赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

Ⅲ.中国に迫りくる食糧危機

2023-06-03 00:00:00 | 政治見解



Ⅲ.中国に迫りくる食糧危機 :230603情報


昨日からの続きです。


■新プロジェクト「穏糧保供」と戦時体制

公式発表では以上の3つを目的としていますが、本当の農管の目的とは何なのでしょうか?

2023年4月から始まった新プロジェクトに「穏糧保供」というものがあります。食糧を安定させ、供給の確保するという意味です。つまり農管導入の目的は、食料安全なのです。

なぜ食料安全が今そこまで重要視されているかと言うと、一説では中国は戦時体制を敷こうとしていると言われています。中国がウクライナ戦争から得た教訓の一つがいざ戦争になると食品の輸入が困難になることです。

普通、農民は付加価値の高い野菜や果物を優先して作ろうとします。中国ではしかし、中央の主導の下でそういった作物を禁止し、お米や小麦やトウモロコシを作らせようとしています。

なぜ習近平は戦時体制を取ろうとするのでしょうか?

中国の言葉で「天高皇帝遠」というものがあります。意味は、「農村では皇帝の存在が遠く、その影響力は自分には及ばない。」これが中国農村の現状です。

独裁者の権力欲は無限大です。権力があればあるほど、権力を欲しがるし、不安になるのです。盤石と言われれば言われるほど、不安になるのです。

都会部は管理されていますが、農村部はあまり管理されていません。中国農村は数千年以来、ほとんど自己管理でやってきました。中央の権力が及ばないところだったのです。これが今、習近平を不安にさせているのです。

かつて8割ぐらい農民だった中国の人口構成も習近平政権になってから農村の都会化を進め、農民の数を減らしていき、今では全人口の約4割程度になりました。それでもまだ5億人もいます。

この5億の農民人口が習近平にとっては安心できない大きな要素なのです。実際、中国の歴史を見てみると、農民一揆が歴代王朝を倒すきっかけになっています。


■習近平版の大躍進に?

中国数千年以来、農村地域は自己管理だったと言いましたが、実は、共産党政権が生まれ一度は管理下に置こうとしました。それが、毛沢東時代の1950年代の「大躍進政策」と人民公社です。

全てを国が管理しようとした結果、誰も働かなくなり、2,3年後に3000万人〜5000万人の餓死者を出したと言われています。今回の農管制度の導入は、習近平版の大躍進と言えます。

農村は中央が管理してはいけない。これは中国の数千年以来の知恵なんですが、毛沢東はこれに挑戦してやはり失敗しました。今回も同じように失敗するのではないでしょうか。


(了)


参考:毛沢東の大躍進政策

毛沢東が実権を握った後に行った代表的な政策に、「大躍進」というものがあります。これは1953年~57年までに実施された第一次五ヶ年計画に次ぐ政策で、1958年~61年まで続きました。

大製鉄運動の失敗:1958年、毛沢東は大量の鉄を作るために全国に溶鉱炉を作らせました。しかしいざ鉄を作ろうとしたところで、製鉄のための正しい知識を持った専門家や施設はなく、素人が何となくの感覚で作り始めることになったのです。その結果、当然のように大量の粗悪品が出来上がりました。

そして次第に材料となる鉄鉱石が不足していき、作ることすら困難になっていきます。それでも毛沢東の命令に背けば粛清という処分が待っているため、とにかく鉄を作りまくるしかなく、人々は自宅にあったあらゆる鉄製品を溶かし、それを材料にしたのです。さらに、鉄を溶かす際に使う燃料確保のために、国中の木々が切り倒され、その結果、中国では土砂災害や大洪水が頻繁に発生するようになりました。

四害駆除の失敗:毛沢東はさらなる発展を図るために、人々に伝染病をもたらす害虫や、農作物に危害を及ぼす生物を駆除するよう命じました。特にハエ、蚊、ネズミ、スズメがその対象になりました。しかしハエや蚊はまだしも、スズメを大量に駆除してしまったことは、結果的に農業に大きなダメージを与えることになりました。スズメは確かに農作物を食べることもありましたが、それ以上に農作物を食べる害虫を食べてくれていたのです。

農業の失敗:毛沢東は農業を行わせるために、各地に共産党員を派遣しました。そして農作業を行う人々を集団生活させる「人民公社」という組織を作り、各共産党員の指導の下、人々が協力して農作業をするようにしました。しかし実際のところ、共産党員たちに農業に関する専門知識を持ったものはおらず、加えて畑を耕すための道具類は全て前述した製鉄のために溶かされた後でした。

つまり人々は、乏しい知識のなか手作業で課せられたノルマを達成することになります。おまけに共産主義の世界では、全て平等が原則です。どんなに頑張ったところで、給料は皆と同じ。これほどまでに最悪な条件が揃ってしまうと、人々のモチベーションが低下するのはあっという間でした。

皆が人任せになり、ノルマには届かなくなります。しかし粛清を恐れた共産党員たちが、ノルマを達成したと嘘の報告をすると、毛沢東は順調に進んでいるのだと捉え、結果的にさらにノルマを増やしたのです。

大躍進政策 その悲惨な結果:木々が無くなり自然災害が増え、農作物の生産率は大幅に減少。ノルマは増える一方で国民の食べるものはなく、あるのは使い道のない大量の鉄ばかり。大躍進政策が行われた4年間の間に、5000万人近い人々が飢えのために命を落としました。



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