「スパイ気球」が習近平の足元を脅かす!? :230215情報
爆破された中国のスパイ気球、「気象研究用が誤って米国に進入」なわけがないことを、2月8日付の当ブログ『撃墜された中国のスパイ気球』でお伝えしました。
これによって、一時、休戦となっていた米中関係もにわかに緊張状態に戻り、前から決まってた米国の国務長官の中国訪問も延期になりました。
それほどインパクトのある事件ですが、ここに不可解な謎があります。それは果たして誰がこの気球を飛ばす命令をしたのか?ということ。中国報道官の答弁を元にその謎に、中国問題の専門家が迫りました。
■スパイ事件の黒幕、3つのシナリオ
中国のスパイ気球事件ですが、誰が命令したのかは多くの国の情報機関の関心事となっています。
3つの可能性があります。
①習近平が命令した。習近平が知っていて実行された。
②習近平がかつて命令して、その命令を忘れた頃に実行された。
③習近平は全く知らない。誰かが習近平の足を引っ張るために実行した。
中国の国内の報道を見ているとどうやら、3つ目の可能性が一番高そうなのです。
つまり、習近平はこの件に関して全く知らず、他の軍関係者が、習近平の足を引っ張るために行ったという可能性です。その根拠として人民日報に掲載された評論を見ていきます。
まず、習近平政権は2月5,6日に予定されていたブリンケン国務長官の訪中前にかなりの準備していました。
中国の準備というのは、他の国の準備とは違います。普通は、ホテルの手配や会議の内容を事前に決めたりしますが、中国は重要な会議の前に「牽制」をすることがあるのです。
今回の牽制として、人民日報にある評論が掲載されました。その評論は人民日報の社説よりも大事な部分、「鐘声」に掲載されました。
「鐘声」は中国語の発音で、中の声つまり、「中央の声」という意味です。要するに習近平の声です。なので、人民日報においては、社説よりも重要な部分とされています。
ここで2月1日、2日、3日と3日間連続で米中関係に関する評論が出されました。
2月1日 「米中の間で正しい道を見つけなければいけない。」
2月2日 「デカップリングは通用しない。 協力関係を深めることが活路。」
2月3日 「陣営の対抗は将来がない。 ウィンウィンこそ全ての人が望む所存。」
3日間とも、アメリカと協調していくような論評です。
2月2日にアメリカの国防総省が中国スパイ気球の件を発表しました。中国の環球時報はすぐ否定しましたが、その後、あれは民間の気球だと態度が軟化したわけです。
もし中国スパイ気球が習近平の主導によるものであれば、一貫性を保つために、2月3日の人民日報の評論は違うものになっていたはずです。片方では喧嘩していて、片方では握手しようとしていることになるからです。
ただ実際はそうならず… 3本目の2月3日の論評は、まだブリンケンが来る前提で書いていたのです。この一貫性のない行動から、習近平は気球のことを把握していなかった可能性が高いと考えられます。
・2/2 米国の発表後、一旦は否定し、その後、民間の気球だと言いました。
・2/4 中国外交部の発表によると、米国務長官の中国訪問は米国が勝手に言ってるだけ。
そして米国はこの日に気球を撃墜しました。
・2/5 中国外交部&国防部が強く反発しました。外交部が出てくるのはともかく国防部まで出てくるのは、自らこの気球は軍が関与していると言っているようなものではないでしょうか?
この二転三転する主張や慌てぶり… 一貫性のない行動から習近平は知らなかったのだろうと思われます。
(つづく)
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