田舎の倉庫

Plala Broach から移植しました。

壮大なドラマ~小倉寛太郎著「自然に生きて」

2009年12月31日 | 読書三昧

東大法学部を出ながら、(JALの)労組委員長だからという理由で左遷され、カラチ、テヘラン、ナイロビの海外支店をたらい回しにされた後、墜落事故の処理などに当たらされた有能な企業人が書いた壮大なドラマ的自叙伝です。

小倉寛太郎(ひろたろう)氏って何者?
と問われそうですが、山崎豊子著「沈まぬ太陽」に登場する不屈の主人公、恩地元(はじめ)のモデルと言えば、きっとうなずかれる方も多いと思います。また、この小説は、この秋には渡辺謙氏の主演で映画化され好評を博しました。

先にご紹介した井上文夫著「時をつなぐ航跡」でも記しましたが、日本航空という国策会社の歴代の経営者は無能で、労使の力を結集して積極的な事業運営をすることが出来ず、「法的整理」がささやかれる今日の危機的状況をつくり出して来ました。

この一事からも、同社における労使慣行がどのようなものか理解できようというものです。現在は、会社べったりのJAL労組(第二組合 11,000人)、キャビンクルーユニオン(第一組合 2,000人)、機長組合(1,200人)など、職能別に8つの組合があるそうです。

このようなダメ会社の下で、有能な企業人がどのような扱いを受けたか、そして、それをどのように克服し、「余裕とユーモアと、ふてぶてしさ」とで、如何にしぶとく生き抜いて来たかを語っています。
一読をお勧めします。