ちくわブログ

ちくわの夜明け

治験病棟 4

2009-04-11 04:17:35 | シリーズ・治験病棟
○某日(金)雨のち曇 入院5日目(投与4日目)
 気付いたら花の金曜日。表の世界は浮かれているのだろう。ここは相変わらず。それにしても「慣れる」ということはない。絶えずアゴにできるフキデモノは、その顕現か。

 起床。洗顔、歯磨きの後、「ビックコミックスピリッツ」を読む。今週号らしい。しかしマトモに読むのは購読していた二年前ぶりだ。
 山本英二「ホムンクルス」のコラムにて、人にはWeタイプとMeタイプがあると書いてあった。Weタイプはまわりの人々と馴染みやすく、その中で成長していくタイプ。サービス業向きということか。Meタイプはなかなか打ち解けず、己の道を突き進む利己主義的なタイプ。俺は絶対Meタイプだろうな。
 採血。左は痛い率高し、ということが判明。人によって痛覚は違うのでそういうこともあるね、とのこと。
 
 朝飯。食パン二枚(マーガリン、イチゴジャム付)、豚つみれ入オムレツ、桃缶詰、パック牛乳。
 この時間が一番腹減っているというのに、この少なさは酷だ。同じ病室のKさんによると、朝は一日で一番多い方がいいらしいが、これは一体どういうことか。しかし、朝だって言うのにまったくもって胃がもたれていないのはさすがだ。なにしろ21時のオヤツ以降は、麦茶か水以外全く口にしていない。精神衛生上いくないと思います。

 ここに来て初めての自慰。トイレでこそーりと。どんどん溜まっていくのが分かる。下半身が獣の匂いを放ち始める・・・。

 昼食。弁当形式。ご飯と漬物、おろしハンバーグ、レタスとトマト、春雨サラダ、こんにゃくの甘煮、味噌汁。
 ヘビーだ。朝食ったものがまだ胃の中を漂っている。明日から朝飯後、少しでも体を動かそうか。

 昼食後、1時半から「散歩」に出かける。看護婦さん二人同行で、みんなそろって都会のカルガモ親子のように。目的地はK大学病院敷地内の本屋。ちなみにここはK大学「東」病院。200M先とのこと。
 雨が降ったため、出発が危ぶまれたが、小雨もいいとこだったので決行とあいなった。ただなんとなしに歩く。目的地に向かって。
 ふと、空気に味があると知る。
 目的地到着。半分は医学書。なんともつまらん本屋。つか、マンガほとんどない!!単行本にいたっては皆無。申し訳程度にマンガ週刊誌があるだけ。でも、ちょっと欲しかった新書が置いてあった。暇だし買っとくか。あと、押井守作品のメカニックを解説したムック、「メカフィリア」も購入。
 帰り、なぜかコンビニに寄ってくれたので、そこで漫画アクション購入。よかったあ、買えて。病院内の売店じゃ売ってなかったからなあ。

 曇だったので日光に当たれなかったのは残念だ。少し汗でもかいてみたいものだ。ここに来てからというもの、寝汗以外はかかない。

 帰ってすぐ、いつもの面子が麻雀を始める。卓を独占しているため、プレステが出来ない。この憤りは・・・!
 ここらで借りてきたDVDの出番。「コナン ザ・グレート」を観る。話はともかくとして、完成された世界観はさすが。グッズが欲しくなるような映画だ。しかし悪の親玉がジェームズ・アール・ジョーンズなのには驚いた。しかもクライマックスで「私はお前の父親だ」なんて台詞まで出てくるし。

 夕飯。ご飯、鯖の味噌煮、モヤシのおひたし、味噌汁。
 また鯖か。でもうまかった。味噌おいしい。

 麻雀卓のがらがらと牌をまぜる音、笑い声、談話。ひとつひとつが澱のように溜り、こころを重くする。
 誰がどこで何をして、誰と誰が仲良くなったか。いちいちそんなことまで気にする。この取り残されてる感・・・・
 名状しがたい自分への憎悪。まさかこんなところで顔を覗かせるとは。

 軽食はプリン。あっという間に平らげた。

 シャワーを浴び、消灯前のお楽しみ、「鉄人28号」鑑賞。今日は第3話の途中でおしまい。

 消灯。歩いたせいか、ぐっすり眠れた。が、ほどよい疲れと言うより、関節痛が残った。あれしき歩いただけで・・・。





○某日(土)曇のち晴れ 入院6日目(投与5日目)
 また何もない一日が始まる。
 だが、始まりはいつも心地よい。寝るたびにこころが洗濯されていくよう。昨日の澱もどこへやら。長時間の眠りは、心地よい目覚めを提供してくれる。当たり前のことだけど、こんなこと、ここ数年無かったな。
 TVを観てあらためて今日が土曜日だということを知る。そう、今日は土曜日。

