赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

中国、三つの政治勢力

2023-10-31 01:00:00 | 政治見解




中国、三つの政治勢力 :231031情報

ウクライナやイスラエル周辺にばかり目をとらえられているうちに、中国で起きているさま様な問題が見失われがちになります。

たとえば、今年8月、ニューヨークで上場していた中国不動産大手:恒大集団が破産申請をしました。負債総額は48兆円。これは、2008年に経営破綻したリーマン・ブラザーズに匹敵する規模となっています。

また、恒大集団と同じく上場している不動産大手:カントリーガーデン(碧桂園)もデフォルトの危機に陥っており、一企業だけでなく、中国全体としての不動産不況が浮き彫りになりました。これを受け、メディアでは「中国版リーマン・ショックが起きるのではないか」という報道が加熱。今、世界中が固唾を飲んで中国の経済情勢を見守っている状況です。

では果たして、中国版リーマン・ショックは本当に起
こるのでしょうか?  そして、日本や世界にはどのような影響があるのでしょうか? その問題を国際政治学者に解説していただきました。



通常、このような国を代表する大企業の場合、政府が救済措置をとり、潰れないようにコントロールすることができます。例えば、2010年に倒産した日本航空(JAL)などが、その一例です。しかし、私には、中国政府が恒大集団を救済するとは思えません。

なぜ中国政府は自国の大企業を助けないのか? 実は、これらの問題を紐解いていくと、中国国内に存在する3つの政治勢力を理解しなければなりません。中国関連のニュースを見ていて不可解に思う出来事の裏には、3大政治勢力の動きがあるのです。

ここで1つ例をあげると、2020年11月、アリババの子会社が上海と香港で上場する直前に、中国政府によって突然、上場を中止にさせられるという事件がありました。私たちの感覚からすると、国内の企業が成長し、上場するということは、当然経済にとってプラスのことなので、歓迎すべきことだと言えるでしょう。なので、その直前に、政府自ら上場を中止させるなんて不可解すぎる、と思われたかもしれません。

しかし、3大政治勢力の視点からこの事件を見てみると、その全貌が驚くほど簡単に理解できるのです。そんな3つの勢力とはどんな集団なのか…簡単に説明してみようと思います。


中国を牛耳る3大政治勢力


第1の勢力は今の中国のトップに立つ集団 もはや今、この集団を止めることは誰にもできない…それほどに勢力を拡大させています。

第2の勢力は現代の中国経済の基礎をつくり上げた集団 中国を支えてきた圧倒的な経済力…それは彼らが生み出したといっても過言ではありません。

第3の勢力は 若手エリート集団 官僚として能力の高い若手エリートたちです。

そしてこれらの勢力は、今この瞬間も中国国内のあらゆる覇権を握るために、火花を散らしているのです。
テレビやマスコミなどに出ている言論人は、このアリババの事件について「民間企業として成功し過ぎたから政府が目をつけただけ」と分析しますが、実はここには重要な視点が欠けていたのです。

一般的に日本やアメリカなどでは、企業と政府は直接的な関わりを持っていません。ですが、中国は違うのです。今、有名になっている中国の大企業は、ほとんどがどこかの派閥と繋がっていて、このアリババも例外ではありませんでした。

さらにこの3大勢力のパワーバランスは、常に変化しています。そのため、属する集団の力が強い時には、それに連動して企業は業績を伸ばしますし、力が弱まれば、苦戦を強いられることになります。まさにアリババの成長と衰退の裏には、この3大勢力のパワーバランスの変化があったのです。

このように、一見不可解に思えるような中国ニュースは、この3大勢力を理解し、刻々と変わる3者のパワーバランスを捉えることで、非常にクリアになるのです。

また、これは経済に関するニュースだけでなく、もちろん政治にも大きく絡んでいて、習近平が同じ共産党内のトップを更迭したり、自国の利益にならないような行動をしたりする理由も読み解くことができるのです。

・昨今話題となった中国の大規模停電(※大手メディアでは石炭価格の高騰と言っているが、実は中国は世界最大の石炭生産国なので問題ないはず。しかも停電になっているのは製造業が盛んな地域ばかり…)

・中国で隆盛を極めた塾業界が、政府からの通達一つで事実上消滅(※塾産業に関わっていた5,000万人が仕事を失った。優秀な人材を育てることにも繋がるはずなのに、なぜ経済にダメージを与えるようなことをしたのか…)などなど…


“恒大集団” 破産の真相…

そして、もう既にお気づきかもしれませんが、冒頭でお話しした、中国政府が恒大集団を救済しない理由、実はこの3大政治勢力の歴史を遡ると見えてきます。

実は、今の中国を牛耳る第1の勢力が生まれたのは、かなり最近のこと。それまではずっと、第2の勢力と第3の勢力がしのぎを削っていました。

これまで中国は、安い労働力と引き換えに、外国から技術や工場、資本を持ってきて、経済発展を図ってきました。その立役者となったのが、第2の勢力と第3の勢力です。これらの集団は外国ともかなりコネクションを持ち、豊富な人脈を利用して中国経済を飛躍させました。

これらの集団はその間に、中国国内のあらゆる経済利権を握ります。そして現代にまで続く、とても大きな影響力を作り上げていったのです。

ですが次第に、この2つの勢力は対立を深めていくことになります。そして、この派閥争いが行き詰まった結果、妥協人事として生まれたのが、この2つの勢力のどちらにも属さない人物だったのです。

そして彼は、第1の勢力として自らの権力をどんどん拡大させていきます。中国国内に散らばる第2の勢力の経済利権に目をつけ、それらを次々に潰しながら、徐々に独裁色を強めていく…そうして、今日の中国を形作っていったのです。

これについて、今の中国の分かりやすい見取り図というのは、第2の勢力と第3の勢力が手を握って、第1の勢力に抵抗しているという図式です。

これらの歴史を踏まえ、恒大集団の話を見てみましょう…

実は恒大集団というのは、今、協力関係にある第2、第3の勢力に属する企業なのです。そのため、この3大政治勢力の観点からこの出来事を見てみると、今最も力を持っている第1の勢力が敵対勢力を潰した…ただ単にそれだけのことなのです。さらに最近では、カントリーガーデンという不動産大手も、経営破綻するのではないかと大きな注目を集めていますが、この企業も例外ではなく、敵対勢力に属する企業なのです。

いくら敵対しているとは言え、自国の大企業を潰すことは、第1の勢力にとってもマイナスではないか…と思われたかもしれません。ですが、代々不遇を受けてきた第1の勢力にとっては、敵対勢力を叩き潰すことが最優先…なので、その目標を達成するためだったら、中国版リーマン・ショックが起きることすら厭わないのです。

【注】
・「第1の勢力」: 他の勢力を蹴落とし今の中国を牛耳る集団
・「第2の勢力」: 現代の圧倒的な中国経済を作り上げた集団
・「第3の勢力」: 官僚として能力の高い若手エリート集団



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