相次いでいる理由を教えてください。

——経済成長の鈍化を焦った習近平が企業を支配したいから!

中国企業の株の暴落が相次いでい るのは、前述のようなディディに対する中国政府の締め付けといったものに起因しますが、それはそもそもチャイナの経済成長力の低下が原因 です。

今までのように低賃金で、外国に投資してもらって安いものを作って、 どんどん輸出して外貨を稼ぐという 手法ができなくなり、政治的にも警戒され始めてしまった。

簡単に言え ば、アメリカやヨー ロツパが「チャイナにもう技術は売りません。人権弾圧するような企業とはお付き合い しません」と言っているのですね。 仕方なく、習近平はますます内にこもって再社会主義化します。

習近平にとっての問題解決は、すべての企業を国有化することです。今、 チャイナでは共産党員が3名以上いる組織には、党委員会を設置する義務があります。現にチャイナはそうした形で企業を管理下に置こうとしているわけです。

「黄金株」(株主総会で会社の合併などの重要議案を否決できる特別な株式のこと)というものがあります 、が、こうした企業支配権のある株式 についても、チャイナ政府は優先的 に押さえています。

これをされれば、どんな企業でも実質、国有化です。経営者の首を習近平の子分にすげ替えてしまえば、その会社は国有企業として再生するので、表面上は問題を解決できる。習近平がやっている再社会主義化とはそういうことです。

我々の経済とは仕組みが違うのです。 特に昨年1年は、実際上国有化される企業が多かったですね。前述のディディもそうだし、アリババなどは狙い撃ちです。ジャック・マーは 無理やりリタイアさせられ、アリババは解体されてほとんど政府傘下の企業みたいになりました。

チャイナでは塾を始めとする教育産業も盛んでしたが、これも「利益を生むような教育産業は禁止する」と習近平が言い出したことで、規制されました 【※2】。1200億ドル(約 14兆円)規模もあった中国民間教育産業は、株価が大暴落して価値がなくなってしまった。今は公益団体のようなものに看板をすげ替えて、営利企業ではないとして再編成されて ある日、習近平が「明日からこれはダメ」と言った瞬間に、その企業の株が暴落する。チャイナの企業にはそうしたリスクが付いて回るので す。



【※2】 ご参考 「塾はいらない・勉強するな」中国で突如、教育業界に起きた異変

日本の学習塾の市場規模は約9,400億円。一方お隣の中国では「有名大学へ行かなければ、人生終わり」というほどの学歴社会で、競争も熾烈を極めます。教育産業の規模はおよそ1千億ドル(15兆円)。大手学習塾などはアメリカにも上場するほどでした。しかし、ある日突然習近平の「鶴の一声」で、この人気産業に大きな異変が。

中国は2021年7月、学習塾が営利目的で学習指導を行うことなどを禁止しました。その目的は小中学生の宿題や塾などの負担と親の経済的負担を減らすことでした。

・小学校低学年に宿題を出してはいけない
・夏休み・冬休み・祝日など、 学校が休みの期間に塾に通わせてはいけない
・新たに学習塾を作ってはいけない
・既存の学習塾は営利企業としての営業を認めない(つまりお金を稼ぐために営業をすることが許されない)

「双減」と呼ばれるこの政策の結果、塾産業は軒並み赤字に転落、経営破綻。5千万人以上の塾関係者が大量解雇されました。

もともと中国は、1300年間も続いた「科挙」という試験があるほど、試験や学歴を重視する国。現在も就職には学歴が不可欠で、「有名大学へ行かなければ、人生終わり」というほどの超学歴社会です。競争の激しさも日本とは比べ物になりません。塾などの学習産業も過熱の一方で、教師1千万人、職員3千から4千万人と拡大。最大手の塾はアメリカで上場するほどの勢いだったのです。

しかし、この「塾禁止令」は新たな「闇市場」を生み出しました。それは、「家庭教師」。アプリで秘密裏にやり取りをし、毎回違う場所に待機する家庭教師に子供を送り届けるという親もいるほどです。

中国で報酬の高い仕事に就くには一流大学の学位が欠かせないため当然家庭教師の争奪戦となり、報酬も上がる一方。世帯の教育費はむしろ上がっているというのが現状です。なお、さらに追い討ちをかけるように、今年の7月、オンラインや家庭教師も禁止になりました。

習近平の真の目的は国民の教育などとは全別のところにあるようです。



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