「もの食う人びと」の続きを読む。今日中に全部読みきってしまおう。
 採血。痛かった。右なのに。

 朝飯。食パン2枚(マーガリン、イチゴジャム付)、ハムサラダ、バナナ、パック牛乳。
 隣のベッドで、食堂では俺の正面に座るTさんが、とっておいたイチゴジャムを俺にくれた。昨日つけなかったのだ。あまったのであげる、と。俺は甘党なので非常にありがたい。つまりパン一枚につき、ジャム一袋ということになる。トーストにつけたそれが、何にもましてご馳走に見えた。

 食後、食堂に居座って、隣の病室のKさんと話しこむ。30代中ごろと思われるこの方、ある宗教の人だった。なんだか面白そうだったので、いろいろお話を聞いてみた。
 こうして普通に話している分には非常にいい人に感じる。
 だがやはり、他宗派への批判もあり、また口調、表情を崩さない粛然としたその態度は、いかにも宗教者を思わせた。それでもにこやかで穏やか、礼を欠かさず、看護婦さんにまで「昨日の散歩はどうもおつかれさまでした」と徹底している。隣にいた俺もつられて思わず「ああ、いつも採血どうもです」と・・・さえない。が、Kさんを見ていて感じたのは、やはりなにか身にそわない事をやっているかのように、びくびくと緊張しながらお礼をしていること。それは宗教のドグマというより、もはや血や肉となった「そうしなければならない」という自身が自身に課す要求に答えるためのものだろうか。

 長い時間話したためか、あっという間に昼飯。弁当形式。ご飯と漬物、麻婆豆腐、春雨サラダ、こんにゃくの甘煮、、味噌汁。
 苦しい。全然腹減ってないのに。

 「もの食う人びと」読了。良書でした。
 しかし、心底「これはいい!」とは思えなかった。それはこの本が問題なのではなく、きっと俺が未熟だから。映画にたとえると、子供の頃ブレラン観て「おもしろい、けど、将来もう一度観たら、きっともっと面白く感じるのではないか」という感じ。間違いなく良書であり、深い感動への脈動は感じるが、今、自分にそれを感受する器が無い、そう感じた。
 個々の世界情勢を勉強し、その上でまた読んでみると良いかも。しかし俺って無知だ。
 特にこころを打ったものをあげるとすれば、やはりメインにくる「モガディシオ炎熱日誌」編だ。怒りにふるえながら、著者に地雷で爆死した米兵の軍服、それにこびり付いた皮膚を見せつける男。
「いばりくさった米兵はこうなるんだ!」
 その皮膚に群がる蝿、やがて陽光に焼かれ、ちりちりと縮れていく。いまにも腐臭が漂ってきそうな描写だった。
 世の中には例え難い怒りや貧困が存在する。あとがきと解説が非常に良いテキストとなってくれたので、それに倣うと、ひとつひとつの描写がただただその例え難さを訴えてきた。意味ではない、現実としてそうあることの虚しさ、憤り。そうあって、それを肌で感じても、留まることをせず、あくなき追求の世界に身を晒す勇気。いいな、かっこいいと思った。
 ただひとつ、分からなかったのは、この人は個人として国家をどうとらえているのか、ということ。国家と個人は全く同一視できない、と書いていたが、それの意味するところは全共闘世代のそれと同じなのか?

 夕飯。ご飯、ブリの照焼き(ショウガ付)、鶏肉とキノコの炒め物、大根とニンジンの酢和え。味噌汁。
 ブリが最高に(゜д゜)ウマかった。ここだからウマく感じたのではなく、本当にうまかった。

 MAMEで「ヴァンパイア・セイバー」やる。
 今日は21時からK-1GPの開幕戦なので、早めに風呂に入る。

 軽食。カステラ一切れ。

 食堂でそのままK-1観戦。いっしょに観てたのはTさんとKさんだけだった。みんな見ないのか。
 曙は王者ボンヤスキーと対戦。案の定曙敗退。ハイキック一閃。3RKO。
 武蔵対アビディ。判定で武蔵。よかった!
 消灯ギリギリまで観戦する。メインのレバンナ復帰戦は観れなかった。

 消灯。朝6時過ぎまでぐっすりと寝る。慣れてきたせいか、最近おしっこ以外では目が覚めない。
 頭が少し痛いのはなぜだろう。副作用か。違うと思うが。
コメント
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