いつぞや、作家というのは何とも因果な商売だと書いた。
このエッセイ集を拝見して、その感を一層強くした。つまり、作家は、結局のところ自分を赤裸々にさらけ出す以外、飯が食えない職業のようだ。
この本を通して、今では日本ペンクラブ会長という要職にもある同氏の人と為りをつぶさに拝見することができる。その奇想天外な生き様に圧倒される。
例えば、同氏は、小学校低学年の頃は運転手付きの外車で登校していたが、すぐに家業が傾き、母親とも離別して親戚預かりとなる。また、「なぜ本など読んでいるのか!」と叱責されるような家庭環境にありながら、中学以来、図書室の本を総ざらいするほどの読書家だったという。
その後、三島由紀夫の割腹自殺にショックを受け、陸上自衛隊に入隊し2年間の隊員生活を送るが、これが人生最大のエポックになったというから面白い。
一方、日常生活は、早朝起床、午後2時頃まで執筆、午後4時間ほど読書をして午後10時には就寝するという、作家にしてはめずらしい昼型人間である点にも共感する。
いずれにせよ、こうした生き様は彼の作品によく反映されていて、読者の我々に無類の興味と安心感を与えている。