赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

防衛費の増額をめぐって コラム(424)

2022-05-27 11:11:12 | 政治見解



コラム(424): 防衛費の増額をめぐって


水と安全はただではなくなった

1970年代のはじめ、『日本人とユダヤ人」という本がベストセラーになったことをご記憶の方も多いと思います。イザヤ・ベンダサンこと山本七平氏が「ユダヤ人という鏡に映してみて日本人はどう見えるのか」という実にユニークな視点で描いた作品です。冒頭の第一章の「安全と自由と水のコスト」では、高いコストをかけて保険に入るユダヤ人、安全と水は無料が当たり前と考える日本人の違いが描かれて国内に衝撃を与えました。

あれから50年、「水」はペットボトルで売られるだけでなく、「水道民営化法」の成立で「水が外国資本に売り飛ばされる!?時代が到来した」と言われるようになりました。

一方、「安全」については、国内の治安はいいものの国際環境の激変で、防衛費は、1974年度に1兆円、79年度に2兆円、85 年度に3兆円、90年度に4兆円を超えるようになり、現在は4.7兆円規模となっています。それでも、中国の軍事予算(21年度)の4分の1以下にすぎません。

ミサイルを祝砲代わりに打つ北朝鮮や尖閣・沖縄を奪取して太平洋進出を図る中国の存在が隣にある以上、安全を守るコストが高くなることはやむを得ないのですが、ここにきてロシアのウクライナ侵略が、さらに防衛費の上積みを要請してきます。日本もウクライナと同様、ロシアに隣接しているからです。岸田首相も防衛費いついて「相当な増額」を見込んでいるようですが、国土と国民を守るためにはそれ相応の覚悟とコストが必要になることを国民も自覚し始めたように思います。


政治家と世論の乖離

極左新聞となった毎日新聞の世論調査でさえ「防衛費、8割弱が『増やすべき』」と公表するようになりました。しかし、国民の代表を自称する政治家たちは世間の感覚と大幅なずれがあります。

たとえば、公明党の山口代表は、防衛費を国内総生産(GDP)比2%に増やすべきだとの自民党内の主張に関し、「無理がある。おおむね1%程度は大事にしていくべきだ」と述べ、否定的な見解を示しています。大好きな中国を慮り(例えば、程永華前駐日大使は創価大留学一期生)、一方、党内に向けては平和主義の政党としてのイメージを守るためだけに活動する政治集団ですから、このご時世でも国家全体のことを考えることには興味がないようです。

そういえば公明党、政府には「ロシアの暴挙をやめさせろ」と文句をいうだけで、ロシアには直接抗議することもありません。創価学会はロシアと密接な交流があるからのようです。危機の中にあって、今後も、ロシア批判や防衛費増額には中途半端な態度に終始すると思います。公明党との連立は自民党にとって何のメリットもありません。むしろ邪魔な存在になっています。一刻も早く解消した方がいいと思います。

さて、立憲民主党、今夏の参議院選挙(比例区)で出馬予定の辻󠄀元清美氏はツイッターで「防衛費よりも先に、先進国で最低レベルの教育費の倍増しよう! 結局、国を守るのも、経済を引っ張るのも人、人、人だと思います」と述べています。「防衛費増額反対!」と叫べば国民から総スカンをくいますから、教育費の問題にすり替えているわけですが、本音は防衛費増額反対を言いたくてたまらなかったことにあるのはすぐわかります。

泉代表も同じで、「(防衛費が)増えることは肯定している」としつつも、「防衛費は数字ありきではなく、あくまで必要なものを積算していく」と述べています。この発言を裏返せば「必要ないと判断することも可能」と言っているのと同じです。本音は防衛費増額に大反対なのですが、選挙が怖いので取り繕ったわけです。

日本共産党も「憲法9条を持つ国として(防衛費増額は)到底許されない」と言っています。が、それよりも共産党が頭を抱えているのは、世間一般から「ロシアの仲間じゃないの?」と見られていることです。そのため、委員長の志位和夫氏がロシア“出禁”になったことをアピールして親露であることを打ち消そうと必死です。

実際、わが家の周辺を回る共産党荒川区議の自転車のスピーカーからは、いままでにない悲壮感が感じられます。いまさら「有事に自衛隊活用」、「自衛隊に感謝決議」などと言ってももはや誰も信用しないのは当然です。しかも、彼らが特定の国のために「防衛費増額反対」、「九条を守れ」などと言い続けていたことを国民が知らないわけはありません。参議院選挙では偽善的な平和主義の仮面がはがされることになります。



「防衛費増額」に反対するのは中国の利益のためです。これは、ロイターが発信した「日米・クアッド首脳会談に抗議、反対派が都内でデモ」の動画を見ればよく分かると思います。横断幕の下部には「中国侵略戦争阻止!」と書かれていて、彼らは、中国の利益のために行動していることがわかりすぎるほどわかってしまいます。中核派は昔から過激派の中で一番の「没論理」として有名で、隠しておかなければならない中国を前面にさらけ出してしまいました。

要は、今日の、米軍基地撤廃だの、安保法制反対だの、そして日本の防衛費増額を反対する声は、中国の利益のために語られている問題であるということです。

しかも、「中国侵略反対」と言う言葉の裏には、中国の方に侵略したい気持ちが潜んでいるから、諸外国の行動すべてが侵略行為に見えてくるわけなのです。つまり、自分が侵略したいのだから他国も当然そう思っているはず、そのために自分たちの方から先に「侵略反対」を言い出して予防線を張っているのです。

その簡単なことさえわからない日本の政治家は、自民党議員を含めて意外にも多い。むしろ、それどころか、中国の利益のために積極的に発言し行動している人が結構見られます。

国民の方がそのことを理解するようになったいま、今夏の参議院選挙、いかなる結果となるか、意外に楽しみが増えそうに思います。



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